ありふれた職業で世界最強if優花   作:白San

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幕間 加速していく終末

 

ー魔人族の地ガーランドー

 

 

 

南大陸の上空に白い閃光が横切る。その閃光はある場所に向かっている。それは並の魔物でも追えない程のスピードで地上からでも風切り音が聞こえる程であった。

 

その音を聞いてか、ガーランドに生きる魔人族達は空を見上げ、その白い閃光を目に捉えた。

 

「アレは……何だ?」

 

その閃光を見て、戸惑いを見せる者。

 

「魔法じゃないよな……」

 

人間族からの攻撃ではないかと、警戒する者。

 

「わぁ。見て〜、お母さん。まだ明るいのに、お空に星が流れてるよ」

 

「そうねぇ。もしかしたら、〝アルヴヘイト様〟の祝福かしら。ほら、お祈りしましょう。魔人族の平和の為に」

 

「うん!」

 

閃光が、自分達の崇拝する神の祝福だと言って、祈りを捧げる親子。

 

誰もが、この上空を横切る白い閃光を見たが、それぞれ異なることを述べていた。

 

しかし、町とは打って変わって王城を守る兵士達は其の閃光が此方へと急接近してることに慌ただしくなっていた。

 

「おい、何だアレは?!」

 

「分からん! すぐさま城内にいる兵士達を呼ぶんだ!」

 

「クっ! 北への侵攻が失敗して今は、兵長達も居ない状況で兵力が足りないっていうのにっ!」

 

白い閃光が段々とこちらに近付いていると分かり、兵士達はアワアワと慌てだしていく。しかし、閃光のスピードは落ちはしない。

 

そして……

 

ズドォォォンッ!と閃光は、王城の門の前に堕ち大地を震わせる。衝撃に余波に地面が砕かれ砂煙が立ち込める。門番をしていた兵士達はすぐさま、応援と呼びにいく兵士と白い閃光の正体を探る兵士達の二手に別れてすぐさま行動を取った。

 

「おいっ、何者だっ! 此処は魔王城、魔王様の城だ! それを知っての愚行か?!」

 

魔人族の兵士達は槍や剣を持って、白い閃光が降り立った場所を取り囲む。その兵士達の後ろには門番をしていた魔法師団が詠唱を開始しようとしている。

 

しかし……

 

砂塵が舞う中、閃光が落ちた場所から兵士達は聞き覚えのある声が聞こえた。

 

「……お前達こそ、この私に剣や槍を向け、魔法を撃とうとはそれこそ愚行だと思わないのか?」

 

威厳のある声だ。その声音は魔人族なら誰でも知っている魔人族の英雄(・・・・・・)と呼ばれる人物の声だと。

 

「こ、この声は……まさか……」

 

魔人族の兵士の一人が声の正体が分かったのか、顔を青くなっていく。やがて、煙が晴れていき、白い閃光の正体が姿を現す。純白の鱗が輝き、その威厳のある姿で佇む竜。その名は〝ウラノス〟。

そして、ウラノスに騎乗していたのは、燃える業火のような赤色の髪が彼の強さを表し、ウラノスの主であり、自分達魔人族将軍であるフリード・バグアーその人だった。

 

「フ、フリードォ様ァ?!」

 

「お、お戻りになられましたかっ」

 

「よ、良くぞ、ご帰還なされましたっ!」

 

門番の魔人族の兵士達はフリードを見たと同時に、すぐさま武器を手放し敬礼して自分達の英雄であるフリードの帰還を喜んだ。フリードも城を守る兵達に片手を上げ兵達の敬礼を止めさせる。

 

「あぁ、お前達も門番の任をよくこなしている。このまま国の為に頑張りたまえ」

 

「ご褒めの言葉、ありがとうございますっ!」

 

「あぁ。では、私は少し疲れている。執務室に戻りたいのだが門を開けてくれないだろうか?」

 

「いや、あのそれは………できません」

 

フリードはすぐさま、自分の部屋に戻る為に門を開けてくれと門番の兵士に伝えるが、門番の兵士が苦い顔をして拒否した。それを聞いたフリードはスっと目を細め、少し圧を感じさせながら問う。

 

「私が今、入っては不都合なことがあるのか?」

 

「いえっ……そう言うことではないんですが……」

 

「言え」

 

「……っ」

 

門番の兵士が中々言わないので、フリードは少々〝威圧〟をしながら兵士達に詰め寄る。

 

「陛下からの命令で……」

 

「陛下からだと?(やはりか………予想はしていたのだが…)」

 

そう、フリードは王都侵攻の際に表面上は敵であるハジメの仲間であるユエとの会談を終え姿をくらましていた。本来なら、生き残った部下や魔物、アルヴと神の使徒の裏切り者達を巨大ゲートを作ってガーランドに届ける任があったのだが、それを放棄し、自分の創った一回きりだがゲートを発生させる魔物を魔物の扱いを書いた伝言と共に設置した後、そのまま、ウラノスと共にある場所に向かったのだ。

 

そんなフリードは、門番の兵士から自分を城に入れないのは陛下(アルヴ)の命令と推測していたが、本当に的中してることに内心舌打ちする。

 

「それで、陛下はなんと?」

 

「確か……えっ…と…あった。この書状に……」

 

フリードがアルヴの命令とはなにかと聞くと兵士の一名が懐を探しだし、ある紐に巻かれた書状を取り出し、フリードに渡した。フリードは受け取った書状を見る。

 

そこには、こう書かれていた。

 

================================================

 

我が親愛なる配下フリードへ

 

私は王国の侵攻の際、ゲートを魔物に任せて、貴様は先に魔王城に帰っていると思ったらびっくりだ。居ないではないかっ!!

 

ホントに帰った時は可笑しすぎて笑ってしまったよ。まぁ、最近の君の行動では監視の目もいらないぐらいの良い働きだったのだから、今回の失踪の件は大目に見よう。私に事情を説明すれば良いさ。

 

あっ、言っとくが君もこの書状を受けとってると思うが今、私はある場所に居て魔王城には居ないんだ。だから城に入りたいなら、この書状を受け取ってる兵士達に事情を説明してくれたまえ。そしたら、君は城にも入って良いと許可しよう。それに、私への説明も無しにしておくよ。

 

今度こそ人間族と憎きイレギュラー共を滅ぼそうではないか。私と君、そして…新たに加わった二人となら絶対にできる。私はそう確信している。

 

そう、これは魔人族の未来の為に……

 

───魔王 アルヴヘイトより───

 

================================================

 

「………そうか」

 

フリードは書状を見た後、書状を巻いて自分の懐にスっと入れる。

 

「お前達はこの中身を見たか?」

 

「い、いえっ! 私達は魔王陛下の使いの方に、それをフリード様がご帰還なされたら渡せと、としか……」

 

「そうか」

 

「で、では、フリード様。私達も仕事なので、居なくなった五日間は何をしておられたのですか?」

 

門番の兵士の一人がアルヴの命令されている仕事をこなす為、フリードにいなかった五日間は何処で何をしてたのかと聞く。

 

「……この五日の間、私はウラノスと共に王都侵攻の際に負った傷を癒す為に療養をしていた」

 

「療養ですか……フリード様、疑ってはいませんが、発言の許可をお許し下さい」

 

フリードの意見に納得がいかなかったのか、聞いた兵士がフリードに発言の許可を願う。フリードは、頷き発言の許可を許した。

 

「良いだろう」

 

「フリード様なら、神代魔法の一つ〝空間魔法〟でガーランドに帰還できて、すぐに我等の回復魔法に長けた者達に任せれば、もう少し早く療養できたと思うのですが……」

 

「ほぅ……じゃあ、私は嘘の発言をしている、と?」

 

門番の兵士の言うことは一理ある。が、内心悟られないためにフリードは、門番の兵士の一人に鋭い視線を向けながら問いかける。

 

「い、いえっ! 決してそう言う事ではありませんっ! フリード様ならそうするかと思って疑問に思っただけですっ! 不快に思われたならすみませんっ! 」

 

「……いや、構わない。私も説明不足だったようだ。君の言う通り、私なら〝空間魔法〟でガーランドまでゲートを繋げられる。しかし、王都侵攻の際に負った傷が余りにも深くてな、ウラノスも飛べるのが不可能と思えるほどの深手を負ってしまって、何処かで早急に傷を癒さないといけなかったんだ。それで、療養していたら五日も掛かってしまった。自分も流石に驚いてしまったよ」

 

兵士の言葉に肯定しながらフリードは、自分の経緯を話した。経緯を聞いた兵士やこの場にいる兵士達も納得したように頷いていく。

 

「そ、そう言う事だったのですか……」

 

「あぁ、魔王陛下やお前達に心配になるのはごもっともだろう。迷惑かけてすまなかった」

 

フリードはそう言いながら、兵士達に頭を下げた。

 

「フリード様?!頭を下げないでください!貴方は我等、魔人族の英雄であり、我等の将軍なんです!」

 

「そうですよっ!」

 

フリードが頭を下げるのを見て、兵士達は驚愕した表情になる。そして、半狂乱となりながらフリードの頭を下げるのをやめさせようとする。

 

「そうか……では、私の意を陛下にも伝えてくれ」

 

「はっ! では、フリード様どうぞ」

 

「感謝する。行くぞウラノス」

 

「クルァァア」

 

フリードは門を通してくれた兵士達に感謝の意を伝えながらウラノスと共に魔王城に入っていったのだった。

 

 

コツコツ……

 

王城へと入れたフリードはウラノスを専用の部屋に預け、自分の部屋に向かうため城の廊下を歩いていた。その廊下には人気がなくフリードの足音だけが響いていた。

 

「魔人族の未来の為に……か」

 

フリードはそうボソッと呟きながら懐から門番の兵士から受け取ったアルヴからの書状を取り出す。

 

「……何が未来だ……私達をゲームの駒としか見てない奴が……私達、魔人族の未来などと語るなっ」

 

ギリッと歯軋りするフリードはこの書状を見て、内心怒りに満ちていた。自分達を遊戯の為の駒としてしか見ていない。奴等……神々にとって不都合な存在は洗脳や暗殺、神の罰だとかの名目での弾圧……やってきたことを数知れない程の所業。フリードは書状をギュッと握りしめる。

 

「……私は許さない。貴様みたいなクズが魔人族の未来を語るなど言語道断だっ」

 

フリードは怒りの余り更に書状を握りしめる力を強める。そしてシュボッと音と共に書状が燃えだした。やがて、書状は灰になってチリチリと廊下に流れる入る風に飛ばされていく。

 

「待っていろ。必ずしろ私は、いや私達が貴様等、神を……神域から這いずり出して、地の底にまで沈めてやる。そして……三人で誓ったあの理想を実現する」

 

フリードはそう呟きながら瞳に炎を宿す。そして、再び、歩みを進めようとした時だった。

 

「フリード様!」

 

後ろからフリードにとって一番信頼出来る部下であり、大切な人の声が聞こえてフリードの心を落ち着かせていく。フリードは、立ち止まると声のする方向へ振り返り名を呼んだ。

 

「カトレアか……」

 

「はい、フリード様。門番の兵士から貴方様が帰還なされたと聞き早急に伺ってまいりました」

 

「そうか、私はこの通り無事だ。ウラノスもな。しかし、お前とは〝フォン〟で連絡をとっているから心配は要らないだろ」

 

「ですが……私の目で見ておきたかったんです。フリード様は私達の英雄である前に、私と……そして、ウィリスにとって大事な人ですから」

 

フリードは、カトレアや大事な部下達に連絡用の魔物を渡しており、連絡をとっているのだが、カトレアは自分の姿をちゃんと目で見ておきたかったらしく、フリードの姿を見てカトレアは嬉しそうで、安堵したような表情になっている。

 

「フッ……そうか」

 

「! フリード様?!……「今は誰も居ない。三人の時での呼び名で構わないがカトレア」……フー君……」

 

フリードはそんな嬉しそうな表情をするカトレアに寄り添い頭を撫でる。するとカトレアは顔を真っ赤に染め、更にプライベートでの呼び名を要求すると更に赤く染め、恥ずかしがりながら呼び名を呼ぶ。

 

「可愛いな……」

 

「ッ〜〜!! もうっ言いませんからっ!」

 

「フッ、そんなに怒るな。カトレア悪かった」

 

「ふぅ……、それでフリード様…「フー君って呼ばないのか」…っ、言いません! それでフリード様、どうでしたか。その魔剣は……」

 

カトレアはフリードのからかいに反応しながらも、フリードの腰に携えてる剣の感想を聞く。フリードも腰に携えた剣を視線を向けて応えた。

 

「あぁ……この魔剣は役に立った。これのおかげで彼の仲間のユエから貰った座標で見つけたミレディ・ライセンの大迷宮を攻略することが出来た」

 

そう言ってフリードは嬉しそうに腰に携える剣をそっと優しく撫でる。

 

「そうですか……なら、皆で見つけた甲斐がありました。魔剣〝イグニス〟を……」

 

「あぁ……ホントによくやったカトレア。本当に。里の伝承とされていた、この魔剣〝イグニス〟を見つけてくれたことを……」

 

「いえ、私の力だけじゃありません。あの子達もフリード様の為に尽力してくれましたから」

 

「フッ……そうか」

 

フリードはそう笑みを浮かべると、魔剣を腰から取らずに手元に「出てよ(いでよ)。イグニス」と口にすると、魔剣がフリードの手に収まる。その光景に目にしたカトレアが驚きの声を上げる。

 

「!フリード様。まさか、〝イグニス〟に認められたんですか?!後、攻略したって……」

 

「あぁ、この〝イグニス〟とウラノスの助けもあって、攻略することが出来た」

 

「ではっ、攻略したなら」

 

「あぁ、手に入れたぞ。ミレディ・ライセンの神代魔法〝重力魔法〟を」

 

カトレアの言葉にフリードは笑みを浮かべながら頷くと、重力魔法の一つ、小さい一つ黒い球体の〝禍天〟を手の平に出現させた。それを見たカトレアは驚きながらも嬉しそうに表情になる。

 

「流石です、フリード様!それで、ミレディ・ライセン様はどんな方でしたか? やはり、ヴァンドゥル(・・・・・・)シュネー(・・・・)の手記に記されてた通り、彼女はゴーレムとして生きていましたか?」

 

「あぁ、彼女は、手記通りゴーレムだったよ……」

 

「フリード様?」

 

フリードはカトレアに質問にミレディはどんな人物だったかと聞かれ、遠い目をする。それに気付いたカトレアは何があったかと聞く。

 

「……ウザかった」

 

「えっ?」

 

「ウザかった。ミレディ・ライセンはホントにウザかった」

 

「あっ、あぁー。本当に手記通りの方だったんですね……ミレディ・ライセン様は……」

 

「あぁ、だから流石に私もイラッとした。だが……」

 

フリードは思い出す。

 

ライセン大迷宮を攻略し、重力魔法を獲得した時だった。

 

『フーちゃん。君とハジメン達ならあのクソ共を倒せると信じてるよ』

 

『あぁ、任せてくれ』

 

『うんっ、アハハハ。ゴメンね、少しフーちゃんとウラノスちゃんを見てるとヴァンちゃんを思い出すよ』

 

フリードはその時のミレディはゴーレムの姿でありながらも笑っているように昔の解放者(仲間)達との記憶を懐かしんでいるように見えた。

 

『ヴァンドゥル・シュネーを?』

 

『うんっ!だってヴァンちゃんはね、フーちゃんと同じように魔物も大切にして友情を育んでいたよ。ホントに相棒……いや家族のようにね☆』

 

『フッ……そうか。それは、嬉しいな』

 

フリードは尊敬する人物と似てると言われ、嬉しそうに笑うと、傍らに頭を自分に擦り付けるウラノスの目元を優しく撫でる。そんな姿をミレディは楽しそうに、懐かしそうに眺めていた。

 

フリードは、そんなミレディとの会話を思い出し、自然と笑みを零す。

 

「フッ……」

 

「フリード様?」

 

「いや、ミレディ・ライセンはウザかったが、しかし解放者のリーダーとして、手記に記されていた通り、素晴らしい人格者だった」

 

「フフ……そうなんですね」

 

そう語るフリードの表情を見てカトレアは嬉しそうに笑みを浮かべる。

 

「カトレア。私は今から隠し部屋に籠り、アレの完成を早めていこうと思う」

 

フリードの言葉にカトレアは真剣な表情になると、フリードに確認をとる。

 

アレ(・・)をですか……」

 

「あぁ、アレを完成させて、まだ見つからないが見つかるであろう〝適正者〟に渡しておきたい。私の最高傑作になるであろう〝グランド・ビースト〟を。だからカトレア、私が部屋に篭っている間にアルヴが帰還したら報告してくれ。もし奴にバレたら台無しだからな。それに、此処にいるのだろうか分からないが、彼等を裏切った者達は?」

 

「はい。今は、アルヴ様のお部屋に滞在されています」

 

フリードはカトレアから使徒を裏切った二人の情報を聞くと、眉をひそめながら言う。

 

「その者達も、私の元へ来ようとしたら報告を頼む」

 

「はっ、かしこまりました。このカトレア。フリード様の為ならどんな命令も従います」

 

カトレアはそう言いながら、フリードに跪く。しかし、彼女の発言はただ上司と部下の関係だけじゃない。お互いを信頼し合っているからこその発言だ。

 

「頼む」

 

「はい」

 

カトレアの回答にフリードは笑みを浮かべる。そして、カトレアも笑みを浮かべる。

 

「………」

 

(しかし、アルヴめ……神域で何を話してるんだ?)

 

フリードは部屋に向かう途中そう思いながら、アルヴがいる神域があるであろう空に視線を向けるのだった……。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

其処は幻想的で神々しく感じる場所だった。

 

その場所は、空の上。中心にそびえ立つ建物は、いかにも、神の住む場所とも言っても過言ではないだろう。そこには、白一色の巨大な宮殿が建っていた。

 

そう、此処は〝神域〟

 

───神達の住む世界である。

 

 

〜宮殿内のある大きな一室〜

 

この一室に、三柱の神が揃っていた。

 

「ガハハッ、聞いたぞアルヴよ! 我が主の異世界召喚から召喚された者達の中に現れた〝イレギュラー〟にボコボコにされたとな。愉快、愉快!ガハハハハッ!」

 

「なっ! ち、違います!私はまだ負けてはおりません! 油断してた……いやっ、私は、イレギュラーの力を測っていただけですよ!だから、私は本気を出してはいません!」

 

一柱の黒を基調とした着物を着た男神がアルヴの失態を声を出しながら笑う。それを、アルヴは否定していくのだが、そこにいた一柱の女神が横槍を入れる。

 

「でも〜、アルヴ。アンタさぁ、イレギュラーとただの駒に〝神言〟を使ったって聞いてるんだけど〜。マジウケるんだけどぉ〜」

 

「それは、真かっ!ガハハッ。滑稽だなアルヴ!」

 

「いやっ、それはイレギュラーが予想以上に強力で……」

 

「いや、イレギュラーにならまだ分かるよ〜。でも雑魚(・・)の駒に〝神言〟を使うのはナイナァ〜」

 

「い、いえっ!アレは!少し理由が………」

 

アルヴに一柱の女神がどんどん煽っていき、アルヴは内心悔しく歯噛みする。だが、アルヴは二柱の神には逆らえない。実力差があり過ぎるのだ。アルヴが本気を出したとしても勝てないであろう。そんな二柱の言葉に耐えることしか出来ないアルヴだったが……

 

「静かにしなさい。貴方達、我が主が来られましたよ」

 

二柱の神がアルヴの失態をネタにして笑い合っていると、扉が開き、透き通った女性の声がする。それと同時に五月蝿かった部屋がシンッと静まりかえった。

 

それも、そうだ。彼女の声するのなら、あの御方が傍にいるからだ。

 

ザッ!

 

アルヴを含めた三柱の神が席から立ち上がり、扉の前に綺麗に並んで跪く。それを見た銀髪の女性が部屋に入ると扉の横に移動する。そして、扉の奥からは尋常ではない程の重圧が響き渡る。アルヴは、その圧に吐きそうになってしまう。

 

そして、扉の方から声が聞こえた。

 

「お前達、よく我の招集に集まってくれた感謝する」

 

「「「いえ、ラーゼン様の呼びかけなら我等一同はすぐさま駆けつけます」」」

 

そう。部屋に入ったのは、白を基調とした服に、外套を身に纏った最高神。ラーゼンだ。ラーゼンは、自分の前に跪く三柱に命ずる。

 

「そうか。じゃあ、まず座って話そうじゃないか? エクストラも」

 

「「「はっ!」」」

 

「かしこまりました」

 

ラーゼンの言葉に従い四柱は自分達の席に戻り、着席する。そして、一番豪華な玉座ともいえるような椅子にラーゼンは腰がける。

 

「では、我が今回、お前達に招集をかけた理由を話そう」

 

「「「「……」」」」

 

「無論、イレギュラーの件だ。エクストラ報告を」

 

「はい」

 

ラーゼンの言葉に銀髪の女神エクストラはスっと席から立ち上がり、感情が籠ってないような声音で報告内容を淡々と報告する。

 

「イレギュラー、南雲ハジメは、怒涛な勢いで神代魔法を獲得。そしてつい最近では、私の〝ノイント〟さえもイレギュラーに敗れてしまいました」

 

「そうか、そうか……もう〝ネームド〟さえも倒されたのか……凄いのぉ〜。今回のイレギュラーは〝使徒殺し〟と同等……いや、それ以上か?」

 

エクストラの報告を聞いて、黒く少し荒々しい着物を着た男神がニヤニヤしながら口を開く。

 

「それならぁ〜、イレギュラーと実際に戦ったアルヴクンに聞いた方が早いんじゃない?ねぇ、アルヴク〜ン?」

 

男神の話しを聞いた紅いドレスを着た女神がハジメの事を知るとしたら、この中で一度ハジメと相対したアルヴに聞いた方が早いとクスクスと笑いながらアルヴに視線を向ける。

 

「そうだな一理ある……アルヴよ。イレギュラー、南雲ハジメはどうだった?お前から見て」

 

女神の意見にラーゼンは賛同するとアルヴに視線を向けて問いかける。アルヴは、自分に向けられた視線から伝わる圧に緊張しながら、ラーゼン達に報告を始める。

 

「はっ……かしこまりました。これは、私の主観からしてです。イレギュラー、南雲ハジメは……化け物です。アレはもう人間ではない。まず、天職が生産職の〝錬成師〟である筈なのに、勇者を超える程の戦闘センス。そして……奴は、機械(・・)と思わしきアーティファクトの使用が確認されました」

 

アルヴが、そう報告したと同時に、バッと部屋全体が静まり返った。

 

そして……

 

ズンッ!

 

「ひ、ひぃ!」

 

アルヴの報告に〝機械〟と聞いた瞬間、ラーゼンを含めた全員から殺気を放たれた。その殺気にあてられたアルヴは腰が抜けるように床に崩れ落ちた。その殺気は、死ぬんじゃないかと思わせるほどの尋常じゃない殺気だった。

 

「そうか……機械か…まさかな……」

 

「安心してください、我が主。あのゴミの集合体は愚妹の代わりになって貴方様の神罰の光槍(ジャッジメント)で朽ち果てた筈です」

 

「我が主。エクストラの言う通り奴は十万年前に主に敗北したのですぞ」

 

「エクスちゃんとアホ龍の言う通りですよ〜。奴の魂魄の破壊は確認した筈だしぃ〜」

 

ラーゼンの言葉に三柱の神は大丈夫。奴は死んだと、魂魄も破壊されたと言う。その言葉を聞いたラーゼンは頷く。

 

「そうだな……奴は死んだ。我がこの手で確実に滅した(壊した)。しかし、アルヴよ」

 

「はっ、はい。何でしょう?」

 

ラーゼンはアルヴをずっと見つめる。それは、まるでアルヴの心の中を全て見透かしているように。

 

「其方、まだ我等に報告していない事があるだろう?エクストラの報告は使徒の目で見たものしかないからな」

 

「……ッ!」

 

アルヴはラーゼンの心を見透かされたような言葉に驚愕を隠せずにいられなかった。

 

「話せ」

 

ラーゼンの圧に耐えられずアルヴは口を震わせながら報告をする。

 

「……ッ、はい。では報告します。その……〝クリスタ様〟の魔力の気配を感じさせる人間の少女を見つけました」

 

「「!」」

 

「やはり、あの愚妹は生きていたのですね。あの時に、死ねば良かったのに……」

 

「そうか。魂魄を破壊できてないと思っていたが……まさか、魂魄の状態で生き延びていたか。その執念には称賛できると言えるな」

 

アルヴの報告で二柱は驚きを示し、エクストラは溜息を吐きながら「まだ、生きていたのか」と眉をひそめながら言うだがその目はいつもより感情があるように見える。一方、ラーゼンはその生きる永らえる執念さに賞賛をした。

 

「しかし……人間の少女と言ったか?」

 

「はい。見た目は完全に人間の少女でした。ですが、中から感じる魔力には、クリスタ様の魔力でした」

 

「そういう事ですか……」

 

アルヴの報告を聞いてエクストラは、クリスタがどうやって生き永らえてきたか分かったのか、頭に手を当てながら応えた。

 

「あの愚妹は魂魄の状態のまま、私達に存在を悟られないよう人間の少女の中に入っていたのですね。今まで分からなかったのは、眠っていたのか、適当に人間の中に住み着いたりして隠れて生き永らえていたってことでしょう。私達の種族ならそれぐらい可能ですから」

 

エクストラの言葉に「なるほど」と頷く。ラーゼンは、エクストラの話を聞いた分、アルヴに視線を向ける。

 

「それで、アルヴ、貴様はその少女を殺したか?」

 

「はいっ! それはもう早急に胸を貫き殺し……「生きてますよ。あの愚妹は絶対に」……えっ?」

 

「どう言う事だエクストラ?」

 

アルヴの発言を遮り、エクストラはアルヴが殺しであろう少女、優花は生きていると断言する。そして、アルヴが問う前に理由も話す。

 

「あの愚妹の事です。完全に人間の少女の魂魄が破壊される前に自分の力でも渡して、生き返らせた事でしょう。我が主どうしますか? 今、イレギュラーの戦力は今も上がり続けています。それに、愚妹は愚妹ですが、あの子が復活となれば戦力が一変する可能性があります。早急な対応を」

 

エクストラはそう断言してからラーゼンに早急な対応を呼びかける。

 

「そうだな……我としては〝イレギュラー〟との戦いを楽しみたい。が……なら、〝ルシフェウス〟を解放させるのはどうかな?」

 

「「「「なっ?!」」」」

 

ラーゼンの言葉に四柱が驚愕の反応を示した。

 

「ラ、ラーゼン様。ま、真ですか?! あの〝ルシフェウス様〟を?」

 

「儂は賛成ですな。あの破壊神は凶悪ですが、味方につけば儂等の戦力が完全なものとなる」

 

「私はぁ〜、アイツはないかな〜」

 

「そうですよ。我が主、あの破壊神はただの邪魔でしかありません。それに、本当の破壊神(・・・)である貴方の名にも傷が付きます」

 

四柱共、言ってる事は違うが、〝ルシフェウス〟と言う神を解放させるのは男神以外の三柱は反対を示していた。

 

「つれないな。特にエクストラ。ルシフェウスはお前と少な限りの同族だぞ?」

 

ラーゼンはそう言いながらエクストラに視線を向ける。

 

「はい。そうではありますが、アレは自分の強大な力を制御出来ずにただ、破壊を繰り返すだけの獣に成り下がった阿呆。それに今は魂魄だけの状態で()なんて今はありませんよ」

 

エクストラはラーゼンの問いかけに平然と返し、ルシフェウスの〝器〟はないと言うが、ラーゼンはその言葉を待ってましたと言わんばかりの表情で口を開く。

 

「器はあるだろう? 弱者で我のトータスには要らない存在ではあったが、アレはアレで召喚された神の使徒の一人だ。器ぐらいには使えるだろう?」

 

ラーゼンの言葉にエクストラは片方の眉をピクッと上げ口元に手を添え考える素振りを見せる。

 

「……あの弱者ですか……そうですね。アレ自体は雑魚ですが、器としてなら……使えるかもしれませんね」

 

「……じゃあ、使おうではないか。 もしかしたら、あの器でルシフェウスを扱える可能性がある。それならば、お前達も賛成であろう?」

 

ラーゼンは、以前手に入れた死体を、ルシフェウスの器にしてコントロールしようと提案する。

 

「コ、コントロール出来るなら、私は賛成します」

 

「儂は主の願いがそうであれば構わないですぞ」

 

「私も……それなら〜」

 

エクストラ以外の三柱はルシフェウスの解放を了承する。

 

「エクストラ……其方は?」

 

「……分かりました。それに、今は馬鹿の事よりイレギュラーと愚妹の対処が最優先事項です」

 

エクストラは不満だったのだが、突如多く現れたイレギュラー、そして愚妹の対処が優先と思い渋々了承する。

 

「よし、なら満場一致で器の処理が終わり次第、ルシフェウスを解放するとしようか」

 

「「「「はっ」」」」

 

ラーゼンの言葉に四柱はそのままラーゼンの前で跪つくのだった。

 

「よし、話すことは話した。そろそろ解散といこ……っとその前に〝オルステッド〟」

 

「はっ! どうか如何しましたか、主よ?」

 

他の神々が解散する中、黒を基調とした荒々しさを感じさせる着物を着た男神──オルステッドは、主であるラーゼンに呼び止められると同時に御身の前に跪く。

 

「其方、今、帝国(・・)で面白い遊びを計画してるではないか?」

 

「ガハハッ、流石は主、気付くのがお早いですな」

 

オルステッドは主の慧眼さに驚愕と尊敬を念を抱きながら快活に笑って応えた。

 

「順調か?」

 

「はい、全く以って順調でございます。あの帝国の皇太子は面白いくらいに扱いやすく、着々と計画が進んでいますぞ」

 

オルステッドはラーゼンに計画は順調と答えるとラーゼンは笑みを浮かべながら頷き、オルステッドの肩に手をかけて口を開いた。

 

「そうか、楽しみにしてるぞ。帝国の民全ての堕獣化(堕落獣転計画)

 

「! …… ガハハハハハッ! まさか、計画内容自体までもがお見通しとは、愉快! 痛快!」

 

オルステッドはラーゼンに自分の計画を教えてないのに当てられて、驚愕を通り越して頭に手を当てて大笑いをしながら声を荒あげる。

 

「では、楽しみにしておるよ。創獣神オルステッドいや、竜人の祖(始まりの竜人) オルステッドとでも言った方が良いか?」

 

その言葉に、ピクッと尖った耳が動くオルステッドだが、首を横に振る。

 

「いえいえ、そんな昔の名はやめて頂きたい。儂は竜人の祖ではなく、今は、創獣神オルステッドでございまする」

 

「そうか、そうか。では、創獣神オルステッドよ。健闘を祈る」

 

「はっ、有り難きお言葉っ! このオルステッド。必ずや成功させてみせましょう!」

 

ラーゼンがそう言い残しながら消えていくまで、オルステッドは両手を合わせながら跪くのだった………。

 





ありふれた職業で世界最強if優花を読んでくださっている皆様に報告したい事があるので、今日ぐらいに投稿する活動報告を見にいってくださいm(_ _)m

編集しました。八月一日


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