ようこそ夢見るアイドルがいる実力主義の教室へ!! 作:ブラックマッハ
⭐️一之瀬サイド⭐️
妹の大好きな芸人さんがつけていたヘアクリップを妹は、欲しがっていた。そのヘアクリップを買うためにお母さんが無理して働いて倒れた。
普段はあれが欲しい、これが欲しいなんてことは一切わがまま言わない妹だった。いつも笑顔でお母さんに迷惑をかけない、本当に自慢の妹だった。
所が今回は全く別だった。
お母さんは何度も謝り妹は罵声をあげ続けた。
今度は私の番だと思いデパートに行った。お金を持っていないのにヘアクリップのある場所に行った。
時々私はお金を持って来ないで下見をしに行くこともある。
だけど今回もそれは違った。一万円以上するヘアクリップを盗んだ。その時に罪悪感は無かった。必死に隠していただけだったかもしれない。
でも私は妹の笑顔が戻るなら大丈夫だと思った。妹のためだから誰にだって許されるそう思ってしまった。そんなハリボテな理屈で押し通した。
そしてカバンの中にヘアクリップを入れた。そんな時、ツンツン頭に見つかった。彼は
「ふぅ」
と呼吸を整えた。私はこの「ふぅ」と音声を聞いて怖くなった。その瞬間私は、万引きをしたのだと気がついた。
そして体中が震えた。
「ささっとよこせ。その鞄に入れたのをオラ」
言葉は険しかったが優しい声で喋って怖くなった。音声は優しくても性格が怖い場合もあるんだなと知った。
私はなんとしても渡したくなかった。でもこれ以上犯罪の領域に踏み込みたくない必死の思いで彼に渡した。
「少し待っていやがれ。さぁ行こうか」
彼はそう言って何処かに消えた。
しばらくするとレジ袋を持って何かを買って、ツンツン頭が帰ってきた。
「ほらよ、欲しがっていたヘアクリップだ。たまたま、福引券を使って当ててきたんだ。タダだったから気にするな。レシートとカルピスを渡しておくぞ」
彼が言った言葉は嘘だった。レシートを見ればしっかりお金を払ってくれたことが分かった。
「何か私に出来る事はありませんか?」
私は何かお礼をしたかった。
「ならさ、高度育成学校に来てくれないか?アイドル部のメンバーとして。俺の名は海堂仙道だ。さぁ本屋に行こうか!!」
そう言うと海堂君は何も言わず、静かに本屋の方に目掛けて歩いて行った。
私はぼっと彼の後ろ姿を3秒間見つめて
「ありがとうございます」
と感謝の気持ちを何度も伝えた。彼は右手の指を2本あげてピースの形で手を振りながら本屋の中に入って行った。
しっかり顔は見えていなかったけど、カッコよかったなと思う顔だった。
私は急いで病院に戻って妹にヘアクリップを渡した。妹は喜んでくれた。笑顔が戻って嬉しかった。
「ありがとう」
そう妹が言ってくれたが苦しかった。私が買ったわけじゃないから。
「これは、海堂君て優しい人が買ってくれたんだよ」
と教えると、「海堂」と妹は何度も声に出して彼の名前を言った。
声に出して読みたい人物になり私の家は何度も彼の名前を言った。
その時から私の口癖に「さぁ行こうか」が追加されたのだった。