敵幹部でも主人公見たらテンションあがる…あれ?(冷や汗) 作:苦い経験100%
感想蘭がちんこまみれな小説はここだけだと思う(爆笑)
でも感想は嬉しいですぜ、ありがとう
「ということで新たに我らが班にやって来たフジワラ・アマネちゃんです、仲良くしてねー。
ちなみにこれに伴って我が班はE2班になるので、給料に危険手当が加算されます」
「待てやコラこの年中頭パーティ上司」
「あれ、レオネって進化者苦手じゃなかったよね?」
人事異動で初めて会った人が、いきなり上司の胸ぐらを掴んでる。そんな光景を前に、フジワラ・アマネは早くも遠くを見る。ここ最近なんか真面目な空気が続かないなぁと、彼女はぼんやりと思った。
オフィスは綺麗なのに中身がびっくり箱だ。
「そのことに関しちゃ異論はないし歓迎会の日取りは後で合わせます。それより、時期はずれのスラム域調査と新人加入を重ねるとかどうなってんだコラ」
「大丈夫大丈夫、クリフ副局長からの許可降りたし」
「最近父様が慌ただしいのあんたのせいかよ!」
「おごごごごご!?あたっ、あたまが!?」
がくがくとクサビの頭を揺らすのは、ぼさっとした金髪で長身の女性。何処か猫っぽい顔立ちをしていて、髪の色も相まってライオンのような印象がある。
ピンクのメッシュが黒髪の上で揺れる。
仮にも上司であるはずなのに、どつき漫才のようなやり取りを見て、アマネはひたすらに困惑していた。
真昼の日差しを取り入れるオフィス。騒がしい局内でも、この場は輪をかけて騒がしいだろう。
でも不思議と嫌な感じはしない。少なくとも、前にいた班の時のようなギスギスした空気がないだけでも、かなり有難いとアマネは肩の力を抜く。
「っと、悪りぃ。レオネ・サンダーズ。副班長。よろしく」
「ユカタン! 苗字は無いよ。よろしく!」
レオネ、そしてユカタン。
今日からの仲間であり同じ班員であり、先輩だ。アマネは頭を下げながら簡単な自己紹介をする。
…舌打ちや沈黙での返答がない。極めて当たり前のことの筈なのに、それがひどく嬉しい。
「人権が…人権がある…!」
「…良かったね、ここに来れて…ホントに」
どう見ても子どもにしか見えず、それでいて女顔のユカタンは同情の目を向ける。
それはレオネとクサビも同じであった。
クサビから、軽い咳払いの音。
班長は班員達からの視線を集めてから、ノートパソコンを取り出しては起動する。
危なっかしいことに、USBメモリを付けっぱなしのそれは、ユカタンに手渡された。
「さて、それじゃあユカタンくん」
「あいさー! 新人ちゃんよこれを見よ! 今回許可をぶん獲れたボクらの血涙と眠気が固まった調査について!」
パソコンのモニタには、蘭善中央の全24区の地図が映し出されている。
その中でも1区と3区に当たる場所には、赤い丸や線がやたらめったらと書き込まれており、なんだかごちゃごちゃとしていた。
これは何なのか、その疑問を口にする前に、ユカタンはカッ開いて濁った目で語り出す。
「退却したテロリストどもの足取りを、監視カメラを見まくったり、聞き込みしてもらったりでめちゃ細かにしました!人間って4日寝なくても平気なんだね!!」
「こんなのが常時じゃないから安心してくれ、時折バカ班長の直感がブン回ってこいつもハイになってこうなる」
「早くもすごい不安しかなくなって来ました」
帰ってやっても良いって毎回言ってるのに、そんなクサビの声に「なんか、皆どこかワーカホリック染みてる…」と内心でアマネは独り言つ。
それでもギスギスした空気よりは万倍マシ。
比喩ではなく本当に呼吸のしやすさを実感しながら、アマネは初めて周りに気を使い過ぎることなくいられることが、とてもありがたいと噛み締めている。
転職が成功した人は、こんな気持ちなんだな。
そう思って涙目になる彼女であったが、クサビが話を続けると同時にモニタの一点を示すのを見て、目元を拭う。
「まぁ見事に散開してて、追いにくいというか何というか…その中でおかしいのはここね」
地図上には赤い丸が二つ。1区に隣接する区の一つである、6区と書かれた地域に付けられたものであった。
それを指差しながら、クサビは語りだす。凛々しい顔立ちが、いつもより尚凛々しく見える。行動はアレな所も多いが、彼女自身、局員としての仕事に全力なのだろう。
「病院とも隔離場とも遠いし、一件だけとはいえ目撃情報が連鎖しないでポッと出て来た。
そんでもって付近にある施設や場所と言ったら───」
パチン、とレオネに向けて指を鳴らす。
その演出いらねえだろ、とぼやくが(なぜか若干のドヤ顔をして)レオネは肩をすくめながら言った。
どうやら班員のノリはいいらしい。
「───第四スラム。かなり昔に開発頓挫した結果、色んな問題やら権利関係やらで解体が出来ずに残って、貧民やらが住み着くことになった場所だ。
此処あんま調査とかされてねぇんだ。特にマフィアとか面倒な連中多かったからな、今はいないらしいが。
……で、此処に拠点があると?」
「それか大事な何かがあるか」
「つかそれ以外にも理由あんだろ、吐けや」
常套句のようにレオネが言う。クサビもこのやり取りを何度も繰り返しているのか、慣れたように返答した。
「
「オイあんま興奮させんな、そういう面白いのめっちゃ好き。徹夜で手伝います我が班長」
「それ明言する必要ありました今!? というかサラッとバレてる!? というか引き抜きって!?」
「レオネ身分差とか禁断の恋みたいなラブコメ好きなんだよ、あとドロッとしてるやつとか」
「ぐはぁっ!?」
サラッと自身の恋愛事情やら色々なことを暴露されただけでも大ダメージ。
加えて「ドロッとした」の所に「もしやボクも」とかけらでも思ってしまったアマネは、血を吐くような音と共に床に臥した。
◆
特異対策局、本局上層部会議室。
「まったく、この時期に調査とは。今はどこもボランティアはやっていないんだぞ? 建前上言っておくが、娘のいる班に甘すぎではないか? 爆発しろ」
「然り然り、建前上言わせてもらうが、少々贔屓がすぎる。そんなに娘が可愛いか人生の墓場に先に入りやがってこの野郎。胃潰瘍独身連盟から脱退しやがってクソが」
「…建前上言いますけれど」
「だあああああ!! 建前上建前上やかましい!! おちょくるにしても居心地悪いやり方はやめろ!! というかほぼ嫉妬だろうが!!」
「いやつい、な」
「すまん」
「ごめんちょ」
「さーせんっしたー」
「反省のはの字もない謝罪だな!?」
クリフ副局長はいじられていた。
◆
エリヤは作中の中盤で本格的に登場したキャラだ。
ユカタンと同じように苗字はない。
彼は決まって「エリヤと呼んでください」と言う。
神父然とした格好の青年であり、どんな時もそのスタイルを崩すことはないが、十字架だけは絶対に付けない。
元々は海外の「エディン」という国の神職。
過去は博愛と平和を好む善人だった。
…人々からの評判も良かったが、進化者であることを隠しながら生きていた。
その中で進化者への差別を黙認や支持する教導者や信徒、つまり人間に絶望。蘭善で活動するラメントの存在を聞きつけ、加入して現在に至る。
…「いくら正しいモノがあろうと、正しく用いられなければ何の意味もないじゃないですか」なんて自嘲は、少し同意した思い出があった。
コンビであるアナーキストは、彼がエディンで匿っていた進化者の信者の1人。
…エリヤ戦の直後、ブチ切れた彼女が襲いかかってくるのは本当にキレそうになった。連戦とか聞いてない。
「では、話を始めましょう。ブラス………貴方が父親になるかどうか、ですが」
「神父様らしい話し方をするなぁ」
俺が知る限り、このエリヤという男がなんかこう、形容し難い感情を込めた目で俺を見る理由はない筈なのだ。
だが現状を見るに、俺は彼の中の何かを揺さぶっているのは確かだとは思うのだ。
それを変な方向に爆発させたくはない。
幾らか探ってみるとしよう。
…心の爆弾を詳らかにする時間だ。何でカウンセラーみたいな心持ちにならないといけないんだ俺?
「で、何を聞きたいんです?」
「率直に聞きます。本当に父親になるつもりですか?」
「脅されてるとはいえ、テロはしたし、まぁ褒められたことじゃないってのは分かってるよ」
うーん、父親関連…?
こいつの過去はそこまで深く掘り下げられなかった。絶望のきっかけは語られたけど、その先の経緯は不透明だ。
あくまで語られたのは「絶望の根っこ」で、そこからテロ側になったのかは推察するしかなかった。
まぁ「教えと悪」が語られたパートだったし。
…きっかけの後に、何かがあったとは思う。考察じゃエリヤと絡めて兄弟がいた説とかあったな*1。
「やったことはやったことだ。その責任は取らないと駄目だと思ってる。まぁこの分じゃ、養育費を出し続けることくらいしか出来なさそうだけど」
「……随分と能天気ですね」
「悲嘆に塗れてわんわん泣いてたら全部取りこぼしたことがあってね、憂鬱に浸るのは避けたいんだ」
「………そう、ですか」
俺と神父は、椅子に座っている。木製の、何も特別性もない背もたれの長い椅子。
向き合う形で座っている。懺悔室なら壁の一つもあったんだろうけど、俺達の間には何もない。
「最悪の気分だったでしょう」
「今もそうだよ、神父様」
どっちが懺悔してるのか分かったもんじゃない。西日の入る一室であったが、不思議なことに今は光が疎ましくなる。陽の光なんて幾ら浴びても良い筈なのに。
「というか、まだ〝かも〟なんだけど。確定してないって。確率は…多分低いし」
「……酒に酔った人のそれは…あの、私が言うのもアレですが、信用が…あまり…」
「言うな…! 言うな……っ!!」
避妊具は正しく使ってないと意味ないんだよ、聞いてるのか酒酔いの俺…何であんなことしちゃったかなぁ?
いやまぁ、酒に頭やられて理性的になんて難しいけど、それ言い訳にしちゃったら蛆虫通り越してカスだ。
そう思いながら落ち込んでいると、神父が目を細める。
「関係が続くとなると、話は少し変わるでしょう」
「首根っこが既に捕まってるんだ、下手なことは出来ないから安心してくれ」
「なんで自分から弱みをポンポン増やすんです…?」
「仕方ねぇだろ見過ごしたら心が死にそうなことばっか転がってんだから、見事に判断力は死んだけどなハハハ!!
…はぁ……何やってんだろうね、本当に」
…幸いなのは、向こうの心が傷付いてないっぽいってこと。嫁入り前の体にはキズはつけただろ?うるせぇな分かってんだよそんなこと!!
「…終わった後のことも考えないとかぁ…」
「?」
「ああいや、メンタルの話。というか少し意外だったけど、あんたその格好で人質に思う所とかないの?」
「驚きはしましたが、もう泥の中にいるので」
ううん、やっぱりそうくるか。
神父の格好ってことで「良心とか咎めないのか?」みたいな選択肢を選んだらこんなことを言うやつだ。
エリヤに限らないが、この男は目を塞いでいる。
不都合なことから逃げたいって感じだ。
「第一、───私にはもう何もないですから」
貴方と違って、そう念を押すように言ってくる。
ひどくしんどそうな顔をしている。きっとこの言葉に、彼の経緯にある「何か」があるのだろう。
それはそれとして、ボスを見てみろ。あいつある意味エンジョイ勢だぞ。やってやるぜ、よしやるかの化身みたいな男だぞ。シンプルに最悪というか傍迷惑な奴だぞ。
この前の会議とかノリノリだっただろう。
「…アナーキストは?」
「………ただの同志です」
嘘つけ情ありまくりだろ。というか絶対過去に救った救われただけの関係じゃ無い筈だ。
最後には「ここまで付き合わせてしまった…」とか言う辺り筋金入りだろう。
なんだろうな、やっぱり切り捨て関係? そういった説は割と多く見かけたし二次創作も多かった。
あと全然関係ないけどイラストサイトであんたとアナーキストの退廃系の絵多かったぞ。
なんて考えていたら、また凄い目で見られた。
だからどういう感情なのそれは?
「ブラス・リッター、貴方はどうして選ばない」
「選ぶ?選ぶって何をだ?」
「どうしてそんな状況で何もかも拾えるつもりなのか、取捨選択をしないのか、そう聞いているんですよ」
おいこいつ絶対なんか切り捨てただろ!? というかそれなら俺のやることがこいつにとって特大の地雷の可能性大だよ手遅れだよもう!!
いや知ってても多分やってたと思うけどね!?
「…拾えるつもりというか、もう拾ってる。あとは溢さないように守るだけだよ、体張って、命賭けて全力で」
「……物の見方で、私達には相違がありそうだ。守り続けられる保証もないでしょうに。
貴方のやっていることは、無責任な救済だ」
「…助け切れてないのは確かだな」
…そこ突っ込まれると、耳が痛い。まだ何も助けられていない。保護は出来てもその先がまだだ。
…やばいな、まだなんも果たせてない。
───無責任じゃなくするために頑張らないといけないのに。
Tips:フジワラ・アマネは歌うことが割と好きだったりする。機嫌が良いと鼻歌を聴くことが出来るが、そんな精神的な余裕が今まで無かった。
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