敵幹部でも主人公見たらテンションあがる…あれ?(冷や汗)   作:苦い経験100%

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馬鹿は何回も繰り返すから手綱というか首輪が必須

 

 9月27日 蘭善六区『爆破現場』

 天候:晴天 気温:16度

 

 それなりに大きい筈の、洋装の建築物。主人が目を離した隙に爆破され、瓦礫の山と、大まかな形のみを残したそれは、捜査のために多くの人が集っていた。

 その中で、避けられていたのは二人。

 一人は蒼白色の髪と目をした、細身の少年ことブラス・リッター。もう一人は緑のショートヘアと、同じ色を持つ瞳をしたフジワラ・アマネ。

 常人とは異なる『進化者』である彼彼女は、恐れた不審な目で見られていた。

 その視線の中、フジワラ・アマネが自身の能力を用いようとした瞬間、異変は始まる。

 

 青い空の、極一部。

 黒い亀裂が、ゆっくりと走る。

 

 変化に、いの一番に気づいたのは、現場にいる人間の一人。女顔の、背丈の短い少年ことユカタンで───彼は、空を指さして、異変を周囲に知らせようとした。

 その隙に、異変は次の段階に進む。

 亀裂からゆっくりと、赤黒い塊のようなものが滑り落ちる。垂直に落下してくる『それ』は、どちゃり、と音を鳴らして現場に降り立った。

 

「なんっだ、こ、れ」

 

 現場の人間の一人、年若い刑事がそう言った。

 彼の疑問は正しい。落ちてきた『それ』は、明らかに常軌を逸したもの。赤黒い泥が、乱雑に人の形を取っている。見るだけで正気を削り取りそうな存在。

 これが一体なんなのか。

 それを知る者は、目の色を変えた。

 

 一人は女顔の少年。

 彼は懐から銃を取り出し、赤黒い人形に向ける。彼の唇は開き、喉は大声を放つ準備をした。

 一人は傷んだ黒髪が特徴の、アンニュイな刑事。

 彼は身近にいた、この場で最も幼い二人である蒼白色の少年と、緑髪の少女の頭を掴み、真っ先に伏せさせた。

 

 そして、頭を伏せられた二人。

 ブラス・リッターは頬を引き攣らせ、その手に白、赤、黒、青と色を変える煙を集め、切りつけたものを殺す大鎌を出現させる。

 フジワラ・アマネは目を見開き、チョーカーに触れながら、喉を大きく開く。

 

 それよりも早く、赤黒い泥人形が動いた。

 

 ぐちゃり、と蠢く、泥人形の腕と思しき部分。それが能力の発動動作だったのか、この場にいる全ての人間の眼前に、小さな黒い亀裂が発生する。

 そこから伸びるのは、棘のような鋭い影。

 頭を穿とうと走る一線。

 

「うお゛ぉ゛お゛お゛お゛お゛お゛ッ!!!!」

「「耳がぁあああああああっ!?!?」」

 

 目を見開いたアマネが、咆哮じみた歌を放つ。

 彼女の声によって、赤い障壁がその場にいるもの全てに現れて、棘を防いだと同時に砕け散る。

 …近くにいた者は鼓膜にダメージを負ったが。

 

 アンニュイな刑事は右耳を押さえつつ、ユカタンと同じように銃を赤黒い泥人形に向ける。

 そして二人は躊躇なく発砲した。

 だが、放たれた弾丸はことごとく泥人形に飲み込まれ、有効打とはなり得ない。

 

「何だっていきなり暴走態が!?」

「あぁん!? 元型とどめてねぇじゃねぇか!! あんなんでも暴走って言えんのかよ、ユカタン先生ぇ!?」

「概ね人型!! 暴走したら能力由来のものが全身を覆う! 意思疎通は不可能! 唸り声じみた絶叫!! 特徴的には三つも合致してるでしょ、多分だけどさぁ!?」

「あんなゾンビみたいな見てくれは前例がねぇんだよ!! つーかいくら撃っても効かねえんだけど!?」

「そこで効かないなら効かないですね!!」

 

 システムエンジニアの揉め事のように叫びながら発砲する二人。彼らが狙うのは泥人形の足と手首。あくまで鎮圧を試みた発砲だが、弾丸は泥にめり込み、飲み込まれる。それ以上の効果は見られない。

 点より面の攻撃の方が良いか、そう判断したユカタンが懐に手を入れた瞬間だった。

 蒼白色と、緑色が泥の前に飛び出す。

 

「Aaaaa───ッ!!」

「wa sssれ nあ iii ttttgggう ! !」

 

 必死な形相を伴って放たれた歌声。

 それは光輪を生み出し、泥人形を縛り実体を捉える。

 そして絶叫する泥塊を、少年が蹴り飛ばした。

 

「SAN値の減りそうな叫び声どうも!! 生憎スラムで既にゼロだオラァ!!!」

「クトゥルフ知ってるんだ…」

 

 瓦礫の山に吹っ飛ばされる暴走者を尻目に、ユカタンがボソリと指摘するが、ブラスには聞こえてないようである。彼はそのまま大鎌を構え直し、瓦礫の山に埋もれたモノを警戒する。

 山の中に埋め込まれたモノは沈黙している。それが予備動作か、それとも気絶したのかは不明だ。

 

 アマネは喉を開いたまま、息を吸った。次のアクションに対し、瞬時に対応する為に。

 膠着状態が生まれたのは明らかだ。

 その中で、アンニュイな刑事が大声で言う。

 

「餅は餅屋だ! さっき撃てなかった奴らは退避!! 思うところがあんなら生き残ってから泣き喚け!!」

「し、しかし…っ」

「良いから逃げろっての!! つーかあの瞬間に撃てない時点で平和ボケの足手纏いだバァカ!!」

 

 そう叫ぶ刑事の思考は簡単だ。アマネが行使した能力が全員に付与されたのを見て、単に『使えない人材』を保護することで疲弊が早まるのを避けるため。

 彼が内心で撃てなかった者達を「使えねぇ」と毒づく中、瓦礫の山が動き出す。次の行動が来るかと銃を再び構え直し、狙いを定める。

 

 次の瞬間、瓦礫の山から無数の棘が飛び出した。

 正しく針千本。前方に無秩序に、それでいて大量に伸びては、無作為にモノを穿つ黒い槍。

 周りの奴らは逃して正解だったか、そう思いながらアンニュイな刑事は自身の腹を狙うように伸ばされた棘をすんでの所で避けた。

 

「やっべ、一人こけた!!」

「あ?」

 

 だが、蒼白色の少年が横へと走り出す。

 刑事がブラスの方を見る。彼の先には、地べたを這う若い男。退避する最中で転んだ誰か。鎌を使うのは危険と踏んだのか、若い男を狙い伸びる棘を阻むために、少年の足が伸びる。

 確かに、足は棘を阻んだ。

 だがその代わり、呆気なく断たれた。

 宙を舞うブラスの右足。代わりに助かった地べたを這う若い男。太ももからバッサリと飛ばされた身代わりは、血の噴水を撒き散らして飛んでいき、逃げ遅れた若い男の頬に赤い水が被せられる。

 

「──…ッ!何してんだぁああテメェえああッ!!!」

 

 大人の叫び声が、空に響く。

 少年の足が青空から落ちる。それを掴もうと、アマネはこれまで以上にない速さで駆けた。

 その時彼女は、喉元から強く走る痛みを感じていた。

 

 

 

 ◆

 

 

 緊急活動報告:E2班

 

 9月27日 蘭善六区『爆破現場』

 天候:晴天 気温:16度

 

 ブラス・リッター 脚部切断により緊急搬送

 暴走した進化者は現場の人間により鎮圧

 以下三名はその担当者である

 

 ユカタン・[抹消済み]

 フジワラ・アマネ

 モリミネ・キョウスケ※

 

 ※…外部協力

 

 

 ◆

 

 

 背景、お母様。ブラスです。

 あんたに送っている仕送りを『自分に使わんかい』と突き返されることにも慣れてまいりました、良い加減受け取れやこの野郎と思っています。

 そんな俺ですが、今は少しばかり走馬灯というやつを見てる感じです。別に死にそうになっているわけではないのですが、驚きのあまり人生がフラッシュバックです。

 ごめんやっぱ死にそうだわ。

 

 何が起きたかって?

 なんかいきなり暴走した進化者出てきて、そいつの攻撃から退避し遅れた人庇ったら腿から足が吹っ飛んだ。

 そこから先は意識が曖昧だ。

 何だあの火力、ランダムポップのF.O.Eでももう少し加減するだろバカがよ。

 

 衝動的に動いてしまうのは、俺の悪い所だと思います。

 やたらめったら動いて、身動き取れなくなるバカがここにいます。けど動かないと後悔が襲いに来ます。

 どうしろってんだよちくしょう。

 右足が逝った場合って労災降りるんですかね。というか義足ってローン組めましたっけ。

 あーダメだ、声も出せない。

 

「…ぁ … ぅ  ね  ぁ 」

 

 やばい。今何がどうなった? 血が一気に飛び出たせいか上下も左右もわからない。というかこの前死にかけたっつーかマジで一回死んだのにまた死にそうなんだけど、濡れたティッシュでもこんな脆くねぇよクソっ。

 早く復帰しないと現場の皆がやばい。

 

 というか喉もビリビリ痛いんだけど。

 もしかして首も逝った? 鉛というか合金みたいな重さの腕を動かそうと───いっっってぇな!? 誰だ無理矢理抑えたの!? グキっつったぞ今!?

 

『テ ピ グ   良い   か !?』

『く っ ゃったん ら 仕方ない しょ!?!!』

『ブロック玩具じゃねぇん ぞ  ど  ってんだ  』

 

 頭ガンガンしてなんっも聞き取れねぇ!

 三人? いやそれ以上はいるんだろうけど…とりあえず、アマネっぽい音程がある…と思う。

 なら、多分大丈夫だ。治せる人がいるいないじゃ大違いだし、ユカタンさんもあのアンニュイな刑事も無事…まぁ最悪でも一命は取り留めるだろう。

 …なんか不穏なワードが断片的に聞こえたけど。

 

 ………懐かしいな、この感覚。チビの頃に盗みがバレて死ぬほど殴られた時もこんな感じだったか。

 腹空きまくってると痛みも鈍くなんだよな。

 それ考えると意識ぶっ飛んだのって血が抜けた+痛みもあんのか? つーかさっきから嫌に思考が回る、マジで死にかけてんじゃねぇかな。

 

 意地でも生きてやらぁ。というかまだやらかしたことへの償いが全然出来てねぇんだよ。あと状況がわからねぇけど、きっと俺はまた誰かに貸しを作っちまった。

 その辺りはきっちり返さないといけない。

 

『カテーテルも要らない!? こっわ!!』

『おぉい大学で得た知識がクソの役にも立たねぇじゃねぇか!! 医療関係に喧嘩売ってんのか素晴らしいな!? 導入したいけど導入したらレセプトどころかケースレポートもクソ面倒になるの目に見えてるよクソッ!!』

大丈夫、この子つい最近まで戸籍すら無かったから

地獄の底をぶち抜けば問題全部滑り落ちるって思ってるタイプ? 割と本気で現状恨むようになって来た

 

 ちょっと待って貸しどころじゃないかもしれない。

 なんだろうこの鶏を絞めるような悲鳴。

 というか俺の意識の回復はやっ。

 

『脈拍安定してますね…えぇ…気持ち悪っ』

『大学附属病院送りにして良いです?』

『良いわけねぇだろ距離空きすぎだボケ』

『うちの後輩で勝手に論文書こうとしてない?』

 

 ……体に感覚が戻って来た。錯覚してなけりゃ、俺は今横になってる。体は相変わらず重い。聞こえてくる会話からして、多分血が足りないんだろう。

 それでも何とか瞼は開けた。

 視界はアホみたいに霞んで───霞んでいた視界が強制的に補正される。否が応でも元に戻る。

 

「あー…その…」

「……あのさぁ」

 

 最初に見えたのは、潤んだ緑色の瞳。頬に血がついたままの、あどけなさの残る顔。瞳と同じ色のショートヘアは乱れていて、羽織ってるジャケットは傷だらけだった。

 俺はそんなアマネを直視出来なかった。居た堪れない。いや俺が百悪いんだけどちょっとそんな顔をさせたのが申し訳ないにも程があるというか、苦労をかけすぎだ馬鹿野郎と自分を四度くらい殺しても殺したりないというか。

 

「………………ぜっったい死なせないから…!」

「……ほんっとうに申し訳ありません……」

 

 喉がちゃんと動いたこととか、今はどうでもよくて、なんかもう体を無理やりにでも動かして土下座したい気持ちだった。

 

 

 





Tips:ブラスの短所は「あ、あいつ危ねぇ」で簡単に『独りで』そっちにいっちゃうところ。もし普通の学生だったらこの性格が元で「良いやつだけど疲れる」と距離と溝を置かれるタイプ。

短め番外編

  • 学パロ世界線
  • ひたすらキスだけのブラスとアマネ
  • 彼氏持ち女性陣トーク
  • 野郎どもの猥談
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