次の日の朝
「やあおはよう綾小路さん。今日はいつもより早いなんて珍しいね」
僕と綾小路さんはいつもよりだいぶ早く前に教室に来ていた
「....丹羽が早く来いって今朝電話したから....」
少し眠そうにしながら非難の目を向ける綾小路さん
「君が僕にあんなメール送ったからだよ?お陰で僕もいつもより早く起きる羽目になった」
さて、本当にどうしてくれようか
昨日は現実逃避出来たが....今日はそうはいかない
自分が巻き込まれるかもしれない不確定要素は早急に対処しなければ
「まず綾小路さん。昨日の
「....どうせ分かってるのに?」
何でそんな無駄な事させるの?ときょとんとした顔でこちらを見てくる
「仮に僕が理解していても、だよ。君には一度、君の考えていた事を説明する責任がある。しないなら僕は手を貸さないよ?」
そう言うと渋々ながら昨日のメールの内容について詳しく教えてくれた
まず昨日の茶柱先生が言っていた絶対に全員が赤点を回避出来るという言葉に引っ掛かりを覚えてよく考えたらしい
テストで不正をせずに確実に赤点を回避出来る方法で最も可能性があるのは過去問だとあたりをつけて
更に過去問を持っていてそれを交渉できるのは教師以外では上級生しかいなそうだと考えてppと過去問の交換で交渉すれば赤点組でも余裕を持って回避出来るのでは?と考えたらしい
なるほど、素晴らしい推理力である
ここまでは良かったのだ
そう、ここまでは
だが、この案を堀北に出そうとして自分のやっている事が自分の面倒ごとを増やしてしまう事にに気付いてしまったらしい
そこで気付くなよ
寧ろ気付いても止まらずに出して欲しかった
その後は流石に思い付いた案を言わないのは違うので
僕が思い付いた事にして僕に言って貰おうと思いあのメールを送ったのだという
「成る程ね、...まさか巻き込みどころか身代わりにまでしようと思ってたのか。....君もなかなかに酷いやつだね」
「丹羽、もしかして怒ってる?」
「僕は年下に怒った事がないんだ。身代わりにされかけた所で怒らないよ」
「.....私、同い年だと思うけど」
「ん?ああ、
その瞬間、一瞬だが確かに彼女の警戒心が露わになった
僕が踏み込んだからだ
普通なら気付かない程の微細な変化だが明らかに僕を警戒している
全く、こんな人材が落ちこぼれのDクラスにいるなんてこの学校は本当に退屈しないな
取り敢えず落ち着かせようかな
「別に警戒する程でもないよ?他者との会話って本人が気付かない内に色々と知られてしまうものなんだ」
「....わざと泳がしてた?」
「うーん・・・・どちらかと言うとあまり興味が無いから言わなかった、かな?ただ今回の件は友人としての忠告だよ。平凡な生徒を装うのなら今回の行動は危険だ」
普段から会話をしている僕だから気付いたのだが
万が一勘の鋭い人がいたら違和感に気付かれてしまうだろう
一体どんな教育を受けて育ったんだろうか?
観察眼もそうだが思考力も常人の域を超えている気がする
並外れた鍛錬などで得た物だろうに...経験に性格が見合っていない
「.....丹羽もチグハグ。少しは頭が良いけどいつも頭空っぽで何も考えてないなさそう」
「それ別にチグハグじゃないし。完全に馬鹿にしてるよね?」
「取り敢えず....丹羽が堀北にこの案をだして欲しい」
綾小路さんによって強制的に話を戻された
僕も別に仲違いしたくないのでそのまま乗ってあげる
「はぁ、悪いけど僕は馬鹿じゃないんだよ?君とは仲良くしたいがこればかりはイエスと答えられそうにない」
「....分かった。妥協して二人で考えた事にして良い。ついでに私も手伝う」
「君が妥協する側なんだ....一応頼んでる側だよね?あとしれっと僕を主体にして自分は手伝いだけするって聞こえたんだけど...」
「....私が年下なら丹羽は助けるべき」
それ君が踏み込まれたくなくて変えた話題だろ
自分からまた持って来るんじゃない!
何が何でもやりたくないようじゃないか
「分かった。そこまで言うなら仕方ないね....人生の先輩として僕が堀北さんに伝えてあげるよ」
「ん、丹羽先輩。お願いします」
プライドはないのかよ君、末恐ろしいな
早めに来過ぎたのでそのあとは適当に二人で話していると少しして堀北さんが来た
「おはよう堀北さん奇遇だね」
「基本的に毎日登校して会う筈なのに何が奇遇なのかしら。会話の広げ方が下手なのなら無理しない方が良いと思うわ」
「相変わらずキレがあるね。お陰で眠かった目が覚めたよ」
適当な事を喋っていると綾小路さんが目で早く伝えろと訴えてくる
しょうがないな...そろそろ言うか
「ああ、そうだ堀北さん。テスト対策の案についてだけど。もしかしたら上級生が過去問を持ってるかもしれないんだ。ppで交渉すれば今回のテストの過去問が手に入るかも」
「急に何を言い出すのかと思ったら...なるほど過去問ね。どうしてそう思ったのか詳しく聞かせてくれる?」
「昨日の茶柱先生の言葉がちょっとね。必ずクラスの全員が赤点回避出来るって言ってたから何か方法があるんじゃないかなぁと。赤点組も必ず回避出来る方法なら過去問が一番確実な方法だと思ったんだ」
「それは...盲点だったわ。確かに先生のあの言い方も妙だったし...昼休み中に上級生に交渉を持ち掛けてみましょう。....にしても驚いたわ。貴方の事、少しは見直したかも」
「僕も出来過ぎだと思うよ。・・・・まぁ、これ考えたの僕じゃなくて綾小路さんだからだろうけど」
「え?」
それは堀北さんの驚いた声か...それとも僕に裏切られた綾小路さんの声か
僕はこの後無言で綾小路さんにドスドスと体を殴られる羽目になった
暴力系茶髪無表情女子とは恐るべし
的確に痛覚だけにダメージを与えられた
堀北さんが止めて詳しい話を聞いてくれなければ保健室送りだったかもしれない
昼休み
僕は一人で山菜定食を食べていた
普段なら独りぼっちの二人を誘って雑談したりするのだが、今二人は食堂で上級生である先輩に交渉しに行ってる
僕はそれを離れた所で見守っている
交渉相手は男に指定していたので僕は邪魔になってしまうかもしれないと堀北さんに進言して外して貰ったのだ
綾小路さんが何か言っていたがこれは役割分担なので我慢してもらった
これで恐らくだが過去問は手に入っただろう
外見だけは綺麗な二人だ
大抵の男子生徒なら断らないし、僕が見た限り女の子慣れしてない大人しめの先輩をわざわざ指名したんだ
流石に堀北さんも先輩に頼む立場なのだから口調は丁寧になる筈だし
もし仮になにかあっても僕の後輩(笑)綾小路さんが何とかしてくれるので特に気にする事もなく食事を終えた
見守ると言ったが正直さぼってもばれないので先に教室に戻っていよう
その後しばらくして教室に戻ってきた堀北さんと綾小路さん
堀北さんの表情が明るいしどうやら交渉は上手く終えられたようだ
「これで今回のテストは赤点回避出来るね。で、過去問どうやって共有するのかな?堀北さん」
「いいえまだ共有はしないわ。今回は過去問があったから赤点が回避出来るけれど、次も過去問があると楽観視しない方が良いわ。予定通り勉強会を開いてテスト直前になったら共有しようと思っているわ」
「丹羽は他人に親切ではあるけどそこに心からの思いやりはないからそこまで考えられてない」
棘のある言い方やめてほしいかな
洞察力高いのもある意味問題だな
「へぇ、確かに僕なんて思い付きもしなかったよ。...所で綾小路さん。一体君はどうして辛辣なのかな?あははは、心当たりが多過ぎて僕分かんないや」
「ん、絶対に許さないから安心して」
「....貴方一体綾小路さんに何をしたの..」
堀北さんからすれば何が何なのか分からないだろう
僕も半分くらい分からないからどうしようもない
「....大丈夫。丹羽が堀北がプライドが高い女は潜在的にMだから自分の女にして遊びたいと私に話してきた事ではないから」
「「は?」」
おいおい誰だよこんな幼なげで可愛い清隆さんにそんな根も葉も身も蓋もない事言いふらしたの
とんでもないことしてくれるじゃないか
この際言っておくが決して僕はそんな事を彼女に言っていない
思う事はないわけではないが、綾小路さんにそんな事言うわけがない
何故わざわざ自分の弱味を握らさなきゃいけないのだ
つまり僕がするべき行動は....堀北さんに弁明する事だ
「丹羽君、何か申し開きはあるかしら?あるのなら今までの付き合いから多少は力を抜いてあげるわ」
そう言ってコチラを侮蔑の眼差しで睨み付ける堀北さん
決めつけるの早過ぎない?
「...堀北さんは僕がそんな事言う人間に見える?あんな嫌われる様な発言するわけないだろう?」
「そう・・・申し訳ないけれど普段の態度から貴方より私は綾小路さんの意見を信じるわ」
普段の態度も別に僕は悪くないはずだろ
「綾小路さん!流石に悪ふざけが過ぎるぞ!・・・・あの、本当にまずいかも知れないから堀北さんを止めてくれない?」
「丹羽なら自力で止められると私は思う」
今朝君に手も足も出なかったのに?
そう思った時には堀北さんの足が肉薄していた
Dクラスの教室に鈍い音と僕の小さなうめき声が僅かに響いた
怪我してないと良いなぁ
主人公の顔はある程度整っています
あと堀北の解像度低いかもですがコンパス刺してたしこれぐらいはすると個人的には思ってます