「此処で解呪を行う。」
俺がそう言うと奴隷商は驚きを露わにし、近づいてきた。
周りには奴隷しかいないのに周りを警戒し小声で話しかけてきた。
「…此処は私共の持つ場所の中でも機密性は高いですが、他者に漏れる事もあるのです。もっと機密性の高い場所で行った方が良いのでは?」
「俺の拠点は森の中だか?」
「…」
俺がそう言うと奴隷商は黙り込んでしまった。憐んでいるのだろうか?台湾戦場よりはマシだし暗殺を計画する者も居ない。とても気楽な環境だ。
「森の中と私有地の地下どちらが機密性が高いかは分かるだろう。それに、王家の諜報機関が入ることは少ないだろうしな。」
「…わかりました。私も見学しても宜しいので?」
「良いぞ。これからも長い付き合いになるからな。」
そう言い、地面に聖女直伝の術式を描き込んでいく。神話の頃の邪神が幼神に対して行った魂から縛る呪いを解く為の術式に身体と精神を癒す術式を組み込んだ発展型だと言っていたな。確か、基本的に魔力で描けと言われていたな。
「奴隷達を連れてきましたぞ。」
「…良し。6人をこの陣の中に入れてくれ。」
奴隷商は何も言わずに6人の奴隷を陣の中に入れ隣までやってきた。
奴隷商が陣から出たのを確認し、魔力と聖水に漬けた聖樹の灰を混ぜた液体を注ぎ込む
「この魔術陣はこの後破壊する。」
「なんと!」
「これは治癒の女神を信仰する神殿の教皇及び聖女が許可を出さないと使う事のできない重要機密だからだ。かつてこの秘術陣を他神殿に売り払った馬鹿が居た。幸い行使できるほどの知識などは無く型のみを売り払っていた。もちろん行使など出来るはずもなくその馬鹿は欺瞞罪で処刑。しかし、教皇や聖女が行使していると噂が流れ、他神殿から襲撃が行われる様になった。当時の聖女の護衛神官や枢機卿に返り討ちにあい関係する神殿の前に捨てたそうだ。そこからこの秘術を形として残す事を禁じられたのだよ。」
「と言うことは」
「無論、俺のしているこれは神殿の禁忌を犯している。バレれば枢機卿達の折檻の後に処刑だな。それと、これの行使を記録した者は不幸な事故が発生するかもしれないな」
言葉の意味に気がついたのだろう奴隷商は顔を青くし、額に流れる脂汗を拭いていた。そこまで脅したりしていないのに、顔を青くするなど間謀としては勿論、商人としても勉強が足りないと言われてしまうだろう。
俺個人としてはなかなか好感の持てる者だ。
「だから破壊する。破門なんてされようものなら地を埋め尽くす程の信者が列を成して襲ってくる。噂が流れただけでだ。」
ー女神様の為に!
ー悪逆な元同胞に鉄槌を!
ー神の名の下にお前を狩る!
ヤバい。思い出しただけで身体の震えが止まらなくなってきた。
「…怖いですな。三勇教も同じ事をしているかもしれませんな」
信者達の狂気的なモノの恐怖に震えていると陣が一際輝き治療が終了した事を教えてくれる。
「お前達。今日から俺が主人だ。食い扶持や怪我は気にしなくて良いぞ。」
始めましての見た目としては亜人では無い人間に心を開く事は無いだろう。予想はしていたが6人の敵意の込められた目で見られるのはなかなかにキツいものがある。
「あーそのなんだ。これから宜しく」
あたしを買った盾しか持っていない男は血の匂いが濃かった。
あたしはオーガの血とブラットウルフの血が先祖に入っているから血の匂いに敏感なんだ。
あれはヤバい、何千何万の血の匂いがまるで魂から湧き出ている様に感じた。
だから、隣に入っていた兄妹の呪いを解いたついでとばかりにあたしにまでした時は呪いをかけられると思った。
あの陣に入ってからずっと聞こえていた爺さん達の声がなくなって、殺されるって言う恐怖や敵意が薄れていったんだよ。
あの時からボスに付いて行こうとなんでか思ってたね。
こう言うのを確か、本能が理解したって言うのか?
ん?今は?勿論何があっても付いて行くさ。それに、気づいたのさ。あたしが指示するよりもされる方が楽だってさ。ハッハッハ!