敵幹部でも主人公見たらテンションあがる…あれ?(冷や汗)   作:苦い経験100%

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マシな滅茶苦茶、カスな滅茶苦茶

 

 

 キュリア・リズットの持つ『走り巡る電子(クッレ・エレクトリッカ)』のように、光線という形で攻撃を行う能力者は、大抵の場合その軌道が直線的かつ単純なものになりがちだ。

 脳内で地形把握、攻撃対象との位置関係、その他全てを短時間で処理して変則弾を放てるものは先ずいない。

 戦闘という状況下ならば尚更のこと。

 

 しかし、キュリアはその例外である。

 

 彼は変幻自在に曲がるレーザーを放つ。その処理が戦闘中に出来る、有り体に言えば天才や変態の部類だ。

 彼の前に生半可な遮蔽物は意味を為さないし、そもそもとして威力が高い為、装備が整っていなければガードはほぼ不可能。

 それはキュリアと相対するジャックも知っている。

 

 先ず放たれた緑青の光は五射。

 薄暗い地下を朧げに照らす敵意の光は、枝分かれと湾曲を繰り返し、小さな矮躯を穿たんと走る。

 狙いはそれぞれ。腕に二射、腹部に一射、足に二射。背後左右から、凡ゆる方角でジャックを襲う。

 

「───ッ!」

 

 幼い子どもはその場から飛び退く───が、それは射手であるキュリアにとって想定済みの動き。

 対象を失ったはずの光は追跡を続行する。

 既に規定されていた動作。避けられる事など織り込んでいて、キュリアは光を走らせた。

 

 〝さぁ、どうする?〟

 

 薄暗い地下水路。水と遮光で冷えた大気。

 淀んだものであれ、体を冷やすそれはキュリアの思考を回し、脳の疲弊を遅らせていく。

 彼の思考…否、興味はジャックの能力にある。

 

 〝あのガキの力が音に関するものだけじゃねぇとは思っていた。そうじゃなきゃ、こうも大胆に動く筈もねぇ。もっとえげつない何か、行動を起こせるだけの自信の裏付けになる力のデカさがある筈だ〟

 

 ジャックは自身の能力の詳細を明かした事がない。ただ、音に関する力だとは仄めかされていた。

 キュリアはその仔細を追求したが、当の本人はもちろんブラスにもお茶を濁されている。

 秘された能力を知る機会ともなったこの一戦、キュリアは獰猛な笑みでレーザーに囲まれたジャックを、否、披露されるであろう彼の能力を見ようとする。

 

「…まだ避けられる」

「流石に、そんな甘かねえか」

 

 だがしかし、避けられた。

 ジャックは体を捻り、追跡してきた光をやり過ごす。少年の背後にある壁が貫かれ、その傷跡を残す。

 微かにコンクリートを溶かし、形を歪にする。

 経年劣化とは異なる傷が残る。

 

「フッ!!」

「しゃらくせえ!!」

 

 返す形で速射三連、放つのは短剣。狙うは太腿、腹部、そして眉間。その全てが光で穿たれ、地面に落ちる。

 

 〝…ガキが放つにしてはえらく速いな〟

 

 その一連にすら違和感はある。

 キュリアは更に電子を手繰り、演算処理を終わらせる。出力された光線は数にして三十六。手加減は一度だけ、放たれたそれぞれの光線は、敵を穿つために走る中で更に枝分かれし、無数の光の雨となって襲いくる。

 しかしジャックに怯えの色はない。

 

 数こそ増えたが、殺す気のない軌道。基本の狙いは四肢と分かっている上に、一つ一つの光線を目の当たりにしても、死が迫る感覚は無い。

 それが油断だと思い知るのは、その直後。

 

「最初に腕だ」

 

 キュリアの白い髪が、間近で揺れる。彼の手には、緑青の光で形作られた薙刀のようなモノ。

 それが幼子の腕を目掛けて一直線に振るわれる。

 回避しようにも、周囲には光線が間近にある。

 

 薙刀を避ければ貫かれ、光線を避ければ腕が犠牲になる。その選択肢を前に、ジャックは歯噛みして───自身の持つ力を宣言した。

 

飲み込んで! 『飽食者(アルムダード)』!!

 

 その宣言と共に、少年の青い目が光を灯す。空のような瞳が目に入れたのは、自身を襲う光線と刃。

 そして少年の右手の平が薙刀を掴んで刃を消失させ、少年を穿つ筈だった光線は全て彼の肉体に当たる度に消えていく。少年の体にはダメージ一つない。

 

「んなぁ!?」

 

 さしものキュリアも予想外だったのか、驚愕に目を見開き、瞬時にその場から大いに後退り距離を取る。

 その判断は間違いではない。茶色い髪を揺らしながら、青い目を光らせた少年は手をキュリアの方向へ向けた。

 

 少年の「吐き出せ!!」という声と同時、キュリアが発したものと全く同じ色の光がジャックの手から放たれる。

 しかし、その規模は桁違い。

 青年期の男性の体格なら、難なく飲み込めてしまいそうな球体。それを向けられても白髪の男は動じない。

 彼は指を鳴らし、その球体へ命じる。

 

「散じろ!!」

 

 キュリアの言葉の通り、緑青の球体は霧散した。

 ジャックはその光景に目を見開く。

 

「…少しも驚かないのかよ…!」

「いや驚いちゃいるぜ? それ以前に考えるのが楽しくてな…飲み込んだ後でも変化はない…エネルギーそのまま保存してんのか?」

 

 ジャックの目は未だ光を灯したままだ。

 薄暗い地下故に、青空のような光が映える。

 だがキュリアの思考は少年の力にのみ割かれた。

 

 〝だが、なるほど───力の吸収と放出…。

 それがあのガキの…いや、ジャックの能力か…目の発光は発動中の特徴と見ていいのか? それとも一定規模から『観測』を必要とするのか…〟

 

 様子見の時間。張り詰めるような沈黙。

 双方共に、十分な距離を取って次の手を警戒する。

 

 〝とにかく、これなら今までの行動に納得がいく。床と壁を砕いた衝撃とうるせえ音は、何処ぞで飲み込んだ力を束ねて吐いたってところか。音を出さねえ動きといい、さっきの『お返し』といい、とんでもねぇ力だ。

 だが、だからこそ、本当に───〟

 

 そんな沈黙の中で、不意にその言葉は出た。

 心の底から、惜しむような声色で。

 

「勿体ねぇなぁ?」

 

 がしがしと頭を掻きむしりながらキュリアは言う。言葉に込められている感情には、賞賛も含まれている。

 だが、それ以上に大きいのは疑問。

 心の底から理解出来ない。そんな声色と顔で、戦闘中にも関わらずに彼は相対する幼子に問う。

 

「凄えんだよ、オマエの力は。ブラスもそうだが、なんでそんなデカい力を持ってんのに、それを自由に使えねぇことに、それを持ってることで排斥される今に疑問を抱かない? 今ある世界は、オレ様達を否定する世界だ」

 

 異能を持てば隔離される。

 海の外のように死にこそしないが、当たり前の選択や権利は取り上げられて、死ぬまで籠の中の鳥だ。

 それはおかしいだろうと、白髪の男は考えている。

 

「オレ様達のこれは、謂わば一種の才能だ。

 そして、それ込みで『自分』だ」

 

 キュリアにとって、能力は自身を構成する一つ。単なる付随物ではなく、確たる自身の証拠の一つ。

 それを守る為ならば彼は親であろうと殺した。

 短絡的で危険極まりない思考回路。誰であれ、彼はきっと癇癪一つで命を摘むだろう。

 

「だがその『自分』に、生まれ持った一つが、構成する一つがあるだけでオレ様達は『自分』を否定される…覆そうとか、どうにかしようとか、戦おうとか思わないのか?」

 

 不思議そうに彼は言う。

 考え自体は間違っていないのかもしれない。

 納得の出来る部分もあるのかもしれない。

 しかし、ジャックはこう言った。

 怒りを由来にした嘲りを顔に浮かべて。

 何度も聞いた声を真似するように。

 

 

『面白いこと言うなぁこのカス外道』

 

 

 清々しい程の一蹴。

 だがそれ以前に、その声と嘲りが、キュリアの頭に『彼』を想起させた。

 幾度かの対立、繰り返す諍い。

 彼の選択、彼の成すことの全てが気に入らない。

 吹き出す怒りは、キュリアの声を震わせる。

 よりにもよって、あの男と同じ言葉で否定するのか。あの男と似た声で嘲り笑うのか。

 

「───上等だこの野郎…!」

 

 キュリアの背に、一瞬にして莫大な光が集まる。炎のようにゆらめいているそれは、彼の怒りの程が現れているかのようであった。

 目にするだけで、視界が明暗する。

 頭痛と眩暈すらよびそうな、そんな規模の光。

 

 増幅と収束を繰り返す力。

 それを前にして、青い目を光らせたままジャックは足を微かに震わせた。言葉にしてしまえば、怯えたのだ。

 でもそれでも、彼は言葉を止めない。

 矢継ぎ早に、絶え絶えになりそうな息を殺して、震える声を無理やり押しつぶして、少年は自身の『怒り』を口にする。

 

「言っとくけどな、勘違いすんなバカ。お前、今の世界への怒りだとか、言ったけど───そんなもん、僕にだって、あるに決まってる!! 

 僕だって、学校とか行きたかったし……普通にくらして……! それに!! あの人がこんなことに付き合わせられる理由なんてないのに!! 人質とって、言うこと聞かせて、世話とか全部あの人にぶん投げて、そのくせ僕らを使おうとして、やってることと言ってることめちゃくちゃなんだよ!!」

 

 支離滅裂な、しかし感情のこもった叫び。

 感情の爆発で散った言葉は、キュリアの耳には届かない。それ以上に、彼の心のどこにも刻まれることはない。キュリアは自身が欲したものしか受け取らない。

 だけど、それでも、この幼子の叫びは、

 

だから、僕は絶対にあんたらを認めない!!

 

 少なくとも、悲嘆を掲げる者達より、

 余程『被害者』として相応しいものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 

 扉の向こう側にいた人は、黒ずくめの格好をした優男だった。眼鏡が似合う感じの出立ちで、髪も目も黒い童顔。

 彼の名前を聞いている暇もなく、俺はそいつの報告の事実確認を急いだ。寝かしつけた筈の子どもが起きていて、なおかつ1人はどこかに行ったと聞いてから、不安と動悸が止まない。今も必死に走ってる。

 

「すれ違った子どもの目の色は!!」

「ええ!?フード被ってて分かりませんでした!!」

「身長幾つだ! 目算でいい!!」

「んな無茶な!?えーと…大体…136…くらい…?」

「ジャックか…!」

 

 なんだってこんな時間に1人で…!ああクソッ!今すぐにでも追いたいけど他の子達は無事なのか!?

 

「あの、ブラスさん!?身長で誰か分かるんです!?」

「何度も測ってりゃ覚える!!あの子この前135越したから祝ったばっかだったんだぞ!?」

「なんでそんな親みたいなこと!?」

「子どもの手が汚れる様を見たい奴がいるかよ!!」

 

 …子どもが手を汚すのを見るのが嫌だっただけ。

 どんな悪をしでかした奴でも、子どもを守る為に何かをしたっていい筈だ。悪いことをしたからって、その資格はないからって、勝手に善悪の「資格」に囚われて諦めて何もしないよりマシだろう。

 ああ、そうだ。エリヤ、お前の言う通りだよ。

 俺は無節操に手を伸ばした。見通しなんて甘くて、軽率で、無責任で、選べない奴なのに拾ってる。

 でも駄目なんだよ!! 痩せ細った子どもを一人残して、その後をまともに生きていける才能が俺にはないんだ…!!

 

 俺は子ども達が眠る部屋を開ける。荒々しいと言われても仕方ない動き。音だってうるさい。彼らが寝ていたら起こしてしまうけれど、今だけはそれを度外視しても、確認したい無事があった。

 

「待っ、待ってくださ…えほっ、ごほっ!?」

「アイシャ、グロース、イェン、ヨウ、ハルキ、イチカ、ナツ、無事か!? ジャックがどこに───…!」

「うわ…」

「…えっと、その…」

 

 …ここの子ども達は皆、無事だった。

 それは本当に安心した。心の底から安心した。足から力が抜けて、まともに立っていられない。

 でも、別の問題が新たに出てきた。

 

 長い髪の女の子…ナツが能力を使っている。他人と視界などを共有する力だ。

 皆が彼女の背に触れて、能力の対象になっている。

 …その中で、一人だけいない子ども。

 この場にいないジャックと、皆が何かしらを共有していて、そのやり方にはごく最近に見覚えがあって、俺はそれに助けられたからあの時は叱れなくて───!

 

 途端、吐きそうになる。

 子ども達は慌てて俺の方に駆け寄る。でもそれを、さっき知り合ったばかりの優男が手で制した。

 …子どもの声がする。

 しどろもどろ、怒られてる時の声だ。

 揺れていく視界でも、赤い髪が見える…アイシャだ。

 

「あのさ、その、えっとさ! 兄ィ人質取られてんだろ…? その、みんなで力になりたくて…だから…」

「…お゛ぇ゛っ…ッ!?」

 

 内臓がひっくり返った。

 違う、違かった、間違えた、俺はあの後、お礼は言ってもちゃんと叱るべきだったんだ…!

 だから今、二度も危ない橋を渡らせる羽目になってる…! 何やってんだ俺は…!

 

 そこで唐突に、手錠がはまる音が聞こえた。

 手錠は俺の手首に嵌められている。

 手錠は隣の優男と繋がっている。

 彼は眼鏡を掛け直しながら言った。

 

「───なるほど、大方の事情を把握しましたいや把握しきった自信とかこれっぽっちもまるで全然滅茶苦茶ないですけどマジで間違ってたらどうしようホントすいません」

 

 唐突なことで、頭がうまく回らない。

 オイなんだこの手錠。

 お前は一体なんなんだ。

 困惑ながらも声を出そうと───

 

「全員動くなァ!!」

 

 その瞬間にデカい声。

 顔立ちの柔らかさから、想像も出来ない物々しいそれは、駆け寄ろうとした子ども達の足も止めた。

 男は懐から小さな四角い何かを出す。

 外見からして、手帳の、ような、それは…!

 

「特異対策局です!貴方達『全員』を『捕縛』します!

 当然、ここにはいない子も捕縛対象です、逃走は不可能だと考えてください!!」

 

 その宣言と共に、一瞬にして全員が縛られる。

 いつの間にか、男の袖口は黒い縄のようなものが伸びていて、彼はそれを以て俺たちを縛っていた。

 

「…地下を通れば構成員にバレず護送できるでしょう…でも私は地下の道筋とかわからないからなー!適当な所に誘導されたらあっさり騙されちゃいそうだなぁー!なんか問題とか解決されちゃうかもしれないなァ!!」

 

 でも膝は滅茶苦茶に笑っていて、顔にも冷や汗が浮かびまくりで、というか真っ青な顔色で、唇も震えまくっていて、だというのに───今はその姿がカッコよく見える。

 だが彼の言葉の内容は、彼の職務からかけ離れている。自覚はあるのだろう、彼は俯きながら嘆く。

 

「ふふふクソみたいな現場判断です後が怖いぃ……!

 というかブラスさん、勘違いしないでくださいよ…!私だってねぇ!何回も密偵やってりゃ呵責なんて死にますよ!!こんな判断先ずしねぇですからァ!!

 …副局長が貴方に目を付けてんです、それでバカじゃないなら、貴方が良い人だと信じた結果ですよ…!」

 

 

 俺は、何か大きな爆弾が爆ぜた気がした。

 

 

「ああー!減給やだー!!」

「締まらねぇなあんた!?

 とにかく急ぐんで縄解いてください!!」

 

 

 






Tips:密偵さん(コードネーム『クロカゲ』)は状況把握能力、いざという時の爆発力、精神力の太さを見込まれて送り込まれた。ちなみに原作中では名前が出るだけのモブキャラだったらしい。

Tips2:年齢と趣味とか③
クリフ・サンダーズ 8/10生
年齢:42歳
イメージ花:サザンカ
好きな食べ物:とにかく胃に優しいもの
趣味:家族と部下に料理を振る舞うこと
欲しいもの:家族の幸福、平穏な時間

レオネ・サンダーズ 2/14生
年齢:21歳
イメージ花:ムスカリ
好きな食べ物:父の料理 鯵の刺身
趣味:読書(恋愛系) 色恋沙汰の見聞き
欲しいもの:好きな作家の新刊小説(遅筆らしい)

ユカタン・████(抹消済み) 1/3生
年齢:18歳(詐称している可能性大)
イメージ花:フクジュソウ
好きな食べ物:班員の皆と食べるもの
趣味:ネットサーフィン 一次創作
欲しいもの:無いと言えるくらい今が充実

クサナギ・カムイ 1/1生
年齢:26歳
イメージ花:エーデルワイス
好きな食べ物:鯵のなめろう あん肝
趣味:陶芸(ド下手) 盆栽(超下手)
欲しいもの:料理スキル 新車

短め番外編

  • 学パロ世界線
  • ひたすらキスだけのブラスとアマネ
  • 彼氏持ち女性陣トーク
  • 野郎どもの猥談
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