敵幹部でも主人公見たらテンションあがる…あれ?(冷や汗)   作:苦い経験100%

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は?ボクの太陽だが?曇らせないが?

 

 

 最初は、殺すつもりなんてなかった。

 

 ただ、同類が穏やかに生きられれば良いと思っていた。子供達の笑顔があった。老人達の安らぎがあった。少年少女の平穏があった。

 飢えもなく、恐怖もない日があって欲しかった。

 それが長く続くように私は努めたつもりだった。弟の黙認もあって、それは確かに続いた。

 

『兄さんも苦労するよね…俺は無理だな、そういうの。怖いし、やりたくないって思っちゃうや』

『それが普通ですよ、…それどころか、きみに謝罪してもし足りない。エノク、きみには迷惑をかけるどころじゃない…やはり、前話したように隣町へ…』

『おいおい兄さんひとりぼっちにしろって? やーだよそんなの、たった1人の家族なんだ。一緒にいる時間ぐらい大事にさせてよ』

 

 ああ、悪魔め、毒虫め。

 私はなぜこうも善良な肉親に集るのだ。

 

 そもそも、───お前はこうも助けられているのに、心のどこかで弟を『同類ではない』と見ていたんだろう?

 だから、最後には見捨てた。命の価値を低くしたんだ。

 

 …匿った進化者達は、私の同類は、少しずつ余裕を取り戻していく中で、処刑隊への不満を再燃させていくし、非能力者への悪感情を僅かずつでも募らせていく。

 戦うべきだと声が上がる。皆が傷つくのは嫌だからと、その場を治める。やり返すべきだと涙が溢れる。無理なことだと、復讐を諦めさせる。

 …思うだけなら良い。感情の抑制なんて無理な話だ。

 だから、仲間が1人尻尾を出してしまったことなんて、当たり前の話で、だからどうにかしたいと思って、だけど私のところまで捜査の手は回っていた。

 

『兄さんは悪魔なんかじゃない、立派な神父様だ』

 

 …違うよ、私は悪魔でしかなかったよ。

 イザベルが捕まって、私のしたこと、私の素性が割れた時、やって来た〝処刑隊〟を相手に、きみはあくまで嘘で戦おうとしたね。

 秘匿者も処刑されると知っていたのに。死ぬと分かっていたのに、私が教会に向かう時間を、何より逃げる時間をくれた。

 

 なのに、私は『神父』ではいられなかったんだ。

 処刑隊と同じように、進化者達の処分をよしとする者達と同じように、私は彼らを殺した、殺してしまったんだ。

 私は教会を焼き尽くした。処刑隊もろとも、無関係な人達の灰を積み上げて、彼女と逃げ延びた。

 何より家族ではなく、同類のために人を殺した。

 きみを切り捨てて同類を選んだんだ。

 

 そして逃げ延びた先で、私は『そら』に魅入った。

 あわよくば、全てが壊れたらと思ったんだ。

 破綻しているにも程がある。

 …その傍に、守るべき、この地獄に付き合わせてはいけない彼女がいたというのに。

 

 

 ───ああ、やっぱり弟が生き残るべきだった。

 

 

 私はその思考を最後に、目を閉じる。

 何をしたら良いか分からなくなって、もう嫌になった。

 聞こえる声すら、今はどうでも良い。

 

 

 

 

 

   ◆

 

 

 

 ───蘭善、地下空間。

 

 一種の街と言える程の規模を持つそこで、争う勢力が二つ。一つは元来この地下を根城とするヤクザ者達。地下水路を熟知し、暴れ回り、稼ぎ周る無法者。

 一つは進化者達による一勢力。悲嘆の名を掲げ、被害をもたらすテロリスト達。

 

 両者の争いは、苛烈を極めた。

 争いの端は、地下に潜伏していたラメントが、地下のヤクザ達に宣戦布告のサインを発したものから。

 ラメント側はそれを「意図したものではない」と否定していたが、しかしヤクザ者達は「今更取り消せるか」と聞く耳を持たず、争いに発展した。

 長いそれは、ようやく終わりの兆しを見えた。

 

 今やここはガラクタの山だ。拠点の並んだ街並みは崩れ落ち、辛うじていくつかの見物が残っている。

 まるで終末モノの都市のような背景。

 その中を、1人の青年がだるそうに歩く。

 

「あ゛ー…やっっっっっと、勝った……!

 クソッ!そのくせ戦力以外の見返りねぇな!!」

 

 廃材の山、陽の光の届かない玉座で彼は言う。

 コンバットブーツに、既にかなりの劣化を見せているコートを組み合わせた姿の青年。蛇のような目と緑の髪を持った彼、アイザック・グローリーは廃材の玉座に腰を据えて喚いた。

 

「ったく、どいつもこいつも殺した瞬間に『第二第三のボスが』みてぇなことすんじゃねぇよバーカ!! いっくら勝っても勝っても収まらねえワケだよ引き継ぎバッチリかよ羨ましいなふざけんな!!」

 

 どがしゃあ!と近場のガラクタを足で蹴飛ばしながら、男は叫んだ。地下の町にその音がこだまする。

 近辺にいたラメントの構成員も、彼らに敗北した地下勢力の残存も、その方向を見ることはない。皆各々の治療に勤しんでおり、他に意識を割く余裕がなかったし、そもそも「俺より負傷者に構え」という命令があった。

 

 そんな勝者に相応しくない振る舞いをする彼に、壮年の男が声をかける。幾つかの治療の痕が残る彼は、忌々しげに顔を歪めながら、アイザックに向けて言う。

 

「…やはりブラスは、あの時消すべきだった」

「ははっ、それ言われたら弱いよディラン。

 まぁつっても、消すってなったら恐らく相当数死んでるよ。なんなら幹部全員軒並みな。能力で言ったら俺と同じくらいには無法だからな。

 だから人質取ってたんだけど、我ながら人材掴むの下手だな…でもまぁ、見ときたい番組みたいなもんだったしなぁ、いや私情挟んだ時点で今更か」

 

 ディラン、そう呼ばれた幹部の1人は顔を顰める。アイザックの物言いに、真剣さはかけらもなく「やっちまったなぁ」と開き直るような態度だけがあったからだ。

 加えて、ディランにとってはブラスが評価されているような言葉が気に食わなかったのか、侮蔑の意を込めながら彼は悪態を吐く。

 

「買い被りです、やつは運が良かっただけだ」

「あーあーあー、やめてくれ、そりゃ俺が輪をかけてダサい。逆だ逆、俺は運にすら負けた敗北者か、シンプルに運営能力ポンコツのバカって言い直してくれ。

 それと次からは過激派がいないか周り見とけ」

 

 ガラクタの席から、勝者が立つ。

 そして露骨に部下から距離を取ってから、すでに遅い警告をわざとらしく言った。

 

「次は死ぬぞ、多分」

「なにを…」

 

 一瞬だった。緑青の閃光が柱を作り、それはディランの右腕を飲み込んだ。規模も小さく、威力も抑えているのか、ディランの右腕はしっかりと残っている。

 だが、夥しいほどの焼け跡がそこにある。肉の焼ける匂いが広がり、苦痛故の絶叫が響き渡る。

 それを見て、アイザックは呆れていた。

 

「ご、ぁ、が、ぁあああああああぁあぁあ!?!?」

「あーあーあー、ったくバーベキューじゃねぇんだからさぁ、朝ご飯のベーコンエッグみたいな感覚で人様の腕焼いてんじゃないよ」

 

 アイザックはため息を吐いた。

 彼は腕を焼かれて呻くディランをゆっくりと担ぐ。

 辺りを見渡し、治療出来る部下を見つけては、その方向に()()()、とディランを投げ飛ばして「治療任せた!お前なら出来るだろ!」と声を飛ばす。

 

 そうして、アイザックは自身の背後へ目を向ける。そこにはディランの腕を焼いた下手人がいた。

 白い髪に、ギラついた鋭い瞳。

 羽織っていた白衣は煤けた上に、所々がちぎれていて、彼が乗り越えた戦いの激しさを物語る。

 だが最大の特徴は、右腕が欠損していること。

 アイザックは、変貌した『彼』の名を呼ぶ。

 

「ご機嫌斜めMAXだな、キュリア」

「はっ、それこそ逆だ。嬉しいんですよ、ボクは」

 

 キュリア・リズット。彼は凄絶な笑みを浮かべながら、遠い目をでどこかを見据えていた。

 思い巡らせるのは、ほんの少し前のこと。

 彼なりのこだわりでブラスの部下と相対し、結果として今の状況を招いた一戦。

 制裁だ処罰だなんだと、そんな話をする前に始まった抗争の中で、彼は右腕を失った。

 だが、キュリアにとっては『些事』でしかない。

 

「あの日、アイツは部下のミスで終わるのでもなく、けど弁明もなく純粋にオレ様を殺しに来た。

 あぁ、アレだ。あの敵意こそアイツだ。

 オレ様を否定(殺し)にくるあの姿が一番踏み躙りがいがある。オレ様の全てをぶつけるに足る理由がある」

 

 破顔して滔々と敵意を語る。失ったはずの右手が、緑青の光によって構築される。人の腕の形として構築されたような稲光は、バチバチと音を立てながら強く握りしめられていく。それは敵愾心の現れであり、執着の表明だ。

 男の脳裏をよぎる青白い少年の姿。水と油、徹底的な対立者、存在レベルで『合わない』者。

 否定しなければ気が済まない。勝たなければ満足しない。それだけの執念が強くなる。

 

「アイツの幸福も矜持も道程も、オレ様が殺す(全て否定してやる)

 

「……こわ〜」

 

 引き気味な顔でヘビの目を持つ男は溢す。

 あいつ拗らせ産む何かでも出してんのか? そんなことを思いながらアイザックは天蓋を仰いだ。

 

「あとそれはそれとしてワンナイトかました野郎にシンプルに負けたくないところもあります」

「もう手遅れだからリベンジマッチにしとけ」

 

 背中を並べながら、2人は肩をすくめた。

 

 

 

 

   ◆

 

 

 

 

 

 ブラス・リッターの住処は現在、査定時にあてがわれた一軒家をそのまま使っている状態だ。

 査定期間、つまり『一般社会で生活して問題ないかを見る期間』はすでに終わっているため、専用の寮に移る予定ではある。

 しかし、寮に入るまでは時間があり、彼はまだ一軒家暮らしだ。

 

 エリヤへの尋問を終えたブラスはアマネと合流した後、流れるようにその一軒家へと帰宅していたし、アマネを泊めることになった。というか、そうさせられた。

 

 その原因は、やっぱりブラスにある。

 彼はアマネに甘えるとは言ったものの、いざアマネと会った時に『何時までなら大丈夫だ?』と聞いたのだ。

 彼にとっては迷惑にならないようにと配慮したつもりなのだろうが、それは逆効果だ。

 この質問をされたアマネは『は? キミが楽になれるまで付きっきりだけど? キミ限定で無制限だけど?』と半ばキレ気味でブラスの家に泊まることを決定したし、押し切ったのである。

 

 そんな経緯で、リビングに一組の男女がいる。

 緑髪の少女は、シャワーを借りた後に薄手のキャミとショートパンツ、つまりは寝巻きに着替えた。

 それと首元にはチョーカーを。

 そして、自身の太腿に少年の頭を乗せる。

 言ってしまえば、ブラスは膝枕をされていた。

 彼も湯浴みを終えた後だ。緩いルームシャツに、ダボっとしたズボンを履いている。

 

「………あー……なんつーか…」

「んー? なぁに?」

 

 少しだけ気恥ずかしそうに言う少年。

 彼の声に、少女が柔らかな声を返す。

 

「………ありがとう、すっげぇ楽」

「ん、よろしい。もっと甘えて良いよ、普段から」

「…ガンバリマス」

 

 優しく青白い髪が撫でられた。

 安らぎを覚えたのか、少年の頬が緩む。

 そうして、むくりとブラスの体が起き上がる。膝枕の堪能は充分らしい。かと思えば、彼はアマネの方にゆっくりと倒れ込んで、少女の胸元に顔を埋めた。

 

 ふにゅ、と柔らかく胸の形が変わる。

 少年にして珍しい甘え方。加えて、更に頭を押し付けるように動く。気恥ずかしさやら、髪の擦れる感覚やらで顔を赤くしながらも、少女は彼を抱きしめながら問う。

 その声にも動揺は表れていた。

 

「えと、えーっと…どど、どうしたの…?」

「……あんたの音が落ち着くから」

 

 くぐもった声。密やかな息遣いが肌を掠める。それでも少年の耳には、愛しい人の鼓動が聞こえる。

 激しい音、穏やかな音。

 どちらでも愛しいもので、安らぎを呼ぶ。

 抱き締められたまま、少年は頭だけを起こして、少し惚けたような笑みを浮かべて本音を溢した。

 

「あんたの音、今日はもっと聞いてたい」

「……ベッド行く?」

「待って?」

 

 緩やかな空気が一瞬でぶち壊しになった。

 

「シームレスにも程があんだろびっくりしたわ」

「ごめん、愛おしさが溢れた。

 でも今のはキミがずるいと思う」

「俺のせいなのこれ、えっ俺のせいなの…?」

 

 少なくとも、先の少年の態度は『誘ってる』と受け取られても仕方のないものだった。かといって、そこに間髪入れずにぶち込む少女も少女だが。

 ともかく、彼女は少年の頭を自身の胸元に埋め直す。そして、また優しく髪を撫でた。

 

「まぁ、キミが楽になれるんなら、ボクは惜しくないし、嬉しいよ? というか、ボクにもっと溺れてほしいし、もっとキミに溺れたい」

「…それは…ありがたいとは思うけど…辛いからって何回も迫るのは、あんたに悪いよ。負担にだってなるだろ」

 

 ちゃり、とアマネのチョーカーから音が鳴る。

 留め具に採用されているのは小さな青色の石。僅かに透き通るそれは、光を通して白い輝きを伴い、蒼白と言うに相応しい色合いとなっている。

 その色は、少年の瞳や髪と近いものだ。

 

「じゃあ、せめて泣いてほしいな」

 

 少し顔を離して、頬に手を当てながら。

 翡翠のような瞳が、真っ直ぐ青い光を見据えた。

 言い逃れも嘘も許さないし、はぐらかされたら悲しいと、その緑色は語っていた。

 

「わかるよ、まだ噛み殺してるよね。そんな音がする」

 

 その一言で、やっと少年の口元が戦慄いた。

 そうして、唇だけが動く。声は掠れていたけれど、その動きが『かなわないなぁ』と言おうとしたものだということは、少女は理解していた。

 だから、もう一度抱き締める。泣き顔を見ないように、しゃくりあげるであろう背中をさするために。

 そんな風に支えられた少年の吐露は、一言だけだった。

 

「………くやしかった…」

 

 たぶん、と付け加えられた言葉も震えていた。

 迷子のような涙声だった。恐らく、少年も自身の心がまだよくわかっていないのだろう。

 それでも、泣き声こそ上がらなかったが、堰を切ったように涙だけが溢れる。

 少女はそれを情けないとは、欠片も思えなかった。

 ただ『やっと泣けたんだな』と、下手くそな泣き方から、何となく思って、背中をさする。

 

「いっぱい泣いてよ、頑張り過ぎなお兄ちゃん。

 ボクはさ、受け止めてあげられるから」

「………ッ…ぅ、ぁ…ぅっ…」

 

 噛み殺すことに慣れた泣き声。泣き慣れてない泣き声。そんな嗚咽を溢す彼を少女は抱き締めた。

 

「もっと大声で泣いて良いんだ、大丈夫。

 その代わり、キミが思っている以上に、ボクもキミのこと大好きだって思い知れ、ばーか」

 

 

短め番外編

  • 学パロ世界線
  • ひたすらキスだけのブラスとアマネ
  • 彼氏持ち女性陣トーク
  • 野郎どもの猥談
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