「聖抜の儀、か…。」
情報収集も一通り終わり、どうやら聖都で行われる聖抜の儀とやらに参加すればエルサレムに入ることが出来るらしい。
「マスター、私たちも行くべきではないでしょうか?」
『うんうん、ボクもそう思うよ。』
そう言うのはカルデアの医療スタッフであるロマニ・アーキマン。なんだか嫌な空気の漂う人物である。よく分からないが、コイツには秘密があるような、そんな気がする。
「そう、だね。…そうしよう。」
微妙に歯切れを悪くしてそう言う立香ちゃん。恐らくであるが──
「不安か、立香。」
「エクシア──ううん、全然大丈夫だよ!私にはマシュもダヴィンチちゃんもいるし、何よりあなたが守ってくれるんでしょう?」
ああ、コイツは不味い。間違いなく無理をしている。それも、破滅に向かって。このままでは、すぐ死ぬな──それは困る。俺のサンプルになってもらいたいまである貴重な検体なのだから、人類的にも魔術師的にも生き残ってていただきたい──と言うのが魔術師の俺の言い分。
一般人の俺としては、彼女の心が折れるのが先か、死ぬのが先かと言った懸念が少し。
彼女はもともと俺みたいに魔術師の生まれって訳でもなく、巻き込まれただけの、たった一人の少女で。こんな生きるか死ぬかの戦いなんて縁もゆかりもない人生を送っていた筈なのに──ああ、クソ。腹が立ってきた。
「…立香、マシュ、ダヴィンチ。少し離れる。」
「…?まあ、構わないよ。」
「分かりました。少し休んできてください。」
「ゆっくりしてきてねー!」
そう言われて少し離れた、何個も出来たクレーターの1つの傍らに座り込む。
終わらせてやりたい。こんな戦いから解放してやりたい。今の俺には、コレを願うことしか出来ない。──いや、手段としてはあれがあったか。何時でも実行可能な域には準備しておいて、彼女がもし、終わりを願うなら、俺は──
◆◆◆◆
「…ダヴィンチ。これは、エルサレムではない…そうだな?」
「…ああ、流石に想定外だ。我々の予想では十字軍と戦うと思っていたんだが。これは、まるで──」
目の前にあるのは白亜の城壁。俺の聞いていたエルサレムには到底見えない。その城門の前には大勢の難民が居る
「皆様、ようこそいらっしゃいました。私の名はガウェイン。これより
『ガウェイン!?ガウェインだって…。円卓の騎士の一人、エクスカリバーの姉妹剣であるガラティーンの使い手。日中三倍の逸話を持つ、伝説の騎士だ!?なんで、エルサレムに…』
「ロマニ・アーキマン。その話は後だ。なんだか、嫌な予感がする──。」
突如、光が放たれる。そしてそれに共鳴するかのように光を放つ者が現れた。
「なんてこった。これは聖抜の儀なんかじゃない。字が違うじゃないか。」
ダウィンチがそう呟く。ヤバい。俺の本能と言うよりももっと奥深いところで警告が鳴り響いている。コイツは──
「ふむ、今回は三人でしたか。では、すぐに護送しなさい。これより私は──聖罰の儀を執り行います。」
そう言い、剣を抜くガウェイン。さらに同時に周囲に展開する騎士達。直後、夕暮れ時であった空の色が雲一つない昼の空へと変貌する。これは──
「──やりなさい。」
抜刀し、光を放たなかった難民達に斬りかかり始める騎士達。
「エクシア!」
立香ちゃんにそう呼ばれる。ああ、任せておけ!
「俺が、ガンダムだ──
起動する術式。基礎フレームを纏い、外装を重ね、この世で最も美しい機体を俺は纏う。
「I have control。ガンダムエクシア、世界の歪みを断ち切るっ!」
突貫、GN粒子を周囲に撒き散らしながら、城門の前に立つガウェインに切りかかる。
流石に防がれるが、特別製のGNソードは折れることはない。防がれるのを確認した上で、空いている左手でGNショートブレイドを握りしめ、胴体へ向けて一閃。
それガウェインは、GNソードを弾き、その返しでショートブレイドと鍔迫り合いすることで防ぐ。しかし、GNソードへの警戒が一瞬薄れたその隙にGNソードを格納状態に移行させ、左手に向けてビームを浴びせる。
「っ!」
「お前は、ガンダムではないっ!」
怯んだ隙に右足で蹴りを放つ。ショートブレイドを格納し、GNダガーを投擲。それと同時にGNソードを正面に構え、突進する──が、
「強い──ですがっ、この身は太陽の写し身──あらゆる不浄を清める焔の陽炎──
「宝具かっ!」
宝具で俺もダガーも焼き払われる。咄嗟にGNシールドを構え、後ろに下がったとは言え、少なくないダメージを負ってしまった。GNドライブが無事である以上戦闘継続自体は可能であるだろうが、恐らく俺のエクシアは他の英霊のように回復が容易ではない。きちんと整備をして、投影を行って部分部分を修繕する必要がある筈だ。
ここで損害を被りすぎれば今後の戦いに支障が出る。さて、どうしたものか──そんな一瞬の思考の隙に、一気に距離を詰めてくるガウェイン。
「遅いっ!」
咄嗟にGNビームサーベルを交差させ、受け止める。しかし、力の差とでも言うべきなのだろうか、次第に押し込まれていく。しかし、奴はガンダムではない。ならば、勝ち目は、ある──!GNビームサーベルを停止させ、あえてボディで攻撃を受ける。左肩あたりを切り裂かれるが、深く傷跡が残る程度で、切断はされていない。ならば、ここから──
「だがっ!お前は、ガンダムにはなれないっ!俺が!ガンダムだっ!」
停止させていたビームサーベルを再起動。左肩にどんどん刃が深く刺さっていくが、それを無視して投擲。GNソードを奴の腹へと突き立てる──ものの、腹を蹴られ距離をとると同時にガラティーンを左肩から抜き、回収する。
それを見て俺は突貫。少し宙に浮いている今であれば──
「甘いっ!」
GNソードを踏み台にし、跳躍するガウェイン。これが、日中三倍の騎士。
「
着地すると同時に宝具を発動するガウェイン。それを見た俺は、
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
跳躍。奴の頭上へと移動する。足へのダメージが多少はあるが、この際それに構っていられない。GNソードを展開し、上空から降下。奴が剣を持つ右手を斬り抜けて、背後に回り、使用していないGNロングブレイドで背中を斬りつける。
「舐めるな!」
しかし、奴はそのダメージがまるでなかったかのようにガラティーンを振り抜き、俺を30mあまり吹き飛ばす。
「はぁ、はぁ…。やるな、名も知らぬ騎士よ。」
「お前は、ガンダムではない…っ!」
膠着状態。お互いに浅くはない傷を負っている。俺は最悪立香ちゃんさえ逃がせれば良いのだが、相手は全力で俺を仕留めに来るだろう。ロングブレイドも先程の斬りの防御で弾かれたため、残ったのはGNソードのみ。牽制のビームライフルも恐らく無意味。エクシアリペアにはなれるため勝つことは出来るだろうが──
「ここで、仕留める──っ!」
突貫するガウェイン。一か八か、カウンターで腹にGNソードを叩き込む用意をする──そこに割って入る一人の影。
「やめなさい、ガウェイン卿。我々の慕った王は、その様な事を許すお方ではありません…!」
「なっ──」
そこに居たのは直剣を構えた騎士。その騎士は手始めと言わんばかりに突きを二撃。左目と腹へ高速で叩き込もうとするも、ガラティーンに弾かれ、その隙にガウェインがタックルを仕掛ける。少し宙に浮いたものの、即座にバック転。ガウェイン卿と数発打ち合い、退ける。
「なぜ、あなたがここに──」
「エクシアくん!撤退だ!マシュも下がって!立香ちゃん。こっちに!」
ダウィンチからの号令が届く。GNドライブを際大出力で散布すると同時に、カモフラージュ機能を起動する。これで探知は効かない。
「すまない、連れていくぞ。」
「はい、お願いします。」
騎士を抱え込み、大空を飛ぶ。GNソード以外の武装がGN粒子に還り軽量化した今なら一人を抱えて帰るくらいは出来る。
あとは、申し訳ないが、探知魔術を掛けさせて頂くとしよう。
「──。」
その結果に思わず絶句する。が、彼が俺が探知魔術を掛けたことに気がついてはいないようだ。コレを話すのは──まあ、後でも構わないか。
◆◆◆◆
「エクシア!」
そう言って駆け寄ってくる立香ちゃん。どうしたそんなに心配して──と、思ったが、よくよく考えれば上位英霊と単独で打ち合っていたのだから、損耗度合いを確認しておきたかったのだろう。
「もう、無理しないでよね。あなたも大切な私のサーヴァントなんだから!」
「──?」
何を言っているのだろうか。英霊は基本消耗品である。まさか、立香ちゃん。君は──英霊に感情移入をしている、のか?それはいけない。仮にこの後。多数のサーヴァントを失うような決戦が起きれば、君はその時、心が折れてしまう。かつての僕がそうであったように──