敵幹部でも主人公見たらテンションあがる…あれ?(冷や汗)   作:苦い経験100%

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バチクソ殺意とバケモン肝っ玉がやって来る

 

「…こんなことして、大丈夫なんです?」

はぁ!?全ッ然大丈夫じゃありませんがぁ!? まぁ現地にいきなり無茶な命令した上に責任を放り投げれば何とかなるでしょう、気にしないでくださいブラスさん」

どんな情緒してるんですかあんた

 

 テンションの乱高下激しッ。

 …ともかく、密偵だった特異対策局員───コードネームはクロカゲ───と子ども達と俺は、息を潜めて地下を目指しながら廃墟を移動していた。

 

 信用出来る人だと思う。というか、上司へのキレっぷりや給料への心配とか見てると「ああ、これは大丈夫だ」と思った。これは余裕がないと出ない悩みだ。

 局員特有の仕組み(ギミック)付きの武器も持っていた。あれの非正規入手はまず無理だし、八方塞がりだったところに来てくれた蜘蛛の糸だ。どの道、他の方法がない。

 

 移動の最中、少し意外なこともあった。

 

「あのさぁ、あんた対策局の人間なんだろ?」

「ええ、そうですよ」

 

 子ども達が自発的にクロカゲさんと会話したこと。ジャックの現状もあって、可能なら走り出したいがそうもいかない。それでも地下まで急ぎたいのは確かだし、事実みんな急いでいるが、やはりどうしたって距離がある。短くない時間を共にする。

 

 気が抜けたという訳でもないのだろう。

 …彼等にとって「まともな話が出来そうな年上」は稀な存在だ。加えて、本来なら自分達を取り締まる側の人間。好奇心と猜疑心があっても、おかしくはない。

 

「なんか意外」

「見た目は弱そウ」

「まっくろくろすけ」

「「顔はすきー」」

「あの縄もっかいみたい」

「メガネだメガネ」

「こら、失礼だ」

 

 7人分の小さな頭に軽くチョップ。

 それとイェンとヨウの二人には後でお話があります。

 …アイシャ以外が頭を押さえながら俺を見る。

 

「い、痛かった?」

「…いや、久々にチョップもらったかラ」

 

 長髪が特徴の子…ハルキが、んべっと舌を出して笑う。ほっとした時に見せる顔だ。その癖に、本人が気づいているかは知らないが。皆も此処を出られるから、安堵してるのかも…もっと早く行動を起こすべきだっただろうか。

 

 そんなことを考えている間だった。

 赤い髪の女の子、アイシャがクロカゲに向けて、少し声を尖らせながらこう言った。

 

「…あたしらに何か思うとことかねぇの?」

 

 …多分、遅かれ早かれ聞かれること。

 非能力者として、差別をする側として、進化者を捕縛する側として思うことはないのか、そんな疑問。

 

 …アイシャは直情的というか、喧嘩っ早いところがあるけどバカではない。

 だから、きっとこれは彼女なりの悩みで、飲み込みたいことがあって言った疑問なのだろう。

 俺は口をつぐむことにした。

 

「いや、もう特に何も」

 

 クロカゲの返答はシンプルだった。

 特に何も思うことはない。極めてドライな返事で、少し予想外で、場の空気が一瞬凍りつく。

 クロカゲはそれを察したのか、慌てて口を開いた。

 

「語弊ありましたね…これは。

 失礼、少し訂正をば。あった…というべきですか」

 

 途端に、疲れ切ったような声が滲む。

 そして迷うように口を開閉する。

 でも、彼は観念したように言った。

 

「昔はね、市民の安全のためにだとか、公共の為になるようにだとか、まぁ偏った思考に私はいました。

 進化者は危ない奴等だとか、いまにも人を襲うだとか…そう考えて、対策局に入ることを決めたんです」

 

 クロカゲは「人って簡単に馬鹿になれるんですよ」と自嘲めいたことを言ってから、周囲を見る。人の気配や監視がないと分かれば先に進む。

 地下へ着実に近づいている。空気もだんだんと冷えて行く。不思議と、周りも暗くなっていった気がした。

 

「今じゃ何もわかりません。泣いている子どもを親から引き離して隔離場に入れた日から、理念とか全部ぶっ壊れました。正しいことも、間違っていることも分かりません。

 分かったことは一つだけ。殺すことだけは認めてはいけないってことだけなんです」

 

 そこまで言い切って、彼はため息を吐いた。

 

「今は給料を気にしながら生きてるだけですよ…突発的な暴走者と、異能を悪用するやつだけ捕縛したら仕事をしたことになりませんかねぇ」

「…あたしらは日銭扱いか」

「悪いとは思っています。でも、社会を覆す力も頭もないやつは、日々煩悶…じゃない、悩みながら生きるしかないんですよ…その中で、正しいと思えることをやっていけるやつは、すごい人なんですよきっと」

 

 …クロカゲは、最後まで言い切ってから俺の方を見る。最後の言葉が理由だと分かってる。

 でも俺はその言葉は受けられない。

 知っているかどうかじゃない。俺も結局は「その社会を変える側」じゃないからだ。スラムでどうにかその日を回しながら、将来が少し良くなるようになんかしてる程度。

 だから俺は否定の意味で首を横に振った。

 そしたらハンドサインで「頭おかしいんじゃねぇかお前」みたいなことを言われた、容赦ねぇなオイ

 

 地下への階段を降りて行く。より深く、暗い道。だけど今の俺には、その暗さがひどく安らぐ。

 真夜中の散歩をするような高揚感。

 きっとラメントから離れられるからだろう。

 …それと、それに負けないくらいの不安を。うまく行くのか、ジャックは無事なのか、心配は尽きない。

 けど今は、動くしかないんだ。

 

 そう思っていると、クロカゲは足を止める。

 そして振り返ってこう言った。

 

「…このまま地下に行きたい所ですが、少し寄り道をして───秘密兵器を取りに行きます」

「「「秘密兵器?」」」

「脱出と逃走をより確実にするマッスィーンです」

 

 

 

 

 

 

 ───そんな会話が少し前のこと。少し本音を打ち明けると、その秘密兵器に期待していた。

 きっとなんか凄いやつがあるのだと。

 いやまぁ、結果として、それは正しかった。凄いやつじゃなくて、とんでもないやつだったが。

 

 地下水路付近には、クロカゲの隠し倉庫があった。

 

 避難用の食糧や飲料。医薬品や資材がある。連絡用の機材の予備らしきものもあった。

 ここまでは良いんだ、ここまでは。

 問題はこの部屋のど真ん中にあるやつ。要は彼の言う秘密兵器というやつなのだが。

 

「…あのさぁ」

「はい」

 

 それはデカく、黒く、厳ついデザインだった。

 

「あんたバレないようにっつったよな」

「地下付近まではそうですね、ここまで来たら勝ちです」

「うん、それはまだ分かる」

 

 車輪の数は二つ。がっしりとしている。筋肉質という言葉が似合うタイヤとは、こういうものなのだろう。

 エンジンは強い銀の輝きを放つ。

 今にも躍動しそうな鋼の心臓に、たった今ガードが付けられた。子ども達の男衆はノリノリであった。

 車体は流線形で、風を切りそうな弾丸の様。

 その車体の横には、屋根付きのサイドカー。中々に大きく、それでいてやはりこちらもがっしりとしていて、轢かれたら一溜りもないであろう。

 

 とどのつまり、秘密兵器とやらは───、

 

「…なんなのこのバイク

SM-41-Still Waitingですが? あまりのスピードにテスターがゴールで待ちぼうけを喰らったことが名前の由来となったという骨董品です

機種とエピソード聞いてるわけじゃねぇんだわ

 

 びっくりするくらいバイクだった。

 …こいつどんな精神の太さしてんの??????

 潜入先にバイク持ち込んだ例は多分史上初だが??

 

「…子ども、ジャック入れて8人いるんだけど」

「サイドカーに詰め込みます。

 二人は抱っこしたりおんぶしたりしましょう」

「バカかあんた!?安全に問題しかないだろうが!!」

「このまま皆死んだら安全もクソもねぇでございますよ、さっさと乗りやがってください、サイドカーに」

「いっだ!?」

 

 人のけつを爪先で蹴るなぁ!? 

 半ば倒れ込む形でサイドカーに座る羽目になった。

 そこに子ども達が加わる。

 …体が小柄なハルキとヨウ(イェンも小柄だがジャンケンに負けたらしい)の二人はクロカゲにおんぶ抱っこだ。

 

「おいこれ大丈夫なんだろうな!? ハルキとヨウはしっかり固定出来てるんだよな!?!」

「ヨウの能力忘れてなイ? おにーさマ?」

「能力は万能じゃないっつったでしょ!」

 

 揶揄うように言うハルキに返す。

 黒と白の双子姉妹の片割れ、白色の髪を伸ばし始めたヨウは『引き寄せる力』を持っているが、だからと言って安心に繋がる訳じゃない。

 スピードでパニクって能力解除とかになったらたまったもんじゃない。

 

「安心してください、お二人ともちゃんと捕縛用の武器で私の体に縛りつけました」

「顔がちかいーやくとくー」

「俺達は大丈夫だからサ、ジャック拾う準備しときなヨ」

「……」

 

 …俺達は大丈夫、そんな声で思い出す。

 ぶつけられた〝遠慮なく周りを頼りなよ!〟って言葉が、頭の中で繰り返される。

 少し、いやかなり怖い。

 信用していないわけじゃない。情けないというか、恥ずかしいことにどう頼ったら良いのか自信がない。

 いや、四の五の言ってる場合じゃない。最初から人を頼ってりゃあ片付いたはずの問題だ。

 棚上げしていたのは俺自身。解決の糸口が見えたのなら、そこに飛び込まないといけないだろうし、なんかあったら全力で対処すれば良い。

 …だから、そうだ。

 二人の安全をこの人に『任せよう』。    

 

「…二人を頼みます」

「任しといてください───トばすぜ

 

 ごめんやっぱこの人頼るの怖くなってきた。

 そう思った瞬間、爆発的な加速が起こった。

 

 

 

 

  ◆

 

 

 

 

 戦闘経験ほど、覆し難いものはない。

 敗北の二文字が相応しい光景。薄暗い天井を見上げて、背中を地面に付けられたジャックは次の手を考える。

 最初に戦い始めたところからかなり移動した。

 自身は両足を撃たれた。歩くことは出来るが、激痛がある。まともに走ることもままならない。

 全身へのダメージも大きい。何度床や壁に叩きつけられたか、もう覚えていない。

 

 それでも十分な手加減をされた。

 少年は先の挑発で、敵対者ことキュリアの攻撃を単調なものばかりにしたが、それも今や修正された。

 加えて、自身の能力の種についても見抜かれた。

 

 ジャックの能力、飽食者(アルムダード)は『観測』を必要とする。

 彼の能力は『目で観測した力が皮膚に触れた時、それを吸収・貯蔵する』ものであり、加えて放出が可能だ。

 それは自身の体への反動や衝撃、移動音とて例外ではない。使い方によっては、無類の凶悪さを誇るであろう。

 

 しかし、視界外からの力は吸収出来ない。

 また、見逃した力も吸収が不可能。

 そしてキュリアの走り巡る電子(クッレ・エレクトリッカ)は不規則な動きを可能とする。ジャックにとって相性の良くない相手だ。

 敗北に至るのは時間の問題。少なくとも、今のジャックでは彼に勝つことは不可能だった。

 勝者であるキュリアは、敗者に手を伸ばす。

 

「今からでも良い、オレ様のとこに来る気はないか?

 大健闘だ。マジで頑張ったよオマエは。始末したくねぇって思うくらいにはな。

 なぁ、頼むから首を縦に振ってくれ。

 そしたらオレ様は何もかも許せそうな気がするんだ。オマエにとっても悪い話でもないだろ?」

 

 白い髪とギラついた瞳。獰猛な顔のまま、男は子どもに手を伸ばす。キュリアはジャックの力を認めている。惜しいとすら感じている。だからこその勧誘だった。

 

 

「………ばーか」

 

 

 しかし、子どもは頷かない。彼は最後まで嘲りの顔を勝者に向ける。ただの強がりだとしても、彼は一度たりともキュリアに頷かず従わなかった。

 それが気に入らないのがキュリアだ。

 男は大きく舌打ちをして、至極腹立たしそうな顔をして、自身の背に幾つもの電子の槍を形成する。

 

「じゃあ、いらねぇよ」

 

 キュリアが右手で少年の目を覆う。

 万に一つの抵抗も許さない。

 彼は完全に子どもを殺そうとしていた。

 癇癪にも似た怒りの中に彼はいた。

 

 そんな感情の中でも、異変を察知する。

 まず聞こえたのはバイクの音。この地下にはまずあり得ない音で、キュリアは自身の耳を疑った。

 彼は咄嗟に周囲に目を配り、警戒する。

 そしてキュリア・リズットは、自分の目を疑った。

 

 

───は?

 

 

 彼が目の当たりにしたのは、バイクだった。

 しかも地下水路を爆走するバイク。そのサイドカーに、腕を組んで仁王立ちの少年がいる。青白い髪を揺らし、同じ色の瞳を殺意に滾らせている。彼こそキュリアの怨敵であり、不倶戴天そのものだ。

 

 ブラス・リッター。しがらみから解き放たれんとする彼の目つきは、以前より剣呑である。

 彼はやっぱりサイドカーに仁王立ちをして、キュリアを見るなり憤怒の感情のまま叫んだ。

 

よお!!!!!殺す!!!!!

 

 憤怒を通り越して殺意である。彼の右手には1秒にも満たない速度で煙が集まり、大鎌が形成された。

 青褪めた色のそれは、明らかに以前と異なる。

 長柄に鎖が巻きついていることに、ブラス自身が気づいているのかは分からない。

 彼は今、冷静とは程遠い意識にある。

 

 しかし、殺意とは人の本能を冷やすもの。

 そして本能レベルの行動は、時に脳を介した行動よりも優れた判断を取ることがある。

 ブラスは大鎌をキュリア目掛けてぶん投げた。

 回転する刃が白髪の頭を刈り取ろうと疾走する。同時に、長柄に巻き付いた鎖が解けて、持ち主の手に収まる。ブラスは思考を介さず、その鎖を手繰る。

 

「うおおおおおおおお!?!」

 

 極めて不規則に襲い来る一撃必殺の斬撃。途轍もなく物騒なヨーヨー。ブラスは鎖を回しながら引っ張り、キュリアの体を切り裂こうと鎌の軌道を何度も変える。

 

 爆走するバイクのサイドカーに立つ男がいきなり鎌をぶん投げて来るという世紀末のような光景に驚くキュリアだったが、それでも回避はしっかり出来ていた。

 彼は体勢を立て直し、電子の光を咄嗟に鎌へと打ち込み、軌道を逸らしてことなきを得る。

 

「ナイスですよヨウさん!!」

「もっと褒めろクロカゲー!」

 

 そして、その一瞬でジャックが回収された。ボロボロの少年は、バイク本体に乗っていた長い白髪の女の子に引き寄せられ、子ども満載のサイドカーに投入される。

 助かったジャックは困惑の中にいる。

 ピンチだと思っていたら保護者が爆走するバイクのサイドカーに仁王立ちしながら登場してバイクに乗っている仲間達と合流したという、言葉にしてもよくわからない状況だ、仕方のないことだろう。

 

 そしてそのまま去り行くバイク。

 キュリアは呆気に取られながらも、しかしすぐ様に状況を理解したのかバイクに向けて電子の槍を放つ。

 

「待…ッちやが、れェ!!」

「待つ!?面白いこと言うなぁこのカス外道!」

「マジで二人揃ってムカつくなオマエら!?」

 

 電子の槍が肥大し、大剣と化す。

 それは今もなお増幅を続けている。

 このままでは逃走者は光に飲み込まれるだろう。

 

 だが───ブラスの手に、大鎌が戻った。

 

守り斬れ!青褪めた大鎌(ペイル・ファルクス)!!

 

 青白い輝きを伴った大鎌が光を切る。

 斬撃一閃。ただの一撃、だがその一撃で事足りる。放たれた莫大な光は『殺され』霧散する。

 だが油断はしない。鎌は更に踊る。車体を守るように振りまわされれば、補助にと放った他のレーザーも瞬く間に消える。

 

 どこまでも意気揚々、そして張り切った顔で。

 

 この鎌は、本来守るために使われてきた。

 今この瞬間、かつての役割を取り戻した担い手とその力は、他の追随を許さない輝きにいる。

 どんな心境の変化があったのかは定かでない。

 だか今のブラスの顔に、悩みやしがらみはない。

 

「───このまま振り切ります!!」

「今は逃げるのが大事だしな、分かった!」

 

 バイクの運転手がアクセルをふかす。同時に、ブラスは鎖でサイドカーと自身を巻き付け固定した。

 もうキュリアの手は届かない。彼の足では追いつけない。彼の力では捉えきれない。

 ただ、遠のく中で罵倒の一声が響くだけ。

 

 それがようやく始まった解放の合図だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 逃走の最中、運転手の背にいた子どもが言う。

 

「あ、そうダ。クロカゲさん。

 左手袋、ちゃんとあの辺りに置いてくれタ?」

「ええ、ちゃんとご要望の通りに。

 結構怖いこと考えますよねぇ…貴方…」

「俺も結構怒ってるからねェ」

 

 黒い左手袋が、キュリアがいた方向に飛ばされる。

 それを見て、子どもは笑った。

 

「───さんざんおにーさマに迷惑かけたんだ。ちょっとは肩代わりしてもらわないとネ!」

 

 

 






Tips:身長と体重①
ブラス・リッター
身長:169cm 体重:50kg
備考:自分の食料を他の人にあげすぎ

ジャック
身長:139cm 体重:35kg
備考:少食

フジワラ・アマネ
身長:166cm 体重:45kg(減少停止)
備考:慢性的ストレス

ヒヒガネ・クサビ
身長:175cm 体重:55kg
備考:胃下垂

アイザック・グローリー
身長:181cm 体重:57kg
備考:食事に興味なし

短め番外編

  • 学パロ世界線
  • ひたすらキスだけのブラスとアマネ
  • 彼氏持ち女性陣トーク
  • 野郎どもの猥談
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