敵幹部でも主人公見たらテンションあがる…あれ?(冷や汗)   作:苦い経験100%

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針時計が動いた時の「やっとか」感は異常

 

 率直に言って俺に交際関係の経験はゼロだ。

 

 …というか、色恋沙汰とは無縁の環境だった。自分がそういう『誰かと添い遂げる未来』的なやつとか、彼女欲しいなぁとか一縷も考えたことがなかったのだ。

 勿論、初めて故の不安が付き纏う。

 なのに俺は不安解消もせずにアマネと買い物というか、ぶっちゃけデートに行く日を早々に約束してしまった。

 なんて堪え性のない男だ、ビンタされてしまえ。

 

 当然、俺はこのままではやばいと思った。

 そこで俺はクロカゲさんに接触。

 どうにか相談に乗って貰えるように懇願した。

 

 クロカゲさんは爆笑しながら了承。彼は『自分は下戸ですので、ブラス(貴方)の仮住まいで適当に飲み食いしながらにしましょう』と頷いてくれた。

 …下戸であるのは素直にありがたかった。

 俺は酒から距離を置くことを決めている。

 だからと言って、相手だけ飲んでる状況は少し気まずいと思っていたから。

 

 そうして当日、時刻は8時半の夜。

 クロカゲさんを迎えた俺は、出前を取るなりして、色々飲み食いしつつ一連の経緯を語った。

 デートに行くこと、アマネの喉にある刺青の為にチョーカーを贈ること、そこで関係を明確にすること。

 その他諸々を話して、そして目下の悩みを打ち明ける。

 

束縛ってどの程度までなら大丈夫なんだ…?

初手チョーカーで『離したくない』は普通ならアウトオブアウトなんですよクソデカ感情が過ぎます

 

 クロカゲさんの返答で、俺は床に転がった。

 ボディブローを鳩尾にくらったような気分である。

 ですよね、そりゃそうですよね…! いや分かってはいたんだよ自分でも「これマズくないか?」とか薄々思ってはいたんだよ全力で目ぇ逸らしてたけど!!

 

 ごろん、と仮住まいに寝返りを叩きつける。

 極めて普通な一軒家で一階建。

 フローリングの床に普通の絨毯を引いたそれは、俺を責め立てるように硬さを訴えてきた。

 更にそこへクロカゲさんから追い討ちがズドン。

 

「大体、束縛前提は大分おかしいですって」

「うぐごぉあがっ!?」

「粘度のある重たさが半端ないですよ」

「ぃぎぃいいいいいいいい!!!」

「いちいち反応が面白いですね…」

 

 オーバーキルを楽しまないで頂きたい!

 いや分かってるよ、分かってんだけどさ!!

 

「分かってるんだよぉヤバいってことくらいぃ!! あーもうダメだ! なんかこう、ぞわぞわ湧き上がってる自分がもう気持ち悪い! このままだと絶対に迷惑かけるやつじゃねぇかこれ!!」

「じゃあ失恋RTAします?」

「どうしてそんなこというの…」

「すいません、罵倒しますね。

 めんどくさ!貴方めんどくさっ!!」

 

 返す言葉もございません。ごちゃごちゃ考えすぎて、さっき久々に食べた芋料理も今や味のない塊をもそもそと食べているような気分であった。

 このままでは本当にマズイ。

 恋って皆こうなる感じなのだろうか、いやついさっき『束縛前提はイカれ』と指摘されただろうが、自分をしっかりと見つめ直せ馬鹿野郎。

 

「……あぁー…なんでこんな…こんな…」

 

 傍迷惑にも程がある。かなりドロドロしきっているというか、なんかもう救いようがないほどの沼というか。

 多分、向いていないと思うんだ。

 なんかこう、誰かを好きになる才能がないというか、真っ当に愛せる自信がない。

 

 最悪なのは自覚してるのに引くつもりがないこと。

 勿論、当初の目的は忘れていない。責任を取ること。そこは今もしっかりと思っている。

 でも、とっくに手遅れだった。

 この感情は既にそれから逸脱している。義務感でもない、罪悪感でもない、そんな割り切ったものじゃない。

 これは明確に『執着』だ。

 

「…どれだけ苦しんでも、水を浴びてもこの感情はきっと死んでくれないし殺せねぇ……」

「考え過ぎて詩人になってません?」

「無くしたいわけじゃないけど減衰させたい!!」

「無理じゃないですかねぇ」

 

 匙を投げられた。いや、自分でも無理だと分かってる。ここまで欲しい欲しいと喚く自分の心は初めてだが、だからこそ理解してしまう。

 この感情に、歯止めなんてない。

 満たされるか満たされないか、二つに一つだ。

 …思えば、家族とか関係なく『離したくない、渡したくない』と強く願ったのはこれが初めてなのか。

 いやもう仕方ねぇだろあいつになら甘えても、寄り掛っても許してくれるんじゃないかって思っちまったのも本当のことだろう!!

 …自分の初めてをアマネに預け過ぎじゃなかろうか。

 

 …仕方なしに起き上がる。

 そこから先はまぁのんびりとした会話という名の心の休憩だ。流石の元密偵と言うべきか、話題の転換のタイミングがバッチリだなぁとか思ってた。

 話したのは当日の服とかのこと。

 こっちも滅茶苦茶に悩んだが、最終的には無難な服装に少し格好つけたものに落ち着いた。

 …いきなり『慣らし』も無しにお洒落に飛び込んだら失敗しますよ、とはクロカゲさんの言である。

 

 そして、俺の『執着』についてもアドバイスをくれた。

 

「まぁ『好き』とか相互にぶつけ合えなければ下心ですよ、どう言葉を変えても『自分のものにしたい』って感情に変わりはないと思っています。

 それでまぁ、程度の差はあれ皆がそれを持っていて、上手く付き合ったり暴走させたりです。

 だから、嫌だと言われたら止める。

 私はそれくらいで良いと思いますよ。感情なんて、どんどんぶつけ合いなさい。

 伏せたまま爆発させる方が怖いでしょう」

 

 今の俺にはありがたい言葉だった。

 苦しかった心も幾分楽に、というか自分で自分を締め殺さんばかりに苦しめてたんだけども…!

 こう、自分のものにって感情は『相手に失礼というか、迷惑じゃないか』とずっと思っていたのだ。

 おかげで日常的に精神へスリップダメージが発生していてヤバい、具体的に言うと眠りは浅いわフラッシュバックはするわで大惨事だった。メンタルが。

 

 でも〝嫌だと言われたら止める〟と、そんな当たり前なことを聞けて頭はだいぶ冷えた。

 当たり前だけど、大事なこと。

 それを言って貰えるような関係というか、信頼を築けるように頑張らないといけないだろう。

 それを言ったら「クソ真面目」と引かれたのは納得いってない、あんたが言い出したことだろうがよぉ!?

 

 そんな俺のことなどつゆ知らず、クロカゲさんは気づいたように聞いてきた。

 

「そう言えば、関係を明確にすると言ってましたけど…あなたは彼女の何になりたいんですか?」

「…何に…」

 

 唐突な質問だけど、驚いてはいない。

 ただ返答に少し困っている。うまく言語化出来ない。

 何だろう、守れる人とか、そんな大それたやつじゃない。ただ彼女に掬い上げてもらって、引っ張ってもらえたように、自身もそれを返すことが出来ればと思ってはいる。これも歴とした本音だ。

 

 俺を悩ませている本音もある。

 …認めたくはない、認めたくはないが、心の中の俺は確かに彼女を独占したいと思っている。

 だからかつてアマネが俺の為だけに歌っていた時、喜びが湧き上がっていたのは否定しない。

 緑の髪と瞳も、身体も、声も、今では劇薬なんだ。

 もう一度抱きしめてしまったら、離せなくなりそうで。

 

 ……でも、これは『ひどいこと』だ。

 彼女の意思を捻じ曲げたいわけではない。

 だから、なりたいものと言えば───

 

…そっと照らせる光になりたい…

どうしたんですか急に

 

 えっ、そういう質問じゃねぇの?

 違う? 人間関係的な意味?

 

 …はっずかし!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

    ◆

 

 

 

 

 そこからも色んなことを話した。相談は当然、ここ最近のことやら何やらを。

 真面目な話だと、最近のラメントの動きとか。

 聞いた時は「少しは心身を休めたらどうですか?」と割と心配されたが、そうも言ってられない。

 持っていた情報はほぼ渡したが、それでも任せっぱなしは申し訳なかった。

 

 聞くところによると、どうにも彼等は姿を隠しているらしく、取り残された残党が見られるとのことだ。

 依然として脅威ではあるし、対策や対応は今も行なっているらしい…地下の勢力で消耗することを切に願う。

 …今は体を休めることがせいぜいか。

 

 …空気が重くなったので、話題を色恋に戻した。

 それとなくクロカゲさんの恋愛事情を聞いてみたが「偶に行動がぶっ飛び過ぎて同じ世界を生きてる気がしない」と別れることが殆どらしい。

 そのせいか、今彼女はいないだとか。

 そんなふうに話していると、少し不安になったことも出てきて、俺はそれを口にする。

 

「…ただの執着じゃねぇよなこれ、今更だけど…」

「じゃ、彼女が他の男といたらどう思います?」

「………すっげぇモヤモヤする!!」

「はい確定です。安心してください」

 

 そんな話をしている最中だった。

 一瞬、ほんの一瞬だけ喉元に違和感を覚える。

 ひりつくような痛みに近い熱さ。

 …おかしいな、今日の分の薬は吸ったはずなのに。

 そしてクロカゲさんもそんな俺の様子に気づいたのか、怪訝そうな顔をして言った。

 

「喉元に違和感でも?」

「少し、ピリッとした感じが」

「…風邪ですかね?」

 

 身体は冷やさないようにしていた筈なんだが…色々あったし、疲れがモロに出たのかもしれない。

 予定までは2日ほど時間がある…体調は万全にしておこう。そう思っていた矢先だった。

 

「そうだ、喉で思い出しました。

 …アマネさんの喉、あれ大丈夫なんですか?」

 

 …気にしていた話題だったから、少し喉が詰まる。

 

「…喉は完治してるし、能力的な再生現象も起こってない。なのに刺青だけが残留している状態…らしい」

 

 …退院してるから、まぁそういうことだ。

 主治医の言葉に、恐らく嘘はない。むしろ俺の方に「貴様ホントに何もしてないんだよな?」と聞かれまくった。

 俺は何も知らない、というか俺だって知りたい。

 何故、喉元の刺青は消えてないのか。アレは傷を癒せば役目を終えて、そのまま消えるものの筈なのに。

 俺の疑問を先回りして、クロカゲさんは言う。

 

「彼女の刺青が消えないことについては、あなたが由来してる可能性があります。

 能力は精神と強く結びついている。それを加味すれば、あり得ない話でもないのでしょう…というか、貴方の話を聞く限り、大分有り得そうな気はしますが。

 案外、あなたの独占欲が原因だったり?」

「やっぱ俺腹切った方がいいんじゃねぇかなこれ」

「責任の取り方が血腥すぎません…?」

 

 個人的な感情で消えないもん同意無しに刻みつけてんのはご両親から殺されても文句言えねぇんですよ…!

 

「とは言え対策局が退院や街中の出歩きを許可している以上、何らかの前例があった可能性がありますね。

 許可が降りれば、アーカイブを見ると良いでしょう」

「そうか、外にいて問題ないことではあるのか…」

 

 言われてみればそうだ。退院や出歩きが許されているんだから、そうしても問題ないと判断されてはいるんだ。

 …そうなると前例や類似例は、俺が知らないだけで存在しているのかもしれない…消し方も載っているだろうか?

 

「まぁ何かあったら即、私やクサビさんに連絡を」

「…ありがとうございます」

「いえ、そんな畏まらずに。友達でしょう?」

「それでも頼りっぱなしは俺の心が悲鳴をだな」

「なんかもう、あなた一回誰かに派手に甘えたらどうです?」

 

 そんな無茶なこと言わないでください…。

 そう思いながら肩をすくめた時、壁に立てかけていた針時計が目に止まった。

 

「…やば、もう0時か…」

 

 カレンダーを見る。日付は9月18日。

 未だ涼しい気候が続いている。寒くなる気配は、未だ一切ない。当日の服も、薄手のもので良さそうだ。

 かちり、と動いた時計を見ながら俺はそう思った。

 

 

 





Tips:ブラスは基本的に自分への信頼が薄いし、実績がある(スラム火災、ワンナイト、アイザックへの敗北)ため、割とネガティブ気味。そこに恋心が焼き付けられた結果なんかもう凄いことになっているし、明確に自分の欲望が発露したため色々と大変。

短め番外編

  • 学パロ世界線
  • ひたすらキスだけのブラスとアマネ
  • 彼氏持ち女性陣トーク
  • 野郎どもの猥談
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