敵幹部でも主人公見たらテンションあがる…あれ?(冷や汗)   作:苦い経験100%

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「「(精神的な)死が二人を別つまで」」

 

 

「なんだよ、夜はそんな優しくなかったくせに」

 

 そう言われた時、ぶっ倒れそうになった。

 いやもう本当に謝意の念が絶えないというか、それに加えてテロ活動やってるのが申し訳ないというか、顔を合わせられないというか。

 血を吐くんじゃないかって思った。

 …それと、少しの安堵を。割とアレな冗談とはいえ、そう言えるのならまだいい。泣かれたりでもしたら本当に自分の四肢を切り飛ばす覚悟だった。

 だから、問題なのは次だ。

 

「言ってよ、ブラス」

 

 ちょっと、いやかなり揺らいだ。後ろめたさもそうだけど、優しい声で、頼れと背中を押されたみたいで、自分の状況を全部吐いてしまいそうになった。

 具体的に何を、と言われていないのに。

 でも、口は割れない。彼女の苦労もそうだけど、暴露したらガバどころじゃなくなる…いやぶっちゃけ「もう気にしても意味ないのでは?」と思ってるけども。

 主にテメェのせいだぞハルニレこの野郎(盛大な責任転嫁)…いや分かってるよ、ガバ生まれガバ育ちってくらいやらかしてる俺のせいだって。

 

 …とにかく返答の代わりに、フードを脱ぐ。もう意味がない。一番隠したい人にはバレたのだ。

 途端に、嬉しそうに微笑まれた。

 …いや待てこれ本当に嬉しそうか? 実は「テメェ今からぶん殴るからな?」の意味合いもない?

 

「なんでこんなことしてるの?」

「あんまり答えたくない」

へぇ、人のことあんな抱き方してそんなこと言うんだ

ぐぼぉはっ!?

 

 言葉で殴られた。膝から崩れ落ちたし吐血した。

 おい正気か、正気なのかあんた。普通そんな責め方しますかね!? 俺がいうのもアレだけど恥じらいってもんを───なぁんで言い出した奴が顔赤くしてんだぁ!!

 

「ぁ…やばい…むり…ッ」

「ぃ言ってから羞恥を感じないでくれますかねぇ!? どんな自爆攻撃だお互いに大ダメージだよふざけんな!!」

「う、うるさいなぁ!! 大体キミが抱え込んでばっかで自分のことを黙ってるから…!」

 

 そこまで言って、アマネは目を見開く。

 何かに気付いたかのようなそれは、すぐに「なるほど」といった感じの仕草になる。

 そして彼女は脱力したように笑い、だけど顔を真っ赤にして「あーあ」と大きな声で言って、肩を大きく落とす。

 

 次に、自分の両耳に手を当てて目を閉じる。お気に入りの音楽を聞いてるような仕草なのに、どうしてか眉間には皺が寄る。嫌な音でも聞いてるかのような顔。

 少しのそれを終えれば、彼女は納得したと言わんばかりに、力を抜いた笑みを浮かべてこう言った。

 

「そっか。ボクは、キミに自分のことをもっと話して欲しいんだ。嬉しいことも、悲しいことも」

「心が死にそうなことなら現在進行形だぜ?」

「そういうことじゃなくてさぁ! いや間違ってはないんだろうけど…!」

 

 ……俺は彼女に何かを望む資格がない。いやというかこれ以上望んだら駄目だと思う、立板に水が流れるように立板にクズが流れるが如しだ。何言ってんだ俺?

 ともかくだ。とっくに、やらかしの境界線を飛び越えている。これでもう頼ったら蛆虫というか、烏滸がましさの化身というか。

 

 向こうからしたら巻き込まれる理由も分からないだろうし。解決のために割ける余裕もないだろう。

 それは酒を飲み交わしたあの夜で、十分なほど知ったし、聞くことができたから。

 だから、口を閉じたままでいt

 

「…キミから聞こえてくる音がね、今でも壊れそうな音なんだ。ボクはそれが嫌だって思ってるし、どうしてそんな音を鳴らしてるのか知りたい」

「───は?」

 

 ちょっと待ってくれよ。

 本当にちょっと待ってくれよ!?

 

 いや駄目だろう!?俺が「それ」の初は駄目だろう!?思いっきりやらかしてる男だぞ!? というか〝心の音〟を聞くのは、もっと先の未来(シーン)の筈だし、最初の相手は親密度が高い仲間のは…ず…。

 あっ駄目だ現状だと殆どの仲間がまだパワハラ先輩ズだわ、やっぱハルニレのせいにして良いかなぁ!?

 

「突発性難聴じゃないか?」

「もっと知りたいんだ、キミのことを」

「知っても面白くないと思うけど」

 

 ……響き渡る凱歌(ウィス・カントゥス)もそうだけど、進化者の持つ能力は稀に「副次的な力」を持つものがある。今の彼女が人の心を音として捉えるような感じで。尤も「副次的」とされているのは、あくまで便宜上だ。

 これにはもっと重要な意味がある。

 

 だけど今それを考えるのは後だ。

 始まりからとんでもない事態に発展しちまった。あーもう滅茶苦茶だよ、どうにもなんねぇよ、やらかしまくりだよぉ!? しかもちょっと嬉しく思ってる自分が蛆虫すぎる!

 

「それでもだよ、あの日のことは…うん、本当に言い訳できない間違いをしたけど。

 でもさ、本当に辛かった時に優しくされて、ボクは本当に嬉しかったし、助けられたから」

「それが打算込みでも?」

「打算だけじゃないんでしょ?」

 

 とん、とアマネが自分の喉を指で叩く。彼女が職務を果たす時が来る。でもきっとそれは、話してもらいたいって以外の動機が無い。止まって欲しいってこと以外の理由が無い。

 俺を止めるために、彼女はその喉を開くだろう。

 …分かってはいたけど、こうなったか。悲惨さも真面目さもかけらもない衝突に、自分のやらかしを深く痛感して、胃薬を盗みたくなった。

 

 俺は握る大鎌に力を込める。

 そして一つ、無茶な命令を下す。

 

今だけは何も殺すな! 青褪めた大鎌(ペイル・ファルクス)!」

ボクの声を届かせろ! 響き渡る凱歌(ウィス・カントゥス)!!

 

 片や殺す鎌に殺すなと命じて。

 片や歌を以て遍く作用を起こす力に、声だけをと願う。

 半ば祈りにも似た力の励起。

 もし能力に人格があれば怒られそうな命令。

 

 緑青の光の波と、青褪めた大鎌がぶつかる。

 …ん? ぶつかる? おい待っなんだこれ鎌の形が今ブレ───あっちょっ待っ結構強いですね!? いやおかしいだろ何処に強化されるようなイベントあったよ!? やば、思いっきり油断して───

 

 

 

   ◆

 

 

 

「いよっし!芸術的データ盗み! 良い仕事を───ってどぅああああ!? なんだオマエ、オレ様の作業が終わってなかったらどうするつもりだったんだおい!?」

「終わってるなら問題ないでしょうが阿呆セカンド」

「ぶっ殺すぞファースト馬鹿!!」

 

 大鎌を片手にゴロゴロと転がるブラス、彼の吹っ飛ばされた先はデータベースであり、ちょうどキュリア・リズットが作業を終えていた。

 集中力を大いに割くようなブラスの登場の仕方にキュリアは文句を呈したが、本人は全く堪えていない。

 

 彼は手に持つ大鎌を見直し、そして構え直す。

 そして重々しくため息を吐いて、背中を見せたままキュリアに対してこう言った。

 

「まぁまぁな手練れがきました…トガノウさんの通信妨害もタイムリミットが近いです、いの一番に撤退してください。時間を稼ぎます」

「…オマエが? オレ様の?」

 

 キュリアとブラスの仲は、良くはない。

 前者は子どもの拉致にも何も言わず、それどころか良しとし、後ろ暗いことをさせることに躊躇いもなければ、推奨する者だ。

 後者はその全てを唾棄し、子どもを庇護する。

 そもそもとして、キュリアはブラスの存在が疎ましく思っていたし、ブラスもそれは承知していた。

 だというのに、どうしてそんな事をするのか。キュリアが口を開くより早く、ブラスは答える。

 

「……今回の奇襲の失敗には、俺にも責任の一端がありますからね、その罪滅ぼしってことで」

「一端じゃねぇよ端から端まで全部だよ」

「うっせぇな、さっさと行けやカス外道」

「後ろから撃ってやろうかオマエ」

 

 クソみたいな会話だった。

 まぁブラスも本音をぶっちゃけると「邪魔だからどっか行けや+子どもにしようとしたこと忘れてねーからな」なんていうものだが。

 

「…まぁでも分かった。ここだけは素直に頷いてやる。せいぜい時間を稼いでくれよ」

「不本意ですけど頑張りますよっと!」

 

 白衣を纏う男はその場を後にし、黒を基調とした服の男は元いた場所に戻る。

 図らずも、背中を預けるような一枚。

 お互いに「指摘すれば、ノータイムで殴り合う羽目になるだろう」と思い、言葉にすることはなかった。

 

 

 

 青褪めた髪の男は鎌を手に走る。身の丈程の、「殺す力」を持つそれが機能を果たすことを願わないままに。

 それを迎え撃つのは、幾多もの光の波。その発生源は、どこか軽やかながらも覚悟のこもった歌声だ。

 

 光の波紋を切る都度、ブラスは苦笑いを浮かべる。

 同時に自己嫌悪に染まった顔も。きっと彼は、光に込められた何かを感じ取っているのだろう。

 

 相対する少女、アマネも気まずそうに、しかし何処か明るい顔で歌う。有り体に言えば「ノっている」彼女は、今はたった一人のために喉を使い倒していた。

 

「大体!責任取るって言うならボクもだし!!というか多分、責任取れるような状態じゃないだろキミ!!周りを頼りなよ!!」

「正論で殴んなよ恥も外聞もなくここで泣き叫んでやろうか、実際何も言い返せないから今すぐ涙が出そう」

「どんな斬新な脅し!?」

 

 二人が置かれた状況は、苦しいものだ。

 だけど今この瞬間だけは、それを忘れたように。

 安らぎを得たように、楽しそうに。

 ありふれた喧嘩のような、軽口の叩き合いのような。

 そんなこの場にはそぐわないひと時。

 

 でも、その終わりはきっと近い。

 

 病院の外ではラメントの群れが撤退を始め、道を阻まれていた対策局員が突入と追跡に分かれて動き出していた。

 院内では何人かのラメントが退却し、対策局員は残党調査や巡回、そして合流を旨に動く。

 ブラスもそれは分かっているのか、焦りを見せて動きが少し雑になっていたし、軽口も減っていく。

 

 光の波紋と刃がぶつかる。

 またしても鎌の姿が一瞬ブレた。光の波紋とぶつかる都度、歪むようにブレていく鎌。

 最初は気にしていた現象にも、今は気を配る余裕がない。彼は鎌を持ち直し、長い柄を棍のように振るう。

 

「…そういうとこだよ!」

「どういうとこだっての!!」

 

 この空間に、悲壮さなんてものはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

『主任、撤退始まりました』

『よし、あたし達の仕事の始まりだ。監視カメラのデータどんどんこっちに回して、目撃情報も集めまくるよ』

『仕事っていうかほぼ私情…地図広げたよー』

『じゃあ言い直そう、私情兼仕事の始まりだ。ん、サンキュー助かるよ、ラインはどんどん引いちゃって』

『お前ほんとそればっかだな』

『おい敬語』

 

 






Tips:ブラスは割とうじうじ引き摺る方

短め番外編

  • 学パロ世界線
  • ひたすらキスだけのブラスとアマネ
  • 彼氏持ち女性陣トーク
  • 野郎どもの猥談
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