敵幹部でも主人公見たらテンションあがる…あれ?(冷や汗) 作:苦い経験100%
卒論やらお家騒動やらが片付いたので再開
お待たせして申し訳ない
───新しく支給された特異対策局の正規服を着る。
特殊繊維で編まれたこれは、外部の攻撃からをある程度防御する代物。黒を基調としたものに、所々へ緑のラインが走っている、すこし近未来的なデザイン
…このジャケットが配布されたということは、事態が後半戦に差し掛かったことを意味する。
まぁ後半の方が長いんだけども。
滅茶苦茶優秀だったんだよなこの
デフォルトで全属性に20%の耐性+速度小アップ。強化しきればラスボスにも通用するし見た目も良い。
尖った性能はないけど使いやすいやつだ。
実際に着ると軽い・丈夫・動きやすいの三拍子。なんつぅ技術力してんだと舌を巻く。
これを着るのは今日で4日目。顔合わせも、内部の案内も終えて、今の俺はようやく特異対策局の新人として成り立った。ブラス・リッター3等局員…名札、全部カタカナ表記にされるとは思わなかった。
フリガナとかじゃないんだよな…え?
あまり正論で殴るなよ、泣き喚くぞ。
…そろそろ本当に変更しないと、とは思っている。主にアマネとジャックからの視線が怖い。
この前二人で「もう無理やり苗字変えてくれません?」だとか「もう色々すっ飛ばしてそうしちゃおっかな」って会話してたのマジで危機感を感じたからね。
せめてご両親に挨拶はさせてほしい。
顔合わせるのは立場的にやっぱり難しそうだけど、一応打診はしてもらってるから待ってほしい本当に。
そんなこともあったけど、何だかんだ平和だ。
今はクサビさんのE2班で仕事をしている。
とは言っても、この4日間でやったのは、慣らしとして書類関係の処理や情報整理と、ラメント関係の対策会議が殆どだった。
なので班がやってる仕事に触れるのは今日が初。
そんでもって、その今日。
そろそろ本格的に班の仕事にも移って良しということで、俺はオフィスにジャケットを羽織って参上した。
どうやら俺が一番最後だったらしく、慌てて班員の元へと謝りながら合流する。
班員は俺を含めないで四人。
班長であるヒヒガネ・クサビさん。
副班長のレオネ・サンダーズさん。
班員のユカタンさん、フジワラ・アマネ。
凛々しい顔立ちに、ピンクのメッシュの入った黒髪。パンツスーツスタイルのクサビさんは、俺の出立ちを見ながらカラカラと笑って言った。
「うんうん、様になってるよブラス…っと、そうだ。アマネ、今更だけど、彼のことファーストネームで呼んで大丈夫?」
「俺にも聞かないんですか?」
「大丈夫です、ボクはその辺り割り切れますから! …その、ボクってそんな独占欲強そうに見えますかね…?」
「あの、俺が答えちゃ駄目なの?」
おかしいな、呼ばれるの俺だよな?
にも関わらず、アマネは和やかに答えている。
外ハネが見られるショートヘア、快活さを宿した瞳、そのどちらも緑色。顔立ちは言うまでもなく可愛らしい。
服装はジャケットと、それと同素材のスキニー。ボーイッシュらしさに磨きがかかっている。チョーカーの留め具は、青いストーンに決めたようだ。
……アマネの独占欲って実際どうなんだろう? 嫉妬とかしてるイメージがそんなにないけど。
まぁクサビさん秒で「ダウトだな…」って顔してるから強い方なんだろう。
「割り切れるのと独占欲の強弱は別じゃねぇ?」
「レオネ、面白そうだから黙ってて」
「今面白そうって言いましたかユカタン先輩」
「だって実際面白いし…」
「ハッキリ言いやがったよこの人」
そんでもってレオネさんとユカタンさんは、完全に楽しんでるよね。もう隠す気すらなくなってるじゃねぇか。せめて本人に対しては隠そうとするくらいはしてください。
…経緯からして俺の方がヤバい? おいこの先輩二人やすやすと禁止カード切ってくんだけど。
俺が膝を折っても朝のミーティングは続く。
雑談を切り上げ、クサビさんは手を鳴らした。
「じゃ、そろそろ本格的に状況を振りかえろっか。今日からはブラスにも本格的に働いてもらうからね」
そうして、現状整理が始まった。
この際だから、俺も自分のことを整理しようと思う…なんだかんだで怒涛の勢いでイベントが目白押し過ぎだ。
いや殆ど自分で呼び込んだだろって言われたら、まぁその通りなんだけども。
「先ず、目下解決すべき案件が一つ。過激派の進化者達のテロ組織『ラメント』。前身とか色々あるけど、そこは上の人達が把握してるから割愛割愛っと…知りたい人は、後から偉い人かブラスに聞くこと。
まぁ後々説明とかあると思うけど」
生まれながら異能が使える
でも、他の国よりは大いにマシ。
外国のエディンを筆頭に、殆どは見つけ次第『処分』が基本。そんな風潮の中でも蘭善は特に例外で、あくまで捕縛と隔離に留まっている。
だからといって良いものでもないけど、それを変えようとする動きが局内の上層部にあるのでなんとも言えない。
というか、対策局側に家族と部下の無事や生活が確保されてるので、今の俺にはどうこう言う資格がねぇ。恩恵もらってるのでお口チャックだ。手足は衝動的に動く。
衝動に身を任せてやらかしただろ?
ははは、今から首をくくっても良いですかねぇ!? 腹括ったからダメ? そりゃそうだ。
…それはともかく、まぁ進化者の中には勿論、過激派がいる。内情は様々だが概ね「弾圧気に入らねぇ皆殺す」「能力好き勝手に使いてぇ」「非能力者がデカい顔してるな殺す」とかそんな感じ。
そんな奴らが集まってるのがラメントという組織。
「んでまぁ、総合病院襲うわ第四隔離場からヤバい奴ら何人か出すわって感じだったんだけど、そこからぱったり音沙汰なし。そこに絡んでるのが、我が班の新人二人。
詳細は一応伏せるけど、まぁ
すごいよね、真面目な話にしようとしてるのに一気に全部ぶち壊す勢いだもん。まったく最高だなウチの新人」
「ボクらは大真面目だったので…(震え声)」
「真面目な話をしようとする都度にここにぶち当たるの本当に申し訳ないマジで申し訳ない」
いまだにダメージがデカい(言語野が死ぬ音)。
おかげでラメント側の威厳がボロカスになったのは致命傷の光明だし、そろそろこのダメージにも慣れてきたと思う、いやごめんやっぱ血ぃ吐きそう
「でもありがたいことに、二人や周りの人達のおかげで、彼等は地下で足止めを喰らったし、幹部各二人の捕縛に成功。そこに加えて、あたし達は、敵方の情報を得られたし、準備を整えつつある。これもう勝ち確じゃない?」
「そのドヤ顔には良い思い出がねぇ、即刻やめろ」
「敗北フラグ立てないでくれないかなぁ…」
勝ち気な笑みを浮かべるクサビさんを、先輩達が嗜める。そんなことがありながら、我らが班長は振り返りを締め括った。
「振り返りはここまで、大まかなところだけだったけど、概ね問題はないかな、多分。まぁ細かいところを知り直したい人は後で活動記録を見るように…でも50枚ちょいあるから、ちょっと疲れるかもね」
◆
「じゃ、本題に入ろっか。
仕事は何も対策だけじゃないからね」
パンパン、とクサビさんが手を叩いて場の空気を切り替える。俺を含む班員達も姿勢をしっかりさせる。
班長は一枚のタブレットを取り出し、指でそれを操作しながら、俺に向かって話題を投げかけた。
「ブラス、大分前にハイバラについて報告したでしょ?」
「ッ見つかったんですか?」
「…あんた敬語びっくりする程似合わないね」
「Q&Aを成立させろよ」
会話がまとまらねぇのよ。いや敬語似合わない自覚あるけど。以前でもわりかし崩れ気味だったし。というか無言で頷いてんじゃねぇよアマネもレオネさんも。
荒れた口調のド不敬元テロリストは顰蹙どころじゃねぇのよ。割と然るべき処分されても文句言えない。
…それはともかく、だ。
ハイバラの方に進展があったのは嬉しい。
スラム炎上後、あの野郎だけは別の病院に運ばれた後、行方不明になっている。これは元スラム住人の中で俺だけに知らされていることだ。あいつが脱走したのか、それとも何処かに運ばれたのか。
その真相も顛末もわかってなかった。
そのおかげでソウや一部の奴に「ハイバラ無事かな?」って聞かれてもこっちは「スゥゥゥーーーッッッ…マダワカンナイッスネェーー…」しか返せなかったし冷や汗ダラッダラだった。
医者として信頼されてた奴が「実はあんたら人質として機能させてた見張り役のテロ野郎です、けど火災の時に皆を助けてくれたよ」とか言えるわけねぇ。
あの野郎絶対一回はしばき倒す。
なんて考えてたらとんでもない情報が来た。
「見つかったとは言えないけど、彼が担ぎ込まれた先のハラエド病院あるでしょ。そこの院長が他人名義で所持していた物件が数日前に爆発してる」
「えっ」
「近隣に被害はゼロ。現場からは計算式の書かれた壁の破片が見つかった。それで状況的に見たら院長が爆破実験やった・やらせたのクロ判定で、今はちょっと取り調べ受けてる状態かな。
下手したら集団テロにまで繋がるかもだから、ことを慎重に進めるために緘口令出したみたい」
「??????」
いきなり情報量が多過ぎる。
この流れでハイバラの情報ゼロって嘘だろオイ。なんで消えた奴じゃなくて、現在進行形で所在わかってるやつにアクシデントが発生してんだ。院長に爆破事件ってミスマッチにも程があんだろ。
…なんか今すっげぇ自傷した気がする。
ともかく困惑している俺に、アマネが補足してくれた。
「えっとね、前々からそこの院長には、進化者に後ろ暗い事を依頼してたって疑いがあったんだ。対策局も警察も動きたかったみたいなんだけど、証拠とか中々出てこなくて。
公安室の黒いとこも関わってるみたいだし…だからハイバラ込みで様子見になってたんだけど…」
「…今回の事件で方々が大慌てと…」
「その通りだねー…」
…薄々思っていたけど、俺が関わる全部に斜め上のアクシデントがぶっ込まれてる気がする。
アマネもそれは感じていたのか、苦笑して目を逸らした。
「…お祓い行こうかな」
「大丈夫? お祓い先でアクシデント起きない?」
ユカタンさんからかっ飛んできた言葉に、何も言い返せないのが辛いところである。
そんなこんなで逸れた話だったが、班長が話題を元の方向へと戻す。
「話はちょっと逸れたけど、ユカタン主導でアマネとブラスにはこの件の協力に出てくれないかな。現場には話が通ってるから、能力は大規模じゃなきゃ使って大丈夫」
「い゛っ!? 僕が主導!?
「レオネとあたしはまた別件。何かあったらあたしが全責任おっ被るから、まぁ心配しないで頑張ってよ。ユカタンだって、いつかは自分の班持つようになるでしょ?」
「僕この班出たくないんだけど!?」
「「うへへへへ」」
「にやけて誤魔化すな班長ズ!!」
微笑ましいやり取りをする三人を見つつ、何度か自分の眉間を揉む。この事件に協力するにしても、俺の出来ることって何だ…? 鎖と鎌しか出ねぇし、推理とか出来ねぇぞ俺は。
出来るとしたら全力先延ばしトークぐらいだ。万能チックなアマネはともかく、俺はこっちで役に立てることってあるのだろうか。用心棒くらいしか出来無さそうなんだが。
「あ、そうだ。少ししたらE1班と合同で訓練というか組み手みたいなやつやるから、あんま怪我しないようにね」
「うぐっ」
そんな思考の最中、班長からの言葉にアマネの顔色が悪くなる。俺が咄嗟に背中をそっと撫でると、頭をぐりぐりと押し付けて来た。どうやら、元々いた班へのトラウマは根深いらしい。そりゃそうだ。
…今思えばアマネの中で彼等に対する印象、約1名除いて『パワハラ先輩ズ』で終わってんな。
我ながら酷いバタフライエフェクトである。
「…嫌な未来を知っちゃったぁ…」
「ああ、そんなぐでんとすんなよ…別にあんた一人で行くわけじゃないんだから…」
「うぁー……」
アマネは遠い目をして、俺に体重を預ける。
俺はそんな彼女を支えながら、少し笑ってしまった。
「前途に難が多そうで胃が痛ぇ」
「………ボクも」
Tips:Q.雪見だいふく一個ちょうだい
A.ブラスの場合
「……良いけどさ、後で何かお返しくれよ?」
※嫌そうな顔するけど即くれる
※なお当人は補填してもらうことを忘れられても「まいっか…」で流してしまうので、最悪毎回たかられる
A.アマネの場合
相手が友達の場合:「雪見だいふくでそれ聞いちゃうの!? もっと数があるお菓子とかなら良いけど…うーん、でも……はい、どーぞ! 今回きりだからね!?」
※めちゃくちゃ悩んだ末にくれる(なお2度目は×)
相手がブラスの場合:「仕方ないなぁ…はい、口開けて。あーんだよ、あーん。どう? おいしい? …もう一個いる?」
※ノータイムで提供するし食べさせてあげる
※内心は「甘えてもらった!!」で大歓喜
短め番外編
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