敵幹部でも主人公見たらテンションあがる…あれ?(冷や汗)   作:苦い経験100%

9 / 70
評価と感想海だよいぇい、ありがとう
でも冷や汗をかきたいのは俺だよ…(予想外)


やばいほど口が滑ったし、花火上がったし

 

 作中において、ブラス・リッターの出番は少ない。

 泣きながらの初登場というインパクトにも関わらず、そして最初の幹部で有りながら、真っ先に死んだ。

 彼についての情報は、クリア後で知ることが多い。探せば見つかる日記、スラム絡みのサイドクエスト、彼のことを知る手段は割と多かったりする。

 だから、考察の話題になることもままあった。

 

 日記を見るに、ブラスには余裕がなかった。

 彼は家族を人質に取られたことで、家族を守るためにテロ活動を幇助したし実行した。

 ……そして何人もの人を殺した。

 初めて登場した時から彼は泣いていた。

 自分の家族を守るために、他の無抵抗な家族を殺した。

 その恥と悔いが彼を蝕み、壊していた。

 …()には出来なかったことだ。

 

 彼は幼い頃、スラム域に捨てられた。

 進化者であるが故に、その力が故に。

 そんな彼にとってスラムの人達は絶対の家族であり、自分にとって唯一のテリトリーだ。

 そこを守るためだけに、鎌を振るっていた。

 

 だから、彼の余裕は「敗北」で全壊した。

 頼れる人も組織もなく、守れる自分は負けたから。

 …ブラスは彼ら彼女らを解放するために何でもやった。彼には手段を問う余裕がなかったから。

 そしてその決断故に、壊れに壊れた。

 

「時間だ。出るぞ、ブラス」

「…はいはい、ボス」

 

 ブラス・リッターは、夢を見ずに死んだと思う。

 明日すら思い描けなかった。

 アイザック・グローリーに勝てないと、心の底から折れた彼は、何も掴めないと諦めた。

 それが有力な考察で、日記にも言葉があったこと。

 だから主人公に敗北した───いや、敗北することを選んだと言ってもいいんだろう。多分。

 

「病院襲撃…患者の殆ど避難してそうじゃないです?」

「1区の設備無しでは生存できないやつもそれなりにいるだろうさ、まぁ殺しが目的じゃないがね」

「どの道やることは人でなしの代名詞でしょ」

「自虐が好きだなぁ、お前は」

「事実だよ〝クソテロ野郎〟」

 

 …じゃあ「今のブラス()」はどうか? ぶっちゃけると、絶望はしていない。なんたって「知っていた」し。

 だから負けはしたけど折れなかった。敗北したから降るのではなく、人質を取られたから降る。

 家族に手を出せば皆殺しにするし、家族に手を出さない代わりに仕事に協力する。そんな協力関係。

 

「凄いな、自分と他人を同時に罵倒したぞ」

「…まぁ、否定はしない」

 

 人に話せば恥じるようなことは、ブラスと同じように、子どもの頃に沢山やってきた。スラムに拾われるまで野良犬のように野蛮に生きてきた。犬が人になれたのは、あそこのおかげで、だけど今では番犬になっている。

 

 畜生となるか、それ以下になるか。

 それはまぁ今後の俺次第なのだろう。いやぶっちゃけもう酒で畜生レベルのやらかしをしてるんだけどね、死にたい。

 

 

 ───ビルの屋上に上がる。曇り空の広がる夜空は、濁った灰色を満遍なく塗りたくったようで、不気味に柔らかく光っているように見えた。

 

 

 夜闇の中に、悲嘆を声高に掲げる者が集う。

 ラメント、とはよく言ったものだ。

 夜に紛れ込もうとしてか、黒を基調とした装いが多い。

 それは俺も変わらない。俺も黒の一つだった。

 

「キュリア、トガノウ、ブラスは病院。

 アナーキスト、エリヤは増援の足止め。

 オレ、ディラン、クロユリは第二本命だ」

 

 アイザック・グローリーは、地獄を産む指示を出す。

 ここにいる全ての進化者が、それを望んでいた。

 だから、名前の由来通りに彼は笑う。

 

 沸き立つ黒の群れ。自他問わず終わってると思った。単なるデモや暴動ならまだ理解出来る。

 けれど、襲撃を行うことの意味を理解している人は、一体どれほどいるのだろう。

 …進化者が差別の被害者だということは理解してはいるけれど、この行いが、どれほどの偏見と、権利への距離を生んでいくのだろうか? 俺はそれを考えている。

 

 そんな中でも、アイザックは語る。

 

「世界ってのは、容赦がねぇもんだ。

 持ったもん一つで迫害と差別の標的になる。

 俺も、お前らもそれで散々苦しんだはずだ。

 …あいつらは知らない。知るはずがない。踏みつけてる一つ一つに、遠ざけているものに、確たる自我があって、感情を秘めていて、同じ人間であることを。

 だのに俺達は、人間として見做されなかった」

 

 ……ゲームと変わらない一言一句。

 ああ、そうだと言いたくなった当時を思い出す。

 

「だが悲観することはない、絶望することもない。

 そしてそんなことにしがみつく必要もない」

 

 与えるのは大義名分、正当だという錯覚。

 それは真実、酒のように被害者を酔わせるのか。

 だとしたら、少し気の毒のように思えた。

 

「俺達は力を持って生まれた。なら自分の為にその力を使わなくてどうする? 全ては俺達のため、権利のため、差別という隔たりを破壊するため。

 それを勝ち取るために、俺達は此処にいる。

 俺達は認めさせる。俺達の力を、非能力者の無力さを。

 そんでもって───権利を掴もうじゃねぇかよ」

『おおおおおおおおおおおおおおおお!!!』

 

 沸いて暴れる黒の群れ。沸き立つ部下達。

 雄叫びとは対照的に、俺の口からは溜息が出る。

 …いくつかの賭けはしてある。

 どう転ぶかはわからない。即興のベットだったし…なんか今「お前のベットは意味が違うだろう」って聞こえてきた気がする、罪悪感だろうか?

 …とは言え、俺もここでぶっ込もう。

 必要なのは驚きを与えること、その後の言いくるめ。四肢の一つか、目のどちらかを賭ける覚悟。

 

「───んじゃまあ、少し話したが…盛大に凄絶に、暴れよう」

 

 

 

 ああ、そうだな。()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

  ◆

 

 

 

 

 ビルの上から、1区の総合病院を見る。

 赤十字を掲げている、命を救うための施設。生と死が集まる暗黙の不可侵域。人と外道の境界線。

 悲嘆を、鬼の首を取ったように叫ぶ者達は、今日の夜、ここを地獄にする。そういう筋書きが決まっている。

 

 ブラス()が死ぬ(シーン)が近づいてきた。主人公に敗北し、アイザックにより粛清され、舞台を降りる瞬間が。

 実を言うと、それはそんなに恐れてはいない。

 スラムで暮らしてたら自分の生き死にとか間近にあり過ぎてね…うぅん治安悪かったなぁ。

 

 …問題なのは負けて、粛清される時。

 あのシーンは胸糞通り越してトラウマと言って良い。

 同時に、この世界で声高に悲嘆を叫ぶ奴らに碌なのはいないと、俺は思い知らされた。

 

 目覚めたブラスの目前には、死体の山があった。敗北者への罰則。処分するには絶好の理由。僧侶が憎いとなれば、袈裟は当然、僧侶の属する教えの全てを憎むであろう男の悪趣味な処刑。

 

 〝どうせ死ぬんだ、大好きな家族と逝けよ〟

 

 暴君、アイザックの沙汰。悪辣な処刑。

 しかし一度の、極まった専横。

 ブラスは無力さの中で心臓を貫かれ、息絶えた。

 

「…自分に会えなかったものを羨んだ、だっけ」

 

 考察を振り返って独り言をこぼす。

 …それ以外の理由もありそうな気はする。どういうわけか、ボスの当たりが少し緩いし。

 幾つか予想はあるけど、今は置いておく。

 

 …人の命がかかっている。

 原作を壊すことに、躊躇いはない。

 重ねてそう意識する。

 だが、どう壊すかは選ばなければ全部台無しになる。

 この辺り、難しいところではあるのだ。禿げそう。

 

「…ああー…ボクらを救わない所がよく見えるなぁ」

 

 …さて、取り敢えずの問題はこいつだ。

 幹部の一人、キュリア・リズット。

 有する能力は「走り巡る電子(クッレ・エレクトリッカ)」。細かい説明を省くと電子操作(制約有り)って感じの能力。

 電子をレーザーとして放ったり、電子機器を自在に操作したりと、幅のある能力だが…恐らく、相当な集中力と頭脳が問われる力なのだろう。

 作中で、彼はよく糖分を取っていた。

 

 ぶっちゃけ言おう、クソ野郎だと思う。

 というか多分、どうしようもない奴だ。

 だって、過去がクソすぎるんだこいつ。

 

 両親は彼を守ろうと、進化者であることを隠した。

 が、彼はその両親を「力を使えなくする枷」と捉えて躊躇いなく殺害。その後は能力を用いて被害を出してきた。

 

 「生まれつき力があるから、それを行使する権利がある」だとか「力を持って生まれたものを否定する社会への怒り」を自称していたが、正直な所「面白いこと言うなこのカス」というのが感想だ。

 …ちなみにコンセプトは力に溺れた子ども+抑圧へのフラストレーションだったらしい。

 溺れすぎだろ、頭のてっぺんまで浸かってんぞ製作陣。

 

 …とまぁ、とにかく今それは横に置く。

 ともかく重要なのは、こいつは能力を使う時に過度な集中力を要するということだ。

 ………自己嫌悪が苛むが、今は放っておく。

 

 

「───さぁて、行くぞ」

 

 キュリアが緑色の閃光を唸らせ始める。

 キリ、キュイ、キィンと小さな音が集まる。

 彼の右手が、レーザー砲になろうとしている。

 

 このまま放っておけば、それは病院に風穴を開け、設備を壊し、多くの部下達の侵入を許し、多数の犠牲者を産む。だからここだ。だからここしかない。

 よぉし! 盛大に嘘をぶち込もう!!

 

あ、言い忘れてました。俺、恐らく父親になるので、なるべく殺し合いは避けたいんですけど…

「「はぁ!?!!」」

 

 滅茶苦茶驚くじゃん、笑う。

 そして読み通りに集中力をポシャらせた。

 キュリアに集中されていた電子は莫大な光を放って霧散する。まるで盛大な花火を見ているようだ。

 夜空を彩る緑の光はとても綺麗。

 そんでもってまぁ、当然こんな異常事態に、対策局の人達は気づくわけで───

 

『オイなんだ今の光は!?』

『イサカ!スコープ回せ!!』

『各員厳戒態勢!院内のセキリュティも起動しろ!!』

 

 ざまぁみろこの野郎、もう全部台無しだぜ。

 よし、狼狽える演技にも脂を載せよう。

 声色を迫真にすれば多分騙せるだろう、光で目がくらくらしているのだし。

 

オイ何で閃光にしたんだよ!?

これオレ様のせいか!? オレ様のせいなのかなぁこれ!? どう考えてもブラスのせいだろこれ!?

ここ一番で動揺してんじゃないよキュリア!!

オマエ責任転嫁するならせめて丁寧に責任転嫁しろよ!!雑にも程があるだろうがオマエ!!!

 

 ───さて、後は言いくるめを考えておかないと。ぶっちゃけ後々のやらかしを考えると、キュリアにはここで死んで欲しいけれど、それは難しそうだ。

 …とにかく、今回やることは簡単。

 

「だぁあクソッ! トガノウ、とりあえず部下達と病院に突撃しろ!! 周りに気を散らせてその隙にオレ様とブラス、あと何人かが中に入って目標を手に入れる!! なるべく大いに騒ぎ立てろ!!」

「───致し方ない! 二人とも後で殴らせろ!!」

「なんでだよぉ!?」

 

 目標は果たしつつ、民間人の犠牲は少なく。

 そして何より生き延びる!

 ああもう今からめちゃくちゃ胃が痛い!!

 





Tips:普通な人ほど追い詰めたらやばい

短め番外編

  • 学パロ世界線
  • ひたすらキスだけのブラスとアマネ
  • 彼氏持ち女性陣トーク
  • 野郎どもの猥談
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。