ネットゲームでは俺は金を稼ぐのが好きだった。
オークションイベントでも出来る限り安く買い、最も高く売るを繰り返す手腕はある。
人間相手だとより簡単だ。だが、現実だと儲けすぎてもいけないし、儲けなさすぎてもいけない。
「ありがとう勇者様」
ご機嫌なマインが俺の手にキスをした。
正直、すぐにでも手を洗いたいが尻尾を出すまでは我慢だ
装備を新調したマインと一緒に俺は町の宿屋に顔を出した。
一泊一人銅貨30枚か……。
「二部屋で」
「大丈夫ですよ」
「はいはい。ごひいきにお願いしますね」
宿屋の店主が揉み手をしながら俺達が泊まる部屋を教えてくれる。
値段基準を頭に叩き込みながら、宿屋に並列している酒場で晩食を取る。
別料金の食事銅貨5枚×2を注文した。
「そういえば……」
俺は帰りがけに購入した地図を広げてマインに聞いた。
「今日、俺達が戦っていた草原はここだよな」
地図にはこの辺りの地形が記されている。錬や元康に聞いたほうが良いのかもしれないが、昨日の態度から見るに教えてくれそうに無い。
あの手の連中は他者を出し抜くのにためらいが無いのだ。俺が完全に無知なのを良いことに強力な魔物の巣へ導かれては堪ったものではない。
だからその辺りを知っていそうなマインに聞く。
「はい。そうですよ」
「昼間の話から推察するに、草原を抜けた森辺りが次の狩場か?」
地図を広げるとこの国の地形が大まかに分かる。
基本的に城を中心に草原が広がり、そこから森へ続く道と山へ続く道、他に川へ突き当たる場所や村がある道があるのだ。
あんまり大きな地図ではないので、近くの村もそんなに無い。
森の後に何があるか、この地図では予想が出来ないがこれから行く道と適正の魔物がいるのを予測しておかなくては戦いようが無い。
「ええ、この地図には載っていませんが私達が行こうとしているのは森を抜けたラファン村です」
「ふむ……そうか」
「ラファン村を抜けた先あたりに初心者用ダンジョンがあるんですよ」
「ダンジョン……」
前世だと魔族から逃げようとした北部の人達が築いた地下都市だったけ。
「あまり実入りは無いでしょうが勇者様がLvを上げるには良い場所かと思います」
「なるほどね」
「装備も新調しましたし、勇者様の防御力にも寄りますが楽勝です」
「そうか、ありがとう。参考になったよ」
「いえいえ、所で勇者様? ワインは飲まないのですか?」
酒場故に酒が料理と一緒に運ばれてきたのだが、俺はまったく手をつけていなかった。
「ああ、今は禁酒中なんだ。」
前世から殆ど酔わないくらい酒に強い体質だった。
酒場の雰囲気やお祭り騒ぎの雰囲気を楽しむのが好きだ。
前世や元の世界の仲間達となら別だが今はまだ飲めないな。
それに
「そうなんですか、でも一杯くらいなら」
「悪い。禁酒破ると彼女に怒られるんだ。」
「でも……」
「ごめんな」
「そう、ですか」
残念そうにマインはワインを引っ込めた。
「…彼女居たんですか⁉︎」
マインは自分の分のワインを一口飲み驚いたように言う。
「居たさ。殺されそうな所を助けてそのまま付き合った。…そんなことよりも明日からの方針を相談できて助かったよ。今日は早めに休むから」
「はい、また明日」
食事を終えた俺は騒がしい酒場を後にして割り当てられた部屋に戻る。
さすがに寝るときまで革鎧を着けているわけにはいかない。
「……」
少し革鎧に細工しておくか
革鎧を机に置き内側に魔力で耐久性向上と軽量化の魔術陣を描き込み椅子に立てかけて置く
銀貨の入った袋を備え付けのテーブルに置いた。
残り銀貨320枚か……先払いの宿だから319枚とちょっと。
少し心もとない気がして落ち着かないのは俺が貧乏人根性でも染み付いているのだろうか。
徐に観光地に行く日本人の如く、俺は銀貨30枚ほど盾の中に隠す。
うん。なんとなく安心したような気がする。
夜中に仕掛けてくるのかもう少し信用を得てからなのか楽しみだ。
多少、眠くなって来たな。酒場の方から楽しげな声が聞こえてくる。
元康っぽい声や樹らしき奴が雑談をしながら部屋を通り過ぎたような気がした。あいつらもここを宿にしたのかな。
室内用のランプに手を伸ばして消す。
少し早いけど、寝るとしよう……。
ベットではなく壁にもたれかかって目を瞑る。
チャリチャリ……
日が昇る前に目が覚めた。
いつも起きる時間より1時間早く起きてしまったようだ。
「やっぱり取ったか」
昨夜机に置いた銀貨の入った袋と革鎧が消えていた。
隣のマインの部屋からは誰の気配も無かった。
とりあえず王に枕荒らしとして被害報告しておくとするか。
今着ている元の世界での仕事服である黒のスーツに対斬撃の魔術陣を書き込みながら時間を潰した。
体感時間で9時を超えたぐらいで一度やめて廊下の方を見る
「そろそろかな」
ドンドンドン!
部屋の戸が乱暴に叩かれる
部屋の戸を少し開き聞くこの時には移動する準備は完了していた。
「誰です?」
「盾の勇者だな!」
「そう、だけど」
なんだよ。妙に敵愾心を感じる応答だな。
「王様から貴様に召集命令が下った。ご同行願おう」
あっ(察し)王も共犯か
「さあ、さっさと着いて来い!」
ぐい。
「触るな!」
騎士達はひねるように腕を掴んできた為、せっかくの仕事着に皺が出ると思い殺気を込めて騎士達を睨んでおいた。
効果は抜群で手を離して貰うことができた。
「引き摺られずとも同行しよう。諸君らは職務に忠実な良き騎士だ。尊敬するよ。」
そう言い宿屋の前に停められていた馬車に乗り込む。
中に乗り込む騎士は怯えながらも気丈に振る舞っていた。
カインの逆鱗は一つ分かっている
一つは仲間とした存在を貶される事である。
ただ、前世の経験から種族を馬鹿にされる見下されるなどは貶された内に入っていない。