結城友奈は勇者である-黒の章-   作:グランドマスター・リア

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本編が重すぎて疲れたので休憩も兼ねて閑話休題です。本当なら今年のキリト君の誕生日当日にこのエピソードはあげたかった……


第二十四話:キリトへの誕生日プレゼント大作戦! 一

 

 二度目のバーテックス侵攻から数日、十月三日の午後。

 真冬の寒波を直前に控えた丸亀城にて、訓練後のひと時の事だった。授業、訓練、学生と勇者の二つの義務を終えれば、皆各々の自由時間である。訓練場には自主練をする者、帰宅準備をする者、軽く世間話をする者、皆思い思いの時を過ごす。

 

 事件という程のものでもない。しかし、今日この日にあった事は以後丸亀組の中で忘れられることはないだろう。事の発端は、土居球子が訓練後の訓練場でとある三人の会話を聞いた事である。

 

「キーリちゃん!明日の誕生日プレゼント、とびっきりのを用意してるから楽しみにしててね!」

 

「おう、ありがとな。友奈。それにチカっちも」

 

「え!?何で私まで……」

 

「何でって、友奈と一緒に買いに行ってくれたんだろ?少し気が早いけど、お礼は幾ら言っても悪いもんじゃないからな」

 

 そう、明日の十月四日はキリトの十五歳の誕生日なのである。

 事前にそれを聞いていた友奈と千景は、前もってプレゼントの用意や軽い誕生パーティーを計画していた。

 

「それは……そうだけど……」

 

 改めて面と向かって言われると恥ずかしいのか、千景は目を逸らす。

 と、こんな感じで三人は主に翌日の誕生日に関して話していた。やがて、話も一区切りしたところでキリトは荷物を持って踵を返した。

 

「もうこんな時間か……俺はもう行くよ。それじゃあ、また明日」

 

「うん!バイバーイ!」

 

 キリトが訓練場から出ていった。それを見計らって、球子は二人に声を掛ける。

 

「友奈ぁ!千景ぇ!」

 

「わわわ!?どうしたの?タマちゃん」

 

 いきなり大声で呼びつけてきた球子に、友奈も千景も困惑した様子で応答する。

 

「さっきの話だよ!明日がキリトの誕生日って本当なのか?」

 

「……事実よ。本人にも確認を取っているから間違いないわ……」

 

「うん。明日はキリちゃんの十五歳の誕生日なんだって!だから、明日は私とぐんちゃんでお祝いするんだ!」

 

「マジかぁ。全然知らなかった……タマ、プレゼントも何も用意してないぞ」

 

 球子としては、付き合いの浅いなりに折角の誕生日くらい祝ってやりたい。キリトは丸亀組に加入したのが何分絶妙な時期だったから、過ぎているなら来年に持ち越すつもりだったが、明日ともなれば話は別だ。

 むむむと唸る球子に、友奈と千景はそこまで悩むことはないと思いつつも、かと言って「無理して用意する必要はない」とも言えない。

 

「タマっち先輩。そんなに騒いでどうしたの?」

 

 遅れて更衣室から出てきた杏が、悩める子羊こと球子に声を掛けた。

 

「杏ぅ、二人に聞いたんだけどさ~。明日ってキリトの誕生日らしい……」

 

「え、そうなの?」

 

 視線を向けると千景は頷いた。

 

「二人はもうプレゼントも用意して、パーティーの準備も出来てるらしいんだ。それなのに私達は何も用意しないなんて薄情な真似、私はしたくないぞ」

 

「ごめんね、タマちゃん。教えてあげようかなって思ったんだけど、キリちゃんに止められちゃって……」

 

「止められた。ですか?」

 

「えぇ……何でも「知らないなら、別にわざわざ伝えなくてもいい」との事よ……大方、あなた達に面倒とかかけたく無かったんじゃない?本人も、余り自分の誕生日に関心自体が無いみたいだったし……」

 

 キリトは『切り札』の代償で幼少期の記憶を丸ごと失っている。それ故に自身の誕生日を祝う事にもあまり積極的じゃないのだが……当然、丸亀組の面々はそんな事は知る由もない。

 

「だとしても、知ってる人だけでしめやかにやろうなんて……そんなの水臭いじゃないないか」

 

 仲間だからこそ、そう言う祝い事はきちんと祝って上げたい。情に厚い球子は尚更そう思うし、杏も同じような思いを抱いていた。

 

「私もそう思う!キリちゃんだって本当は皆でパァーっと盛り上げた方が嬉しいに決まってるよ!」

 

 過ごした時間はまだ短いが、ずっと一緒に授業や訓練を受けていればキリトの人間性一つや二つも何となくは理解できている。

 彼女が普段の飄々とした仕草や余裕な態度とは裏腹に、変にナイーブで周りに遠慮する部分があるのは球子や杏も分かっていた。

 

「そうだよな!よーし、そうと決まれば今から皆で町に繰り出して、キリトのプレゼントを買いに行くぞ!」

 

「うん、私も賛成!」

 

「私もー!」

 

 賛成多数により可決。

 

「そう。まあ、頑張りなさい……」

 

 千景は踵を返そうとして、腕を球子に掴まれる。

 

「なぁーに言ってんだ、皆でって言っただろ?千景も一緒に行くぞ!」

 

「はぁ……?何で……」

 

 千景はすでにプレゼントの用意も出来ているし、付いて行く意味なんてない。そんな納得がいかない様子の千景を収めたのは、又しても赤い髪をした少女だった。

 

「ぐんちゃんも一緒に行こう!一人で過ごすよりも、皆で選んだ方がきっと楽しいよ?」

 

「……高嶋さんがそう言うなら……」

 

 数秒の撃沈である。渋っていた様子が嘘のように態度を改めた千景はいっそ清々しくすら思う。

 

「さてと、そうなると後は……居た!若葉にひなたぁ!」

 

 今し方訓練場を後にしようとしていた二人、若葉とひなたを球子が呼び止める。

 

「なんだ?」

 

「集合!カモンカモン!」

 

 きょとんとしながらも若葉とひなたは、球子の所に来る。

 

「はい、そこの二人!明日は何の日か知ってるか?」

 

 唐突な球子の問いに、若葉は首を傾げた。

 

「明日?……すまん、何の事だ?」

 

 ニヤリと口角を上げた球子。ここでビシっと衝撃の事実よろしく明日がキリトの誕生日である事を明かしてやろうと口を開きかけた時、隣に居たひなたが先に言葉を発した。

 

「明日と言えば、桐ヶ谷さんの誕生日……でしたよね?」

 

「なにィ!?」

 

 見事に的中させたひなたに、球子は雷に打たれたような衝撃を受けた。

 

「む、そうなのか?」

 

「はい、桐ヶ谷さんからは皆さんには言わなくていいと言われていたので、黙っていたのですが……この様子だと、結局知れ渡ったみたいですね」

 

 当然のように言うひなたに、杏はおずおずと言った様子で聞く。

 

「因みに、ひなたさんはキリトさんへのプレゼントは?」

 

「ええ、勿論、用意していますよ」

 

 ガーンと効果音の鳴りそうな勢いで球子は項垂れた。そして、すがりつく様に若葉に捲し立てた。

 

「わ、若葉は?若葉はそもそも知らないみたいだったし、プレゼントとかは……」

 

「あぁ、私もまだだな」

 

「若葉ぁ!タマはお前の事を仲間だって信じてたぞ!」

 

「こんなにも不名誉な仲間意識も珍しいわね……」

 

 目の前で繰り広げられる仲間の醜態に、千景は呆れた様子でため息を付く。

 

「とにかく!全員揃ったところで、丸亀組勇者の面々には緊急出動を命じる!ミッションは直ちにキリトへの誕生日プレゼントを用意する事だ!なお、既に用意してる面子も今回は強制参加とする!」

 

「タマっち先輩……完全にテンションがおかしくなってるよ……」

 

 こうして、丸亀城の勇者達はキリトへの誕生日プレゼントを求めて夕日の沈む町へと繰り出したのだった。

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