敵幹部でも主人公見たらテンションあがる…あれ?(冷や汗) 作:苦い経験100%
アンケート回答ありがとうございました
ちょっと次回から頑張ってみますわね
ブラス、つまり俺には悩みが増えた。
組織上、部下である子ども達についてだ。
今、皆は別室で寝ているが、これからはそう眠れるか怪しくなって来るだろう。
先の一件で、俺の発言力は落ちている。これからは、彼らに振り分けられる「仕事」に口を挟むことは不可能になるだろう。汚れ仕事が降りかかる事は想像に難くない。
全面的に俺のせいだ、吐きそう。
また、それに関して付随してきた違和感も一つ。
キュリアのことだ。
俺とあのカス外道は犬猿の仲。出会い頭に舌打ち、内心でお互い中指を突き立てるような関係だ。
そんな水と油どころか、物質と反物質(いつ爆発してもおかしくないという意味)のような関係の片割れであるあの野郎だが、不気味な程に大人しい。
俺は人質について知られた時、キュリアとディランが頭痛の種になると考えていた。
しかし実際は違う。キュリアは恐ろしい程に何も言ってこない。ディランが懸念通りに問題を持ち込んでくるだけ。
後者に対してはのらりくらりと躱しているが、前者に対する不安は拭えない。
「…不安に思ってるだけじゃダメなんだけどなぁ」
深夜2時半。眠れぬまま思案する最中で、そう独り言をこぼす。ため息と一緒のそれを吐いた時、俺は床を見た。
そこには砕け落ちている鏡の破片があった。肌の血色には、髪と同じような青白さが混じっており、目つきの悪さが少し増したかのように見える。
…酷いツラだと我ながら思う。
…俺の中で、やるべき事は変わらない。
人質と部下の安全の確保。被害の減少については中断、今はそうも言ってられない状況だ。第一、組織を抜けても出来る事だ…なのに欲張ったツケが回って来たな、と内心で舌打ちをする。
一応、計画は幾つかある。
そのうちで成功率が低くないと踏んでいるのが、地下水路を利用することにある。
現在ラメントが用いる拠点には、地下水路に通じる道がある。方々に繋がる迷路のようなもので、辿る道によっては『地下スラム』に辿り着いてしまう大回廊。
それを駆使して、子どもを逃しつつ第四スラムに移動し、そのまま家族達も水路内に避難させる。
取らぬ狸の皮算用だと理解している。
だが実際問題、今の身で出来る最大限のことだ。既にルートは割り出してある。
あとは動くタイミングだけだが、それを待てる時間はどれ程あるか…多くないということだけは確かだろう。
「…だけど『地下』なのが…」
懸念点はまだある。
水路内に『地下』の勢力がいてもおかしくはない。
どうにかやり過ごしたいものだ。
…原作でもそうだったが、彼等はとにかく面子を重んじる。少しでも泥をつけられたと思えば報復の始まりだ。いやもう本当に面倒臭い、強いとか以前に面倒臭い。
アイザックも相対を避けるレベル。
一例で言えば下手に喧嘩を売ると地上にいても何処からともなく刺客がやって来る、あいつら水路迷宮を熟知してるから水ある所に彼等在りだ。
「まぁ面子に触れなきゃ問題はないか…そもそも会う確率だって、スラムに行くつもりもなきゃ低いんだし…」
…そう言えば、さっきのアイザックは何だったんだろう。やけに焦った様子で「ヤクザの女と寝たことあるのか?」とか聞いて来たけど、あるわけねぇだろぶち殺すぞ傍迷惑の擬人化。
否定したら「マジでもうほんと余計なことしないで、頼むから」とか言い出した時には「てめぇが社会に余計なことしてんだろうが」とキレそうになった。
…明日も尋問するらしいけど、心当たりが本当に無いんだよ。いや、一回やらかしてるから信用もクソもねぇ奴の発言ってのはわかるけど…!
…でもおかしいな、心当たりがないはずなのに「やっちまった感」が半端じゃなくする…念のため気を引き締めておこう、俺はもう俺を信用しない…───…そうだ、もう俺だけじゃどうにもならない。分かりきっていることだ。
……わかっていても、どうすればいいのか。
そんなことを考えていると、一度わざとらしい足音が聞こえた。俺は咄嗟に右手を自由にして、辺りを見渡す。周りには何もいない。
気のせいではない。俺は警戒を解かない。
「誰だ」
『…今近場に誰もいませんか?』
「……マジで誰だ、いないけど」
扉の向こう側から、若い男の声がする。
年齢は多分、俺とそんなに変わらない。
…聞いたことのない声だ。恐らく初対面。
俺の返答に対して、扉の向こう側にいる男は、
『よしっ!イエス!グッド!!ああもう綱渡りだった!!』
…大袈裟なまでに喜びを表現している。こんなテンション高いやついたか? 俺は訝しみながらも、扉の向こう側にいるであろう男に声を投げかける。
「…子ども達が寝てんだよ静かにしてくれ」
『え、皆起きてましたし1人どこか行っちゃいましたよ?貴方の指示とかじゃないんですか、あれ』
「おいちょっと待てそれ詳しく!!」
◆
現在のラメントの拠点には、地下に通じる道がある。地下といっても、その表層である地下水路に過ぎないが。
だがそれは迷路のように方々へ繋がっている。
ブラスの庇護下にある子ども達───部下であるはずの彼等は、殆どの構成員が寝静まった深夜に行動を起こすことを計画し、この地下水路を使うことを決定した。
…子どもらは彼と思考回路が似たらしい。
ひどく冷たく、そして暗い空間。
コンクリートで固められた無機質極まる通路が、右へ左へと張り巡らされており、要所要所には柱が墓標のように点在している。申し訳程度の照明は、かえって不気味だ。
その中を、黒外套とフードを身につけた1人の幼い子どもが歩み出すが、その足から音が鳴ることはない。
子どもは1人、地下の迷路を歩き始める。
厚手の靴底は、硬質な床を踏むがやはり音はならない。無音の歩みがそこにはあったのだ。
「つーかさぁ」
───だが、ここに乱入者が現れる。
「人がせっかく夜更かししてまで観てたっつーのにさぁ、何だぁこの馬っ鹿みてえな行動」
地下空間に響き渡るのは、不機嫌極まった声。喉の奥底から放たれた不満と苛立ち。
それは暗澹かつ湿った空気の此処を、更に不快なものへと変貌させていく。
外套を羽織る子どもは、咄嗟に足を止めた。
その視線は声のする方向へと向けられる。
やがて、暗闇の先より足音が響いてくる。八つ当たりのような、いや真実八つ当たりの足取り。必要以上に力を入れて、まるで威嚇や誇示のように自らの足音を示す。
その姿は、至近距離でようやく見えた。
白い髪。ギラついていて、そして鋭い瞳。
その眼光は苛立つ子どものような光を持っている。
羽織る白衣は彼が歩く都度に揺れ動く。
そして口にはチョコレートを咥えており、歩きながらそれを齧り切り、飲み込んだ。
彼の側に緑青の光が幾何学模様を描く。
一種のデモンストレーション。リアルタイムで計算、設定された電子達は当人曰く複雑な過程を経て踊る。
その主人はただ1人、キュリア・リズットだ。
「なぁオイ、ジャック。
オマエ1人で一体全体何が出来るって話だよ」
「キュリア…!」
外套を纏った子どもの正体を、キュリアは最初から知っていた。彼が此処を通ることも、今日に行動を起こすことも把握済みだった。
だが、此処にはキュリア1人しかいない。
この問題の対処には彼1人で充分だと判断されたのか、それとも。ともかく、ジャックは思考を巡らせながら、敵に向けて一つ問うた。
「…ボスに報告するつもり?」
「ははっ、普段ならそうしたかもな?」
その返答に、青い瞳が見開かれる。
現在のジャックの行動は、ボスであるアイザックにバレてはいない。今のキュリアの行動はボスも把握していない。
それらが今の返答から汲み取れた。
一体どういうことか、困惑するジャックを他所にキュリアは顔を手のひらで覆いながら語り始める。
その声色には、隠せない怒りが滲んでいる。
「…ボクはブラスが嫌いだ。あいつの成すことやること、全部が気に入らねぇし吐き気がする。何度ぶち殺してやろうと思ったか数え切れねぇ。ムカつくこと限りなしだ」
キュリアとブラスは徹底的にソリが合わない。
互いに互いが気に入らない。
在り方、思想、行い、全てが不快だった。
どうしようもない程の嫌悪と敵愾心。仮に生い立ちや素性を知れど、決して軟化することのない悪感情。
双方がそれを知っている。
だからこそ、キュリアには看過できないものがある。
「───けどなぁ、オレ様にも納得ってもんがある」
キュリアの眼光は更にギラついていく。
放たれた圧。実の親すら殺した者のそれは、ジャックの足を一瞬とはいえ竦ませた。
否、決して圧だけではない。
それはまるで、狂気のように爛々としていて、屈折したような執着、或いは偏執を思わせる。
…子どもが足を竦ませたのは、圧に屈したからではない。これは歴とした、異常者に対する恐怖である。
にも関わらず、攻撃はやってこない。
キュリアはこの瞬間にも言葉を語り続けていて、構えを解かず警戒を維持するジャックがいた。
「前回の作戦であいつは時間を稼いだが、同時に作戦の邪魔もした。今のオレ様とあいつはトントンだ。オレ様の中じゃあそうだ…あいつと引き分けってのは嫌だ…だがあいつが優位になるようなことはもっと嫌だ…!」
謎のこだわり。理解し難い何か。勝手な差し引き。巻き込まれる側からすれば、溜まったものではないだろう。
ジャックは強い忌避感を覚え、つい本音が口から出た。
「…え、なんか…気持ち悪…」
「うるせぇな」
自覚はあるのか、キュリアは吐き捨てるように言う。そして彼はジャックに指を差し、こう言った。
「一度だけ言う、ブラスのとこに戻れ。
それでこの件はボスに報告しないでおいてやる」
普段の彼からは、想像もつかない言葉を。
キュリア・リズットにとっての例外。
彼がブラスの隙をつけ狙わない筈がないのに、それ程までに反りが合わない筈なのに。
彼の行動の意図が全く読めない。
大体、そもそも、とジャックは思考して───怒りにも似た何かが湧き出て来て叫ぶ。
「…なにそれ…それでフェア気取ってるつもりかよ!! あの人がどんな状況なのか分かってないわけじゃないだろ!!」
「人質に興味はねぇ。あいつがそれで従ってんならそんだけの話だ。あいつの敗北だ。
だがな、首根っこ掴まれてんのに部下が勝手に下手こいてオシマイってぇのは───」
緑青の閃光が、不安定に弾ける。
雷鳴にも似た輝きが、不気味な地下空洞を照らす。
流れる水、薄汚れたコンクリートの壁と床、かろうじてを照らし、それでも暗闇を消せない照明、墓標のように点在する柱、その全てを歪な光が克明とする。
「気に入らねぇんだよ!!そんな終わり方ぁ!!終わるんならあいつ自身の
それ以外はオレ様が認めねぇ!!納得しねぇ!!」
それは憤怒、そして破綻。
自分の思い通りにいかないことへの癇癪と敵対。彼の行動原理は、極めて利己的で独善的だ。
自分が楽しめなければ、満足出来なければ、納得出来なければ、それが何であろうと彼は許さない。
事実彼はそのために親を殺した。
キュリア・リズットは、そういう男だ。
───そしてそれが、幼子の逆鱗に触れた。
「…あのさぁ…!」
少年の喉が震える。
恐怖ではない、悲嘆でもない。
わなわなと、怒りに震えるような声。
「何でお前らみたいなやつの勝手な都合にあの人が付き合わされなきゃいけないんだよ!!!そんなに自分1人で動くのがやなら最初から何もすんなバーカ!!!!」
堪忍袋の緒が切れた。そう言わんばかりに、ジャックの叫びと共に周囲の壁や床が一瞬で砕けていく。
それだけではない。多種多様な音が混ざり合った不協和音が、地下水路全体に響き渡る。
その光景に、キュリアは口端を吊り上げた。彼は両手に緑青を踊らせ、小さな敵を迎え撃つ準備を整える。
少しも驚いていない彼は、幼い子どもの力が「音を消す」ものではないと察していた。
「やっぱ三味線ひいてやがったか、オマエ!」
「お前なんかに言ってやるもんか!」
そうして───ここに、最初の爆弾が点火する。
Tips:年齢と趣味とか②
キュリア・リズット 9/21生
年齢:19歳
イメージ花:キツネノボタン
好きな食べ物:甘いもの全般
趣味:他人の能力を見ること
欲しいもの:甘いもの
エリヤ 12/24生
年齢:22歳
イメージ花:コルチカム
好きな食べ物:パン(何も付けない派)
趣味:ガーデニングだった
欲しいもの:わかりたくない
アナーキスト 2/29生
年齢:18歳(28日に歳をとったとカウント)
イメージ花:リンドウ
好きな食べ物:ぶどうパン
趣味:読書(植物系の本を好んだ)
欲しいもの:もう手に入れた
短め番外編
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