奴隷商「(目の光が…)」
「そうか、後で見せてくれ。『死んでなければ回復させる。死んですぐなら叩き起こして回復させる』が信念の聖女に叩き込まれた術があるのでな。」
「なんと!それは素晴らしい」
おそらく奴隷商は自身が使えたならどれ程の稼ぎになるか考えているのだろう。
気持ち悪い顔になってきている。
「それよりも、こいつらの値段は?」
「おお、そうでしたな。左から銀貨25枚、30枚、40枚となっております」
「ふむ、Lvは?」
「5、1、8ですね」
即戦力を見たら混血のリザードマン、値段を見たら遺伝病か。全体的にやせ細っているな。
ラビット種と呼ばれた男は片腕が使えなくても他の部位は問題がなさそう。
表情は暗いが……ここに居る奴隷はみんな同じだ。
「ここの奴隷はみんな静かだな」
「騒いだら罰を与えます故」
「なるほど」
しつけは出来ているのか、もしくはしつけが出来ない奴隷を俺には見せていないか。
この中だと1番伸び代が高いのはラクーン種だろう。
「この真ん中のはなんで安いんだ?」
ガリガリに痩せていて、怯えているが、見た感じ少女だ。顔は……良い方では無いけど。
ラクーン種、直訳だとアライグマかタヌキか。
それでも人に近い外見の女の子なら別の購買層が喜びそうだ。
…獣魔族の非戦闘種族と同じ感じがする。
「ラクーン種と言う見た目が些か悪い種族ゆえ、これがフォクス種なら問題ありでも高値で取引されるのですが」
「ほう……」
愛玩用の粗悪品で値下がっている訳か。
「顔も基準以下でしかも夜間にパニックを起します故、手を拱いているのです」
「在庫処分の中でまともな方がコレか?」
「いやはや、痛いところを突きますな」
他の奴隷に比べて労働向きでは無い。
Lvも一番低いと来たものだ。
どれが良いものか。
悩む所ではある。
ラクーン種の奴隷と目が会う。
怯えては居たが心がまだ壊れていない。
よし、
「じゃあ真ん中の奴隷を買うとしよう。左右は要らん。目が死んでいる奴は何をしても意味がない。」
「なんとも邪悪な笑みに私も大満足でございますよ」
奴隷商は檻の鍵を取り出してラクーン種の女の子を檻から出して首輪に繋ぐ。
「ヒィ!?」
奴隷商が鎖で繋がれた女の子を引きずるのを止め、自分で歩かせ元来た道を戻り、少し開けたサーカステント内の場所に着いた。奴隷商は人を呼び、インクの入った壷を持ってこさせる。
そして小皿にインクを移したかと思うと俺に向けて差し出す。
「さあ勇者様、少量の血をお分けください。そうすれば奴隷登録は終了し、この奴隷は勇者様の物です」
「なるほど」
俺は作業用のナイフを自分の指に軽く突き立てる。
誰かに刃物を突きつけられると盾は反応するが自分の攻撃には意味が無いらしい。
そして戦闘での使用では無い場合。盾は反応しない。
血が滲むのを待ち、小皿にあるインクに数滴落とす。
奴隷商はインクを筆で吸い取り、女の子が羽織っていた布を部下に引き剥がさせて、胸に刻まれている奴隷の文様に塗りたくる。
「キャ、キャアアアアアアアアア……!」
奴隷の文様は光り輝き、俺のステータス魔法にアイコンが点灯する。
奴隷を獲得しました。
使役による条件設定を開示します。
ズラーっと色々と条件が載っている。
俺はざっと目を通し、寝込みに襲い掛かるや、意図して主を殺害しようとするや、命令を拒否するなどの違反をした場合、激痛で苦しむように設定する。
ついでに同行者設定というアイコンが奴隷項目以外の所で目に入ったのでチェックを入れる。
奴隷A、名前が分からないからこう書かれている。
どうやら任意で条件を変更できるようだから、後で細かく指示するとしよう。
「これでこの奴隷は勇者様の物です。では料金を」
「ああ」
俺は奴隷商に銀貨35枚渡す。
「5枚、多いですよ?」
「この手続きに対する手数料と俺が戻って来るまでに搾り取るつもりだったんだろう?」
「……よくお分かりで」
先に払いましたという顔をすればあちらも文句は言い辛い。
これで尚、俺から毟り取るつもりなのなら……どうしたものか。
「まあ、良いでしょう。こちらも不良在庫の処分が出来ました故」
「ちなみに、あの手続きはどれくらいなんだ?」
「ふふ、込みでの料金ですよ」
「どうだかな」
奴隷商が笑うので俺は笑い返してやった。
「本当に食えないお方だ。ぞくぞくしてきましたよ」
「どうとでも言え」
「では、またのご来店をお待ちしております。」
「まだ、終わっていないぞ?奥を見さて貰おうか。」
「…本当に見るのですかな?」
「見るさ。こいつは此処に置いておく。」
そうだ。今買った少女の名前を
怯えている者にはできるだけ目線を同じにし、優しい声をかける事が必要である。多少なりとも他者への態度の緩和が必要だろう。
顔を逸らして返答を拒否する。
今回は命令ではない為、罰則は無いがこれからのことを考えるとやっぱり
「ラ、ラフタリア。」
銀貨2枚を奴隷商に握らせた。奴隷商はにんまりと笑い部下に少女を洗うように指示を出していた。
その後、奴隷商と奥の部屋に向かった。
「…あの中に居ますのは安値で買い取ったものの、傷や病気で死にかけているもしくは死んだ者の場所です。」
「別に構わない。」
「…後悔はしないでいただきたい。」
そう言って奴隷商は仕切としていた布を取った。
あまり感じなかった腐敗臭に死臭、排泄物の混ざった言い様のない匂いが強くなった。戦場に居た頃の感覚が戻ってきた。
…此処に肉の焼けた匂いがあればあの場所の完成だ。
少し懐かしいと感じるのは気のせいだと思うことにする。そうでなければ俺は戦争屋って事になる。
エミリー・カーク
第三次世界大戦に徴兵された留学生部隊の1人。。
カインと同じ部隊の唯一の生き残りにして苦労人。
ストレスに弱くよく胃に穴をあけているが、自前の超回復によって1日程度で治る。最近は胃の痛みに慣れたのか穴が空いても平然と仕事をしている。
忠誠は日本皇国の天皇陛下ではなくカインに向けられている。