敵幹部でも主人公見たらテンションあがる…あれ?(冷や汗)   作:苦い経験100%

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開始がマイナスだからその分の飛び跳ね具合がすんごい

 

 

 目を覚ますと、見慣れない天井があった。

 

 でも、此処が何処なのかをボクは知っている。以前と違って、酔っていないから、しっかりと分かってる。

 …だから、ひどく幸せだ。

 お腹の奥から身体が熱くて、頬が緩む。

 ボクはベッドの上にいる。ボクを何度も「アマネ」と呼んで抱いて潰した、大好きな人が、ブラスが普段使っているベッドの上で、シーツに包まれている。

 

 ここは、ブラスの家だ。彼の仮住まいだ。

 

 …昨夜のことを思い出す。壊滅的な冷蔵庫の中身に怒ったり、二人で何するわけでもなく隣に座ったり、

 それから───喉が痛くなるまで、求めあったり。

 

 昨日で何もかも変わった気がする。

 そんな気がした。

 とっても、良い意味で。

 とっても、幸せな意味で。

 

 …それはそれとして、全身が痛いし怠い。

 筋肉痛とか骨の軋みとか、それ以上に噛み跡が思いの外ヒリヒリする。これお風呂入ったら悶絶するんじゃないかな。

 …その痛みさえ嬉しいから、ボクはすっかり頭をやられてしまっているのだと思う。

 

 不満があるとすれば、側にブラスがいないこと。

 

 ボクが目を覚ましたのは多分、体温がないから。

 …しっかりとシーツをかけられているけど、人肌の温度がないと分かった途端に寂しさを感じてしまう。流石に、涙ぐむほどではないけど。

 のそり、と体を起こす。

 …服は脱ぎ散らかしたままなので、シーツを被って。

 ボクは痛む喉で、ブラスの名前を呼ぶ。

 

「ぶらすー…」

 

 ……返事はない。トイレかな。

 仮住まいだからだろうけど、ブラスの家はだだっ広い。ソファ、デスク、ラックとか、その他諸々…ともかく、必要最低限のものばかり。

 今いる寝室なんてベッドと姿見だけ。

 だから空白が多くて、どことなく寂しさを感じてしまう。小物とか増やしたりしないのだろうか。

 

 ぺたり、と素足を床に下ろす。

 お風呂を借りよう。眠気とか気怠さとか、暑いお湯で流してしまいたいし。

 そう思ってベッドの淵から立とうとした時、聞きなれた声が聞こえて来た。

 

「あ、起きてた」

「おはよう、ブラス」

 

 ボクの目の前にブラスがやって来る。乱れた青白い髪。眠そうな目。緩いズボンだけを履いてて、両手には湯気の立つコップが一つずつ。

 彼はボクの隣に座って、コップを渡す。中身はちょうど良い温度の白湯。ボクはお礼を言ってから一口飲んだ。

 

 …ほっとする温かさだ。

 白湯の温度に心を落ち着かせてると、まだなんとなく眠たそうなブラスの声が聞こえる。

 

「…体、まだ痛いだろ。寝てていいぞ?」

「あはは…お見通しか…」

「正直、俺も全身が痛い」

 

 言いながら、自分の首元を摩っている。痛々しい噛み跡と、背中に引っ掻いたような傷が幾つか。

 うん、心当たりの雨霰だ。

 ちょっとというか、かなりの申し訳なさを感じつつ、ボクはそっと彼に寄り添う。

 肩にもたれかかるように頭を乗せる。

 すると彼もまた甘えるように体重を預けてくれた。

 お互い無言のまま、白湯を飲んでこくりと喉を鳴らす。

 

「噛みすぎたな…悪い」

「それはボクもお互い様だし」

「でも、痛いだろ。つーかよりにもよって首元噛んじまったし、…チョーカーじゃ隠せねぇなこれ」

「うーん…包帯巻いとく?」

「それはもっと駄目だと思う…」

 

 するり、と彼の指がボクの体と、傷を撫でる。

 体に残った噛み跡、首筋限定のキスマーク。いまだにじんわりと熱くて、やっぱりなんとなく痛い。

 彼からもらった痛みは沢山ある。

 

 抱き締められた時の痛み。

 体を動かし続けた痛み。

 そこかしこを噛まれた痛み。

 

「痛い、痛い。いたい。いたいー」

 

 一回ずつ、のんびりと口にする。

 驚いて何かを言おうとしたブラスの唇を、ボクは人差し指でそっと抑える。決して当てつけじゃないから、どうかちゃんと最後まで、これを聞いて欲しい。

 

「…いたい、いたい───、一緒に、居たい」

 

 少しづつ発音を変えて、同じ音で意味を変える。

 面食らった顔をするブラスに、ボクは小さく笑ってこの言葉の理由をちゃんと言う。

 

「……ちょっとした願掛け、のつもり」

 

 側に居たい。隣に居たい。一緒に居たい。

 これは単なる願いごと。それ以上の意味はない。きっとキミは叶えてくれるから。

 だから何度も口にして、自分で「いたい」の意味も字も、好きな様に変える。

 

 確かに痛いけれど、今はこの痛みも嬉しいと思ってしまったから───痛い/居たい。

 

 そう思って言葉を口にした後、ブラスは持っていたコップを置いて、ボクを抱きしめた。そのまま、ボクの首筋辺りに、シーツ越しに頭をぐりぐりと。

 ボクは倒れそうになるのを堪えて、コップを安全なところに置いてから、彼の背中に手を回す。

 

「今日は甘えたさん?」

「…悪い、少し」

「じゃあ、もう少しゆっくりしてよっか」

 

 んー、と生返事をする彼。ボクは彼の腕の中で、そっと目を閉じる。大好きな匂いがした。

 このまま、もう一回寝ちゃおうかな。そんな考えが浮かぶ…いや、でもシャワーは浴びたいかも。

 …痛いかなぁ、でもスッキリしたいし。

 

「…あとでシャワー使っていい?」

「ん…わかった…俺も使う」

「ぁえっ、!?」

「何だよその反応」

 

 にへら、と脱力し切った笑顔。

 確かに、今更だとは思うけど。なんだかキミが素直すぎてビックリすると同時に───こんなにも甘えてもらえて、嬉しくなってしまう自分がいる。

 

「んんっ…なんでもないよ」

 

 ゆっくりと息を吸って、吐く。

 そして、ボクらは互いの体温を感じ合う様に体を擦り合わせる。今ある幸せに、お互いに笑い声をこぼしながら。

 

 

 

 

 

 

   ◆

 

 

 

 

 

 9月22日 天候:曇天 蘭善中央1区。

 時刻-10:32 特異対策局本部 局長執務室。

 

 サイバー風味な調度品が並ぶ小部屋。黒いデスクに着いている、若々しい見た目の男、マツバ・マサムネは、部下の一人である金髪の女性からの報告を聞いていた。

 

 ヤサカニさん、と呼ばれる金髪の女性は、疲れ切ったような顔で缶コーヒーをがぶ飲みしながら報告を続ける。

 二人の進化者の逢瀬。片や後天性進化者、片や元テロ組織所属者だ。監視の目がつくのも不思議ではない。

 

「…とまぁ、以上が彼等のデートでした」

「ああ、良かった。流石に宅内の諸々は見なかったし、聞かなかったんだね」

「私のことなんだと思ってるのよ貴方」

 

 ナハハ、と笑いながらマツバは回答を誤魔化す。

 慣れたことなのか、ヤサカニは言及しなかった。

 

「ま、幸せそうならそれで良いよ。しかしまぁ、終わってみれば呆気ない。何も特別じゃない逢瀬で終わったものだね。散々に警戒していた人達が少し気の毒かな」

「…どうして貴方が局長になれたのかしらね」

「おや、聞きたいかい? 語るは胃痛、聞くは吐き気のドロドロ権力闘争物語が始まるけど。

 主役は僕だけど、脚本家と他の演者は再起不能だ」

「……蚊帳の外にしたくせに」

 

 女がボソリと呟いたのは、怨嗟のような、拗ねたような声。それ聞かなかったことにしたのか、マツバは己の肩にかけた黒髪を撫でながら、話題を変えていく。

 

「ま、フジワラさんもブラスくんも、僕らの切り札の一つだ。進化者弾圧しといてこれだから爆笑もんだね。

 得られた情報も裏付けが済みつつあるし、各幹部への対策は構想中。まだまだ心許ないし、迎え撃つ準備はどんどんやっていこう」

「E1班の方はどうなってるの?」

「ミナヅキさん、ハルニレくんが特に張り切ってるけど、皆頑張ってくれてるね。練度不足は否めないけど、十分戦力として数えられる…酷い話だけどね」

「そう…E2は?」

「…あの、顔怖いよ?」

 

 すぅ、と挟まるヤサカニの目。

 猛禽類のような鋭さと獰猛さ。強調するようにゆっくりと問うその声色に、マツバは若干顔色を引き攣らせる。

 どうやら、ヤサカニはE2班に思う所があるらしい。

 また話題を変えようか、とマツバが悩んでいると、執務室のドアが開く。時間通りの来客なのか、彼は大して驚くこともせず、むしろ助かったと言わんばかりの顔をし、

 

「すいません、ヒヒガネです。調査中のハラエド病院の件について、ユカタンから進展の報k」

「やっべそういや君の時間だったわ」

「あら丁度いいタイミング」

 

 真顔で冷や汗をかいた。

 そしてヤサカニは満面の笑みで振り返り、入室してきた黒い髪に、ピンクのメッシュを入れた凛々しい顔立ちの女性、ヒヒガネ・クサビの方を見る。

 見られた彼女は苦虫を噛んだような顔をして踵を返そうとするが、すぐさまに肩を掴まれた。

 

「うっっっわ、失礼しましたまた後ほど」

「待ちなさいこの破天荒駄妹」

 

 どうやら二人の関係は姉妹らしい。

 ただ仲は良くないのか、お互い顔を見るなりマイナス方面の感情をフルスロットルで走らせる。

 先に声を荒げたのは姉と呼ばれたヤサカニの方だ。

 

「縁談をガーデニングバーサーカーと物理的に破談にしたかと思えば、今度はE班の増設とその班長になったって聞いた時はビックリしたわ。母さんが知ったら嘆くわよ」

「局長、血縁しか繋がってない不審者がわちゃわちゃ言ってくるんですけど労災降ります?」

「僕の方が労災欲しいかな、胃痛的な意味で

 …ガーデニングバーサーカーってなに…?」

 

 キリキリと痛む胃を抑えながら、マツバは応える。

 人様の家庭の事情に突っ込むのは苦手らしい。いや、どちらかと言うとトラウマなのか、少し青い顔をしていた。

 そんな上司をよそに、ヤサカニはクサビに問う。

 

「……本当に班長やっていくつもり? デート見てたけど中々に破天荒よあの子達。婚約にチョーカーって独占欲の擬人化でも中々しないわよ、地方の異類婚姻譚か何か?」

「破天荒…あ、もしかしてホテル行った?」

「いや、男の子の方の家に行ったけど」

「オーケー局長、出産手当金と育休について」

「ブッッ!?」

 

 しれっと言ったクサビの言葉を聞いて、胃薬を飲んでいたマツバは水を吹いた。

 彼は口元を慌てて拭いながら、席を立つ。

 

「マジか、いやマジなのかい!?」

「いやマジも何も、日常からいきなりこんな職場にドン。更に周りからパワハラと冷遇喰らいまくってて、尚且つ相手の方が元敵対組織で普通なら悲恋必至をなんかワンナイトやら何やらで無理やり成就に引っ張れたかと思えば、先の一件で死にかけたんですよ? で、家行ったならやってるでしょ、見境なく。八割の確率で」

「面白いこと言うわね、体験談?」

「分かってんなら言わないでくれる?」

(否定しないんだ、というか僕性別的に気まずっ)

 

 吹いた胃薬を新しく飲み直しながら、若干の居た堪れなさを感じつつマツバは苦く笑う。

 彼の中ではとっくに結論が出ていた。

 

「…まぁ、その時はその時だ。出来たのならめでたいこと。出来てないならいつも通りで。僕らはそもそも部外者なんだし。他人の恋路を邪魔したいわけでもないし」

「…切り札じゃなかったの?」

「そもそも元一般人をそうさせちゃってる時点でもう大分アウトだからね。というか勝手に切り札認定して『君の事情は加味しません、やぴぴ〜★』は僕ならキレる。

 それに、切札のみに頼るのは組織としておしまいだ」

 

 カラカラと笑って告げながらも、頭の中で知識を振り返る局長がいた。二分の一だったか、どうだったかと思いながらも、そこにマイナス的な感情はない。

 手当やら制度やら、本当にそうなった時に手配させておけば良い。杞憂で騒いでも良い迷惑だ。

 そう思いながら、彼は一つ伸びをして欠伸をした。

 

「組織として当たり前の対応をすれば良い。

 同じ人間なんだ。過敏になる必要はないよ」

 

 もう立場の問題もないんだし、と思いながら。

 

「…今はそれより、───尋問についてかな」

 






プロポーズ/可不を聞きながら「これこれ」と頷くなどした、創作者は曲にキャラを見出すくせがある(偏見)

Tips:クサビは元々それなりの家柄の娘だったが現在勘当中。なお、勘当された本人は別に気にしていない上に、苗字も変えた。ちなみに彼氏だが「フルール」の店主だったりする(「子ども達は複雑です」に登場)。
 DLCで判明した時は「味方に裏切られた気分」「嘘だろ店主さん」など色々言われたそうな。

短め番外編

  • 学パロ世界線
  • ひたすらキスだけのブラスとアマネ
  • 彼氏持ち女性陣トーク
  • 野郎どもの猥談
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