敵幹部でも主人公見たらテンションあがる…あれ?(冷や汗) 作:苦い経験100%
intro:諸々のグレーラインを突っ走れ、その後のことは知らん
───ハイバラとシャラ、二人の生活は激変した。
というより、ハイバラの方から強制的に変えた。
彼の目的は依然として変わっていない。
隔離されないように生きること、そしてシャラを幾らかの刺客から守ることの二つ。
だがハイバラは後者の状況に疑いの目を持っていたし、その目的を課した『使用人』を信頼していなかった。
なのでシャラを監禁している屋敷の爆破を決めた。
しかもしっかり死体偽造までして。
おまけに爆破前、家にあった殆どの調度品を裏へ流して儲けている。かなりの悪漢ムーブをかましているというか、経緯的にも普通に悪漢であるハイバラだが、この売買には金稼ぎ以外にも一応の理由がある。
「もう完売かよ、嫌に早くはけんな。
やっぱここんとこの裏側は活発か…そのくせシャラ狙いは規模が少ししか変わらなかった…こうなるとマジで屋敷爆破して正解だったか?
戸籍変えるにしても、元は絶っておきたいよなぁ…」
どうやら『裏側』の動きを見るために、物品を流してその流通を追っていたらしい。
お金も稼げて一石二鳥だと彼はほくほく顔であった。
そんなハイバラはネットカフェの一室にいる。
良い部屋をとったのか、パソコンと椅子に加えて、ソファと分厚いベッドが設けられていて広い。
「……個人的な依頼か、そもそもブラフか…いや、何かの実験か? まぁこの際、もう理由は無視だな。誰が狙ってるのかだけはっきり…オイ、あわあわしすぎだ」
「し、しますよ普通!? あんな、あんな爆発があって落ち着けるわけがありません…!!」
「爆破する時に〝私にやらせてください〟っつったのオマエだろが」
引き攣った顔で言うハイバラ。
そんな彼の装いは、口元の隠れる黒ジャケットに黒スキニーというシンプルなものだが、ジャケットの内側に色々なものが入っているのは素人目にも明らかだ。
そして彼の隣に座るシャラは狼狽している。
彼女の服装はノースリーブの襟付き黒シャツに、碧色の石のついたループタイを通しており、青いミニスカートに黒タイツを組み合わせたものだった。
そんな彼女はさる院長の庶子だ。
その出生故、恥部と言わんばかりに扱われ、世間から隠すように屋敷にずっと閉じ込められていた。
ろくな教育も、満足な食事もない。
普通であれば『悲劇の子』らしく、しおらしく、弱々しい性格のままであっても仕方ないだろう。
だが、彼女は弾けた。
ハイバラはまだ覚えている。少女に屋敷を爆破する話を持ちかけた時、良い反応は返ってこないだろうと覚悟していたのに、少女が何か吹っ切れたように目をキラキラとさせていたことを。
その時自身が『もしかして引いちゃいけない引き金引いた?』と冷や汗をかいたことも。
「こ、ここまで大規模なものとはぁ〜〜…! あ、あんな大きな爆発、絶対周りの皆さんのご迷惑に…!」
「監禁の罪深さを思い知ってるよ今」
他ならぬ、シャラが屋敷の爆破を行った。
正確には、そのスイッチを押した。彼女は自らの父によって施された縛鎖を破砕し、自身が繋ぎ止めた命と共に夜の街を逃避する。
どんな心境の変化だと、10人中10人が問うだろう。
というか、ハイバラがそれを1番問いたかった。
強いて回答するならば、元々燻っていた諸々に火をつけたのが彼だったという話だが。
「まぁ大丈夫だ。ロクでもねェ所あらかた回った経験があるからな。爆発と爆風くらいなら出来る。計算間違ってなけりゃ周辺に被害は行かねェよ」
「…とてもこわいひとです…」
「しおらしくねェなら上等だ」
「いひゃいへふ…」
引き気味の少女の頬を、みょいんと伸ばす指。
表情筋をあまり使ってないのか、よく伸びた。
それを踏まえて『良かった』と彼は思う。
そもそも『閉じ込められる』ことを嫌う性質を持つのがハイバラだ。自身の命を拾った少女が、その状況に置かれていると分かれば、面白くないと思うのは当然の話。
だが、彼の思考を過去が苛む。
〝…ブラスもスラムの奴等も『閉じ込めてた』ろうに、なんてのは今更か…つかブラスの野郎、殴るだけで終わらせるとか甘すぎんだろ。後味が悪りぃにも程がある…。
…いや、それが妥当な『罰』ってことかよ、あの兄貴〟
彼が今抱いている心の棘。
褪せた心の中で芽生え直した心の重たさ。後悔ではなく、さりとて謝意でもない。ただ『悪いことをした』と感じられたもの。
非難されるべき行い、そう思えるようになった過去。
今の彼は、それを抱いて歩んでる。
今更な『良いこと』だとしても、やらなければ落ち着かない。何より、苛むそれが煩わしい。
〝…思えば屋敷の爆破も、らしくねェ思考だ。
わざわざ良い住処吹っ飛ばしてまで、監禁の終わりを呼ぶなんざどうかしてる。
いや単に『相手側』を混乱にぶちこむなら『温度差のデカいアクシデント』を起こせば良いってワンナイトのイカれ具合を習ったのもあるが…〟
そんな思考の濁流の中で、パソコンの画面を眺める。そんな作業の中、ハイバラは咄嗟にある一枚のウィンドウに視界が奪われた。
それはSNSのタイムラインに流れた、何処にでもあるような一枚の写真。単なる今日食べたものの紹介。
だがハイバラは、その画像に映る端を見ていた。
そこにある小さな人影を。
「…コイツは…」
「…ど、どうしました?」
褪せた灰色は、その目を獰猛に尖らせる。
案じる少女の声にも気付けないまま、本音を吐いた。
「───クソッ、地下で死ななかったのかよ」
◆
ビル街から少し離れた地点を、アマネと共に歩く。
少しして、周辺から距離をとるように建てられた、長方形と正方形を合わせた無機質なデザインをした施設が見えてきて、そこからもう少しだけ歩く。
そして、施設の入り口近くで、アマネはくるりと俺の方に振り返った。顔色は明るく嬉しそうに。そんな調子で、オープンキャンパスのガイドをするように言った。
「着いたよ、ブラス! 此処が特異対策局本部!!」
「凄い嬉しそうな顔してるな、あんた」
「当然! だってキミと一緒の職場で一緒の班だよ?」
ニッコニコなアマネを見て俺も口が緩んだ。
…今日から、本格的に1区の対策局で働く日々が始まる。
なんて、一番最初のモノローグの真似みたいなことはさておき、少し高揚感があるのが本音だ。
とは言っても『ここ前生でやったとこだ!』みたいな感じではない。知識なんてもん物心ついた時には恐怖しかなかったし、餓死寸前で一回記憶トんでるし。
何というか、やっと本格的に被害を止める側に行けたというか、そんな一安心みたいな感じ。
「このままオフィスに行けば業務開始だって」
「あー…でも、そうだな…」
「ん? どうしたの?」
少し不安というか、懸念点。
先の一件があるにしろ、局内の職員の中には『嫌進化者側』の人は多いのが今の時勢だ。
上に行くほどそんな人は少ない。
だからと言って、他の人に『うるせぇしらねぇ』みたいな振る舞いは出来ねぇというかそんな度胸はねぇ。
…実際に進化者からの被害を受けた人もいるだろう。
その辺りはキチンと配慮しないと。
というか俺の元の立場が立場だし…なんか段々腹立って来た、なんでやりたくもなかった来歴があんだよホントふざけんなあのエセ活動家共。
そう思っていると、首を傾げたアマネの不思議そうな顔が至近距離に来ていた。
驚いて仰け反ると「元気そう」と笑ってくれる。
…そういうところだと思う。
でも昨日ヘラったのは忘れて欲しいというか、恥ずかしいというか、そこまで苦労させたくないというか。
もう十分すぎるほど支えはもらってる。
ともかく、俺は彼女に対して自分の思っている配慮というか、態度の問題に関する不安を打ち明けた。
「いや局内だとアマネのこと先輩って呼んだ方が良いのかなって。なんだかんだ、俺は元テロリストだろ? その辺りとかちゃんとしないと変なトラブルとか───」
そこまで言うとアマネが石化したみたいに固まる。
次に目が虚になる。
地雷を踏んだかと焦ったけど違うなこれ。
なんかこう、色めきだっている。
意識がふわふわしてるというか、妄想にトリップして創作に駆られた人みたいな。
というかそんな呟きがチラホラ聞こえて来た。
…存在しない記憶にトリップしてるねこれ!?
「………ブラスが、後輩…一緒に、屋上とか…」
「アマネー、戻ってこーい。
どの道、ド貧民だったから学校行けねぇぞ俺」
「ぼくはけいそつでした」
「やっべ気付け強すぎた」
くそっ自虐ネタが通じねぇっ!
というかそんな気にしないで貰いたいんですがねぇ!? 事実っつーか、そんな気にしてないというか!!
ああ駄目だ目がストレス値マックスか、バッドコンディションの時みたいになってる。
死んだ魚でもここまで酷くねぇぞ。
「…いや、その…そんな気にすんなよ。
思うだけなら自由ってよく言うし…」
「…ちょっと思ったんだ。もしキミもボクも、普通の高校生でいられて、同じ学校で過ごすことが出来たら絶対に楽しかっただろうなぁって」
「爛れた発端だぞ冷静になれ」
俺のやらかしがノイズすぎる。
なんであれ手を出したことには変わらねぇのである。でもちゃんとした関係になれたので、今後はその辺りに後ろめたさは…いやあるけども。
でも、彼女といることは心地いい。
そっちの方が優ってる。多分、今ある後ろめたさとかも、次第に笑い話とか教訓に溶けていくのだろう。
とか思ってると脇腹を突かれた。
「キミはさぁ!少しはさぁ!!浸らせてもさぁ!!!」
「いだ、あだっ、ちょっ、わき腹っ、つくな」
…オフィスに入ったのは、この少し後。
でもどうやら俺とアマネの戯れは窓から見えていたらしく、クサビさんから爆笑しながら迎えられた。
シンプルに恥ずかしさの極みだった。
誰か時間巻き戻してくんねぇかな頼むから。
◆
───とあるビルの屋上。
若白髪の男が、屋上の手摺りに腰掛けていた。
ボサボサな髪。所々にダメージのある白衣。
ギラついた目の下にはドス黒い隈。
その特徴に該当する者、キュリア・リズットは退屈そうに一枚のモニタを手にしている。そのモニタはゴテゴテとした基盤のようで、持ちづらそうなものだった。
画面に映るのは、青白い髪の少年と緑色の髪を持つ少女。二人は特異対策局の前で何やら戯れている。
十人中十人が揃えて幸福と評するような風景を、キュリアはひどく退屈そうに見ていた。
…或いは『どうでもいい』といった態度。
そんな風にいる彼に、背後から声が飛ぶ。
『ふぅん、すっごい幸せそうだねぇ』
「気に入らないか?」
『ううん、こんなの壊すの好きそうだなって』
ひらひらとしたレースがあしらわれた、黒いドレスのようなものを身に纏った少女が音もなく現れていた。
同時に、強い風が吹く。
しかし、彼女の長い黒髪はおろか、纏う衣服すら微動だにしない。何からの能力なのだろうか、もしかすると彼女はここに『いない』のかもしれない。キュリアは驚くこともせず、退屈そうにあくびをした。
少女は、依然として甘ったるい声で彼に言う。
『でも意外!きみのことだから、さっさと喧嘩売りに行くものだと思ってたんだけど…もしかして、いざ目の前にしたら冷めちゃったぁ〜?』
「次わかったような口聞いたら潰す。
そっちはどうなんだ、オレ様は始めて良いのか?」
『う〜んとね、うん、まだ出れそうにないかなぁ? 少しだけ準備、というかまだ知りたいことがあるんだってさ。
ザックがね、色々派手に、好きに動けって!』
「上等」
片腕を欠いた男は凄絶に笑う。
待てを解かれた猟犬のように、獰猛さを見せた。
そんな彼を見て、クロユリは釘を刺す。
『わたしの〝お気に入り〟壊さないでよね』
「オレ様にそんな趣味ないんだけど。
ああ、でも負けたら助けねぇからな」
『………まぁ、負けたら仕方ないけどさ』
拗ねたような声、それを最後に少女の姿がブレた。そんな現象にすら、キュリアは驚きもしない。それどころか、彼女の方向を見もしなかった。
それは承知していたのか、特に不満を漏らすこともなくクロユリは別れを済ませる。
『じゃあもう〝消える〟よ?』
「ああ、さっさと消えろ」
その小さな語らいを最後に、クロユリの姿は消えた。
それと同時に、キュリアは立ち上がる。
「……じゃ、ぼちぼち始めるか」
「…………」
彼は一つ、大きく伸びをする。同時に、凝り固まっていたのか体からゴキゴキとほぐれる音がした。
そんな彼の背中には、幾人かの影がある。
彼の部下か、それともクロユリの言う〝お気に入り〟なのかは、判別はまだつかない。
だが、キュリアが現状動かせる駒なことは事実だ。
背にいる人々を見ることなどなく、振り返ることもせず、遠くを見据えながら彼は言う。
「オレ様とオマエでゲームと洒落込もう。
守ってみせろよ、自称ガラクタ」
短め番外編
-
学パロ世界線
-
ひたすらキスだけのブラスとアマネ
-
彼氏持ち女性陣トーク
-
野郎どもの猥談