盾の英雄記   作:トッポ(チョコ無し)

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「ここが魔導国の王都。」
「ワシがここで改良した延命薬を作り飲んだ場所だ。古き魔術師達の工房が無数に存在してその魔力で空間が歪んだのだ。」
「人が居なくとも常にその姿を保つ。…さて、早く移動するぞ。司書に挨拶をせねば」


初戦闘と依頼

城門を抜けると見渡す限り草原が続いていた。

一応石畳の道があるが一歩街道から外れると何処までも草原が続いていると思うくらいに緑で覆いつくされている。

これほどの平原を見たのは戦争後の仕事でアメリカに行った時ぐらいだ。

とはいえ空の高さや地平線が見えるとなると初体験。

…地平線の湾曲具合から考えると地球より4回りぐらい大きい惑星だろう。

どうして重力で潰れていないのか不思議だけど考えても無駄だろう。

 

「では勇者様、このあたりに生息する弱い魔物を相手にウォーミングアップを測りましょうか」

「そうだね。俺も戦闘は初体験なんだ。どれくらい戦えるか頑張ってみるよ」

「頑張ってくださいね」

「先に俺が戦うのか?」

「私が戦う前に勇者様の実力を測りませんと」

「それもそうか」

 

考えてみればこっちの魔物討伐経験はマインの方が上だろうし、俺も自分がどれだけできるのかわからない。

マインが安全だと思う魔物を相手に戦ってみよう。

しばらく草原をとぼとぼと歩いていると、なにやら目立つオレンジ色の風船みたいな何かが見えてくる。

 

「勇者様、居ました。あそこに居るのはオレンジバルーン……とても弱い魔物ですが好戦的です」

 

 なんか酷い名前だな。オレンジ色の風船だからオレンジバルーンか?

 

「ガア!」

 

凶暴な声と二つの凶悪そうな目つきが敵意を持っているのを感じさせる。

畑にある鳥避けの風船みたいな奴がこちらに気づいて襲い掛かってくる。

 

「頑張ってください勇者様!」

「ああ」

 

小手調べに1発殴っておくか

バシ!

ボヨン!

オレンジバルーンは吹っ飛び近くの木にぶつかり地面に落ちた。

結構吹き飛んだな。小型の魔獣なら狩れる程度の力だったが割れてないな。

近づくと最後の抵抗とばかりに足に噛み付いてきた。

カン!

何か硬い音が聞こえる。

痛く無い。

オレンジバルーンは俺の足に噛み付いているがまったく効果が無いようだ。

ふんわりと盾から淡い防壁が出て守ってくれているような気がする。

とりあえずコイツを割るか

 

「勇者様がんばって!」

 

……実力自体はもうわかったはずなんだけどなぁ?

まぁ、もう少し泳がしておくか。

オレンジバルーンを足から外し踏みつけた。

 

「ふん」

 

パァン!

軽快な音を立てて、オレンジバルーンは弾けた。

 

ピコーンと音がしてEXP1という数字が見える。

経験値が1入ったと言う訳か。

このぐらいの魔物ならまぁ、納得かね。

素手だとこれから処理が面倒になるな。

パチパチパチ。

 

「良く頑張りましたね勇者様」

 

マインが拍手してくれているけど、白々しい。

スタスタスタ!

なにやら足音が聞こえてくる。

振り返ると錬とその仲間が小走りで走っていくのが見える。

話しかけようかと思ったけど、真面目な表情で走る連中に声を掛ける余裕が無い。

あ、 錬の前にオレンジバルーンが三匹現れた。

 

 ズバァ!

 

錬が剣で一閃するとオレンジバルーンはパァンと音を立てて割れる。

 

一撃!? おいおい刃物で一撃とはいえ……どんだけ攻撃力に差があるんだよ。

 

「……」

 

あの攻撃力、確かに優遇されているな。彼等がこの世界をゲームと認識するのも納得できるな。

 

「大丈夫ですよ。勇者様には勇者様の戦い方があるのですから」

 

放心していると勘違いしたマインが心配した風を装い声をかけてきた。

ここで不信感を与えるのは不味いか

 

「……ありがとう」

 

ここでの戦闘をした限りだとある程度は素手でも戦えるかもしれないが、武器が欲しい。正直、バランスが良くない。

戦利品のオレンジバルーンの残骸を拾う。ピコーンと盾から音が聞こえる。

徐に盾に近づけると淡い光となって吸い込まれた。

GET、オレンジバルーン風船

そんな文字が浮かび上がり、ウェポンブックが点灯する。

中を確認するとオレンジスモールシールドというアイコンが出ていた。

まだ変化させるには足りないが、必要材料であるらしい。

 

「これが伝説武器の力ですか」

「そうだ。変化させるには一定の物を吸い込ませると良いみたいだ。」

「なるほど」

「ちなみにさっきの戦利品ってどれくらいの値段で取引されているの?」

「銅貨1枚行ったら良いくらいですね」

「……何枚集まれば銀貨1枚?」

「銅貨の場合は100枚です」

 

 まあ、錬の様子を見ると相当弱い魔物みたいだし、しょうがないか。

 

「じゃあ次はマインだね」

「まあ、そうなりますね」

 

と言いつつ、オレンジバルーンが二匹俺達の方へ近づいてきていた。

マインは腰から抜いた剣を構えて二振り。

パァンという音と共にオレンジバルーンは弾けた。

 

やっぱりバルーンの名の通り斬撃・刺突系の攻撃には弱いらしい。

ちょうどよく寄ってきたオレンジバルーンに盾の縁を滑らせ切れるように殴ったが割れず元気に噛みついてきた。

????????

盾よっわ!

盾なのに縁が使えないとかどうなってるんだ?

…盾が弱いのは存分に分かった。

こうなったらマインに戦ってもらった方が効率が良いだろう。

EXP1

 

「じゃあ、このまま行ける所まで行こうか」

「はい」

 

マインは二つ返事で答えてくれた。

その後、日が傾く少し前まで草原を歩き、遭遇するオレンジバルーンとその色違いイエローバルーンを割る作業を続けるのだった。

 

「もう少し進むと少し強力な魔物が出てくるのですが、そろそろ王都に戻らないと日が暮れますね」

「うーん。もう少し戦っておきたかったんだけどなぁ……」

 

ダメージ受けないし、バルーンの攻撃を守るのは簡単だから大丈夫かと思うんだけど。

 

「今日は早めに帰って、もう一度武器屋を覘きましょうよ。私の装備品を買ったほうが明日には今日行くより先にいけますよ」

「そうだな。」

 

Lvアップもしたし、今日はコレくらいにしておいた方が良いか。

ちなみに盾に吸わせる分は満たしたようで、風船は手元に残っている。

後は……レベルアップすると変化出来るみたいだな。

とにかく、色々とお預けの一日目の冒険を切り上げ、俺達は城下町の方へ戻るのだった。

夕方、城下町に戻った俺達は武器屋にまた顔を出した。

 

「お、盾のあんちゃんじゃないか。他の勇者たちも顔を出してたぜ」

 

みんなこの店で買ったのか。

ホクホク顔の親父が俺達を出迎える。

 

「これって何処で買い取ってくれる?」

 

オレンジバルーン風船を親父に見せると親父は店の外の方を指差した。

 

「魔物の素材買取の店がある。そこへ持ち込めば大抵の物は買い取ってくれるぜ」

「ありがとう」

「で、次は何の用で来たんだ?」

「ああ、スフィア嬢。仲間の装備を買おうと決めてさ。あと、」

 

俺がマインに視線を向けるとマインは店内の装備をジッと凝視していた。こちらの話を聞いているように感じない。

前から思っていたがマインは勇者全員をどこか見下しているように感じる。

 

「あと、武器の製作の依頼をしに来た」

 

マインの方に視線を向けながら小声で言う

 

「ほお?で、」

 

親父は意図を察して同じく小声で問いかけてきた。

この親父さんは本当にできるな

 

「裏に行こう」

「スフィア嬢!少し革鎧の調整して貰うから選んで置いてくれ」

「分かりました!」

 

「これで盾を鍛えてほしい」

 

そう言って服の下から森鉱石のインゴットを取り出した。

 

「⁉︎あんちゃん!これを何処で手に入れた!」

「異世界の金属だ。名前は森鉱石、エルフの森の地下で採れる鉱石で鋼より硬く鋼の半分以下の重量の防具に最も適している金属。俺が知っている金属だと5番目に硬い金属だ。」

「……」

 

親父さんは呆然としているが続けよう

 

「これで造ると翠の光を薄く放つからそれを抑えるためにメッキ加工をしてほしい。メッキの上に何かしらのペイントをして欲しい。形や要望はこの紙に書いておいた」

「あっああ分かった。5日ぐらいを想定しておいてくれ」

「これも買い取っておいてくれ」

 

そう言って5個の森鉱石のインゴットを机に置く

親父さんは呆れているように見える

 

「あんちゃん、この森鉱石って言ったっけこれ一度見たから分かるんだがこの世界だとエルフ石って言ってとんでもなく貴重な鉱石なんだよ。そのせいで王族の王冠ぐらいにしか使われてないんだわ」

「親父、少し近い」

「悪かった。金額だが、俺にはつけられねぇ。加工さえできるかわかんねぇんだ」

「マジ?」

「それだけ貴重な鉱石ってことを理解しろ!…打ちたいが打てるか分からねぇ。」

 

 

加工できるなら加工してもらう事になり7個インゴットを置いて出てきた。

マインはまだ選んでいた。

 

「そういや予算額は?」

 

手元に残っているのは銀貨800枚。そこからどれだけの装備品を買うと良いか。

 

「マイン、どれくらいにしておいた方が良い?」

「……」

 

マインはとても真面目な表情で装備品を見比べている。

とてもじゃないが俺の言葉など耳に入っていない。

宿代がどれくらいか分からないけど、一ヶ月の生活費は残しておかなきゃいけないだろうしなぁ。

 

「お連れさんの装備ねぇ……確かに良いものを着させた方が強くなれるだろうさ。お前さん達の間にどんなことがあってもだな。」

「ああ、」

 

マインをまだ追っていると上等な剣の並んだ場所に向かっていた。

 

「割と値が張りそうだから雑談しながら今のうちに値引きしてやる」

「お、面白いことを抜かす勇者様だ」

「8割引!」

「幾らなんでも酷すぎる! 2割増」

「増えてるじゃねえか! 7割9分」

「商品を見せてねぇで値切る野郎には倍額でも惜しいぜ!」

「ふ、抜かせ! 9割引!」

「チッ! 2割1分増!」

「だから増やすな! 10割引」

「それはタダってんだ勇者様! しょうがねえ5分引き」

「少ない! 9割2分――」

 

それからしばらくして、

マインはデザインが可愛らしい鎧と妙に高そうな金属が使われている剣を持ってきた。

 

「勇者様、私はこのあたりが良いです」

「親父、合計どれくらいの品? 6割引」

「オマケして銀貨480枚でさぁ、これ以上は負けられねえ5割9分だ」

 

マインが決める前に行っていた値切り交渉が身を結び、値段は下げることが出来た。

 でも、さすがに残金、銀貨320枚は厳しくないか?

 

「マイン……もうちょっと妥協できないか? 俺は宿代とか生活費がどれだけ掛かるか分からないんだ」

「大丈夫ですよ勇者様、私が強くなればそれだけ魔物を倒したときの戦利品でどうにか出来ます」

 

目をキラキラ輝かせ、俺の腕に胸を当ててマインはおねだりをしてくる。

 

「……仕方ないか、」

 

銀貨320枚、考えてみれば錬や元康、樹は最低3人は連れているのだ。活動費は元より装備品にだって金を回させるのがやっとだろう。

ともすれば320枚あれば一月生活するには十分である可能性は高い。

仲間を募集するのはLvアップして稼ぎが軌道に乗ってからでも悪くは無いかも。

 

「よし、親父、頼んだぞ」

「ありがとうございやした。まったく、とんでもねぇ勇者様だ」

「はは、商売は元の世界でもしてたんでな」




司書
魔導国建国から983年に魔導書の集められた館の主人になった魔術師。
永遠に魔術を研究したいと願い書館の書館と同化する魔術陣を作成し実行。
以降、書館は魔導書館と改名され何十回と改修に増築を繰り返して魔導国の王城よりも巨大な建造物になった。
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