敵幹部でも主人公見たらテンションあがる…あれ?(冷や汗) 作:苦い経験100%
「…スーツ着んの久々だなー」
「ブラス、ネクタイ曲がってるよ?」
「っと悪い。ありがとな、アマネ…アマネ? おーい、ちょっ、なんかネクタイどんどん強く締まっ…緊張すんならせめて手を離してからにしろ首絞まるわぁッ!!」
「あれどう思う?」
「マジで緊張であることを祈るよ」
俺は咳き込みながら、きついネクタイを緩める。
アマネは申し訳なさげだ。しょんぼりした顔と外ハネの多い髪。なんか怒られた後の子犬みたいである。可愛っと思ってしまう辺り、もう俺はダメなのかもしれない。
それはともかく。
俺は深呼吸をする。と言うのも、今日が作戦の実行日だから。はっきり言って滅茶苦茶緊張している。というか「正気か?」と未だに思ってる。
誰だ今「お前は前後不覚だろ」って言ったの(吐血)
「…記者会見開くのはいいんすよ、局長。でもその護衛に
「ごめん、それってFワード的な自虐ネタかい?」
「ぐぼろぉあっ!?!!」
「耐久力下がってないかい君!? ごめんね!? 緊張ほぐそうとしてくれたと思ったんだけどね!?」
部下の耐久力を高く見積もるなよ。死ぬぞ、俺が。
口元を拭っていると局長が補足する。
「いやまぁぶっちゃけ護衛じゃなくて、何処からでもカッ飛べるように居てもらうだけなんだけどさ。
なんだかんだで
「ああ、やっぱりマジなんだアレ…」
咄嗟に振り返るのは作戦会議中のことだ。
真面目に考えた結果『俺とクサナギさんが待機して、ヤバイやつが出たら対策局から現場までミナヅキの超パワーでかっ飛ばす』というバカの煮凝りみたいなアイデアが採用された。野蛮人でもも少しまともな作戦立案するが?
しかもミナヅキのパワーをアマネの歌でアップし、アガタの氷で発射台を作るという周到さである。
率直に言ってふざけてんのか?
正直割とゲンナリして───
「下手すれば驚きのあまり『ぎょぇええ!?』とか言うキュリアやアイザックの姿を見れるかもしれないね」
「アマネ、ミナヅキのことすげー強化して」
「キミ偶にチョロすぎる時ない!?心配だよボク!?」
◆
そうこうしていると、あっという間に時間が来た。
時刻は夜中。特異対策局の会議室はマスコミでごった返している。局長がボソッと「リモート推奨っつったろうが…!」とキレていたけど、仕方ないだろと思う。
今でこそ、良くも悪くも「そういうこともあったね」みたいな空気になっているが、本来なら進化者を捕縛・隔離するのが特異対策局に期待されてる働きだ。
だが鎮圧や救助にその進化者が雇用されていた。
加えてそこから長い沈黙期間。
かと思ったらいきなり『会見開きます』だ。そりゃ荒れるし、死ぬほど人が集まるだろう。
俺はと言えば、ほぅと長く息を吐く。
緊張している、ものすごく。
というのも、今体感してる全てが『初見』だから。いや、マジで初手のやらかしが全部の基盤ぶっ壊してる。
ストーリーラインがまともだったの総合病院襲撃までだったぞ。知っている流れを壊すことは覚悟の上だったけれど、それはそれとして脆すぎると思うんだ、運命が。*1
とか考えていたら、隣のクサナギさんが小声で気遣うように話しかけて来た。
「……緊張しているのか?」
「正直、ガチガチです」
「そうか、お前は進化者だからな。局長の話す内容に、なおのこと敏感になるだろう」
「…クサナギさんは、思うところとか?」
「いや、特にない。進化者、非進化者。そんな枠組みには、もう疲れてしまったから。
何なら、聞き飽きて食傷気味だ。
大別されたものに皆がこだわるが、俺はそこに何の意味も価値も感じなかった」
ぼんやりとした、光の薄い目だった。
「最強と呼ばれているけどね、俺のやってきたことは『捕まえる、悲鳴を聞く、疑問に思う』の連続だ。常に自らの選択や、過程を疑って、変化を求めて現在だ。
大多数という木を守れるからといって、少数という枝を捨て続ければ、いつかその枝が俺を刺していくから。
なら、木を増やしたほうがずっといい」
…上澄みの強さを持つクサナギ・カムイ。
意外なことに、彼に特別な過去や出生はない。ただ、名家の末っ子として生まれ、暮らしの良さを自覚して、その『恵まれた分』を他に還元しようと考え続けていた。
クロカゲさんが『変わりたい、変えたい』と思う人なら、こちらは単に『より良いもの』を求める人だ。
繰り返しを積み重ねた実力と人格に嘘はない。ただこの人、何というか、その。
「…すまない、縁起が悪いな。明るい話をしようか。先日、遺書を書くついでに新車を買ったんだが…」
「決戦のド先日に? どんなメンタル???」
「今朝はそれで通勤してきた。トイレに行くなら言ってくれ、車を出す。送って行こう」
「ここ高速道路じゃねぇよ屋内だよつーかトイレまでの距離一メートルもないよ実は結構浮かれてますよねあんた」
「ああ、とても」
この人、ドがつく程の天然だ。
というか自我が強すぎる。作中で敵から洗脳食らった途端に、自分の小指の骨折って気つけしたかと思えば、そのまま勝っちゃう人だ怖すぎる。
…だから、師事してもらったのは棚ぼただ。
今の俺で、何処まで出来るだろうか。
唐突に、ハウリングの音が聞こえてきた。
『あー、あー…マイクテスト、…大丈夫そうかな』
同時に、マスコミ達が一斉にカメラを構える。
…俺達は佇まいを正し、無線の音量を上げた。
そして会議室の隅っこから、今まさにマイクテストを行なっていた人の側へ移動する。
黒髪を肩にかけた若々しい男。特異対策局局長、マツバ・マサムネの記者会見の始まりだ。内容は作戦会議の時に聞かされたから、把握している。
だから、俺がすべきなのは護衛と情報の察知。
そうこうしていると、会見は始まった。
『特異対策局局長、マツバ・マサムネです』
まるで堰を切るような一言。
先ほどから激しかったシャッター音が、輪をかけて激しくなる。局長は顔を顰める。
『本日はお集まりいただき、ありがとうございます。
さて今回、記者会見を開いた理由は幾つかございますが、先ずは皆様が私にずっと問いただしたかったであろう問題について語らせていただきたい。
質疑応答につきましては…まぁ、要所で行う時間を設けます』
いくつもの目、レンズ、録音機材。
全部を前にして、局長は涼しい顔をしていたし、その発言に澱みは一切なかった。
それを見た記者達の反応は三者三様だ。
つまらなそうな顔をする人、憤った顔を見せる人、訝しむ顔をする人、毅然とした眼差しを向ける人。
反対に、怖っと思ったのは局長の顔だ。
なんかすごい能面みたいな顔だったから。そんな無表情になることある? マスコミが嫌いとは言っていたけど。
なんか今にもマイクぶん投げそうで怖かった。
『一区総合病院襲撃事件を初めに、第四スラム炎上、最新の暴走事件の多発、それらすべての解決・対処に「進化者」が関わっていること。その「進化者」達を私が部下として雇用していること』
記者会見の本題を切り出す。
多くの者は特異対策局を『進化者を取り締まる組織』だと認識している。実際、それは間違っていない。
だからこそ、局長の語る言葉が問題だった。
『それらは全て、事実です』
危険とされる進化者を、進化者を利用して取り締まる。
そんな矛盾を、組織の長はあっさりと肯定した。
「どういうことですかマツバ局長!?」
「それは説明なく社会に進化者を解き放ったと受け取ってもよろしいのでしょうか!!」
「何故そんな涼しい顔していられるんです!?」
「説明しろ!!」
一斉に沸き立つマスコミ達。
激しく瞬くフラッシュと、シャッター音。
それらを浴びても、やはり彼は変わらない。
『我々…否、元より私は、ある懸念を就任前から抱いていました。それは、進化者の増加傾向と、進化者を利用した犯罪の横行、そしてそれを暗黙する存在です』
止まらない、まるで冷徹なコンピュータ。
彼は自らのこれまでを、粛々と語り続ける。
『進化者は増加傾向の一途を辿っています。
捕縛率の向上もまた然り。
世界規模で見ても、これは明らかなことでした。
この状態が続けば多数派は間違いなく彼らの方となるでしょう。同時に、この進化者を抑圧する風潮が維持されれば、間違いなく今回の比ではない「衝突」が起きる』
………それは本当にそう。なんだっけな、アートブックだったが、質問コーナーだったか。
マツバのスタンスが『こう』じゃなかった場合。
進化者と非能力者の対立が今より泥沼化する可能性が高いとか。少なくとも、今よりは酷くなるらしい。
『我々は過渡期にいます。進化者という存在と、どう向き合うか。少なくとも、私はその選択肢の中に『虐殺』を入れないでしょう。
それはあまりにも短絡的です。
する方もされる方も辛いだけの、いずれ破裂する爆弾に過ぎない。現に近日、エディンでは大規模なクーデターが勃発しました。こちらで確保した第四スラム放火の実行犯エリヤ・マクベスの引渡しはこれを理由に一時破棄となっています』
…………特に思うことはない、特に。
ともかく、エディンに起こった惨状は、まだ回り具合が浅かったらしい。開示された情報に、記者の何名かが噴き出した。
俺と同じ反応してんな。
まぁ『処刑隊』の異端狩りは、過激を超えた過激だったから、妥当っちゃ妥当な結果だと思う。
兆候があったら子どもすら範囲内だ。
そりゃ、爆発もするだろう。
これだけでも十分なニュースだと思う。
けど局長は足りないと言わんばかりにまだ話す。
この場の主導権が、最初から彼だけだ。
『加えて、進化者の持つ能力は、年々で強力なものになりつつあります。更に言えば、捕縛した彼等の収容施設が許容量を迎えるのも時間の問題。更に、局員が鬱などの精神的病理の発症も増加しつつありました。
よって、公安室は特異対策局と協議の結果───第四スラム跡地を元に、進化者の試験居住、並び解明を目的とした「特区都市」の設立を採択しました。
進化者の雇用は、これを興すにあたってのテストも兼ねていたのが事実です』
洪水のような情報量が、際限なく流されていく。
というかサラッと公安室にも責任おっ被せたなこの人。
それと同時だったと思う。
無線で、開戦の報せが届いたのは。
『───電波に異常アリ! 総合病院を襲った妨害電波と似てる! 多分敵の…待って、何この規模!? ちょっ、やば───』
はい来やがったなあのカス外道。
やってやろうじゃねぇかよ。
Tips:時間操作系の能力者は既に存在しているし、この時間軸を見て大爆笑していたが、次第に「お前(ブラス)なんなんだよ!!!!!」とキレ散らかし始めている。
短め番外編
-
学パロ世界線
-
ひたすらキスだけのブラスとアマネ
-
彼氏持ち女性陣トーク
-
野郎どもの猥談