敵幹部でも主人公見たらテンションあがる…あれ?(冷や汗)   作:苦い経験100%

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死亡フラグが露骨すぎるとかえって安心する

 

 

 9月23日 天候:晴天 蘭善中央某所

 時刻-10:32 被災者用施設群

 

 被災者用施設の中で最も大きなもの。公民館などとしても機能するその施設の中には講堂があり、その他にも多目的スペースなどが存在する。

 そのスペースの一つを貸し切って、今日は授業が行われていた。

 

 教師役として立つのは、ブラス・リッター。彼の立つ教室には、8人と少しの子ども達が集まっていて、ブラスがホワイトボードに書くものを、自分達の持つ真新しいノートに書き込んでいく。

 子ども達が教わっているのは計算問題。どうやら、買い物を題材としたものらしく、どちらがお得なのか?という問いが用意されていた。

 

「…で、結果的にはこっちの方がお得になる。

 ここまで分からないところあったかー?」

 

 ホワイトボードの上をインクが走る。書かれていくのは回答と解説。説明に使っている言葉こそ荒っぽいが、内容は分かりやすいものであった。

 しかし自信がないのか、ブラスは頬を人差し指で掻きながら苦笑いをして子ども達に言う。

 

「今度は皆が教える番になるかもだから、後からわからないってなったら聞けよー? それに、普段から使うようになるだろうし、ちゃんとわかっておかないと困るぞ?」

 

 ブラスが確認の意を込めて言うと、子ども達は「大丈夫です」や「理解できたー」など、胸を張ったりサムズアップをしたりと、それぞれの返答をした。

 そして皆揃って『教室』前列の子ども達を見る。

 彼等は期待に応えるように頷いたかと思えば、揃って手を上げ、ブラスに対して興味半分いたずら心半分の質問をぶっ放した。

 

「はい、あの人とはどこまで進みましたカ」

「はい、式の日取りはいつー?」

「はい、親の人に挨拶、しました?」

よし分かった科目変更だ即刻表出ろてめぇら。全員ドッジボールで沈めてやる特に前列3人のクソガキども

 

 どこからともなくボールを取り出したブラスを見るなり、子ども達は「やましー!」だの「説明放棄だー!」だの好き勝手に言いながらノートや筆記用具を手にドタバタと走って教室を飛び出していく。

 ブラスは「待てやオラァ!!転ぶから落ち着いて外出ろ!!」と言いつつもボールを構えたまま板書を消し、自作と思しき教材を片付けてから子ども達を追った。

 

 当然、教室は伽藍堂になる。そこに取り残されていたのは、授業を見ていた3人の大人。

 逆立った金髪と顎髭のクリフ・サンダーズ。

 褐色の肌を持つマーサ・クラーク。

 そして黒髪で優男な面持ちのクロカゲ。

 

「……えっ、これで終わりなんです?」

「今日の分は終わったからね、時間も丁度だ。あとはもう子ども達と遊ぶだけだろうさ。また纏まった時間で会えるのは、大分先になりそうだし」

「よ、澱みない終わり方…」

 

 シームレスに終わった授業に、クロカゲが多少困惑した顔を見せながら言う。

 

「チャイム的なものとかないんですね」

「もっと他に感想あるだろ、鐘職人の回し者か?」

「ハンドベルならあるよ?」

「鳴らしませんよ。なんであるんですかハンドベル。あと副局長、どうせならバイクショップの回し者希望です」

 

 クロカゲを職人の回し者と訝しむクリフ。

 ロッカーからハンドベルを取り出すマーサ。

 それぞれに律儀にツッコミを入れたクロカゲは、肩をすくめてからブラスや子ども達が出た外を見た。

 

 子ども8人と少しを相手に、高笑いしながら本気でドッジボールをするブラスがいた。時折「大人気なくない!?」やら「少しは加減してよ!!」だの「ブリッジしながら避けんじゃねぇ!!」など叫び声が聞こえてくる。

 少年は1人で複数人を相手取っても余裕らしい。

 

「よし。混ざりますか、私も」

「「えっ」」

「やっほう親友!! 私は子ども達側に付きます!!」

 

 観戦していたクロカゲは、急遽窓から外へ飛び出す。

 子ども達の中から「「クロカゲー!」」と2人分の喜びの声が上がり「どんな乱入の仕方!?」と驚くブラスの声が響く。

 あっという間のことに、理解が追いつかないマーサとクリフは呆気にとられたまま硬直した。

 

「…なんか、ウチの部下がすいません…」

「まぁ、元気なのは良いことだよ!」

「…ご機嫌ですね?」

ブラス(息子)が責任取ってアマネ(婚約者)連れて来たもんでね…あとまぁ、ブラスの背が伸びて来た」

「……一気に関係進んだなあいつら」

 

 どうやら、ブラスは既に報告を済ませたらしい。

 障害がなければトントン拍子に進む関係。クリフは『非能力者だったら学生結婚とかしそうだなぁ』など思いつつ、改めてマーサ…ブラスの養母に対し頭を下げた。

 

「ともかく、見学・記録の承諾に感謝します」

「あの子に言いな、それは。しっかし、わざわざ見にくるとは思わなかったけど…興味でもあったのかい?」

「まぁ、そうですね。彼の動向を実際に見ておこうと思った次第です…何というかまぁ…言っちゃなんですが…。

 過去はこれに加えて他のこともやってたとか正気を疑う。全力にも程があるだろうが、続けてたら過労死待ったなしだぞこれ」

 

 今日、クリフが此処に来たのはブラスの『授業』を見るためでもある。本来の目的は別にあるが、こちらも彼に取っては大事なことだった。

 今日の午後をもって、ブラスは正式に特異対策局で働く事となる。そうともなれば、以前のように子ども達や家族達と関わることは難しくなるだろう。

 

 そう思って、クリフは『授業』を見ることにした。

 対策局が奪ってしまう時間について知る、というのもそうだが、ブラスの背負っていたものを実際に見るべきじゃないかと本人なりに思ったからこその結果だった。

 そうして見たのは『分かりやすい授業』だ。荒削りな所は多くとも、理解出来るようにと苦心したことが、クリフには分かったらしい。

 

「…肩代わりしようとしても『やるからやるから』って譲っても、任してもくれないんだよあの子は。

 まぁあの重っっっったい子のおかげか、少しマシになったけどね。やっと自分のことも見れたというか、あたしらに縛られないようになってくれたというか。

 ……あたしらが縛ってたというか」

 

 苦く笑う『母親』は、肩をすくめた。

 この話はあまりしたくないのか、彼女は話題を変える。

 

「で、本来の目的は?」

「話が早くて助かります」

 

 クリフが顎髭を撫でながら率直に言う。

 

「午後から彼の初仕事が始まりますが、その行き先は本局ではありません。少々距離がある上…場所が場所故に、私が案内役というか…まぁタクシー係を任された次第です」

「…………なるほど、お迎えさんと」

「ええ、それと今回ブラスが担当する仕事は───」

 

 

 

 青い空に、少年と大人、子ども達の声が響く。

 一際強く跳ねたボールが、弧を描いた。

 笑い声が、惜しみもなく響き渡る。

 

 

 

 

    ◆

 

 

 

 

 …何というか、怒涛の日々だなぁと思う。

 通院、取引、退院、バイト、デート、授業、話し合いであっという間に9月末だ。俺の査定やら何やらも終わり、今日の午後…今から特異対策局としての業務が始まる。

 

 俺は今、クリフ副局長が運転する車に乗っていた。

 行き先は初仕事の現場。その内容は『エリヤへの尋問』とのこと。初手からパンチが効きすぎる。デモンストレーションの皮をかぶった耐久度テストか?

 そんなことを思いながらジャケットを羽織り直す。

 

「最後の授業はどうだった、ブラス」

「縁起でもないこと言わないでもらえますかねぇ!?」

「いや、忙しくなるから継続は難しいだろってな」

「非番とか休みに続けますよ、…あと2、3単元だけ」

結構多いな…

 

 そして運転席にいるクリフ副局長と話す。

 その間にも隣に座っているクロカゲさんは、何らかの書類を処理し続けている。

 報告関係のものなのか、時折思い出せないと言わんばかりに眉間を揉みながらペンを走らせていた。

 その中で、唐突に口を開いて聞いて来る。

 

「今日の業務はこの尋問で終了です。終わったら即刻帰宅して寝るなり気分転換なりしてください。多分、貴方が思っている以上に『削られ』ますよ」

「言っとくが、これは『特別扱い』とかじゃない。被害者と加害者を合わせるって例は偶にあるが、往々にしてこの処置を取ってる…無理させちまってた結果、離反した奴とかいたもんだからな、この処置に至った」

 

 空気が硬く張り詰める。

 尋問もそうだけど、行き先が行き先だ。

 

 …第四隔離場。危険度の高い進化者を隔離する『収容所』でもあるそこに、エリヤはいる。先の襲撃で損壊したそれは、今ではとっくに再建と強化を終えていた。

 エリヤに対し、思うところはある。

 というか思うところしかねぇ。過去に重たい何かがあったんだろう。分かってる。だけど、家族達は焼け死ぬところだった。逃げ場すらなかった。

 …考えたくなかったことが一気に噴き出して来る。

 

 今は冷静だ。今は、冷静だ。

 

 でも、それでも、あの野郎と会った時、俺は自分がどうなるか分からない。正直言って、顔を合わせたくないのが本音だ。会った瞬間に、自分が何かしでかさないか恐い。会って色々と湧き上がってしまわないか不安だ。

 会って我慢出来なくなって、俺がしでかして、家族や皆が割を食うことになったらと、悪い想像をする。

 

 吐きそうと言えば吐きそうな気分。

 それを飲み込んで、仕事にあたる。

 

「……大丈夫です」

「…一応、中断は出来るからな」

 

 見抜かれてら、そう思って苦く笑って返す。

 すると、クロカゲさんが重たい雰囲気を和やかにしようと思ってくれたのか、ぽつりと提案をする。

 

「……明るい話しますか?」

「直近で明るい話っつったら、今ん所だとブラスの婚約ぐらいしかないだろ。めでたい話の部類だが」

「ぶはっ!? なんっ…誰から聞いたんです!?」

「誰も何もお前の母親がほくほく顔で話してくれたぞ。経緯は少し誤魔化されたとかどうとか言ってたが」

何であっさりバラされてるんですかねぇ!?

デート初回で婚約とか早すぎません?名家の政略?

 

 初回前にやらかしてるせいで進行フローがバグ起こしたせいです…やばい死にたくなって来た。

 未だに後引きすごいからね、ワンナイト。

 幸せは幸せだけど、それはそれとして「死ぬほどやらかしてんな我isクソ」とは思ってるからな。

 …『今』のきっかけではあるから、否定するまでとはいかないけど、こう…複雑すぎて凄い顔になる。

 

「つっても入籍いつにするんだ?」

「………指輪買ってからにしようかと…って思ってたんですけど、今はラメント関係が落ち着いたらにした方が良いかなぁとか悩んでます」

「入籍だけならさっさとした方が良いと思いますよ、見通しより長くなる可能性全然ありますし」

「あとお前式どうすんだ式、挙げるのか?高いぞ?」

「今バカにならないですからね、冠婚葬祭」

「何か2人して俺よりウキウキしてません…?

 というかまだアマネ側の両親への挨拶済んでないですからね俺、まだやらないといけない過程ありますからね俺」

 

 俺もアマネも、目下の悩みはそれだ。

 両親は地方にいるため、挨拶をするにしても中央を離れないといけない。ただ、アマネも俺も立場上それが難しいし、かと言って来てもらうのも無礼だし、何より今は危ないというか身の安全が保証しづらいというか。

 じゃあ電話で済ませるかって話も上がったけど、それも何だかなぁって2人して悩んでる最中だ。

 

「お前のその変な方向の思い切りの良さは何?」

「フジワラさんのご両親はいきなり情報量の塊でぶん殴られるわけですか、新手の押入り強盗?」

「は?何も取ってないが?」

「娘取られてるじゃないですか」

「ンッフ」

 

 オイコラ何ちょっと笑ってんだ副局長。というか取ったって心外だぞこの野郎。略奪ではないと思うんだけど、無いよね? いやまぁ奪ったと言えば奪ったになるのかこれ、やばい考えすぎて分からなくなって来た。

 

今思うとこの会話死亡フラグみたいですね

面舵から急カーブやめろクロカゲお前

明るい話しようつったのあんただよな???

 

 全部ぶっ壊しやがったよクロカゲ(この人)

 そう思っていると、あっという間に目的地が見えて来た…気分はさっきより、少しだけ楽だった。

 …この仕事が終わったら、どうしようか。

 そんなことを思いながら、俺はため息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

     ◆

 

 

 

 

 

 9月23日 天候:晴天 蘭善中央1区

 時刻-12:00 特異対策局屋上

 

「……」

 

 すぅ、と自身の首元を撫でる少女がいる。

 外ハネ癖がついた緑髪の彼女は、ひどく上機嫌な様子で、鼻歌すら歌う始末だった。

 彼女、フジワラ・アマネは強い多幸感の中にいる。

 

 時間は正午ちょうど。彼等にとって昼休憩にあたる時間で、一足早く昼食を終えた彼女は、時折首元のチョーカーを撫でては満足そうに頷いている。

 その様を見るのは、彼女と同じ班員と班長。

 

「…なんつーか、あれだね」

「…うーん」

「…まぁ」

 

 クサビはずるる、と冷やし中華を啜ってから。

 レオネはハンバーガーを一口齧ってから。

 ユカタンはドーナツを千切ってから。

 それぞれが順番に言う。

 

慈愛に満ちた顔でチョーカー優しく撫でる人ってなんか外から見たら途轍もなく事案感が半端ない

ストックホルム症候群シチュみたいで捗る。ナマモノだけどIFで誘拐ルート書いて良い?

正直言って怖い、新手の変態

 

皆してボロクソに言って来ますね!?

 

 アマネの叫びが対策局の屋上に響き渡った。

 極めて心外と言わんばかりの顔をしながら、アマネは特にぶっ飛んだ発言をしたレオネに詰め寄る。

 

「というか誘拐ルートって何ですか!?」

「こう、お相手が思慕爆発させてアマネを攫っちゃって監禁から始まる退廃的なラブストーリーみたいな?

 本出していいなら本気で描くぜ?」

「見たいけどブラスは途中から折れると思うから駄目です…」

「いや見たいのかよ…」

 

 重圧のこもった『解釈違いです』を臆面もなく叩きつけながら、アマネはレオネに念を押した。

 ユカタンはレオネの肩に手を置いて言う。

 

「公式から駄目ってお達しだよ、やめときな」

「公式は正義だけどイフが見たい気持ちがあんだろ」

「わかるけどそのイフ邪道が過ぎない?」

 

 そんな趣味全開のトークをする2人。爽やかな青空の下には似合わない話題であったが、その最中ではたと気付いたようにレオネが班長であるクサビに向けて問う。

 

「というか彼、この班に来るんじゃ無かったんですか?」

「その前に少し厄介な仕事することになったみたい。

 だから、ちゃんと来るのは明日からかな」

「えっ何それボク聞いてない…」

 

 判明した事実に、アマネが固まる。

 その一言と反応に、班員全員の食事が止まった。

 クサビは箸を置いてから極めて厳格な顔を作り、取り調べのような雰囲気を放ちながらアマネに問うた。

 

「……明日来ることは知ってた?」

「え、あの…はい」

「今日彼に仕事があることは?」

「知りませんでした…」

 

 ふぅ、と呆れたような溜息。

 クサビは天を仰ぎながら班員達に処罰を問う。

 

「レオネ、ユカタン」

「有罪」

「パニッシュメント」

「よし、明日あの強がりバカ一回しばこう」

「なんで!?」

 

 明日ブラスがしばかれる事がとんとん拍子に決定して、アマネは再度声を青空に響かせた。

 

 

 





Tips:夫婦生活してるブラスとアマネ超書きてえ〜〜〜

短め番外編

  • 学パロ世界線
  • ひたすらキスだけのブラスとアマネ
  • 彼氏持ち女性陣トーク
  • 野郎どもの猥談
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