敵幹部でも主人公見たらテンションあがる…あれ?(冷や汗)   作:苦い経験100%

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「「離れない、離さない」」

 

 楽しい時間程、すぐ終わってしまう。

 朝の10時から集合は早すぎたか? とか思っていたけど…色々見て回ってたら瞬く間に16時半だ。

 名残惜しいやら満足感やらで心が忙しい。

 まだ続けていたい反面、大本命であるチョーカーの購入に行かねばとも思っていた。

 

 夕陽が街中にぼんやりと差し込み出した頃、俺とアマネはアクセサリーショップに足を運んだ。

 けれど、陳列棚を見ているのは俺だけ。

 アマネには店内の休憩スペースで待ってもらっている。

 

 ……チョーカーだけは、自分で選びたかった。

 一緒に選ぶのも、もちろん考えた。

 けれど、なんかこう。こればっかりは、一番最初のものばっかりは、俺が彼女に初めて贈るものだけは、俺一人で考えたかったのだ。

 オーケーが出たのは素直にありがたい。

 

「───さて、…どうするか」

 

 悩みながらショップの中を見る。ゴシック調なデザインで出来ているこの店は、取り扱っている商品の幅が広い。

 チョーカー、一つでもコーナーの規模がデカい。

 加えて商品の種類も多い。

 

 模様が連なったようなタトゥータイプ。スラっとしたメタルタイプに、装飾品が付随するチャームタイプ。リボンのように見えるリボンタイプとかとかとか…。

 

 タトゥーとリボンは刺青を隠すには小さい。メタルはどうにも硬すぎる。そうなると、まぁチャームタイプか、シンプルなプレーンが一番だと思う。

 そう考えながら、じっと商品棚を見る。

 色は黒が殆ど。赤や青といったものは中々ない…いや、あるにはあるんだけど、モロ首輪みてえな見た目だからアウトっつーか見た目的にどうなのよっていうか、俺にそんな趣味はねぇというか。

 それに大事なのは、デザインだけじゃない。

 

「あんま苦しくないやつがいいよな…」

 

 思い返すのは、一つの会話だ。

 俺達がこの店に入った時に、店員さんからメジャーを借りてアマネの首囲を測っていた時のことだ。

 けほっ、と小さな咳を吐いてから彼女は言った。

 

『少しくらいは苦しくても平気だよ?』

『ダメだ、喉がひゅってなったら怖いだろ』

『………今の「お兄ちゃん」っぽかった…』

お客様、倒錯プレイは外でお願いします

オイ待てそこまで手遅れじゃねぇぞ多分!?

 

 …メジャーで首絞めてるみたいな絵面になったのは、俺のせいじゃないと思いたいのです。

 というか計測を倒錯プレイ言うな。考えないようにしていたのに考えないようにってなんだよ俺のバカ!!

 そこまで奔放だったかなぁ!?だったなぁ!!

 

「……よし、一旦落ち着こう」

 

 チョーカーを買いに来たのであって、自分の性癖を見直しに来たわけではねぇ。真面目に選び直せと、心の中で自分をぶん殴って落ち着かせておく。

 とは言え、どれを選んだら良いか分からない。

 デザインも数も多種多様だ。あと、アマネは多分どれをつけても似合う。首が細めだし、肌白めだし。

 …我ながら、彼女のこと見過ぎじゃなかろうか。

 

「普段着る服はかしこまったやつじゃねぇし、そんな上品なやつじゃない方が良さそうなんだよな…。

 つってもパンクなのは派手すぎるし、でも単に黒一色だとオシャレに困るだろっつーか…」

 

 あの笑顔にパンクもゴシックもきっと似合う。でも普段使いだし、そんな尖ったやつだと困るだろう。

 シンプルながらも、オシャレなやつ。

 …いや待て滅茶苦茶難しいな?

 

 頭を抱えながら強く悩む。

 ファッションなんてファの字も知らねえから、なおのこと何を選べば良いか分からない。

 かと言って無難に落としたくはないし、妥協で諦めたくもない。

 

 だって彼女は恩人の一人で、好きな人だ。

 こんなバカを支えてくれた。こんな無節操な考え無しに、喉が潰れるほど歌ってくれた。

 

 だから、俺の問題は片付いた。

 けれど、根っこは変わらない。

 俺は一人で意地張ったバカだ。結果として大火災、被害諸々だ。頭から離れない、俺がこんな風に笑ってることとか、幸せなこととか、おかしい事だって。

 申し訳なさとかは、いまだに拭えてない。

 …少なくとも、俺がそう思ってる。

 けど、周りにそんな声はない。俺を案じてくれる人。心底から幸福を祈ってくれている人。挽回に期待する人。

 そんな人達が、今は周りにいてくれている。

 

 だから、笑っていたいと思った。

 

 俺はどうにも、自分の笑顔を願ってくれる人達を否定してまで、諸々を諦めようとは思えなかった。

 生きながら、作った負債を少しずつ返して行く。

 我ながら、本当に酷い奴だと思う。

 

 自嘲しながら、チョーカーを一つ選べた。

 なんとなくじゃなくて、心から納得出来て。

 単に刺青を隠すだけじゃなくて、オシャレにも使えそうなやつを。値段は張るけど、今日の為に日雇いをやりまくったのだ。全くもって問題はなし。

 それに、これならきっと似合う。

 

「…小っ恥ずかしいぃー…」

 

 暗澹の中で、歌声を聴いたから。

 真っ暗闇をぶっ壊してくれた灯が、

 どうかずっと、俺の隣にいてくれますように。

 そんな身勝手な願いを抱く。

 

 俺はチョーカーの入った箱を手に、彼女の元へ急ごうと会計を済ませに早歩きをする。

 

 

 

 

 

 

 

 

     ◆

 

 

 

 

 アクセサリーショップの休憩スペースで、夕暮れを見ながら彼を待つ。真四角のクッションに座ったまま、自分の体を意識する。心臓の音は多く、けれど優しく。口元は意識してなくても綻ぶ。

 

 …チョーカーを貰えることが嬉しいのもそうだけど、それ以上に期待や喜びを込めているのは、ボクとブラスの関係につく言葉についてだ。

 どんな関係になるのかは、彼次第。

 でも、殆ど答えは決まっているようなものだと、お互いに分かりきっている。

 これは単に、物事をはっきりさせるだけ。

 

 ……それだけの事実が、こんなにも嬉しい。

 

 だってこんなにも幸せになれると思っていなかった。高校も辞めることになって。家族や友達からも離されて、進化者にも非能力者にも属せない半端者だと思い知らされて、居場所なんて出来ないと思っていた。

 

 でも、居場所になってくれる人達はちゃんと居た。

 きっかけがアレだとしても、それでも確かにボクが救われた起点には変わらないんだ。

 彼から始まって、少しづつ息が楽になった。

 ボクを救ってくれたのはブラスだし、これから先、何があったとしても、救ってくれるのは彼だとボクは思う。

 …重荷にならないように、頑張らないと。

 

「悪い、アマネ…待たせた」

 

 そう思っていると、ボクのブラスが戻ってきた。

 照れくさそうな顔で、恥ずかしそうというか、自信なさげな感じの歩き方…前々から思っていたけど、たまにそういう可愛いところを見せてくるの本当に何なのだろう。

 とてもズルイと思う。

 

 なんて思いつつ、跳ねるようにボクは立つ。

 喜びと期待が足に出た。そんなボクを見て、彼の蒼白色の瞳は少々面食らったように。

 それが少しおかしくて、つい笑ってしまう。

 

 彼を見る。左手には、恐らくチョーカーの入っているであろう紙袋。右手が空いている。ボクはその手を握って、弾んでると自分でもわかる声で言った。

 

「待ってたよ…早く、キミの言葉が聴きたいな」

「……緊張して腹ん中ひっくり返りそう」

「…………」

「なんっだその慈愛に満ちた目…」

「べっつにぃ?」

 

 ボクらは揃ってお店を出る。そして、少し歩いた。何処か具体的な行き先は決めていないけど、自然と最初のところへ。人目も人通りも、まばらになりつつある所へ。

 ついたのは、ラズリ・ストリートの入り口前広場。透き通った素材で作られた六角柱。側面には他言語の詩が刻まれたモニュメントを起点に、公園みたいになってる所。

 

 空は既に薄い紺色…時刻は18時と少し。この時間帯のせいか、こっち側にはあまり人がいない。皆、ストリートに入った後とかだからだろうか。それとも今日はそういう日なのか、分からないけれど。

 

 ここで、ブラスはボクと繋いだ手を離す。

 

「あっ…」

「………」

 

 名残惜しさなんて欠片もなく、あっさりと。

 

 そして彼は振り返ってボクを見る。少し長い青白色の髪。やや鋭い髪と同じ色の瞳。同じくらいの年の男の子だけど、歩んだ人生はきっとあまりにも違う。知っているのは少しだけで、絶対に全部じゃない。

 

 …風が吹いた。少し冷たくて、緩やかな風。周りは仄暗い。電灯だけがこの夜を明るくしてくれていた。

 ボクらはその光の下で向き合っている。

 青に近い暗闇の中で、沈黙が張り詰める。

 

「………あー、───その、さ」

 

 沈黙の中で、歯切れ悪くブラスが切り出す。

 言葉に迷ってることはすぐ分かった。

 

「大丈夫、大丈夫だよ。落ち着いて」

 

 そんな彼に、僕が出来ることはこれくらい。微笑んで、大丈夫だって落ち着かせることだけ。

 ボクは手を伸ばして、ブラスの頬に当てる。

 悩んで眉間の辺りがキュッとしていた顔が、すぐにふっと明るく柔らかい顔に。

 

「…うん、慣れないことは考えるもんじゃないな」

 

 そんなことを言って、頬にあるボクの手を握る。

 脱力する様に目を瞑って、くしゃりと笑った。

 そうして、ボクの手にそのまま擦り寄る。

 

「…ごめん、少しだけ甘える」

「………っ!」

 

 目を閉じたまま彼はゆっくりと呟いた。柔らかい声色で、ひっそりとした息遣いで、ボクの間近で。

 そんな声もあるんだろうとは、思ってた。

 加えて『甘える』と、口にしてもらえた。

 …これはヤバい…何この破壊力…駄目だって、これは駄目だよ…キミはボクをどうするつもりなの…?

 

 困ったように彼が笑う。ため息を吐くような微笑み。言葉を探しているのか、唇は何度かもがついていて、それがとってもいじらしいと、そう思っていたんだ。

 

「俺、あんたのことが好きだよ。

 多分、あんたが思ってるより何倍も」

 

 すり寄っていたボクの手を取って、指を絡める。

 強く握られて、顔が一気に熱くなる。

 夜空の青も、暗い夜道を照らす灯りも、何も目に入って来ない。彼以外に、思考と視界を回せなくなった。

 

「どうしようもないくらい、頭がバカになっちまうくらい、底無しに欲張っちまうくらい好きだ。

 他の誰かじゃなくて、俺の隣を歩いていて欲しい。

 …この先、ずっと離すつもりなんてないし、絶対に最後まで責任持つから、だから───」

 

 ボクらは向き合ったまま、指と指を絡めている。

 すぅ、と息を深く吸う音。

 それは彼の肺から鳴っていた。

 …彼の心からも音が聞こえる。ピアノにも似た穏やかな音。求めてるってわかるけど、少し遠慮してるというか、その遠慮が最後のタガだって感じ。

 

 彼との関係に、どんな言葉がつくのか。

 予想はついてるとか、お互いに何となく分かってるとか、そう思っていたけれど、やっぱりと言うべきなのか、ボクも緊張するし心が浮ついていた。

 それとこれとは、やっぱり話が別なんだと実感する。

 期待と焦り。早く早くとボクの心が強請(ねだ)ってる。

 

 それとは裏腹に、言葉はあっさりと放たれる。

 彼は青白い瞳でしっかりとボクを見てくれたまま、屈託のない笑顔を見せてくれて、手を強く握ったまま、ボクとの関係に臨む言葉を口にした。

 

 

 

「まぁ、その…結婚前提にした付き合い、つーか…婚約ってやつを結んで欲しい。指輪、ちゃんとしたやつが買えるまでさ」

 

 

 

 世界も、頭も、視界も、何もかも真っ白になる。

 

 今、彼はなんて言った? 

 待って欲しい。本当に少し待って欲しい。

 

 ───こん、やく、待ってこんやくって言った?

 

 こんやく、…婚約!? 結婚の約束だねぇ!? ちょっと待って欲しい!! 幾ら何でもいきなり強く殴りすぎる!! 人はバットで殴られたら死ぬんだよ!?

 

 ぶわり、と喉元を起点に顔が熱くなる。

 

 声を出そうとしても震えて出ない。ボクは一瞬で何も言えなくなって、呻き声とも似つかない何かを出すしかない。

 なんなら膝から崩れ落ちそうだよ、何この瞬間火力!?

 

「〜〜〜〜……ッ!? ぇ、う、えぇ!?」

「そんなに驚かなくても良くない…?」

「驚くよ、驚くに決まってるよ!! 恋人とか、そんな感じのやつを予想してたんだよ!? そしたらこんな、こんな大事な約束貰っちゃって…本当に良いの…?」

 

 自分でも何を言っているのか分からない。

 頭が混乱している。嬉しくて、幸せで、どうにかなりそうなくらい舞い上がっていて、今は絶対にそれを上手く伝えることが出来ない。

 ブラスはボクを見ながら言う。

 

「俺が頼んでんの! …で、返事を聞かせてくれないと、不安でしょうがないんだけど…」

「…………あーもう……もうっ!」

 

 ボクは勢いに任せて、ブラスに飛び込んだ。

 繋いでいた手を離して、両腕で抱きしめて、力一杯抱き締めて、腕の中に彼を閉じ込める。

 何度体を擦り寄せても、体の奥から湧き上がってくる衝動とか気持ちとかが治ってくれない。大好きとか、嬉しいとか、そんな風な感情が湧き上がりっぱなしで大変だ。

 

 ちゃんと返事をしないとなのに、ボクはこんなにも壊れてしまっている。キミにぐちゃぐちゃに壊されて、どうにもならないくらいに溺れて溺れ切って抜け出せない。

 名残惜しいけど、一度抱きしめていた腕を離す。その代わり、ブラスの右腕を手に取って、喉元の刺青を隠すようにボクの首へ当てる。

 

 愛しい人の体温が、じんわりと首を包む。疼きと安堵を覚える身体。そして酷く満たされた感じと、ぞくぞくと走る怖気にも似た興奮がボクを包む。

 そのまま、五指を首全体に這わせる。命に関わる部位を抑えられて、どうしてか安堵が強くなる。支配されてる錯覚、キミのものだと味わえる陶酔、ううん、陶酔じゃない、事実だ。

 

「───絶対、離しちゃダメだよ?」

 

 熱い呼吸を吐いたと、自分でもわかる。

 ボクの承諾に、ブラスは笑って、幸せそうに言う。

 

「…………いきなり破壊力満点で殴ってくんなよ」

「キミが言って良いことじゃないと思う」

 

 そう言ってから、ひとしきり笑い合った。

 チャラ、と金具の音が鳴る。

 ボクらにとっての指輪の代わり。黒い革の首輪。彼の手には、ボクが着けるチョーカーがある。

 ボクは彼に首を差し出して、彼からの首輪を望む。

 

 首に走る、冷たくて柔らかい感触。彼のものになって行く感覚。でも、完全に首に着けられる前に、少し止まる。

 このチョーカーの留め具は前にあるらしいけれど、その肝心の留め具がなかった。不思議に思っていると、ブラスがチョーカーの入っていた箱を見せる。

 

「どれがいい?」

「わぁ…っ!」

 

 どうやら、留め具は付け替え自由らしい。それも多種多様だ。青いストーン、ハートを模した小さな錠前、シルバーのリングとか、充実している。

 ボクがいの一番に取ったのは、ハートを模した錠前で、でも自分からじゃなくてブラスからつけて欲しい。そう思って、選んだ留め具を彼に渡す。

 

「……意外なチョイスだな」

「キミの瞳と似た色だから、石と迷ったんだけど…えっとさ…今はキミだけのものだって、感じたいんだ」

 

 ボクの手から受け取ったそれを、

 ブラスはボクの頸にゆっくりと当てる。

 カチ、という音と共に、喉が甘く僅かに締まる感覚。息苦しさと甘さがボクを満たして、幸福感で満たされたボクは思わず笑みを浮かべてしまった。

 

 そうして、ボクらはもう一度抱きしめ合う。

 お互いの首筋に顔を埋める。そうしたくて、でも我慢のためでもあって、大好きで、離したくなくて、触れ合っていてくて、心が行動に溢れて止まってはくれない。

 

「……俺は帰したくないけど、あんたは?」

「…うん、ボクも今日は帰りたくない」

 

 帰る場所が違うけど、一緒に居たい。

 ボクらは、長い夜を共にしたいと願った。

 だって、こんなやり取りの後で一人になれるわけないし、一人になりたくなかったから。

 …抱きしめられたまま、ボクは思う。

 

 ───太陽で身を焦がすなんて、嘘っぱちだ。

 

 

 

 





Tips:ゲーム内データならこんな感じ
Equip▶︎『黒』のチョーカー
備考:ブラス・リッターと特別な関係になった証。冷たい感触と、微かに喉を締める感覚が何処となく心地良い…元々はその奥にあるものを隠すことにあった筈だけど…今ある幸せに比べれば、気にする必要はない。
装備効果:状態異常の回復ターンを1に短縮
解放スキル:『トロケ・ナワケ』…パッシブスキル。戦闘中にアマネがダメージを負った時ブラスがパーティ加入・未加入に関わらず、敵に対して反撃(確率で即死)を行う


Tips:ブラスとアマネの営みをr18に貼ったよ。見なくても大丈夫な内容ではある。敵幹部で検索したら出るよ。見たい方はどぞどぞ。

短め番外編

  • 学パロ世界線
  • ひたすらキスだけのブラスとアマネ
  • 彼氏持ち女性陣トーク
  • 野郎どもの猥談
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