敵幹部でも主人公見たらテンションあがる…あれ?(冷や汗) 作:苦い経験100%
お盆なので遅れましたん
「まったく、局長の御考えは理解し難い!貴殿もですよクリフ・サンダーズ!!この隔離場の床を進化者に踏ませますか普通!?」
かっかっ、と革靴を鳴らす音が響く。
何度も床を地団駄のように踏む音だった。
大声で不満を垂らす若白髪の男は、俺を睨め付けながら隔離場内の一室で、不本意と言わんばかりの態度を表す。
…この人はカムド・ハカリ。副局長の一人で、第四隔離場の臨時管理官も兼任している。前任者は前回の襲撃で責任を取って自主降格、一からやり直すと一念発起中とのこと…すこぶる申し訳ない気持ちが湧き上がって来る。
沈んだ気持ちでいると、ハカリさんを嗜めるように、クリフさんがぶっきらぼうに言った。
「決まったことだ。これを機に早朝会議も避けてくれ」
「その決定事項に異を唱えています!」
「そうだな。ハカリ、お前のような意見も必要だ。出来ればそのまま、我々の気を引き締める役を担ってもらおう」
「そんなんで誤魔化されるか雑すぎんだろ!!つか貴殿はいっつもそう!!誤魔化す時だけ雑になるのなんで!?」
その言い争いの横で、隔離場に勤める局員達により俺の両手が拘束される。金属製のそれは、恐らく生半可な攻撃では砕けもしないと思う…自分の能力で切ったら壊れるけれども。
次に装着されたのは、薬剤の入った管の付いた首輪。恐らくは麻酔か何かで、本命はこっち。
その装着が終わった頃、クリフさんは俺に声をかける。
「ブラス、首輪に違和感はあるか? 尋問中に誤作動で麻酔が入ったらマズいからな」
「今のところ問題はありません」
「問題などあるものか。良いか、本来ならキサマも麻酔をぶち込まれてもおかしくはないことを忘れるな。
くれぐれもおかしな真似などするなよ、ワタシは常にキサマを見ているからな…!」
「あの、顔近いです」
凄んでるんだろうけど鼻しか見えねぇ
…ハカリ副局長は、進化者に対して、あまり良い印象を持っていない。というか、それが普通だ。作中じゃ皆に対して嫌味な態度を取ることが多かった。というか、隙があればE班解体しようとしてたし。
というのも、進化者の能力に対して危機感を持っていたから。彼は自分が進化者の『生活やら将来やらを奪っている』自覚が人一倍強かったのか、E班を見てはその力が自分達に向けられるのではないかと怯えていたらしい。
進化者に対する差別感情と、それに裏付けされた行動が、彼に強い忌避感と不寛容、そして恐怖を産んでいた。
…これが明かされたせいで一部の『御腐人』から〝ぷるぷる足ダンウサギ〟とか言われてたし、色々とアレな本もそれなりに出されていた。
「…オイなんだキサマ、その同情とも似つかない目は」
……SNSで劣情向けられっぱなしだったなぁ。
「…オイ…なんか、寒気がするっ!! ええい、見るなっ!! 全く気味の悪い…!」
肩を怒らせたまま、ハカリ副局長は去る。
というか、先に尋問室の監視側に向かったのだろう。
なんとも締まらないノリだと思う…俺のせいだけども。
◆
両手を拘束されたまま、俺は尋問室に入る。
能力的に妥当な措置だと思っている。
クリフさんもクロカゲさんも「こればっかりは」と言っていたけど、これぐらい警戒しないと怖いって人の考えもわかる。というか俺の場合麻酔構えてやっと安心すると思うから、納得しかない。
…ハカリ副局長の態度も尤もだ。
そう思いつつ、尋問室を見る。
四方八方を無機質なコンクリートで囲まれた空間。俺と向こう側を隔てるのは確かに透明な一枚だが、しかし、その強度は恐らく周囲の石の壁より遥かに強固なのだろう。
…そんな壁の向こう側に、そいつはいた。
俺は強く息を吸い込んでから、あの野郎を見る。
全身を覆う拘束衣。首元に嵌められた、恐らくは緊急時に麻酔を注入する物々しい首輪。
無造作に伸びた赤い髪と、青い瞳。
故郷の皆が焼け死ぬかもしれなかった、その原因である放火犯。恐らくは過去に、それなりの何かがあったであろう男であるエリヤが、乾いた笑いと共にそこにいた。
「…あなたでしたか」
───驚く程、何も抱かなかった。
すぅ、と頭が冷えていく。
怒りも、憎悪も、何もない。ただ、ひたすらに「ああこいつか」という無関心さが色濃く現れた。
…ひどく冷静で、あんまりにも冷徹。
俺は案外、薄情なやつなのかもしれない。
赤い髪の隙間から、青い瞳がのぞく。
青白い俺のとは違って、青空みたいに濃いそれは、無気力さに浸っていて、なんの精気もない。
「………私の処分でも決まりましたか?」
「…───ッ」
前言撤回。冷えた頭が一気に熱くなった。
ムカつきとか、そういうレベルじゃない。衝動にも近い何かが、一瞬で吹き出してくる。
…あの炎の熱さ、音、赤は記憶に新しい。
俺ならまだしも、家族には何の非も謂れも無かったはずだ。なぜ、皆を焼こうとした。あの時言ったように、動機は本当にただの八つ当たりだったのか?
頭の中がドクドクとうるさい。脳味噌が拍動しているみたいで、視界もだんだんと狭まってきた。呼吸が荒い、歯が痛むほど歯茎に力が籠る…息を大きく吸って、吐いて、少しでも落ち着こうとする。
入院中に読んだ雑誌を思い出した。
…アンガーマネジメントってやつがあった。怒ったら六秒待って冷静になるとかどうとか。駄目だ、効かない。一秒でぶん殴りてぇ、二秒でぶん殴りてぇ、三秒でぶん殴りてぇと一向に冷静さが出てこない。
それでも、どうにか一言を絞り出す。
「…だんまりって聞いてたんだけど」
「貴方が相手なら、口を閉ざせませんよ。本音を言えば、もう何も喋りたくないし、見たくないし、したくない。私はもう、動かない方がいいでしょうから」
捨て鉢のような返答。諦めきった笑顔。
腹が立つけど、俺より怒りたい人がいるはずだし、俺も一度はこいつと同じ組織に属したし、その活動の一助を担った。そうだ、ここで怒っても、どうにもならないし、怒って良いのかすらわからないんだ。
…そう考えないと、台無しにしてしまいそうだった。
「そう」
「恨み言すら貰えませんか」
「……お喋りしに来たわけじゃない」
ゆっくり、エリヤと向き合う形で座る。
俺は要件をゆっくりと口にした。
「…上の人達は、あんたの能力が辿った進化について知りたがってる。そのことについて知ってることを話してくれ」
これは俺も知りたいことでもあった。
エリヤも、俺も、あの一戦で能力が一瞬だけど進化した。その原因はいまだにはっきりわかっていない。
はっきり理解しておかないと、色々と大変なことになるかもしれないし、手がかりは多い方がいい。
というか絶対大変なことになる。二度あることは三度ある。警戒するに越したことはない。次に来たやつがまた突発的に進化しましたー、じゃ大被害必至だ。
問題は、こいつがそれに応じるか。
「………なるほど、貴方はそちら側ですか」
裏切られた、いいや、取り残されたような感じの目を俺に向けて、エリヤは肩を落として俯く。
なんでそんな態度を取るんだこいつ、しばくぞ。
とは言え、こんな様子じゃ会話は出来ても、知ってることは話してもらえそうにないか。
そう思っていたから、次の返答は意外だった。
「やる事も、思う事も破綻している者の言葉です。
それでも宜しければ、思考を共に。
…あなたには、特に負い目どころではないですから」
…俺以外の時にその態度でいてくんねぇかなぁ!?
そう叫びたくなるのを必死に我慢する。なんなんだよこいつ、いきなりキレ散らかして火ぃつけまくったかと思えばしおらしくなりやがって、もう二、五十回殴らせろ。
「…おさらいから始めましょう。貴方はラメント内でも頭は良い方でしたから、説明は不要かもしれませんが」
「いや、俺も情報を整理したい。
俺の身に起こったことも、少し考えたいから」
とは言え、ここからは本当に落ち着かないといけない。
思考を回す時間だ。考察とか難しいからあんまりやった事ないけど、それでも何とか聞き齧ったり、読み齧ったりしたものが役には立つ筈だ。
考察の名を被った妄想だろ、と一蹴されたら返す言葉もないけれども。
「では最初、私達『進化者』の持つ力の由来について」
「はっきりと原因はわかってないから、幾つかの説が立てられてる。その原因は、能力がどの体内器官にも宿って無いから…」
「正しいです。脳であれ心臓であれ、そこに私達の力は存在し得なかったことが分かっているらしい。回路的なもの、発動機的なものもない。では、我々のどこに異能は宿っているのか? 今主説となっているのは」
「「精神」」
…続く回答がハモった。思考の速さは同じか、それとも合わせているのか、合わせられているのかは分からない。
ともかく、これは変わらない大前提。
能力と精神の結びつきはずっと語られているし、それは作中でもそうだったし、自分で何度も体験している。
俺の持つ
「精神を起源とする説の中で、象徴説が最も核心をついていると、私は個人的に考えています」
「集合的無意識の中にあるものを、力にして発露させているってやつか」
集合的無意識。
とある心理学者の考えだ。ざっくり言うと全ての無意識が深層心理で繋がっているってやつ。
理解が間違ってなければ多分そう。
人種とか性別とかを超えた人全体が、無意識の深いところで繋がっている。
だから神話に被ったものが多かったり、殆どの人が自然の中で落ち着くって感じたりする。
そんな考え方だった、多分。
そんな集合的無意識の中にある物、記号的な物と言えば良いのか。例えば『星=神話』とか『太陽=神聖なやつ』とか『氷雪=足止めを喰らう』だとか、そんな象徴を力としているんじゃないか、というのが象徴説。
これは他の人の考察にもあがっていたし、作中でもそれを匂わせる書籍があった筈だ。
…あとこっちの方が『能力名』にも説明がつくとかどうとか。
「思うに、私達『進化者』は、自身に最も見合ったものと繋がって生まれたのではないでしょうか?
例えば、キュリア・リズット。
彼はどうにも自身や同類の力を認めさせることに強く固執していた。そんな彼が持つ力は、電子を操る力で、それは常に光を伴うし、何より光の強さは可変だった」
光は強く目立つものでしょう、とエリヤは言う。
…オレはそこで一つの発想を掴んだ。
「…『オレ様を見ろ』ってことか?」
「少なくとも私はそう感じています」
……確かに、頷ける所はある。
ただそうなると、…あのカス外道ちょっと怖いな。
「貴方の場合は『続けたい』でしょうか」
「…いきなり何だよ」
唐突な矛先に、心臓が跳ねる。
というか、続けたいって。
死と病とは無縁な気がするんだけど───そう思っていると、唐突にエリヤは語り始めた。
思考をもろに口に出すように、滔々と澱みなく。いきなりすぎてそりゃ驚くし、止めようがなかった。
「…死は終わりでもありますが、続くことでもあるらしい。私には理解出来なかった意味合いですが、それは記号として強く残る程には鮮明だ。朧げにしか残っていない神話にも、絵札を使った占いにも強く遺っている。
貴方は何かを続くことを強く望んでいるのでは?
それこそ、あのスラムにいた人達の命や平穏を…あそこにいたのは、本当に良い人でした」
「───ッ、そこまでわかってんなら!!!」
弾けたように立っていた。手を使おうとしていた。そこで首輪から音が鳴った。警告音、過度な動きに反応したのか。次は麻酔が投与される旨が知らされる。落ち着かないと、だけど、なんで頭が冷えない。こいつは、なんで。わかっていたのに。
「…失言でした、申し訳ない」
「…クソッ…!」
大人しく座り直す。失言どころじゃねぇよ、クソ。気分が荒れたのが、自分でもよくわかる。脳がざわつく、視界が狭まる。落ち着こうと、深呼吸を二度三度。
…狙い通り? それとも『これで良い』って顔をしているエリヤが見える。何を考えているのかわからない。苛立たせたいのか、キレさせたいのか。ため息を吐く中でも、この野郎の発言は続いた。
「…総合病院から得たデータの内容は、ある程度知っています。細かいことは少し理解が及びませんでしたが、我々の持つ力は、副次的な力が発現する場合があるらしい。
そして、それが前兆。その状態の能力者に、精神的な爆発が起こることで能力は次の段階に到達する。
オモガネ博士曰く、単なる異能から祈るに足る力へ」
…それは理解している。
そこだけは変わらないと思っていた。けれど事態はその予想を大きく飛び越えた。
エリヤはどうか知らないが、俺にはまだ副次的な力は出ていない、というか出るのかどうかもわからない。
けど、あの日、彼女からの歌で時間制限はあっても、確かに能力は進化した。
「…私が『次の力』に至った経緯はこうです」
エリヤは語った。アナーキストに、能力で自身を貫くように命じたこと。彼女の力は、人の持つ『負』を倍加するもの。悪感情、古新の傷、その全てが肥大化する。
それは暴走か更なる力を狙った試みであり、それを以て、諸共に灰になりたかったと彼は言う。
もう何も見たくはないし、何も考えたくなくなったからだと。
いやだ、もう聞きたくない。
…判断材料はそれなりに揃った。
俺も眼前の男も、お互い能力が作用して、限定的に『次の力』を手にしている…でも、稀な例だと思う。
精神を揺さぶる力を持った進化者もいるにはいるが、俺達のような例が生まれた記録はないし、あったとしたら確実に記録に残る筈だ。
多分、精神をどうこうするだけじゃダメなんだ。
恐らくは対象と実行者の相性や、能力の元と思しき『象徴』の組み合わせも絡んでくるのだと思う。
「……能力には元となった『象徴』があって、それが上手く噛み合って、なおかつ所有者同士の相性が良かった時、能力は更なる進化を一時的に遂げる…ってことか…」
「…推測の域を出ない以上、与太話に過ぎませんが、現状ではこれが適しているかと」
…化学反応式かよ、と少し思った。
呆れ半分、現実逃避半分で。
ともあれ、一応の結論は出た。これ以上の発展は望めない。俺と目の前の男で出せる答えはここが限界だ。
対策局の人も、これ以上の進展はないと察したのか、尋問の終了をアナウンスする。
…途端に、どっと疲れが押し寄せてきた。頭がぼやつく、思考がまとまらない。涙が滲み始めて、唇が戦慄く。顔が熱い。怒りなのか、悲しみなのかわからない。足が震えて立てない。
「……終わりですか」
「…そう、だな」
ゆっくりと尋問室に入って来た局員さんが、俺の両肩を担いで、背中をさすりながら少しずつ床に立たせる。
そんな中で、拘束衣に包まれた男が問う。
俺は回らない頭のまま、それを聞く。
「…あなたに、後悔はありますか?」
「……あるから、生きてる」
それを最後に、俺の意識は混濁した。
そこから先のことは覚えていない。
ただ、次に意識がはっきりしたのは仮眠室だった。
◆
9月23日 天候:晴天 第四隔離場
時刻-19:35 仮眠室付近
「ありがとうございました」
か細いお礼の声と共に、ブラスは仮眠室を後にする。彼の肌の色は蒼白で、生来の青白い髪も相まって、生きる屍人のようであった。
かなり精神が疲弊したのか、彼は廊下を歩くにも、途中途中にあるベンチで体を休めている。
彼は満身創痍で、隔離場ロビーに辿り着いた。
事前の警告通り、かなり『削られた』彼は、ロビーにある長椅子で、天井を仰ぎ見ながらぼーっとしている。
そんなふうに、彼が休んでいる時だった。
かつり、と硬い床と靴がぶつかる音。
ブラスが咄嗟に姿勢を直し、音のした方を見ると、そこには肩に結んだ黒髪をかけた若々しい男がいた。
靴跡の主人でもある彼は、微笑んで言う。
「家族、部下、仲間、恋人、そして自分。
守るものが増えたね、カミサマ」
それが喜ばしいからなのか、それとも含む意味があったのか。定かではないが、しかし彼の言葉は少年への理解を窺わせる。
どかり、と男は少年の隣に座った。
休日の父親が、息子にだる絡みをするような距離感ではあるが、そこに不快感はない。
それよりも、驚きが優った。
「なんでここっ、あんっ───もがぁ!?」
「拾われた日から、ずっと自分に何も与えなかった君は、ここにきてやっと『利己的な幸せ』を感じた。
頑張るんならその分甘えろ、少年」
男の正体を知っているブラスは、目を見開いて驚きの声を出そうとするが、半端に開いた口に菓子パンを押し当てられる。黙っていろ、の意思表示であるらしい。
「君に限らず、若人の人生にはもっと『無駄』ってやつが必要だ。まぁその無駄奪ってるの僕ら大人達なんだからクソだよねって話なんだけどさぁ!!」
ゲラゲラと自嘲する若々しい男。
彼はひらひらと手を振りながら、尋問室の方向へと消えていく。
「じゃあね、
少年は彼を追いかけようとか、押し付けられた菓子パンを無理くりにでも食べて飲み込んで、普通にむせた。
咳を吐く最中でも、男のさった方向を見ていたが、既に彼の姿はない。そうと分かれば、少年は脱力したように笑って、追いかけるのを辞めた。
「…何だって局長が此処にいんだよ…」
ベンチに全身を預ける。むせた余韻がまだ残るのか、けほこほと軽い咳。少年は自販機から水を1本買って、気管支を落ち着かせようとゆっくりと水を飲み込んだ。
甘えろ、その一言が頭の中で反響する。
そうして、深呼吸を一度だけ。
懐から携帯を取り出し、しばらく画面を見つめ、意を決したように画面に触れ…たかと思えば「んぁ〜〜…っ」だなんて、気の抜け切ったような、へたれ全開の呻き声。
項垂れる少年は、携帯を再度見つめる。懊悩の声。覇気も威厳もない「あァあァァ〜〜〜ぅぁぁぁぁぁ……」と、へっにょへにょな呻きを上げながら、結局彼は目蓋を強く閉じて、観念するように通話を繋げた。
コール音が彼の耳に響く。
一度二度、そして三度。
鳴る都度に奇妙な焦りが湧き出る。出て欲しい、出ないで欲しい。そんなしっちゃかめっちゃな心。
それを反映したのか、少年の顔はぐっちゃぐちゃだ。なんかもう顔がうるさかった。黙っていてもやかましいと、引っ叩きたいほどにはヘタレ切った顔だ。
『もしもし!? どうしたの!?』
「…ッ!」
心配の色を濃く出した声。
それを聞いて、泣きそうに笑む少年がいた。
「…あー…その、アマネ? そっちは、仕事終わった?」
『終わったけど…キミは大丈夫? その、しんどい仕事してるって聞いたんだけど…』
なんでバレてんだ、と普段のブラスなら思うのだろう。
だけど、今の彼はその逆で「ああ、話通ってるんだ」としか思考できないし、バレたからと言って申し開きもなく、疲弊し切ったまま頷こうとした。
「…まぁ、そんなとこ…」
『───今どこにいるの? 直ぐ行くから場所教えて』
凛とした、力強い声が耳朶を打つ。心配をかけたことへの申し訳なさとか、想って貰えていることの有り難さとかで、嬉しかったり猛省が始まったりと少年の内心は忙しい。
そんな彼の口調が、少し丸くなる。いつものような粗雑さが、鳴りを顰めて年相応で、普通なものに。恐らくは、疲労した精神に引っ張られているのだろう。
「……帰りの車出るからさ、それ乗って帰る」
『ちゃんと帰ってくる?』
「……ちゃんと帰るから…だから、その…会ったらさ、…少し甘えさせて欲しい」
『分かった甘やかし散らす』
頼もしいな、そう思って少年は泣きながら笑った。
Tips:今回の野郎ども
ブラス…「ぶっ殺してぇ」と「なんでこいつに皆が」と「俺もやらかしたし」で心が滅茶苦茶。今まで我慢が多かったから感情が上手く出せなくて泣きながらキレてる状態になっちゃった。かわいいね。甘いところがあるのでまた抱え込むところだったけど、局長がクリティカル説得かましたのでセーフ。
エリヤ…「バーンアウト+後悔+許されたくない+何もしたくない」のメンタル。多分拘束とか無かったら、自分が殴られるように仕向けてた。「面倒くさい傍迷惑クソ野郎」状態になっている。許しをこう資格とかないないって自覚してるけど苦痛を欲してはいる。
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