敵幹部でも主人公見たらテンションあがる…あれ?(冷や汗) 作:苦い経験100%
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特異対策局の組織図は、少し厚みがある。階級は上から順に局長、副局長、支部長、主任、副主任、局員。
この局員内にも階級があり、上から1等、2等、3等の順に並んでいる。
これは実力や功績によって上がるものであり、その中でも特に秀でたものが主任やそれ以上に昇格する仕組みだ。
アマネとミナヅキは2等局員に位置している。彼女達の相談に乗ったクサビの階級は主任。
大きな階級差があるが、関係はフランクらしい。
…部下の面倒を見るのは、上司の大前提。そのため、クサビはアマネが抱えていた問題の相談に乗った。
クサビは缶コーヒーを開けながら口を開く。
その顔は苦い液体を飲む前だというのに、既にかなり渋そうな表情だ。
「話し合いっつっても、どうすんのさ」
「あー…今後のこととか、万が一があった時とか…」
「…うそ、
「ああいや! 箱があったしシャワー浴びてる時も大丈夫だったので本当に万が一の時をですね!」
対策局、プライベートルーム。
福利厚生の一環として設置されているそれは、手狭ではあるがかなり充実している。
話題が話題故、三人は話す場所を移す。
場所と気分を変えてから最初に口を開いたのはミナヅキの方からだった。
「相手のやつ、どんなの?」
「ど、どんなの? どんなのって言ったって…えーと…色々抱え込んで潰れそうなのに頼らない人…?」
「…………お互い自暴自棄?」
「…否定はできなくもなくもない…」
濁った目で明後日の方向を見るアマネ。
その様を見てクサビはため息を吐いた。
「…まあ、君の扱い割とアレだし、仕方ない所もあると思うけど…幾ら何でも軽率すぎ。
いやでもどうなんだこれ、あたし達がフォロー出来てれば…大丈夫だったのか…? でも立場とか能力とか…ああ、もう! だから分けるべきだって言ったのに!!」
うがぁ!と頭を抱える上司に「本当にすみません…」と頭を下げる部下。実際、ここでアマネが頭を下げる必要は全くない。だというのに、この行動が出てしまう辺り、かなり「キていた」のだろう。
しかし、今騒いでも仕方のないこと。
クサビは肩を落としてから、話を戻す。
「…話し合いするにしても、少し安全に欠けると思う。酔ってる子に手ェだす男に碌なやついないからね」
「あ、その実はどっちが手を出したかというのも、
えーとその、なんというか割と曖昧で…」
「は?」
「…ボクはその人を愚痴らせようとかなり酒飲ませて、それでその人が真っ先に潰れました…その後、ボクも飲んでお互い酔い潰れて…起きたら…はい」
「色々終わってる」
ミナヅキが辛辣な言葉を吐いた。
クサビは頭に手をやり天井を仰ぐ。
「……多分襲ったのボク…」
「待って朝から処理しきれないってぇ!!」
「アマネ、心当たりある?」
「押し倒した感じはあるというか…その先がどうも…」
「うわぁ…」
どんよりというか、げんなりというか。
そんな生暖かく気まずい空気が流れ、皆が一斉に沈黙する。アマネは自己嫌悪から、クサビは驚きゆえの放心から、ミナヅキは諦観から、それぞれの理由で口をつぐむ。
しかし、黙ってばかりでは埒が明かない。
頭に手をやりながら、クサビは静かに、というか様子を伺うような、今にも割れそうな風船を警戒するように会話を続ける。
「あー…その…えっと…アマネ的には、どう、なりたい感じ? その、話し合いってやつ」
「ど、どう!? ボクとあの人が!?」
「……アマネ、酒の出会いはやめろ。どろどろ」
「ああ、万が一の場合除いて結婚とかやめときな。あんたの言ったことが仮に本当だったら悪女どころじゃないから、妖怪とかその辺りの部類になる」
「そそそんなこっとするわけないじゃないか!?」
「うっわ…」
あからさまな動揺にクサビは引いた。
どうやら朝に「そっかーじゃー結婚だねー」と相手に言ったことが図星になってしまったらしい。
しかし、この動揺から一つの仮説が浮かび上がるのは当然の話。クサビは神妙な顔でこう言った。
「……もしかして惚れた? その人に」
「ピッ」
「…この反応、恐らくマジ。やばやば」
アマネが小さな悲鳴と共にフリーズする。
顔は赤いが、頬は完全に引き攣っていることから、色々とアレなことだと自覚はあるらしい。
クサビはため息を吐く。連動するように、黒髪の中にあるピンク色のメッシュが揺れた。
凛々しい顔立ちは、げんなりとしている。
「…もうこうなったら聞いておこうか、理由」
「…いやそのー…ほんとボク自身もどうかと思うんだけど、弱り目に祟り目の時に、優しくされて…そのクセあの人は辛そうなのに弱音吐かないし…負い目というか…その、なんかグッと来ちゃったって言うか…」
「ダメンズに引っかかりそう」
「DV被害者のモデルとかやってた?」
「さっきから辛辣じゃないですか!?
あ、ハラスメント被害者のモデルにはなれそうだねあはは!!」
「…ごめん、マジでごめん」
真面目にこれは
そんな責任感からか、彼女の中で「話し合い」に同席する決断は早々と決まっていた。
「…とりあえず、相談の場にはあたしが同席するよ。色々と物騒だからね…責任もあるし」
「良いんですか!?」
「ん、まぁ口を挟むかどうかは相手次第。とりあえず、いつにする? 連絡先貰ってるでしょ? お昼休みに一度話しておきな、確認の意味も込めて」
「わ、わかりました!」
◆
「死にてえ」
「自己嫌悪MAXだな、ブラス」
馬鹿野郎お前酔った女性に手ぇ出したんだぞ、恐らく。そんなの死にたくもなるわクソボケ。
そんなことを考えながら、俺は独り言に反応したクソボケ…ボスのアイザックの方を見る。
会議の後、俺はボスに呼ばれた。
会議が台無しになったのでそのお説教、それプラス事実確認のためである。
納得しかない。人質(しかも家族)いるのにワンナイトとか常人がやることじゃない、控えめに言って狂人だ。
ボスから見たら恐怖でしかないだろう。
「…で、その、なんだ…マジなのか?」
「しつこいね、冗談言える精神状態だと思う?」
「精神はともかく行動が冗談飛び越えてんだよ、はっきり言ってお前滅茶苦茶怖いからな?」
「マトモなこと言うなぁ、このクソテロ野郎は」
こいつゲームでもそうだったけど、割と思考回路はマトモ寄りだ。元々はそれなりにデカい家の生まれだから、精神的には話せる方の部類に入る。
…アイザック・グローリー。
主人公と同じく「後天性の進化者」である彼は、一夜にして大別されているこの世界の澱みを味わい、そして破綻した。
差別撤廃など、偽りのお題目に過ぎない。
…ぶっちゃけた話こいつは今、何も考えていない。自分が八つ当たり出来ればそれでいい。そんな人間に過ぎない。
「耳が痛いな、ご同類」
「悪いけど、殺しを楽しんだ覚えはないよ」
「性に耽る覚えはあったようだが?」
「…
イラっと来たので少し言い返した。
すると、俺の顔の真横に稲光が走る…アイザックが能力を行使したのだ。
彼は侮蔑と苛立ちを混ぜた顔で言う。
「いやムカつく通り越して割と恐怖している。お前は飢えた家族を守るため、そして自らを苦しめる者への反逆として、その大鎌を振るってきたような奴だ。
マトモだと思っていた。その力に反してな。だから御し易いとも考えていたが───その目算が通じるかどうか…」
「…俺はそこまで破綻してないよ。先に言う、契約を反故にすればそれなりの覚悟をしてもらう」
「その返事が返って来るとなると、俺の打った手はまだ有効的と見ていいな」
はいでました人質戦法。死ぬほどだせえが、死ぬほど効果的なのは確かだ。俺は肩を落として、ため息を吐く。
「…わかった、わかりましたよ。以後注意します。今後は余計な口を挟まなきゃいい、そうでしょ?」
「ついでに常軌を逸した行動もするな」
…それこそこっちのセリフなんだが。
しかし、どうするか。とんでもなくアレな経緯だけど、主人公とはコンタクトが取れるようになった。
自分のことは自分でどうにかする、人質の件は俺でどうにかするとして、これから先のテロに関しては未然に防げるのであれば防ぎたい。
…それと、部下の子ども達も真っ当なところに預けたいが…あ、ダメだ今の社会じゃ無理だな。
…抱え込み過ぎ、という視点は間違いじゃないかもしれない…。
「…とりあえず、話し合いに行かないとな…」
「話聞いてた?」
「うるせぇ連絡先渡しちゃったんだよ」
「お前馬鹿なの!?」
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