敵幹部でも主人公見たらテンションあがる…あれ?(冷や汗)   作:苦い経験100%

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難産でござい



3章
ハイテンションの時は周りの目に気をつけろ


 

「───ブラス・リッター、ご同行願います」

 

 そんなバリトンボイスがアラーム代わり。

 朝、目が覚めたら、四方八方を筋肉質かつ黒スーツにサングラスのおっさん達に囲まれていました。

 正直ちびるかと思った、何この威圧感。

 筋肉ヤバ過ぎて人じゃねぇよ、生きた壁だよ。

 

 驚いた俺は「ひゃい…」としか返せなかった。

 いやだって寝起き早々にナイスバルクサングラスの四人がベッドの東西南北に配置されてんだぞ? オセロなら俺も筋肉グラサンウォールズの仲間入りだよ、何考えてんだ頭おかしいんじゃないか俺?

 

 そんな寝ぼけた頭でも、というか筋肉の情報量に叩き起こされた頭でも、今日という日が何の日か知っている。

 特異対策局との『取引』の日だ。

 事前予告はされていたけど、まさかお迎えを出してくれるとは思わなかった…怪我人だから?  

 手厚い…前が前なだけに手厚い…少し泣いた。

 驚いたグラサン筋肉さんから「怪我が痛むのか?」とやたら心配された。この人絶対にいい人だ。

 

 黒服達からスーツを貸し出されて、それを着る。

 一応身だしなみは、きちんとして欲しいらしい。

 そんなことがあって俺は、一区の特異対策局───つまり本部、その副局長専用のオフィスに訪れた。

 

 

 そうして、時刻は9時ちょっと。

 朝の光は勢いを増し、昼へ準備を始めている。

 だけど今は太陽に雲がかかっているらしい。窓からは濃い青空が見えるのに、オフィスの中は暗い。

 そんな青い風景を背に、机に向かう者が一人。

 そこにいるのは、恵体の大男。

 金色の逆立った髪と顎髭。獰猛なライオンのような瞳は、デスクの上にある胃薬の瓶で形無しだ。

 でもこの胃薬の瓶がなかったら普通に怖い。

 

 特異対策局副長の一人、クリフ・サンダーズ。

 いざという時に権力を使い倒し、そして多くの改革を進言する上層部の問題児その人。

 親密度が高くなると彼の自作料理を貰うことができることから「パパ」呼ばわりされていたっけ。

 そんな彼が、俺に対して言った。

 

「オレが誰か、分かるか? ブラス・リッター」

「クリフ・サンダーズ、ここの偉い人です」

 

 胃もえらい事になってる人です。

 とは口が裂けても言えなかった。胃薬の瓶で緩和されてても怖いものは怖かった。

 間近に見ると思いの外威圧感半端ねぇ。

 

「よし、そこまで分かってんならいい。

 楽にしてくれ、そう時間はかからんだろう」

 

 少し緩い空気の中、クリフ副局長が話を始める。

 

「オレも暇じゃない。わざわざ呼び出してから人格の判定なぞするつもりは毛頭ない。オレはオレでお前を洗った。

 第四スラム、そしてラメントでのお前の行動についての報告書を読み、更に当事者達から話を聞いた。

 お前がウチの部下と、酒の勢いで一晩やらかしたことはまぁ今はとりあえず置いといてだ。いや置いちゃだめだな、お前の行動の中で明らかにこれがバグすぎるんだが」

わかりました…俺の心臓を贄にします…

誰が部族みたいな責任の取り方をしろと言った?

 

 ことごとく真面目な話をへし折る過去のやらかしは本当に申し訳ないと思っています…今は上司とかと話してるけど、いざアマネの親御さんとか友人とかと話したら本当に殺されるんじゃなかろうか。

 いやだって考えてもみて欲しい。友達や我が子が酒の勢いでワンナイトしたやつが、当人にタトゥーいれたり命救ってもらったりとなんかもう有罪のオンパレードだ。

 …何が酷いって、そこまで分かっているのに、アマネに離れて欲しくないと思っている自分がいたこと。

 振り返ってて死にたくなって来た。

 

「……まぁともかく、オレはそうやって、お前という人間について色々知ることが出来た。

 自分は二の次で、年下の方に恩恵やらなんやらを回し、更には家族を守るために身を粉にして来た。

 だというのにそこに見ず知らずの子どもをプラスだ。俺はこう思った。何でコイツは血を吐きながらトライアスロンをしているんだとな…!」

 

 スパーン!と書類がデスクに叩きつけられる。

 ぐぅの音も出なかった。大方その通りですとしか言いようがない。でも見てられなかったんだよ仕方ねぇだろ!?

 反省はしているけど後悔はしていない。

 全力でつっこんだせいか、ぜぇはぁと息を切らすクリフさんを見ながらそう思った。

 

 彼が深呼吸と共に椅子に座り直し、叩きつけた書類をまとめ直しながら話を進めていく…いきなり落ち着かれるとかなり困惑するなこれ…。

 そんな無礼なことを考えてると、打って変わって冷静な声でクリフさんはこう言った。

 

「色々言ったが、人格面に問題はないと判断した。

 だから俺の方から提案する」

 

 ───取引の時間だ。

 

「お前の家族達の安全と真っ当な生活を保障する…とは言っても、いつまでも施設を使うわけにはいかない。少し事業に協力してもらうことになるかもしれん」

「事業?」

「復興と再建だ、後でデータを渡す」

 

 …心当たりがないでもない。

 とりあえず、後に来るデータを待とう。

 事業やるから労働してもらうとかそんなのだろう、そういう話が実際にあった。

 スラム域を都市部として再建して、それを進化者が外で生活しても問題ないと証明するためのテスト区にするってやつ。

 

「そしてお前は、ここで働き、オレ達に協力することで、隔離対象から除外される。大手を振って市井を歩ける。人並みの生活を手にすることが出来る。

 ここまでが取引の話だ」

 

 破格の条件だ。少なくとも今のところは。

 他にも色々と思惑みたいなのはあるとは思うけれど…まぁだいたい想像つくけど、家族達の安全と生活が保障されるのは大きい。断る理由はない。

 普通なら信頼出来ないとか、都合が良すぎるだとか、色々裏を疑うと思うし、そっちが真っ当な反応だ。

 

 でも、すでに「分かっている」ので疑いはない。

 この人は、進化者と非能力者の不和をどうにかしたいと、この人なりの立場で模索している。

 街と家族の安全を一番に考える人だ。

 だから、割と進化者にも抵抗がないし、もっと言えば「うまく力を法整備すれば良い感じになると思うんだがなぁ」とも考えている。

 …そのために色々し過ぎて胃を痛めてるけど。

 

「承諾か、否か。どちらだ?」

「承諾します…けど、良いんですか?」

「何がだ」

「…いや…俺が被害を出したのも本当だk」

成果で挽回して補填しろ。話は終わりだ。終わったことを気にする前に、この先どうするかを考えろ以上

 

 不安を爆速で片付けられた。それでいいのか副局長。とか思っている間にあれよこれよと話が進んでいく。

 クリフ副局長は「次の話だ」と言って、真面目な顔のまま、俺を見て言った。

 

「今回の火災は、お前の協力なくして止められなかった。あの進化者の炎は、非能力者だけではどうしようもなかった。お前達、進化者の力があってこそ止められた。

 …オレ達はこの事実を昔から知っていたし、今回はまさにその通りになった。

 …この質問をするのはお前で最後だ。

 何か褒賞がもらえるとしたら、何を望む?」

 

 きっとこの人なりの感謝の気持ちなのだろう。

 …でも申し訳ないことに、大それた回答は出来ない。

 

「なんっっっも考えないで寝たいですかねぇ…」

 

 俺は心の底からの憐憫の眼差しで見られた。

 

 

   ◆

 

 

 あの後、幾つかの連絡事項を受け取った。

 今回の取引は無事に成立したけど、その他諸々処置もあるから一週間と少しは待機となるらしい。

 

 俺が所属することになるのはE2班。

 アマネもクサビさんもいる班だ。初めて聞いた班だよ、バタフライエフェクトがデカすぎる。

 おい誰だ今「ワンナイトで元気な班が生まれましたね」とか言ったの。そうだね、罪悪感に塗れた俺だね。

 ともかく、これで本当にひと段落だ。

 

 家族達や子ども達に「普通の暮らし」をさせてやれるところまで漕ぎ着けた。今振り返っても結構周りに助けられっぱなしだな…申し訳なさが凄い…。

 随分と遅くなってしまった。

 けれど、ここまでこれた。同時に、これからだと気を引き締める。対処しないといけない問題はまだある。

 やらかしたことも、取りこぼして来たものも多い、その分まで頑張らないといけない。

 

 …それにここまで来たら、ちゃんと責任を取りに行ける…いや、もう大分個人的な感情になったけれど。

 ……先に退院されたのは少し寂しかった…喉元の刺青、まだ消えてなかったのに大丈夫なのだろうか?

 

 ともかく、既に色んなものが逸脱した。というか俺がレールをぶっ壊したようなもんだ。いや元から壊すつもり満々だったけど、壊し方が大分アレだったけど。

 持っている原作の知識はもう殆ど役に立たない。大体の人の性格と能力、それと行動目的とかは把握しているから、その辺りはまだ使えるだろう。

 そんなことを考えながら、病院に帰って来た。

 

 相変わらず俺しかいない大部屋である。

 ここにいられるのもあと一日。

 退院後は斡旋された一軒家に移ることになる。

 正式所属になるまで寮には入れないらしい。評価テストもあるから丁度いいとか言ってたっけ。

 うん、よし、とりあえずは問題ないだろう。

 ベッドの上で仰向けになりながら、寝た。

 

 

 

 

 

───いや寝れねぇけど??????

 

 はっきり言おう、くっっっそ寝れない。

 ぶっちゃけた話、今にも踊りながら叫び回って喜びというかそんな感情をぶちまけたい。

 やっっとだ!! やっっと皆の命の危険が一先ずは無くなったから駄目だぁやっぱ叫びたい!!!

 …その過程でどうにもならなかったこととか、焼け落ちたこととかあるのはわかっているけど、喜びが勝っている。我ながら薄情だと思う。それでも今は喜びたい。

 

 今俺は大部屋を一人でぐるぐる回ってる。

 あっち行ったりこっち行ったりで落ち着かない。

 変にハイになってる自覚はある。

 

 部屋の窓を開ける。時刻はお昼真っ盛りだ。

 濃い色の青空が目に心地いい。中庭で走りまくりたいけど迷惑になりそうだし、精神科に移されそうだからグッと堪えて我慢する。

 

 代わりに鼻歌を歌いながら部屋の中を徘徊する。通報されても大分仕方ない絵面である。

 でも体のざわめきが止まらない。体を動かしてないとベッドの上で爆笑する自信があるっつーかした。

 

 テンションが変に振り切れてる。体の制御が効かない。部屋の真ん中でグルグル回りながら「アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \!!」と全力で喜びを表現している。

 なんか外から「今なら愉快なブラスが見れますよ」とか聞こえて来たけど今はとにかく体を動かして大声で笑っていたい!! いやぁ皆が無事に生活出来そうで本当によかっ待ってさっきの声クロカゲさんの声じゃなかった?

 

「遠心分離ッターさん、回るのやめてくださーい。

 アマネさんと私がお見舞いに来ましたよー」

お、ごっ、ぎぃっがあああああああぁ!?!?

うぉ…凄い断末魔…邪竜かな?

「今ベッドに吹っ飛んでいったけど大丈夫なの!?

 ブラス大丈夫!? 頭とか打ってない!? いや大丈夫そうじゃなかったけど大丈夫!?」

 

 

 





▶︎ブラス・リッターがパーティに加入しました

Tips:ブラスはメンタルが強いというより「しぶとい」ため割と限界が来てもポッキリとはいかなかったりする。死なない代わりにHP1で耐える永続ガッツがあるみたいな感じ。なおガッツ無効の精神攻撃を喰らうと凹む。

短め番外編

  • 学パロ世界線
  • ひたすらキスだけのブラスとアマネ
  • 彼氏持ち女性陣トーク
  • 野郎どもの猥談
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