敵幹部でも主人公見たらテンションあがる…あれ?(冷や汗) 作:苦い経験100%
ボクの喉に激痛が走る。
相当な無茶なのは分かっている。体の全部が壊れそうだけど、それはボクが歌をやめる理由にはならない。
ここにいる人達を守るために歌い続ける。これがあれば、何かあっても命だけでも取り留められる筈だ。
だから一度たりとも途切れないように歌う。
「Laaaaa───!!」
「…アマネっ! 無理するな! 平気! もっと流せ!」
「あ、はは…やっぱり、分かる…っ?」
ボクの背中で、ナツちゃんが叫ぶ。
その優しさは嬉しい。だけど、提案は飲めない。
キミはこの負担を許容出来ないからだ。
驕りとかじゃ無い。ボクみたいな素人でも分かるほどの無茶で大きな負担だから。
「大丈夫、キミのおかげで耐えられるから…!」
「ッあの人みたいなことを言わないで!それで貴女が壊れたら、あの人はきっとすごく悲し───」
「壊れないよ、今のボクは独りじゃないから」
ボクの言葉に、息を呑む音が聞こえた。
何も痩せ我慢をしているわけじゃないし、単なる気遣いだけで負担を流してないわけじゃない。
彼女にも無事でいて欲しいって気持ちもある。
その辺りの全部を考えてのことだ。
「キミがいる、仲間がいるんだ。
一緒に戦ってるから大丈夫なんだ」
「なら、なんでわたしに…!」
「キミがいないと勝てないからだよ」
今でも負担は凄まじい。だけど倒れる程じゃない。何とかギリギリを保っていられる。彼女のおかげでボクが戦えているのは本当のこと。
「ボクがこうして今も力を維持出来てるのはキミのおかげなんだ。そんなキミが今より大きな負担を請け負ってくれたら、多分少ししか耐えられない。そしたらボク一人で戦わないといけなくなる」
息は荒れない。視界は霞まない。
お腹に力は入るし、歯も食いしばる必要はない。
ボクは自分の背にいる子どもを見る。
泣きじゃくりそうな長い髪の女の子。
きっと優しい子なんだろう。辛いのを見るのが嫌なのかもしれないし、それよりも温かな何かで涙を溢しそうになっているのかもしれない。
ともあれ、ボクがやるべきことは一つ。
彼女と向き合うように姿勢を変える。
背中に触れていた小さな手を、ボクの胸に当てさせる。心臓はしっかり、それでいて澱みなく動いている。
それに安堵したのか、彼女は目を見開く。
「ほら! 大丈夫!」
「……わかっ、た!」
二人して不敵に笑う。即興でも心強い仲間だと思える。生命を守る歌はきっと途切れない。
苦しいことは本当だ。でも折れる気はない。
…でもブラスはきっとこれより苦しかったから、ボクがこの程度でへこたれてちゃ駄目なんだ。
さっきまでのブラスの音を思い出す。
前は壊れそうなガラスの音だったのに、さっきはとっても穏やかな風のような音だった。
重圧から解放されたみたいに安らかだった。
でもそれも、ほんの一瞬のこと。
今では焼かれて苦しむような悲鳴と、泣きじゃくる子どものような音ばかりだ。
───誰だ、彼を壊れそうになるまで追い詰めて、なのにまだ彼を壊そうとしているのは…!
睨む形で赤い空を見上げる。
そこで衝突する炎の天使と、青い死神を見る。
まるで飢えた獣の取っ組み合いのよう。
ブラスは怒り狂ったような怒号を、天使の方は悲嘆に塗れた怒鳴り声を発してぶつかり合う。
「てっめぇ、良い加減にしやがれ…!」
「───!!」
「鎖が保たねぇか…!馬鹿げた出力だなクソ!」
鎖で縛られながらも炎がもがく。
鎖で縛りながらも死神が鎌を振り下ろそうとする。
怒りの音。必死な音。焦りの音。
絶対に彼を敗北させる訳にはいかない。
守る力を途切れさせないようにボクは歌う。
◆
逃げ惑う、逃げ惑う。
貧民達は唐突な火に驚き、狼狽える。
だが立ち尽くすことはない。
何故と嘆くこともない。
理不尽に前兆などないことを彼らは知っていた。失う時はいつも唐突で、親切な知らせなどない。
大災と不条理は同義だ、嘆く暇などない。
「───オイ…なんで、ブラスが…!」
「立ち止まるな馬鹿!あいつの邪魔になる!枷にならねぇようになんかするぞ!生きてなきゃお礼の百や二百も言えなくなんだから!」
「マーサ!あんた、あいつの帰り知ってたか!?」
「今知って驚いてるところだよ…! 何だってこう、あの子に背負わせちまってんだあたしは…!」
スラムの中で瓦礫を破砕する子ども達。
それと一人の大人を見る。
共に逃げることを提案すれど彼らは笑って「後から追いつく」「まかせろ」と言って炎と瓦礫の中を走る。
そして何かが凄まじいスピードで火や瓦礫から人を守っている。灰色の残像が絶えず回る。
自身より脆い命が、その身を賭している。
その事実を恥じいるよりも、出来ることがある。
ある者は自らと他の安全を確保した。
自分に力がないと理解しているからだ。
ある者は子どもらと同じように力を使った。
焼け石に水だとしても、ないよりかはマシだ。
ある者はある子どもと避難経路を探した。
今スラムを包む炎の壁に立ち向かうことを決めた。
飢え、病、人殺し。味わった不幸はそう少なくない。彼らは今この時だけそれに感謝する。
確かにどうしようもない炎の山と雨を前にした。
恐怖もあるし絶望もある。
でもそれでも、折れる寸前で立ち向かえる。
◆
赤い空から炎が降り、大地が燃える。
煉獄もかくやといった惨事の中、女は笑っていた。
彼女は祈るように両手を組み、燃え盛る炎の中で静かに微笑んでいて、多幸感に包まれている。
祈る手は黒い釘に貫かれていても、血を流すことはない。その権利は、今なお燃え盛る御使いにこそあるとでも言うかのように。
アナーキストを名乗る女、つまりイザベルにとって、エリヤという神父こそが光だった。
故に、彼女の中に信仰心はない。
故郷であるエディンにおいて、進化者に生存は認められない。生きていても良いことなんて一つもないし、自身の生命が肯定されることもない。
そう捨て鉢になっていた彼女を拾い上げたのがエリヤであり、彼女が生きるために必要なものを与えたのも彼であり、彼女の心に寄り添ったのも彼だった。
〝一緒に生きてみませんか?〟
そんな問いかけに頷いたのも、彼だからだ。
彼女にとってエリヤこそが唯一だが、しかし彼にとってはそうではないことをイザベルは知っていた。
エリヤは全てに優しい人間であり、例外があるとすればそれはエリヤの弟だと彼女は理解していた。
そこに嫉妬がないと言えば嘘になるが、エリヤが弟を喪うことは望んでいなかった。
だが、エリヤは家族よりイザベルを選んだ。
その事実が彼女をこれ以上ない程に苛む。
その事実が彼女に暗い喜びを与えてしまう。
〝───ああ、私、選ばれてしまったんだ〟
万人に優しい彼が、唯一の特別である筈の家族よりも自分を選んだ。その事実はイザベルの心に激痛を走らせて、それでいて仄暗い陶酔のようなものをもたらした。
〝私、こんなにも罰当たりなのに〟
だから、イザベルは思うのだ。自分の全てはエリヤが使い、平らげることが相応しい。体も心も力も、全ては彼が扱い尽くすべきであり、自身はそれに応えると。
だが、如何なる感情も長く苛まれれば腐りゆく。発端にあるのは自責の念であった筈が、選ばれた喜びと事実が蝕んで、今では舌を溶かす程に甘い毒と成り果てた。
全てを使って欲しい、平らげて欲しい。
選んでくれたから、そして大切な唯一であるから。
私に生きることをくれた光だから。
だから何があろうと側に立つと決めている。
まるで皿に喜んで乗る供儀だ。
神父であった筈の男は、既にそれを口にしている。
選んでしまった男と、選ばれてしまった女。互いに過去から苛まれ、蝕まれて行き着くところまで来てしまった。
───彼女の力の名は
それは痛みと傷を作らない釘を作り出す。
そして、これに貫かれたものは、彼女の意思次第で持っていた『負』を暴発させられる。
その『負』は心身を問わない。
古傷は血を流す。病は重篤となる。心の傷は開く。
…自身を貫けば代償としてその苦しみを共有するが、負を暴発させる力は更に強くなる。
イザベルの手はやはり貫かれている。
エリヤの喉と同じように深々と。
同じ苦痛を味わう為に、彼に全てを与える為に。
それが約束であり、頼み事だったから。
〝イザベル…私は少し…疲れました…〟
〝なら…私も一緒に行きます…〟
そんな会話もあったなと、彼女は少しだけ思い出した。
短め番外編
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学パロ世界線
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ひたすらキスだけのブラスとアマネ
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彼氏持ち女性陣トーク
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野郎どもの猥談