敵幹部でも主人公見たらテンションあがる…あれ?(冷や汗)   作:苦い経験100%

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ちょっと年末が予想以上に忙しくなりそうです
もし更新が大幅に遅れそうな場合は追って連絡いたします(土下座)




ホワイトナイトはまぎらわしい

 

 自室の中で、椅子とベッド、テレビしかない部屋の中で、ゆっくりと自分の心に熱い燃料を注ぐ。

 今すぐにでも燃えそうな、火種を煽る。

 思い出すのはあまりにも簡単だった。

 

 〝キュリア、邪魔しないでくれます?〟

 

 ブラス・リッターの声は今も克明だから。

 そしてあの野郎が子()に手解きする姿を、ボクは今も確かに、鮮明に覚えている。

 困ったように歪む眉も、祝うための笑顔も。

 

 まるで子供達の親であるかのように。

 あいつはガキどもを一人一人尊重し、見捨てず、根気強く算術と文字を教えていた。

 時には自ら教えをこうフリもしていた。

 

 〝これわかんないな、誰か教えてくれる人ー。

  はい、アイシャが一番早かった!〟

 

 その全てが癪に触った。理由なんてわからないし、どうでもいいし、知りたくもない。

 ただただ、オマエが嫌いだった。

 その顔が、その目尻が、その言葉遣いが、その生き方が、その眼差しが存在が嫌いで否定したくて憎くて気持ち悪くて勝ちたくて負けたくなくて堪らなかった。

 

「…あー…、やっと会えるなぁ、ブラス」

 

 テレビからの声も、その内容もどうでもいい。

 失った右腕も、今や単なる壊れた器にすぎない。

 幻肢痛ってやつが走る。無くした筈の右腕が、まるで有るかのように痛み蠢きズキズキと。

 

「クカカッ…!」

 

 けどな、漏れ出でるのは笑い声だ。

 抑えきれない楽しみへの期待と、喜悦。

 ()()()は、自らの生まれ持った権利(チカラ)を行使する。

 電子により形成される、緑青の光の義手。

 それは拠点の薄暗い部屋をぼんやりと照らす。

 

 ガラス窓に映る自分がいる。

 ボロボロな白衣。くまの濃い白い目。無造作な白い髪。望んで手に入れた現在で形どられた姿は、アイザック(ボス)から『彫刻みてぇ』と言われてから気に入っている。

 

「……使うぜ、トガノウ」

 

 あの人から託された仕事を、今日こなす。

 ボクの力を肯定し、オレ様の生き方を認め、ボクと歩み、オレ様に任せてくれたあの人からの仕事を。

 

 左手に、トガノウから渡された装置を握る。

 細かい仕組みはよくわからんが、まぁとにかく通信妨害が出来るらしい。上手くいけば、電気系統は全てダウンできるだとか。

 

 これで何人死ぬだろうか。そう考える。

 その死がどれだけボクらを住み良くするだろう。

 その無様な終わりでどれほどオレ様の胸が空くだろう。

 

 考えただけで背骨が震える。

 普段ならきっとそうだった。

 

 イヤでも紺碧の空が目に見える。目に焼き付いた色が再生される。鼓膜にこびりついた声色がループする。嫌いなのに、否定したいのに、そう思うほどにへばりつく。

 

 なんであの人は、オレ様よりオマエを見た。

 なんでオマエは、今更ボクの前に現れた。

 

 全てが癪に触る。気持ちが悪い。負けたくない。否定したい。認めたくない。受け入れたくない。存在することも、その心が生きてることも、その行いが続くことも嫌だ。

 

 お父さんみたいなお前が、本当に───

 

「───会わなきゃ、早く会って…きひ、ははっ」

 

 白衣を翻し、()()()()()()は歩く。

 自室を出れば、準備を終えた部下たちがいる。それを見て、ただ廊下を歩き始めるボクがいる。

 ひどく姿勢が乱れる。体が熱い、手足が冷たい、心臓がうるさい。ふらつくオレ様を心配する部下の頭を押さえてボクは歩く。

 指示は出した、暴れろと枷を解いた。

 ボクもそうするだけだ。

 

 クラつく頭は、クスリに蕩けた馬鹿のように揺れる。薬理的な陶酔には興味ないが、この縫い混ぜな気持ちを忘れ去られるのなら、クスリに頼るのも良いだろう。

 

 だが、それは逃げだ、敗北だ。

 オレ様は何にも頼らない。

 ボクはアイツにボクだけをぶつける。

 

 どんな卑怯も、狡い策も、至らない知恵で回そう。

 空っぽなのに重たい頭を使って勝ちに行こう。

 そしたらボクは特別なオマエを───オレ様にとって、どこまでも特別なままにしてやろうと思うんだ!

 

 

 

 

 

  ◆

 

 

 無線から『妨害電波の予兆が大規模で確認された』と聞いた時、俺達の行動は早かった。

 俺は窓ガラスから遠い。

 ならば、と窓ガラス付近方面を見る。

 クサナギさんは両手に鉄製のバチのような武器───鐧という、海外の武器らしい───を既に構えていた。

 

「ブラス! 行けるか!?」

「窓ガラス割っといてもらえますか!?」

了解した、全部粉々にしておく

一枚だけで良いよ障子全部破る猫かあんたッ!?

 

 真顔で言うから素面なのかネタなのかわかんねぇ!

 兎にも角にも、俺は一目散に窓ガラスへ行…来たいんだけど人混みが邪魔だなぁ!?

 

 対策局の記者会見会場は今も混乱中だ。

 そりゃそうだ。対策局が「進化者が捕縛場外での生存を認める」と公言したし、あろうことか進化者の背を支えるようなことを言ったんだから。

 

 なぁんでこんな思い切り良いんですかねぇこの人…何が起こったのぉ…?

 

 けど、今はそんなことを考えてる暇はない。

 つーかどうせ多分殆ど俺のせいだしな!ハハハ! …なんでだろう、心が痛い…。

 

 それより今対処すべきなのは外の方だ。

 俺はどうにか人混みの隙間を抜───「ぎゃあああ!!なんでいきなりガラス割り出したんだこの人!?」「破片がこっちに…飛んでない!?」「よし、道は作ったぞブラス」───あのさぁッ!! フィジカルでゴリ押しすんならさぁッ!! 一般人に事前警告とかさぁッ!?

 

「なんだかわからないけどとにかくヨシ!」

「組織の一番偉い人なんですよねあなた!?」

「長い付き合いで学んだけど、ど天然にブレーキ与えたら面舵いっぱいから急カーブするんだよ。爆笑爆笑」

「誰かこの人リコールして!!!!!」

 

 記者の悲鳴じみた声を背に走る。

 クサナギさんのおかげで、窓ガラス周辺の人混みは飛び退いていた。俺は砕けた窓の縁を踏み、そのまま外へと飛び出す。

 摩天楼から、広大な都市へ真っ逆さま。

 真っ暗闇の夜の中、まばらに散らされた光源は、星空をそのまま床に落としたみたいだった。

 

「───ッ、電波、状況っはぁ!?」

『到達まで恐らく後、…十秒!!』

「りょぅ、…ッかい!!」

 

 高所からの落下、いやでも来る逆風。

 その中でも無線はしっかり仕事をしてくれた。

 

 自由落下の中で目を凝らす。

 錯覚では無い。多種多様な紋様が、俺の目に映る。炎のような紋様、水のような紋様、風のような紋様。

 俺に芽生えた『副次的な力』だ。

 最初はこれがなんなのか、分からなかった。

 

 けど、こうして死に直面して分かる。

 俺の目に映るこれは『命』だ。物を機能させる力だ。

 

「……ッみ、つけ、たぁっ!!」

 

 眼下に広がる莫大な数の文様。

 それはそのまま、この都市に暮らす人々の数。

 けれどそれを覆うように『稲妻で組まれた王冠のような紋様』が這い出でる。風船のように膨らみ、手当たり次第に何もかもを飲み込もうとするそれが、切るべき対象。

 

斬り結べ!! 青ざめた大鎌(ペイル・ファルクス)!!

 

 白く、赤く、黒く、青く変わる煙。

 それは大鎌の形を伴って俺の手に現れた。長柄に巻きついた鎖を握りしめ、渾身の力で紋様目掛けて振り下ろす。

 紋様に走る、小さな傷。

 それはそのまま歪に広がり、強大な毀傷を負う。

 けど───ッ

 

「クソッやっぱ『連鎖』まで行かないか! 悪りぃ、妨害電波これ完全に殺しきれねぇ!! 減衰が精一杯だ!! 屋上組に連絡頼む!!」

『……ッ充分!! ありがとうよ進化者!!』

「どーも!」

 

 その会話の終わりが皮切りだ。

 

 都市を、不気味な緑青の光が覆う。

 薄く透き通り、しかし全体に迸るドーム。俺はこの色と力を知っている。だから歯を強く食いしばった。

 一区総合病院を襲った、妨害電波。

 その効果は如実に現れている。街中の明かりは軒並み消え始め、今や無線はどこにも繋がらないし、静かな砂嵐の音が鳴っているだけ。

 

 自由落下の中で、身を翻す。

 暴風を背に月を見た。

 綺麗だけど見惚れんのは今じゃない。

 まずはこの落下から復帰すんのが先だ。

 

 冷たい光を降らす月に向けて手を伸ばす。能力を解除、一度鎌を消し、出し直…待った、何か落ちてきてないから? 月光が背中にあるから、上手く見えないけど人影、みたいなの、が…ぁ゛あ゛ッ!? 

 

「ブーラースー!お迎えだよー!!!」

「何やってんだアマネェエエエッ!?!?」

 

 なんか空から彼女が降ってきたんだけどォ!?

 

 月を背に、緑色の髪が揺れる。

 鎖に繋がれた首輪の様な紋様が映る。

 翡翠にも似た瞳が、猛禽類みたいに鋭い剣幕で。必死に俺へと伸ばされた手は青い光を鉤爪のように纏っていた。

 俺は無我夢中でその手を掴む。

 痛いくらいに握り返される手のひら。

 

「口閉じてて!!」

「まっ、いきなっむがごっ、ぁ!?」

 

 かと思ったら胸元に顔を埋められる。

 なんで落ちて来たとか、そんなことを聞ける余裕はどこにも無い。ただくぐもったアマネの歌声と、凄い勢いで風を切る音しかわからなくて、もがくので精一杯。

 …いい匂いすんな

 俺が満足に息を吸えたのは、いつの間にか屋上についていた時だ。いきなりのことで呆然としていて、へたり込むようにコンクリートの上に座っていた。

 放心気味のまま、辺りを見渡す。

 

 俺の隣には、ほっとした顔でしゃがんでるアマネ。

 そして機材をいじくり回してるユカタン先輩。

 

「はぁ〜〜〜〜…っ! 間に合って良かった…!」

「お疲れ後輩ちゃん。でも今の過保護じゃなかった?」

 

 少し離れたところには、ストレッチをするミナヅキ。

 複雑そうな顔を俺とアマネに向けるハルニレ。

 

「アマネ、心配性? ハラハラ」

「……命綱無しでやるか、普通」

 

 屋上組は殆ど揃っていた。クサナギさんは、恐らく記者の避難誘導をしているのだろう。

 俺はゆっくりと状況を飲み込み、立ち上がる。

 するとアマネにがっちりと両肩を掴まれた。

 

「ブラス! 大丈夫!? どっか打ったりしてない?」

「そりゃこっちのセリフ! あんた何でいきなり落ちてきたんだよ!? 心臓飛び出るかと思ったわ!」

「いやー、今回一番頑張んないといけないのってブラスだからさ、ちょっとでも温存したほうがいいかなって。あと、復帰失敗したら本当に大惨事だから…」

「だからってあんたまで飛び降りなくても…」

 

 もっと他に安全なやり方が…。

 

「キミは『自分も大事にする』って決めてくれた。

 ならボクは今までキミが自分を大事にしなかった分まで、たっくさんキミを大事にしてあげなきゃ」

「……んぐがっ」

 

 そこまで言われたら何も言えない。

 俺は肩を落として、甘んじてアマネの厚意を受け入れることにした。

 

 そんな時、バシっ!と乾いた音がする。

 音のした方向を見ると、黒い帯のようなものが屋上の鉄柵に巻きついていた。俺はこれに見覚えがある。これの使用者に、鎖の使い方を習ったこともあった。

 そして、黒い帯から人影が跳ねる。

 月明かりに照らされてようやく顔が分かる。やはりというべきか、黒い帯を駆使し、ビル群を飛び跳ねてやってきたクロカゲだった。

 屋上に着くなり、報告が始まる。

 

「被害状況は概ね割り出せました。

 通信系統は軒並み死にましたが、ライフラインと医療系統は非常電源でなんとか稼働出来てます。

 局内設備も今、再起動出来たようです」

「避難状況は?」

「少なくとも現在は滞りなく。

 ただ、既に幾つかは交戦が始まりました」

 

 真面目な状況だからか、揶揄いはない。

 俺達は一度目を合わせてから、互いに頷く。

 言葉はあまり必要ない。

 彼はそのまま、先輩の方へと意識を向けた。

 

「で、…準備終わりましたか、ユカタンさん」

「今調整終わったとこだよっと!

 …よし、ドローン起動! 展開開始!」

 

 殆どの電光が絶ち消えた夜の中、白い光が無数に浮かぶ。駆動音を伴ったそれは、局長の立案したもの。

 通信妨害ないし、電波への障害は対策会議の中で、上がっていた懸念ではあった。

 その対策の一つがこれ。

 ドローンに通信ビーコンを搭載し、それを駆使して臨時の通信網を配置するという手法。

 

 先輩は大型のアンテナじみた杖を手にする。

 それを肩に担いで、得意げに笑った。

 で、そんな先輩をクロカゲが小脇に担ぐ。

 

「じゃ! 臨時通信網配置班!活動開始しまーす! 後輩ちゃんズ、なるべく無茶しないでよ? 二人のこと、まだまだ見ていたいからさ!」

「あはは…、そちらもどうかご無事で。

 班長が見ているから、ボクらの方よりは多分、大丈夫だと思いますけど」

「ねぇなんで今フラグ立てたの????」

「へ?」

 

「ではこの辺りで、親友。

 通信が再開したら、すぐ連絡します」

「そっちも無茶はしないように! …オイなんだその『あなたに言われてもなぁ』みたいな顔」

 

 そんな会話を皮切りに、長い夜が始まる。

 対戦の相手はまだ決まっていない。

 

 けど俺の初戦は十中八九、キュリアの野郎である。

 どうせ俺のこと殺しにくるだろうしな!ダハハ!参ったな、作戦台無しにしたわ、方針にガンガン反抗したわで心当たりしかねぇよ。

 

 逆に言えば、その程度の接点なんだけど。

 

 





Info;ゲーム風
▶︎副次的能力
 ブラス・リッター:心臓の山(エスカトルジー)…死をもたらす鎌の副次的な力。物事や存在を動かす『源』を紋様として可視化する。これにより、実態の見えないものすらブラスは切断可能となった。
 ブラスが控えにいる時はパッシブスキルとして発動。味方側の攻撃が全て必中化する。ブラスが戦闘メンバーに参加している際は高コストの防御スキルとして発動。ブラスの現在の体力値の52%を参照し、その値より小さい威力の攻撃は無効化され、大きい場合はその威力を減衰する。


Tips:あなたから見てブラスの苦手なことは?
アマネのコメント:料理が苦手だよ。一回作ってもらったことがあるんだけど、味がすっっっっごく薄かったんだよね。最初「ボクもしかして風邪引いた?」っ思っちゃったくらい。しょんぼりしててちょっと可愛かった。
 あ、そうそう。あと一緒に料理作った時、単純に塩とか好きに使える環境にまだ慣れてないって感じがしたかな。あとね、ブラスって料理する時、鼻歌するんだけど───【長いためカットされました】

ジャックのコメント:大抵、最後にお風呂を使うんだけど。のぼせるまで入ることが多いよ。よく湯当たり?してるから、介抱することがたまにあった。

クサビのコメント:報・連・相の中で相が致命的に下手すぎるってところかな。自分でドカドカやっちゃうから、後からフォローしないと。まー、翻ってまだまだ頼り下手だよね。なんでも出来ちゃう成功体験があるからなおのこと。そこは追々直していくよ、本人にも治す意思あるから。上司の勤めは、部下のサポートってね。

キュリアのコメント:ハッキリ言ってブラスはオレ様の機嫌を良くすんのが下手通り越して無理だ。存在からして癪に触るんだからな、記憶の中でもうるせぇんだよあの野【要望によりカットされました】

短め番外編

  • 学パロ世界線
  • ひたすらキスだけのブラスとアマネ
  • 彼氏持ち女性陣トーク
  • 野郎どもの猥談
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