結城友奈は勇者である-黒の章-   作:グランドマスター・リア

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のわゆ編始まってから13話でまだ本編入ってなかったってマジですか?


第十四話:呼び方

 

 その夜、勇者のバーテックス撃退の報道は四国の人々に希望を与えた。

 諏訪の人々の四国への避難完了も合わさり、世の中は前向きな雰囲気に包まれる。

 

 そんな中、戦いの後も若葉たちの日常は続く。

 折に翌日の昼休み、食堂でいつも通り皆一緒に食事を取っていると球子が言った。

 

「なあ、若葉。皆で話し合ったんだけどさ」

 

「なんだ?」

 

 改まった球子に若葉は訝る。

 

「やっぱり、お前がリーダーやってるのが一番いいと思う。今までは大社に言われてたから若葉がリーダーってなってたけど、今回の戦いではっきりわかったよ」

 

「……どうしたんだ?急に」

 

「いやさ、この前の戦いの時。お前やキリトが戦闘に立って戦ってくれたから、タマたちも戦う事が出来た。そうでなかったら、誰かが大怪我してたか……死んでたかも知れない」

 

 と、言うのも、戦いが終わってみればバーテックスの三分の二を若葉とキリトが倒していたのだ。

 今回の勝利は二人の奮闘による所が大きい。それだけでなく、バーテックスの大群に真っ先に飛び込んだのは若葉だった。キリトに関しては、先日の諏訪救出作戦を遂行した功績がある。

 リーダーになるなら、若葉かキリトのどちらか。

 

 若葉からの視線を感じ取ったキリトは、肩をすくめて言う。

 

「俺も、リーダーなら若葉がいいと思うよ。第一、俺はそういうの向いてないし……」

 

 その議題はキリトが自ら辞退する事で決着がついた。組織の上に立つという事は、要するに部下の模範的存在になる必要がある。

 キリトはそういう堅苦しいのを嫌うし、ならば若葉はむしろ打ってつけだ。

 

「私も、若葉さんがリーダーやるのがいいと思います」

 

「うんうん、若葉ちゃんリーダーって感じするもんね?」

 

「反論ないわ。あなたの活躍は確かだったし……高嶋さんが適格って言うから……」

 

 反対意見なし。

 後は若葉本人の意思次第。

 

「皆………」

 

 若葉は全員を見て。

 

「ありがとう」

 

 こうして勇者一同を纏める正式なリーダーには若葉がなった。

 

「良かったですね。若葉ちゃん……」

 

 ひなたは若葉が自身のリーダーとしての資質に疑問を持っている事を知っていた。そんな彼女が周囲から認められたのは嬉しかった。

 

「ところで……若葉。一つ言いたかった事があるんだけどよ」

 

 球子が言い放つ。

 

「なーんーで!タマの事を名字で呼ぶんだ?友奈の事は『友奈』って呼ぶのに」

 

「名前で呼んでって、前に頼んだからね!」

 

 以前、若葉が『高嶋』と呼んだ時に友奈は自分の事は名前で呼んでくれと言った事があった。

 他のメンバーに関しては特にそういう出来事も無かったので、名字で呼んでいたのだが球子に取ってはそれが気掛かりだったらしい。

 

「むぅ……だったら私も『球子』とか、もっと親しみを込めて『タマっち』でも良いから」

 

 尚も食い下がる球子をキリトが茶化す。

 

「タマ、若葉に名前で呼んでもらえないこと地味に気にしてたもんな?」

 

「はぁ!?そんなじゃねーし、気にしてねーし!」

 

 二人のやり取りに便乗する形で杏も言う。

 

「そういう事なので、出来れば私の事も名前で呼んでください」

 

「あんず!お前、都合よくタマの言葉に乗っかったな!」

 

「それじゃあ、俺の事もキリトって呼んでくれると助かる」

 

「キリト!お前もか!!」

 

 そんな三人を横目に、千景もボソりと言った。

 

「私も……名前で呼んでいいわ……」

 

 まさかの申し出にその場の全員が驚愕する。

 

「他の皆が名前で呼ばれてるのに、私だけ名字なのは……変だから……あと、敬語を使うのもやめて欲しい。むずがゆい……」

 

 訳を話しながらも、特に周囲の反応なんて気にする様子もなく無表情な千景に、キリトはいたずらっ子の様な表情でニヤリと口角を上げる。

 

「もっと皆と仲良くしたいならそう言えば良いのに、チカっちは本当に照れ屋っさんだなー」

 

 そんな事を言い放ったキリトに千景を除く全員がぎょっとする。案の定、千景は怒りを滲ませた表情でキリトをキッと睨み付けた。

 

「だ・れ・が、チカっちよ!高嶋さんならともかく、あなたにそこまで許した覚えはないわ!」

 

 普段は大声なんて出さない千景が、青筋を浮かべ憤る姿に勇者の面々は呆然である。尚もキリトは臆する様子もなく飄々としているのだから、見ている側からすれば戦々恐々だ。

 

「キリトの奴……怖いもの知らずだなぁ」

 

「あの千景さんがここまで怒ってるの、初めて見たかも……」

 

 当事者ではないのが唯一の救いか。外野から二人の様子を見守る杏と球子とは対照的に、その言い合いに一石投じる者が一人居た。

 

「私もぐんちゃんって呼んでるし、チカっちも凄く可愛いくて良いと思う!」

 

 友奈だ。

 思わぬ介入、しかも千景が唯一全面的に心を開いている少女からの進言に驚愕する。

 

「高嶋さん!?でも、チカっちなんて……」

 

 そもそもの話、あだ名で呼ばれるだけなら未だしもこの年にもなって『チカっち』はかなりの抵抗がある。

 自分で名前呼びを申し出た身としては、キリトにだけ「お前は名字で呼べ」なんて言えない。だからといって、彼女の呼び方をこの場で正そうにも向こう側には友奈が付いている。

 友奈は百パーセントの善意で言っているので、彼女の言葉を否定するのも憚られた。

 

「…………分かったわよ」

 

 結局、千景が折れた。

 

「よっし!」

 

 これにはキリトもサムズアップ。

 友奈にナイスと親指を立てると、友奈もノリ良くグッと親指を立てた。

 

「あの千景を陥落させるとは……友奈とキリト、恐るべし……」

 

 勝手に話が進んだが、元々は若葉の呼び方の話だった。

 それに気が付いた球子が若葉に視線を向ける。すると、彼女も頷いた。

 

「分かった。そういう事なら、私もそう呼ばせてもらおう。球子、杏、千景、かず……」

 

 和葉と呼ぼうとした若葉に「キ・リ・ト」と詰め寄る。

 

「……キリト」

 

 若葉はそう呼び直すと、キリトは満足そうに頷いた。何故この呼び方に拘るのか分からない面々だが、そこにスマホを取り出したひなたが満面の笑みで言った。

 

「それじゃあ、今日は勇者の再出発記念日、そして若葉ちゃんのリーダー着任記念日という事で……皆さんで写真を取りましょう!」

 

 勇者全員で寄り集まって、スマホの内カメラをこちらの向けるとパシャリと小気味よい音を鳴らして、勇者六人と巫女が映った記念写真が記録された。




今作で初めてアンケートを設置したいと思います
内容としてはストーリーの進行速度についてです(投稿頻度の話ではなく(人;´Д`))

諏訪編から本編に至るまでに13話もかかっていたり、『わすゆ編』も当初の倍の話数になったり、自分でも「進むの遅すぎじゃね?」と思ったりしているので
12月の制作を始める前に読者様方に聞いときたいです()
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