敵幹部でも主人公見たらテンションあがる…あれ?(冷や汗) 作:苦い経験100%
二章終わりまで書き切りました
思いのほか長くなってしまった(シリアス含)
うごご…(懊悩)
六区、第四スラム付近。
炎で構成された壁の前には既に幾らかの消防士が揃っており、避難中に足を止める野次馬もそれなりにいた。
大火に対して消火を試みるも、炎の壁が消えることはない。そこから燃え移った炎も消えてはくれない。そんな異常事態を前に、狼狽える人間は多かった。
それでも消火活動を何度も試みる者が殆どだ。その全てが徒労に終わるとしても諦めない者が余りにも多い。無茶を承知で、炎の壁に飛び込むことを提案する若者もいた。
そんな立ち往生の中に、一台の黒いバンが乱入する。扉が弾かれたように開いて出てきたのは、黒のツーブロックの男。彼は髪と同じ色の無愛想な目を持っていて、鋭いそれはもはや威嚇の域に達している。
つまりはE1班の一人、ハルニレ・アガタだ。
他の班員達の静止を振り切るように彼は強い足取りで消防士達の間を突っ切り炎の壁へと向かう。
「退け、邪魔だ」
「きみ、何を…!」
そして自分の近辺にいた人間全てを追い払い、右足を高く掲げて強く地面を踏み、叫んだ。
「阻め、
同時に、彼の右足を起点に氷が生成される。
莫大な量で構築されて行くそれは、炎の壁を閉じ込もうとして溶かされたり、炎の壁を埋め尽くしたり、しかしやはり溶かされて行く。
その光景を見れば、誰であってもアガタが「進化者」だと理解出来るだろう。
「うおおおおお!?進化者!?」
「クソッご存じない方か! すいません、特異対策局です! 説明は後ほどします! 今は彼が捕縛対象ではないことを理解していただければ!」
慌てる救助隊や消防士に、イサカ主任が慌てて説明をする。動揺が広がる中でもアガタは炎の壁を消そうとしてか、何度も何度も氷の山を生成していた。
だが炎の勢いが弱まることはない。
無慈悲に氷を液体に返し、蒸発させ、アガタの尽力を徒労に変換させて行く。
「こりゃ、消えないのか…? 供給され続けてんのか、復帰してくるタイプか…? まぁでもやっぱり副局長の言う通り、普通の炎じゃないみたいだねぇ…ウチの班員でどうにか」
「ふざけるなよクズが…!」
「アガタくーん????話聞いてる????」
変なスイッチ入っちゃったか、とイサカが焦り出したと同時、アガタは歯を食いしばりながら再度右足を踏み抜く。
アガタの足から氷がとどめなく生み出される。
生み出す都度に溶かされてもなお、その炎を埋め尽くさんばかりに氷を作り出していく。そのペースは常軌を逸しており、他の班員も圧倒される。
だが無茶なのは明らかだ。
アガタの体は震えだし、唇も顔色も青褪めて行く。それでもアガタは氷を生み出すことをやめない。
「アガタ、下手したら足が壊死するぞ!! 今すぐ止めるんだ、他の方法を…!」
「それでも構いません…!クズの思い通りになる時間が長引くよりかは億万倍マシです…!この足一つが、助かる命の糸口となればそれで良い…!!」
「最近話を聞いてくれないなぁこの子!!」
悲鳴にも近い嘆きを口するイサカ、その横で鬼気迫る顔でアガタは氷を生み続ける。
そしてその行いに応えるように、炎の壁の向こう側から微かではあるが声が届いた。
『そこだけ炎の勢いが弱い!飲み込める!?』
『まずやってみないとなんとも!』
『無理すんなよ坊主!』
声色からして、子どもが2人。大人や青年が数人か。ともかくそんな多種多様な声の中で、絶えることを知らない炎の壁の一部が歪んだ。
炎が飲み込まれ、炎が氷で埋め尽くされる。壁の外と内側、双方向から炎の壁を破ろうとする行い。
それが炎の壁に、僅かであれど穴が開く。
イサカとアガタはその目で見た。
茶髪に青い瞳の少年と、紺の髪と目の少年。彼らのそばには、幾人かの青年や老人。
要救助者達がそこにいる。
そして、イサカは目を見開いた。彼は茶髪に青い瞳の少年、つまりジャックの背丈と体格に見覚えがあった。
総合病院への襲撃があった夜。夜空を飛んでいた子ども。それはもしやすると目の前の───いや、今はその思考に時間を割く必要はない。
イサカの思考が切り替わる。行動は早かった。彼は通信機をジャックの方に向けて投げながら、周りに指示を出し始める。
「そこの少年、その通信機で連携を頼めるか!?」
「わかった!!おねがいします!!」
交わす言葉は短い。
それでも着実に災禍から逃れる命があった。この時点で、ある少年の敗北は爆ぜてなくなった。
◆
第四スラム内部、ブラスとエリヤの激突は続く。
炎の剣が車輪のように回る。切りつけて燃やすために。ブラスはその攻撃の一つ一つに真正面から向き合わず、鎖を伸ばして立ち回り、瓦礫や廃墟を足場に駆け回り、エリヤの背後に回って鎌を振り下ろす。
だが読んでいたのか、そこには既に炎の壁がある。
「備えがいいなクソ!!」
悪態をつきながら態勢を立て直す。
エリヤは手に炎の球体を作りながらそれに応えた。
「逆に貴方は備えていても想定外をしでかすようだ!
会議の時から思ってましたがイカれ、というかその立場で夜に一発とかバカにしてるんですか!?」
「何も言い返せねぇ!!!!!!」
圧縮された球体の炎が火柱に。
それはさながら竜のように姿を変え、ブラスを飲み込もうと大口を開く。
ブラスは至って落ち着いたまま、竜を大鎌で裂きながらエリヤの下へ肉薄し、青年の体を両断しようと構える。
だがエリヤは鎌が振るわれる直前、ブラスの持つ長柄を抑えるように蹴りを繰り出す。
「がっ!?」
「最初からそうだった!大切なものを人質に取られているくせに、それでも何かを救おうなどと思い上がりにも考えなしにも程がある!全てを失うとは考えなかったんですか!?人を救って優越に浸るだけならまだいいのに、それすらない!ただ助けるばかりでキリがなく、しかもそこには見通しがない!!人を陥れる悪魔とどう違う!?」
叩きつけるような叫びだった。嘆くような糾弾だった。エリヤの叫びは、釘に貫かれた喉から迸る。単なる義憤ではない、寧ろこの声は大いにそれから遠い。
見たくないものを見た。自分が辿れたかもしれないもしも。それを否定したいという悲嘆。
だが意味のないことだ。ブラスとエリヤでは前提が違い過ぎる。もしもの光景こそ近しいものかもしれないが、道程は異なるだろう。
それでも、エリヤの血を吐くような叫びは続く。
「まやかしの希望を配って絶望を増幅させるだけだ!! ただいたずらに期待だけを生むだけだった…!」
蹴られた威力に押され、ブラスは仰向けに倒れる。青白い髪が汚れ、彼の体に炎の剣が狙いを定める
だがそれらが矮躯を貫くことはない。
「…じゃあ見て見ぬ振りが正解だったのかよ…!」
ブラスが搾り出すように溢す。
彼はダメージが残る体を無理矢理動かし、血を吐きながらも柄を支えに跳ねるように立ち上がって鎌を振るう。
エリヤは咄嗟に飛び退くが、ブラスは半ば倒れ込むようにエリヤの方向へと向かう。
「目の前の子どもを見捨てるのが正解かよ…! 子どもを切り捨てて家族選ぶのが正解かよ…! 見過ごすことが正解なのかよ…! 出来ねぇよそんな決断…!」
ブラスは幽鬼のようにふらつき、しかし叫んでエリヤに襲い掛かる。呻くような叫びは、自身が選んだ筋道への回答だ。
だがエリヤは、やはりブラスを責めるように言う。
「命に責任が持てないのであれば、その時点で行動するべきでは無いんだよ…!」
「だから一緒に歩いて、最悪に落ちないように踏ん張ろうとしたんだよ!! 何もしないで手放しちまったらそれすら出来ないだろうが!!」
「───…本ッ当に貴様は……っ!!」
死を馳走する大鎌が振るわれる。
目掛けるは首一つの命一つ。
情けも容赦も一切ないが、それでも届かない。
エリヤの作り出す『炎の手』が迫る鎌を巻き取り、持ち主ごと再び地面へと叩きつけようと唸りをあげ、少年の体が宙に飛ぶ。
「幾ら貴方が目を開いても、もう私達には光なんて見えない筈なんだ!! 目の前の傷口には痛みしかないんだ!! 過ちばかりが積み重なって泥しかないんだよ!! だから選べよ! 選んでくれよ…!! そうじゃないと、私は…!」
ブラスは咄嗟に鎌を消した。
手の拘束から放たれた少年は空中で身を翻し、再び黒い煙をその手に集わせて、青褪めた大鎌を出現させる。
狙うは一点、殺めるに足る一撃。
鎖を伸ばして、鎌の鋒を敵へと向ける。
そうして大鎌を敵に向けて投擲する。
エリヤはそれを幾多もの炎の手と剣を以て迎え撃つ。
命を刈り払うように回転する死の爪を、幾多もの炎が包み飲み込もうとする。死をもたらす大鎌の勢いを止めようと足掻いていく。
死んだそばから蘇り、鎌に縋って行く。
その数はやがて莫大なものとなり───やがては大鎌を飲み込み、その勢いを止めた。
「…!」
「切り捨てないなら、私と違うなら、もう、消えてくれ…!」
少年は鎌を手に作り直すが、しかし遅い。
鎌を飲み込み終えた炎の武器が襲い来る。その数を測るのも馬鹿らしい。数の暴力を新たに作り出した鎌で殺し、削ろうとするがしかし間に合わない。
やがて、群のうち一槍が、少年の体を貫いた。
そうして、貫いた槍が爆ぜて燃え盛る。少年の体を焼いて離さないと言わんばかりのそれは、死を与えられようとも、止まることなく再び燃え盛る。
それがエリヤが手にした力だから。
「───あ、ぁ」
その場に倒れ伏そうとする少年。
彼を見ながら、青年は呻くような声を出す。
矮躯を炎が貫いている。少年の手から大鎌が散じていく。命の終了が可視化される。
終わった、終わってしまった。
エリヤはそう思いながら、目を閉じ───「何勝手に死んだことにしてんだァ!!」───頬を拳で殴られた。
エリヤは我が目を疑った、疑わないはずが無い。
心臓が燃える炎で爆ぜようとも、その体を焼かれていながらも、男はそれでも死なない。
最早、同じ人間かすらを疑った。
「そこは死にましょうよ人として…!」
「死んじゃいけない理由が多すぎんだよ」
「自分で増やしたクセによく言いますね、割と良い性格してるじゃないですかこの野郎…!」
炎に焼かれながらも、男は生きている。
滑稽なるかな死の舞踏者よ。心一つを根となして、僅かな命にしがみつき、武器すら維持できない有様でも、彼は拳を振り上げて───守るための戦いに立っていた。
心臓など焼死寸前、それでも
燃料などないと分かっていて、それでも今もなお注がれる歌があるならば、命が消える理由はない。
死にゆく筈の神経脳髄血管、その全てが躍動し際限無く命が燃えている。体の外傷など知ったことではない。今ここで敵を仕留めなければこの生命に意味はない。
彼はそう思って、最後の時間を振り絞る。
「うるせぇ…! さっさと…! この火事止めやがれ…!」
顎を掴む、皮膚が燃えようと知ったことではない。殴りつける。鼻と顎を重点的に。正しく火事場の馬鹿力と言うべきか、エリヤは血反吐を吐きながら殴打を受ける。
ありえない、そんな驚愕と共に殴られていく。
───けど、時間切れは早かった。
結局は命一つの、人間一人だ。心臓を炎で貫かれて長時間生きている者がいたとしたら、それこそ本当に人間ではない。執念と意地、そして魂一つの生存が終わる。
今度こそ、ブラス・リッターの死は確定する。
だが、それでも足掻いている。
まだ彼の命は消えていない。
その目すら死から程遠い。敵対する者を睨みつけ、喉笛に噛み付く勢いで飛びかかろうとする。
だが体は確かに限界だ。彼はエリヤを前にして無様に倒れ伏す。それでも起きあがろうとする。
残る時間が僅かでも、彼は諦めない。
彼は倒れ伏しながらも、拳を杖にして、今も絶えそうな意識と命を繋ぎ止めながら言葉をこぼす。
「…まだ、生きなきゃなんだよ…!ここ、なおさなきゃだし、こどものぶじ、みないとだし…かぞく、まもれてねぇし……あいつと、まだ………しんで、にげて、おしまいにしちゃダメな…こと、が…ある…!」
それでも終わりだ。どうあれ、ブラス・リッターの命はここで終了する。エリヤはそう結論づけて、目を閉じた。
まるで黙祷のように、懺悔の祈りのように、ようやく得た安堵を受け取るかのように。
しかし、エリヤはまだ終わらない。
彼は空に手を伸ばして、更に力を行使した。
目を閉ざしたまま、何も見ないまま。
赤い空に、炎が集まり出す。極大の出力。最大の威力。それを体現するかのように、生まれてきた炎達は大剣の形を成そうとする。
もしこれが完成し、着弾すればこのスラムは勿論のこと消し飛び、周囲も無事では済まないだろう。
当然、それには自分の身も含まれている。自身が選んだ少女も含まれている。
それを理解した上で、彼は空から炎の大剣を落とすつもりでいる。苦痛を終わらせる為に全てを焼き尽くそうとする。
全てを抹消し、凪いだ安寧を得る為に。
ゲームオーバーだ。ブラスの命は死に沈み始める。守れるものはない。何も手にする事はない。全てが灰になり、八つ当たりによる壮大な心中が完遂されるのだろう。
だが、エリヤは殺す順番を誤った。ブラスに拘らず、今もなお歌を注ぐ者を真っ先に殺すべきだった。
本当にブラス・リッターを殺したかったのならば、同類ではない彼の全てを否定したかったのであれば、今なおどこかで歌う少女を先んじて潰すべきだった。
彼女の歌が、辛うじて命を繋いでいる。
物言わぬ体に、青い光が注がれている。
物言わぬ体を、赤い葉のようなものが包み始める。
物言わぬ体から、ガラスのような音がする。
フジワラ・アマネは気付いていた。
ブラスの音が途絶えたことを知り、ブラスに注いだ歌が霧散しようとしていることを知り、そして、最期まで彼が諦めていないことを知り、彼の心の音を聞き届けた。
だからこそ、絶望せずに叫ぶことを決めて、無茶を承知で喉が壊れようとも、二重の旋律を紡ぐことを決めた。
命を繋ぐ為の歌に、命を支える為の歌を重ねる。
アマネとナツの共有は続いている。
故にその幼子も、ブラスの死を知覚した。それでも、最期でも諦めていない声があった。
ならば、そうであるならば。
ここから先はスピードが命だ。死に沈む命を引っ張り上げる、出来る出来ないではない、やるかやらないかだ。
「……耐えられる、いや耐える!だからやれ!!」
「ごめんね、少しだけ本当に辛いと思う…!でも、絶対に引っ張り上げてみせる!」
とん、と細い指が白い喉を叩く。
絶対にここでは終わらせない。ブラスは続けることを望んだ、それは確かにそうだ。
もう正しいか否かではない。ただ生きて欲しい、死んで欲しくない、終わって欲しくない、そんな想いが溢れ出して止まらない。
躊躇うことなく、アマネが叫び歌う。
少女の心が闇に堕ちることはない。
そんな暇があるのならば喉を開け、そして歌えと彼女は己を鼓舞する。嘆くよりも、やるべきことがある筈だ。引き裂かれていくのを見過ごしてはならない関係ある筈だ。
だから、彼の命を諦めないで叫ぶ。
「キミだけのための歌だ、今はキミのためだけのボクだ! 絶対ここで終わりになんかしない!」
「……ふへっ、この人、おっっも…あの人、大変だ…!」
アマネはナツに対してこの負担は極力渡さない。
それでも、この幼子が戦いたいと思っていることは理解している。少しだけかもしれないが、一緒に体を襲う負担と戦った。
新たな旋律は既に紡がれて、注がれている。
それは少女が此処で喉に刻んだ少年の歌。
少年が歩んだ良いも悪いもひっくるめて、それでも「そうだったんだね」と頷いて、背中を支えるような歌。
一人を想って生み出される波紋は白に始まり、赤に染まり、黒に変わり、そして青へと戻る。
当然、代償がないわけではない。
少女の歌は血を伴っている。喉が激しく痛み、赤い液体をこぼしていく。子どもが心配の声を張り上げる。
それでも、彼女は歌うことをやめない。
むしろ獰猛に笑ってみせた。
自身の全てを注ぐ勢いで、力を振り上げていく。苦痛は苦痛。苦しいものは苦しい。なのにどうしてか、恐怖が溶けるように消えていく。
祈りにも等しい歌は途絶えない。
そうして、少女の白い喉に赤い葉の意匠を持つ刺青が首輪のように浮かび上がる。
───そして最後、真紅の空が紺碧に塗り潰された。
短め番外編
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学パロ世界線
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ひたすらキスだけのブラスとアマネ
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彼氏持ち女性陣トーク
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野郎どもの猥談