「まず始めに、同胞の詫びを。この度は誠に申し訳ありません。」
そう言い、胸に手を当て跪く騎士。良く見れば、彼の右腕は義手であった。義手──即ちそれ、俺の第五形態ってことでOKか?と言うことはお前もガンダムなのか、なるほど。
「そんな!顔をあげてくださいルキウスさん。助けていただいたのは我々です!先輩や、エクシアさんも助かったのは──」
ルキウス…うん?ルキウス?妙だな、彼の真名は──
「いえ、あの時名乗ったのは偽名でして…。我が真名はベディヴィエール。あなた方はカルデア、で間違いないでしょうか。」
偽名。真名看破を恐れたか、若しくはもっと別の、例えば存在を察知されたくなかったか。あるいはその両方。
『うん、そうさ。我々は人理保証機関カルデア。指揮官代理のロマニ・アーキマンだ。よろしく頼むよ、ベディヴィエール。』
「ロマニ・アーキマン──良かった。いえ、ロマニ・アーキマンが居るカルデアは信用しろ──そう言われてここにやってきたので。」
そう言うベディヴィエール。さて、引っ掛かるところがいくつかあるが──
「ベディヴィエールと言えば、円卓の騎士の一人で王に最後まで付き従い、聖剣を返すという重要な役割を担った騎士。それ以外にも片腕でありながら槍の名手であったとか。どうやら、今のベディヴィエールさんには右腕があるようですが、伝承とは異なっていたのでしょうか?」
「いえ、これは餞別でして。とある魔術師が私を送り出す際にくれた義手です。」
──気付いていない。ならば、今触れるべきではないな。それにしても、義手。だが魔力の流れが不自然だ。俺のサーヴァントでもあれまで捻れてはいなかったと思うのだが。まるで星の内海の魔力に近いようなものを感じるが、流石にたかが義手にそこまでは考えすぎだろうか。いや、探知魔術の結果があれと言うことはやはり彼はもう──
「そして──あなた、先程の騎士…ですか?ガウェイン卿とよくあそこまで打ち合えましたね。」
と、ベディヴィエールに話を振られたところで思考を戻す。シリアス脳からコメディ寄りへと対話方法を切り替える。本来の姿だ。
「ああ、危なかった。ガンダムとは言え、奴の相手は流石に厳しいものがあった。」
「…はい?」
ふむ、困惑しているな。そう!その反応が欲しいの俺は!こんなシリアス一辺倒な歪んだ世界にユーモアを届けに来たのが俺だと思うんだ。多分、世界からのカウンターっていってもネタ枠での採用なんじゃあないかな俺。
まあ、ガンダムってのは、そんな面白いモンでもないし、俺にとっては至極真面目な──これは別に後でいいか。話が一段落したようなので此方からの報告をする事にしよう。
「立香。これを見て欲しい。
「どうしたの、エクシア──って、これ、大丈夫なの!?装備が全部ボロボロに…。」
「ほほう、興味深いね。
傷を負っても修復されない──いや、出来ないのか。その様な機能が付いていないのかい?私が見るにこれは君の戦闘能力の全てであり不十分な霊基を補強するための外装。投影魔術で呼び出しているように見えるがコイツはおそらく
まあ、その話は置いておくとして──なるほど、外部からの補強──というよりは核であるものにリソースを与えた結果かな?霊基そのものを武装とし、強靭にすることによって効率よく魔力を循環させつつ、霊基が別であるが故に戦闘時以外のマスターの負担も少ない。
なるほど、理屈としては成り立っている。霊基を核にすることによるリスクは特殊な戦闘続行スキルで四度まで霊基修復が可能。よって、力のほとんどを外装に回す方が合理的──そうだね、名付けるとしたら
ファッ!?この女ァ、初見でエクシアの正体3割方見破るのかよ。いやー舐めてた、天才舐めてた。あとめっちゃ長文。さてはオタク気質ですね?まあ投影品ではないってとこと、これが本体ってところは見当外れなんだけどね。その辺はあれよ、ケルトのゲッシュみたく、制約が多い方が強くなる、所謂制約と誓約って奴よ。
「エクシアは自然回復はしない。手順を踏んで修理をしなければならない。それ自体は俺一人で可能だ。だが、連戦になり、修理する時間もないような場合では、大破する可能性が高い。それだけは伝えておく。」
投影するだけなんだが、手元が狂えばGNドライブごと吹き飛んでおしまいだ。焦ってそんなへまをするくらいなら落ち着いてやった方がいい。
「ああ、それと──」
「どうしたのでしょうか?」
ベディヴィエールに視線を一瞬送り、再び立香ちゃんへと視線を戻す。
「ベディヴィエールを少し借りていく。」
「え、はい?」
ベディヴィエールの声が聞こえたが、気にせず少し離れた岩裏へと彼を拉致する。念のためGNフィールドを展開し、通信をカットしておくてしよう。
「どうしましたか?…もしや、円卓の騎士である私を疑って──」
「違う。」
そう遮る。俺が問い詰めたいのはそんな事ではない。俺が確かめたいのは探知魔術の結果。彼の真実。
「ベディヴィエール、お前はサーヴァントではない。」
「…何を、言っているんですか?」
「探知魔術を掛けさせて貰った。お前の塩基配列はヒトだ。変質こそしているがサーヴァントと違い観測することが出来た。巧妙に偽装されはしていたが。──ならば、お前は何だ。どのようにしてあの時代から今までヒトのままで生き続けている。」
少し黙り込むベディヴィエール。少し躊躇った後に口を開く。
「この事は、カルデアの皆さんには言わないでください。」
「ああ、約束しよう。」
「…ありがとうございます。」
そう言い、静かに語りだした。
「私は、皆さんの知るアーサー王の最期を看取ったベディヴィエールではない。
皆さんの知る私は騎士王の死に際し、二度に亘って聖剣を還すことを躊躇い、三度目にして湖に聖剣を還した、とマーリン──私を送り出した魔術師から聞いています。
しかし、今ここに居る私は三度目すら躊躇ってしまったのです。私が三度目に帰還した時には騎士王の遺体は既に消え失せ、私の手には湖に還すべきであった聖剣だけが残されていました。
私は私の行動の結果を知ってしまいました。ですから私は、その償いのため、そして我が王のために世界の何処かに居るであろう彼を探し続けました。
返し損ねた聖剣によって不老の加護は得ていましたので、私はどれだけでも彼を探すことができた。今の時代から推測するに、恐らくは1500年ほどでしょう。
そして、この特異点の発生と同時に私はアヴァロンへと辿り着きました。そして、魔術師マーリンの助言を聞き、ここに送り出された──そして、今に至ります。」
当たっていた、か。聖剣の返還に失敗したifの世界線の人間。剪定されるであろう世界の住人が、彼とこの特異点のアーサー王である、と言うことか。
そして、もう一つの疑問にも合点が言った。
「ならば、その右腕はやはり──聖剣エクスカリバー。」
「──まさか、見抜かれるとは思っていませんでした。ええ、これは右腕へと偽装された還せなかった聖剣。私の罪。これを使えば魂まで焼けると言われましたが──まあ、些細なことです。」
想像を絶するものだった。自らの行いが始まりとは言え、そこまで行き着くことがなぜ出来る?俺には、いや、俺たちの時代を生きた人間にはそんな事は出来なかった。出来る人間は一人として居なかった。
「苦しくは、ないのか。」
「それが、我が王のためならば。」
「俺にはその苦しみを和らげる手段もある。いくらでも魔力を供給することが出来る。」
「…いいえ、不要です。これは私の背負うべき痛みですから。」
ああ、なんと眩しいのだろう。気高く、それでいて等身大で生きている。
だから俺からは最大の賛辞を送らせてもらおう。
「本当にすまないことをした。お前は、確かにガンダムだ。」
「…ありがとう、ございます?」