もう殆どの国が崩壊している。
もう止められない。大統領は最後まで敗北宣言をすると言っていたその日の夕方に空爆で死亡した。
私達の罪だ。私ももうすぐ死ぬだろう。だからこれを、私達の罪を書き残すのだ。二度と私のような愚か者を出さないために
ホワイトハウス、セキュリティルーム内にて発見された少し焦げた手記
「こんな話は置いといて、これだけ時代や歴史が違う平行世界なんだここに来た原因も違うだろう?」
「ああ、そうだな。俺から話そう。」
練が引き攣ったような声で叫ぶように言う。
空気を変えるためだろう。
叫ぶように言った事が少し恥ずかしかったのか、咳払いをして話し始めた。
「俺は学校の下校途中に、巷を騒がす殺人事件に運悪く遭遇してな」
「ふむふむ」
「一緒に居た幼馴染を助け、犯人を取り押さえた所までは覚えているのだが」
「「「あー」」」
……錬が脇腹を摩りながら事情を説明している。
幼馴染を助けるとか最近の漫画でも殆ど見ないぞと、ツッコミを入れてやりたいがまあ良いとしよう。
大方、犯人を捕まえたのは良いけど揉み合いで脇腹を刺されたといった所か。
見栄と嘘を堂々と言う辺り、前世の教主と同類と考えておいた方が無難か。これは聞き流しておくか。
「そんな感じで気が付いたらこの世界に居た」
「そうか、幼馴染を助けるなんてカッコいいシュチエーションだな」
俺のお世辞にクールを装って笑っている。もうそれは良いから。
「…じゃあ次は俺だな」
少し無理をした感じで軽い感じを出しつつ元康が自分を指差して話し始めた。
「俺はさ、ガールフレンドが多いんだよね」
「ああ、そうだろうよ」
何か面倒見のよさそうなお兄さんっぽいし。女の子が好きっぽいイメージある。でも、そう言うタイプは女難が多いと聞く。
「それでちょーっと」
「二股三股でもして刺されたか?」
錬が小ばかにするように尋ねる。
すると元康は目をパチクリさせて頷きやがった。
「いやぁ……女の子って怖いね」
「嘘だろ…」
「嘘じゃないんだよね」
…どうしてだろう、少し頭が痛くなってきた。
おっと、樹が胸に手を当てて話し出す。
「次は僕ですね。僕は塾帰りに横断歩道を渡っていた所……突然ダンプカーが全力でカーブを曲がってきまして、その後は……」
「「「……」」」
十中八九轢かれたか……なんとも哀れな最後だ。
最後は俺だが、また、空気が悪くなりそうだな
「あー……この世界に来た時のエピソードって絶対話さなきゃダメか?」
「そりゃあ、みんな話しているし」
「そうだよな。うん、みんなごめんな。俺は大学の図書館で不意に見覚えの無い本を読んでいて爆発に飲まれて気づいたらって感じだな。」
「「「……」」」
「あー…言っとくが、爆発の直前まで火薬の匂いはなかったから無差別テロだと思うぞ。」
「てめぇ、わざわざ空気を悪く変える情報を渡しやがって!」
「そうですよ!僕たちがわざわざ聞くのをやめておいたのに話して!」
「そうだ。お前は空気が読めないのか?」
ワタル達にも言われたな。読めているはずなんだがな。話題を逸らそう。
「まぁ、それは置いといて、この世界のルールっていうかシステムは割と熟知してるのか?」
「…ああ」
「やりこんでたぜ」
「それなりにですが」
「なら、仕様はほぼ同じなのか?」
「全く同じですね」
「同じだ」
「俺も同じだぜ」
なるほど、俺のだけ仕様が違う。初見ノーデスは不味いぞ
多少の情報は欲しい
「な、なあ。これからこの世界で戦うために色々教えてくれないか? 俺の世界には似たゲームはあったんだが、仕様が違いすぎて分からない状態なんだわ」
錬は冷酷に、元康と樹は何故かとても優しい目で俺を見つめる。
「よし、元康お兄さんがある程度、常識の範囲で教えてあげよう」
何かうそ臭い顔で元康が俺に片手を上げて話しかけてくる。
「まずな、俺の知るエメラルドオンラインでの話なのだが、シールダー……盾がメインの職業な」
「うん」
「最初の方は防御力が高くて良いのだけど、後半に行くに従って受けるダメージが馬鹿にならなくなってな」
「うん……」
「高Lvは全然居ない負け組の職業だ」
「oh…」
それはあまり聞きたくなかった!
何その死亡通告、俺は最初から負け組ですよと言いたげだな。
「アプデ、アプデは無かったのか?」
職業バランスとかの
「いやぁシステム的にも人口的にも絶望職で、放置されてた。しかも廃止決定してたかなぁ……」
「転職は無かったか?」
「その系列が死んでるというかなんていうか」
「スイッチジョブは?」
「別の系統職になれるネトゲじゃなかったなぁ」
「クソ運営が!」
これが本当なら難しい職業をやらされる羽目になるのか。
俺は自分の盾を見つめながら思う。
お前、そんなに将来が暗いのか?
「お前らの方は?」
練と樹に目を向ける。
すると二人ともサッと目を逸らしやがった。
「悪い……」
「同じく……」
…という事は俺はハズレを引いてしまったのか?
放心する俺を横目に三人はそれぞれのゲームの話題に花を咲かせる。
「地形とかどうよ」
「名前こそ違うが殆ど変わらない。これなら効率の良い魔物の分布も同じである可能性が高いな」
「武器ごとの狩場が多少異なるので同じ場所には行かないようにしましょう」
「そうだな、効率とかあるだろうし」
どいつもコイツも目の奥に俺ってチート能力に目覚めたんじゃね? って思っているような気がしてきた。
……そうだ。
俺が弱いなら仲間に頼ればいいじゃないか。
やる方法は幾らでもある。
俺がダメでもPTで戦えば自然と強くなれる。
「ふふ……大丈夫、せっかくの異世界なんだ。俺が弱くてもどうにかなるさ…なれば良いなぁ」
三人から何かかわいそうな物を見る目で見られているような気がしたけど、気にしたら負けだ。
そもそもだ。俺の装備は防具だし、ゲームとは違うんだ。成長する専用の盾を捨ててでも武器を使えば良い。
「頑張らないとな」
その後は豪勢な食事を食べ俺を含め三人とも明日が待ち遠しいと就寝した。