敵幹部でも主人公見たらテンションあがる…あれ?(冷や汗)   作:苦い経験100%

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「「キミとボク」」

 

 

 死にそうな時に走馬灯を見る、とは本当のことらしい。

 でもそれは一瞬の出来事。瞬く間に過ぎ去っていく記憶は膨大で、それでも内容はわかるものだから「ファスト映画みたいだな」とぼんやりと思った。

 

 頭の中にある諸々が飢えと恐怖で正気共々吹っ飛んでた時期。家族に拾われて少しずつ『戻った』時期。自分の持ってるもので、周りに恩返し出来ないか悩んだ時期。敗北してやっと決定的に『理解した』時期。

 餓死寸前は本当に嫌だな、と少し思う。色んなことがあったけど、そこが最大のトラウマらしい。

 …自分のことなのが、少し負い目がある。

 

 振り返って、思い直して、思った。

 人生とは、結局のところ一人だけの道だ。

 生きて死ぬ。始点と終点だけ決まっている。

 

 でもその中で、読まない本やプレイしないゲームみたいに、大事なもの、嬉しかったことや悲しかったことがひっきりなしに積み上がっていく。

 皆それを拾い上げている。自分の道の中でゴロゴロと落ちてるから、皆が各々のものを拾う。

 

 でも俺はどうにも馬鹿で阿呆だ。

 道からそれまくって、他の道にある岩やらゴミやらを除きに行ってしまって、歩けないって人を背負ってる。

 その重たさに、体が潰れそうになっても。

 

 でも、不思議と後悔はない。

 というか、後悔に浸る暇が潰れてる。

 多分、俺は終わってから「何でこんな苦労を自分から買いに行ってんの? 馬鹿なの?」と思うだろう。

 でも、俺は俺にこう言うのだろう。

 「やんないと落ち込むんだよなぁ」って。

 

 人生は割と自由なようでシステマチックだ。選べるものなんて案外少なくて、選択肢は最初から決まってる。

 俺は確かに選んだが、しかしそうでもない。

 そうするしかなかったんだ。

 

 だからといって、俺の人生は肯定出来ない。理由はどうあれ、テロに参加したし、人道から背くこともした。

 だけど俺は自分の一生を否定も出来ない。

 結局、そんな「選択をした」のは俺だから。

 そんな生き方をしてきた。何年もずっと。

 

 …だからその、ほんの少しだけ思う。

 家族に見せられないことも、部下に話せないことも、家族に誇れることも、託したことも、そういった俺の選んでやってきたことを、少しだけでも「そうだったんだね」と、頷いてもらえたら。

 

 ただ一声だけで、その一言だけで良い。

 その言葉があれば俺はきっと「ああ、そうだったんだ」と納得することが出来て、きっとどんな後悔も受け入れることが出来て、渡された選択肢を飲み込むことが出来る。

 俺は、そういう俺なんだと思える。

 その時ようやく、俺は俺を肯定出来ると思う。

 

 

 

 

 …だから、ただ起きるだけではダメなんだ。

 

 

 

 

 俺はそれを受け取った。今注がれるこの歌は、決して一人で生まれたものじゃなくて、俺の道筋を知っていて、でもそれでも否定も審判もしなくて、そうなんだと頷いて、背中を押して支えてくれている。

 

 この声に報いるには、死からの離脱では足りない。

 元より、ここで死んでやるつもりはない。

 どのような事情があっても放火魔は必ずぶちのめす。

 それには、莫大な力がいる。

 アマネの歌が、その道筋を作ってくれている。

 意識の奥の奥にある力。

 俺はそれを掴み、発現するだけだ。

 …この世の末に立つ四騎士、その全てと果てが。

 

 

 ───いいや、それでは全く足りない。

 

 

 それだけでは届かない。勝つのであれば不足はないが、しかし違う。求めているのは全部だ。器用貧乏など望むところ。数を積み重ねて、凝り固まった一を砕く。

 今こうして俺を死から引っ張り出すみたいに、助けることも出来る力が今は必要だ。

 どいつもこいつも傷が多すぎる。

 圧倒的な力は欲しい。助ける為の力も欲しい。

 強欲、節操なし、そんなのはもう分かってる。俺はきっと欲張りで我儘で執着しやすい人間だ。

 大いに反感を買おうが知ったことではない。

 全て作り直す、色の意味を変える。

 

 

 〝うん、だから良いよ。使っちゃって!ボクの全部!〟

 〝ボクの全部で、キミを『次』に連れて行く!!〟

 

 ───うん。あんたとなら、何だって掴めそうだ。

 

 

 勝利を貪る白を、供儀を否定する白に。

 戦争を育む赤を、死と再生の赤に。

 飢えを呼ぶ黒を、一つの終わりを呼ぶ黒に。

 死を振り撒く青を、敵を討ち取り喰らう青に。

 

 そしてその全てを、一枚の鏡へと。

 このひと時だけだとしても問題ない。

 

 

 

  ◆

 

 

 

 

 

 真紅の空が紺碧に塗り潰される。

 それは澄み渡る夜空のようでもあり、濃い快晴の青空のようでもあった。どちらの空か、判別はつかない。星々はなく、月もなく、太陽もない空が現状であるからだ。

 

 炎の大剣を作り上げて、エリヤは目を開く。

 同時に彼の胸中は驚きで支配される。

 空は真紅のはずだ。自身がそのように塗り替えたはずだ。だというのに、今やその色は見る影もない。

 青年は驚きながらも、咄嗟に横たわるブラスを見た。

 

 青褪めた髪を持つ少年が、赤い葉のようなもので包まれている。まるで人の皮をひっくり返したような色合い。

 そして少年は、まるで実りを得るようにその葉を払う。動かなくなる筈の体が、再び立ち上がった。

 

「その、姿…!」

 

 エリヤは目を見開く。燃え盛る炎の髪が、驚きを表すようにうねる。無理もない話だ。

 火傷の跡は心臓付近に、しかしそこに穴はない。青褪めた髪には黒い影が蠢き、獣の耳のような形を象っている。

 そして少年の青白い目に、薄く緑が混ざっていた。

 

「───…ああ、一生頭が上がらねぇよこれ…!」

 

 顔に手をやりながら、ブラスは震えた声で言う。

 ワンナイトで抱き潰した上に命まで引っ張ってもらった身だ。人生を何度捧げても返し切れないのではなかろうか、そんなことを真面目に考えつつ彼は赤い葉を束ねる。

 

 そして、ガラスの砕けるような音がした。赤い葉は黒いガラスの欠片となり、一枚の黒い鏡として再構築される。

 姿見となる程の大きな、楕円形の大鏡。

 写すものは所有者である少年ではなく、夜空の星々の瞬きのような輝きだった。

 これがブラスの得た祈り、進化した能力。

 

頼む! 煙り染まる神鏡(ナウイ・テスカトル)!!

 

 所有者の声に応えて、その鏡が姿を変える。

 音を鳴らしながら砕け、鏡の欠片の一つ一つが黒い風へと姿を変える。それは幾多もの陣風となり、少年の指先に従った。

 彼はその風が持つ力を知っていた。そうなるようにと感情を込めて作り直したものだから。

 

 黒い旋風が槍のように纏まる。

 石突にあたる部分には黒い硝子で構成された投槍器があり、ブラスはそれを用いて空にある炎を目掛けて槍を飛ばす。

 黒い槍が炎の大剣と衝突する。風の塊は呆気なく炎の塊を穿孔し、内側から蝕むように吹き荒れ、消失させた。

 再生はしない、消えた炎は蘇らない。

 

「なっ───!?」

「強制解除。俺達はこの炎を認めない。

 バカでかいもん作りやがって、消すのに鏡全部使う羽目になったじゃねぇかクソ!!」

「…ああ、そうですか…!」

 

 炎の髪を揺らし、青年が手を構える。

 無数の剣と槍が炎から構築されていく。鍛造されていくそれらは、形を与えられたが故に死を知らない武器達だ。

 砕けようが、殺されようが燃え盛る群体。

 

 少年はそれを見ても狼狽えない。

 黒い風が時間をかけながらも少年の手に集う。再び一枚の黒い鏡となったそれは、再度音を鳴らして砕け散る。

 欠片の一つ一つが大鎌を形成した。

 本来持っていた『青褪めた大鎌』よりも野生的な姿となったその刃は、まるで鳥の嘴のような鋭さを持つ。

 そして長柄には蛇の装飾が刻み込まれていた。

 

「突き貫き、そして燃やせ!!」

「生贄だ、腹を満たせ!!」

 

 剣と槍の山が群れを成して突撃する。一つ一つは輝かしい武器であっても、群れれば殺意の権化と言って差し支えない。破壊する為に、焼き絶やすために、その全てがただ一人に向けられた。

 

 少年は回避しない、大鎌を炎に投げつける。

 鎌は以前と同じ力を持っているのか、炎の武器達は鎌に切られた物からすぐに霧散していく。

 だがそれならば、炎は消えない。

 散らばり消える筈だった火は、再び燃え盛り剣としての形を取り戻し、蘇り始め───ることはない。

 散り散りとなった炎の全てを鎌が吸い込んで行く。

 やがて鎌の持ち手に刻まれた蛇の装飾が赤い光で満たされた時、一人でに鎌は少年の手に戻った。

 

「ふざけろ!なんっだこの規模!?さっきの大剣といい、あんた俺諸共死ぬつもりなのか!?」

 

 疲れ切った様子で、少年は言う。

 呆れたような感情を含んだそれを溢して、今にも倒れそうな体を引きずって彼は走り始める。

 手に握りしめられた鎌は再び鏡に姿を戻し、やはり音を鳴らしながら砕け散り、その欠片が少年の周りを巡る。

 

「はっ…はは…貴方は、本当に……!」

 

 走り迫る少年を前に、エリヤは笑う。

 声だけが笑っている。そのうちに秘めた感情は、決して明るいものではない。幾度もを炎を吐き出し、眼前の命を焼き絶やすことを選んだ彼は、ここに来て結論を吐いた。

 

「私を苛立たせる…!! ブラス・リッター…!」

「なにそれ、言うにこと欠いて逆ギレ!?」

 

 少し、ブラスの口調がブレた。彼らしからぬ言葉遣いだが、今それを指摘する者はいない。

 

「ええ、白状します。貴方が羨ましく、妬ましい。貴方が間に合うことも、何かを手にすることも、守ることも、失わないことも、何もかも全てが腹立たしい…!」

「俺にどうしろってんだよそんなこと!?」

 

 ブラスの言葉に、エリヤは微笑んだ。

 にこやかで清々しさすら感じるそれは、恐らくは彼の本音。弾むような声色のそれは、いっそ危うさ感じさせる程のもの。いいや、最早残るものはそれしかない。

 下手をすれば恐怖しか呼ばないもの。

 

「そうですね、私達と一緒に消えてくれますか?」

「そうかよ。なら、俺達は絶対に殺して楽にしてやらねぇ!」

 

 紺碧の空の下、二人の男が対峙する。片や赤い髪を炎のようにうねらせて、片や青白い髪に黒い影を蠢かせて。

 二人の差は余りにも多い。

 飢えを知らず、しかし苦難に遭遇した者。

 餓鬼のように生き、人に引き上げられた者。

 

 環境も国も違ければ、同一の人生でもない。

 よって比較など意味がない。それでも人は意味の無い比較をするものだ。その上で落ち込みもするし、嫉妬もするし、憎みもする。

 それが悪い方向に爆発したのが、エリヤという青年だった。彼は正気も何もかも投げ捨てて、自他を燃やし尽くそうとする。

 

 エリヤとブラスが手を突き出す。

 青い瞳と、青と緑が混じる瞳がぶつかる。

 力の宣誓は、全く同時だった。

 

()を燃やし尽くせ!! 異端を絶やす業火(ケルブ・マルアハ)!!

続く為に終わらせろ!! 煙り染まる神鏡(ナウイ・テスカトル)!!

 

 業火と鏡の欠片が衝突する。

 一撃の規模・出力は間違い無くエリヤの方が上だ。雪崩のように迫り来る炎に際限はない。

 それでもブラスは燃え尽きない。

 鏡の欠片達が、先に吸い込んだ炎を吐き出して行く。エリヤのものと違い青いそれは、迫り来る赤色と拮抗し、僅かばかりの時間を生んだ。

 

「───言いたいことは色々あるけど…!」

 

 少年はその時間で、走る。

 僅かに生まれた鬩ぎ合い、それを無理やり隙と見なしたのだ。迎撃として幾多もの炎を向けられながらも、それでも彼は馬鹿正直にエリヤのいる場所に向けて駆ける。

 

 欠片が一枚の鏡に戻り、少年の前で盾となる。

 向かってくる炎を防いでくれる筈のそれを、ブラスは躊躇なく拳で殴りつけて砕いた。

 砕けた鏡達は白い破片となる。

 その全てがブラスの体の中へ溶けるように消える。

 そして、その直後だった。

 少年の体躯が、一瞬にして青年に肉薄したのは。

 

 爆発的な身体能力だ。反動もあるのか、少年の体からは血が吹き出した。それでも彼は拳を止めない。怒りを込めた一撃は、既に避けられない距離まで迫っている。

 

俺が気に入らねぇなら俺にだけ当たれよ馬鹿野郎!!

 

 そうして、少年の叫びと共に拳が放たれる。

 避ける術はない。エリヤは顎を横合いから強く殴りつけられ、体も吹っ飛ばされて、意識は大きく揺さぶられた。

 それだけではない、身体の中で衝撃が爆ぜる。

 

 意識を保つことなど不可能な一撃。

 青年は血を吐きながら、消えゆく意識の中で、手にした力が消えていくのを実感して、遺言を遺すように思う。

 

 〝…最後の最後まで…気に入りませんね…〟

 

 薄れゆく視界で、青年は少年を見る。

 時間切れなのだろうか。ブラスの瞳の色に緑はなく、髪に蠢いていた獣の耳のような影はない。

 彼は膝をついて、肩で大きく息をする。

 その間でも、ずっとずっとエリヤを睨んでいた。

 それを目に収めて、泣きそうな子どもの顔みたいだなと思いながら、エリヤは瞼を閉じていく。

 

 〝……思えば随分遠くまで来てしまった。沢山の人を巻き込んで、あの子を地獄に引きずって、〟

 

 意識が闇に消えていく。

 一人の男の敗北が決定していく。

 

 〝───ああ、本当、何してるんですかね、私〟

 

 エリヤの喉に突き刺さっていた釘が砕ける。

 それと同時に、紺碧の空から赤い葉が落ち葉のように降り注ぎ───スラムを覆う火の壁が消失した。

 

 

 

短め番外編

  • 学パロ世界線
  • ひたすらキスだけのブラスとアマネ
  • 彼氏持ち女性陣トーク
  • 野郎どもの猥談
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