ハジメ達は警備隊の隊長の虎人族のギルの先導でフェアベルゲンに着くがその惨状に息を呑んだ。
「……ひどい」
誰かがそう呟いた。口には出してないがその言葉にハジメ達も同感だった。【フェアベルゲン】そのものも、どこか暗く冷たい風が吹いているようで、どんよりとした雰囲気を漂わせていた。
と、その時、通りがかった【フェアベルゲン】の人々がアルテナ達を見つけて信じられないといった表情で硬直する。
そう思えば次の瞬間、喜びを爆発させるように駆け寄ってきた。
傍らに人間族達がいることに気付いて、一瞬、表情を強ばらせるものの、アルテナ達が口々に助けられたことを伝えると、警戒心を残しつつも抱き合って喜びをあらわにしていた。
連れ去られた亜人達の中には、ハジメ達に礼を言うと家に向かって一目散に駆けていく者もいるが、ハジメはこの状況ではしょうがないと思いスルーしていた。
次第にハジメ達を囲む輪が大きくなっており、気が付けば周囲は【フェアベルゲン】の人々で完全に埋め尽くされていた。
「凄い人集りね………」
「これじゃあ………前に進めねぇな」
(強引に集団を掻き分ける訳にもいかねぇし……)
優花とハジメは苦笑いしながら言葉を漏らすがやはり、囲まれたままだった。
しばらくその状態が続いた後、不意に人垣が割れ始める。その先には、【フェアベルゲン】の長老衆の一人──アルフレリック・ハイピストがいた。
「お祖父様!」
「おぉ、おお、アルテナ! よくぞ無事で……」
アルテナは目に涙を溜めながら一目散に駆け出し、祖父であるアルフレリックの胸に飛び込んだ。
以前、アルフレリックが言っていた。樹海の外に連れらされた者は死んだものだとみなすものだと。後を追って、被害が拡大するのを防ぐために。
故にもう二度と会えないと思っていたに違いない。祖父と孫娘の感動の再会にハジメ達は笑みを浮かべ、周囲の人々は涙ぐんで二人を見つめていた。
しばらくして、アルフレリックは孫娘から身を離して優しげに頭を撫でると、視線をハジメに転じた。その目、表情から感謝の念が伝わるほどだった。
「しかし……とんだ再会となったな、南雲ハジメ。まさか、孫娘を救われるとは思いもしなかった。縁というものは分からないものだ。」
「俺はただ送り届けただけだ。感謝するならパル達ハウリア族にしてくれ。それに俺は、フェアベルゲンの様子を見に来ただけだしな………」
「そのハウリア族を変えたのはお前さんであろう。〝掟〟の時もそうであったが、お前さんのおかげで孫娘のみならず我等も救って貰った。それが事実だ。この莫大な恩、〝掟〟もそうだが、変えてくれたことでフェアベルゲンは更に手を取り合えるようになったんだ。せめて礼ぐらいを言わせてくれ」
「クハッ……そうかい」
ハジメはアルフレリックの言葉に、若干、困ったように頬を掻きつつも仕方なそうに肩を竦め苦笑いして返す。
そんなハジメを、優花やユエ、シア、ティオは、微笑ましげに、そして誇らしそうに見つめている。アレスもハジメを尊敬の眼差しで見つめ、首を縦に振っていた。
一方で、人間を救うために大迷宮に潜って訓練を積んできた自分よりも、世界を巡り意図せず人々を救ってきたハジメに、光輝は一層、心の中のドス黒い何かが渦巻き増幅していき、複雑そうな表情を見せていた。
アルフレリックはチラリと、面識の無いアレスや光輝達に視線を向けつつハジメに言う。
「ハウリア族だが、タイミングが悪かったようだ。ちょうど儂等の頼みで都の外に出ていてな、直ぐに戻ると思うんだが……」
「なら、少し待たせて貰っても良いか?色々大変な最中だろうが頼めるか? まぁ、待たせて貰える間にウチの癒しの天使様が怪我をした住人達や町を癒しておけるが……」
「!、そんなっ良いのか?」
アルフレリックがハジメの言葉に反応を示して目を見開く。それ程までにまだ怪我をしてる亜人がいるのだろう。ハジメは頷いてから傍にいる優花に視線を転じると優花は頷きながら了承のサインをハジメに送る。
「ウチの天使様もオーケーだってさ」
「……感謝する。では、我が家に招待しよう。ハウリア族が戻り次第、知らせを門の者に言っておく」
そう言って、アルフレリックは快く、ハジメ達を自宅へと促す。しかし……
「ではっ、わたくしが自宅へと案内をしますのでハジメ様、お手を……」
「お、おう」
そう言って、アルテナが案内するつもりでか、何故かハジメの手を取ろうとするのだが、邪魔が入る。
「あのー、アルテナさぁ〜ん? なんでハジメさんの手を触ろうしたんですかぁ〜?」
シアだ。シアはアルテナがハジメの手を触れる瞬間に、ハジメの手を自分の方へと抱き寄せたのだ。そして、シアの言葉にアルテナは……
「い〜えっ。わたくしは皆様方を纏めておられるのはハジメ様だと思いましたのでぇ……」
ニコニコ笑顔?のウサ耳少女と笑み?を浮かべた森人族のお姫様がバチッと視線を交わす。
「アハハハハ…………」
「フフフフ……………」
二人は視線を固定しながら笑い合うがその光景に男性陣は恐怖を覚える。
「………」
(ヤバそう……)
そして、そんな二人の近くにいたハジメはこの雰囲気にヤバイと感じ、アルフレリックへと視線を向ける。
「………」
すると、アルフレリックも此方の視線に気がついたかハジメの方へと視線を転じた。
数秒、見つめあった二人は目を閉じて頷き合った後、ハジメは歩き出すアルフレリックの後に付いていったのだった。
そんな、ハジメの後ろでユエ、ティオ、優花の三人はガールズトークを始める。
「……優花、ハジメの天然誑し性質を何とかできない?」
「そうじゃぞ優花。このままでは妾達のご主人様の魅力が広まってしまうのじゃっ」
「いやぁ〜、アレは直せないんじゃない?」
(日本では隠れファンクラブもあるし………)
そんなガールズトークを広める優花達は傍にいたある人物にも声をかける。いや、巻き込んでいく。
「アレスさんはどう思います? ハジメの天然誑しは?」
そんな、ガールズトークに巻き込まれた犠牲者アレスさんは目を瞑り、ハジメの尊厳を守る故に………
「………ノーコメントで」
アレスはそう言って、逃げるようにハジメの後を追った。流石に王国最強の神官でも、身の危険を感じることはあるのだった………。
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アルフレリックの家に招かれたハジメ達は、ハウリア達が戻ってくるのを待っている間、優花は怪我をしてる亜人達の治療へと、そして残ったハジメ達はアルテナ手ずから入れたお茶をご馳走になっていた。
「どうぞ、ハジメ様」
「あ、おぅ。ありがとな」
「はいっ」
妙に頬を染めるアルテナにハジメはお茶を受け取って視線を感じながらもお茶を飲む。
ハジメが飲んでいる間にも、アルテナはハジメの周囲をウロチョロと動き回り世話を焼こうとしてるのが分かる。
「………ウマ」
お茶は普通に美味い。だが、四方から凄い視線を浴びているのが分かり、ハジメはお茶が楽に飲めない状況だった。
チラリとアルフレリックを見るがその様子は何とも難しそうな顔をしている。つい、顔を隣へ逸らすとユエとティオがチラリと俺をジト目で見ていた。また逆の方向へ視線を転じるとシアはアルテナとまだニコニコし合っており、何かと恐怖を感じ取ってしまう。なので、視線を正面へと戻したハジメは再度、お茶を飲むことにした。
そして……
「俺なんかしたっけなぁ〜」、と思いながら、隣でニコニコし合ってるシアのウサ耳を愛でておいた。機嫌を直して欲しいという意思表示と、今のシアに対する気遣いから……。
そんな事があるもハジメはお茶を飲み干した後、ある程度の近況をアルフレリックと共有していた時だった。
「ふぅ……ハジメ、ただいまぁ〜」
バサッと天使の翼を羽ばたかせながら〝天使化〟した優花が窓の外からやってきてた。
ハジメは優花が帰ってきたと同時に席と机の距離を少し離すようにして人一人入るぐらいのスペースを作ると意図を察した優花がハジメの膝上とやってきて〝天使化〟を解除したと同時にハジメの膝上に座り、ハジメに体を預けるように抱きついた。
優花が〝天使化〟して、やって来たのはアルフレリックの招いた部屋は地上から十メートル程の高さにあり、優花も面倒臭いと感じて翔んできたんだろう。
「休憩か?」
ハジメは膝上に座る優花の頭を撫でながら問うと、優花は首を振り……
「ううん、外傷のある人はみんな癒したし、門も含めて都の中心周辺は復元したわ。再生魔法と天性魔法の練習になったし、いっそ〝聖杭〟を飛ばしながら他の場所も全て復元しようと思ったけど………」
「 どうしたんだ優……ん?」
困った表情で言葉を濁す優花にハジメが首を傾げながら問うとした時だった。耳をよく澄ますと下から「優花様ァ!」という住民達の熱烈な優花コールが聞こえてきた。
ハジメは優花を椅子に座らせてからアルフレリックと一緒に窓から身を乗り出して下を見る。
「なぁ、アルフレリック………」
「南雲ハジメ、何も言うな」
其処には多数の亜人族が顔を紅潮させて興奮気味に優花を称えている姿だった。ハジメは顔を難しくしてるアルフレリックに同情した。
「ん?………アイツ等」
集団の中に、何処で見たような顔があると感じたハジメは興奮気味の亜人族達を見ると知っている顔が見えた。そして、頭を抑えるアルフレリックに苦笑い気味に話しかける。
「なぁ、前に見たことあるんだが、アイツ等……長老衆のメンバーじゃなかったか?」
「………ゼルにグゼ。アイツ等は何をしとるんだ」
「………優花が戻ってきた理由が何となくわかったわ」
優花が戻ってきた理由は、亜人族の間の狂信的な熱気に、ちょっぴり怖くなって逃げたんだろう。とハジメ察する。
そして、アルフレリックは頭痛が激しくなったのか片手で頭を抑えもう片方で堪えるように眉間を揉んでいた。相当、参ったのだろう。
ハジメはそんなアルフレリックに同情しながら、席に戻って優花を膝上に座らせてから頭を撫でていると、ドドドドドドッという音が聞こえ始めた。
「………来たか」
ハジメ以外の全員は扉の方を見るが、ハジメはこの音の正体を察しながら笑みを浮かべて扉を見ると同時にズバンッと扉が勢いよく開く。その衝撃でか扉に亀裂が入り、頭を痛めているアルフレリックが悲しそうな顔になる。
後で、お詫びで材質は壊れにくいように〝タウル鉱石〟の扉をプレゼントしよう。とハジメは悲壮感が溢れ出るアルフレリックに申し訳ないと思いながら、後で扉を直して、更に頑丈にしておこうと考えてると、扉を亀裂に入れた原因達が声を上げる。
「ボスゥ!! お久しぶりですっ!!」
「お待ちしておりましたっ! ボス!」
「お、お会い出来て光栄ですっ!」
「新入り! ボスのご帰還だっ!! 他の者達に早急に伝達しろっ!」
「りょ、了解ですっ!!」
原因はやはり、男女のハウリア達だった。余りの剣幕に、パル達でハジメへの信頼が限界突破してる反応を予想していた筈の光輝達はブフゥーー!とお茶を吹き出し、アレスとユエ、ティオは表情が引き攣り、シアは顔を真っ赤にして恥ずかしそうに両手で顔を隠す。その様子に今度がハジメが頭痛がしだして頭を抑える。ハジメの膝の上に座る優花は同情したのか頭を撫でてくれている。
ハジメが優花の頭ナデナデに癒されるも構わず敬礼をした後に、片膝を突いて平伏するハウリア達。しかし、ハジメは首を傾げる。
「……ん?」
(あんな奴、いたか?)
ハジメはハウリア達をよく見ると見ない顔がいて首を傾げるが直ぐに理由が判明した。先程の言動を踏まえると、どうやらカム達は他の兎人族の部族にも自分達のように守る力を教えるために、取り込んで訓練をしていきながら勢力を拡大している予想した。
「あ〜、うん。久しぶりだな。取り敢えず、他の連中がドン引きしてるから平伏はするな」
「「「「「「「「はっ!」」」」」」」」
その応答は樹海の全体に響く程の声だった。
そして、久しぶりのハジメの掛け声でか、とても嬉しそうにウサ耳をピコピコとするハウリア族と、初めて経験した本物のハピバの掛け声に「俺達も遂に……」と感動しているハウリアではない兎人族達。
きっと、ハジメが出ていった後も、カム達を中心に「家族を守る為だと」言って、あの訓練を行っていったのだろうと想像ができた。感動してる兎人族達にハジメは若干ながら同情と申し訳なさを感じるも、言葉を続ける。
「ここに来るまでにパル達と出会って大体の事情を聞いている。中々、活躍したそうだな? 帝国の連中や謎が多い〝狂化〟帝国兵を退けるなんて大したもんだ 」
「「「「「「あ、有り難き幸せ!」」」」」」
ハジメの激励にハウリア達が感動に震えてるのを見て、苦笑いするもハウリア達も揃ったので部屋にいるまだマトモな長老であるアルフレリックにもパルから預かっていた情報を伝える。
すなわち、自分達も帝都に侵入するつもりであることと、応援の要請だ。
「なるほど。……パル達からの伝言は確かに受け取りました。わざわざ有難うございます。ボス」
「しかし、あのカムが簡単に捕まるとは思えねぇな……」
ハジメが受け取った情報を聞いてハウリア族のイオは感謝をし、アルフレリックは顔を難しくしていた。ハジメも因みにアルフレリックの意見には同意だった。
カムはハジメが訓練した中で一番、努力し、強く成長した兎人族であるからだ。指揮能力も族長故に正確であり、隠密もトップレベルだ。そんなカムが簡単に帝国に捕まるとは到底思えない。
ハジメはカムのことを心配しながらも、どうにか、気を取り直してイオに尋ねていく。
「ハウリア族以外の奴等も訓練させていたみたいだが、今、どれくらいいるんだ?」
「……確か………ハウリア族と懇意にしていた一族と、バントン族を無力化した噂が広まったことと長老衆の方々の呼びかけで訓練志願しに来た者達が加わりましたので……実戦可能なのは総勢百二十二名になります」
「……そうか。随分と増えたな」
イオの答えにハジメのみならずユエやシアも驚きを顕にしていた。
そしてハジメは、質問の意図が分かっておらず疑問顔を浮かべているイオを尻目に頷く。
「よし。それくらいなら全員一度に運べるな。……イオ。帝都に行く奴等さっさと集めろ。俺がまとめて全員帝都に送り届けてやる」
「は? はっ! 了解です! 直ちに!」
イオはハジメの言葉が一瞬、何を言ってるのか分からなかったようで間抜け顔で聞き返すイオだったが、直ぐにハジメが帝都に同行してくれる意味だと察して、敬礼をすると仲間達を引き連れて他のハウリア族達を呼びに急いで出ていった。
「………」
イオの疑問はわかる。ハジメが大迷宮の攻略のために戻ってきたと思い、自分達を手伝ってくれるだろうと思っていなかったらしく、意外すぎる言葉に動揺しまったそうだ。
だが、驚いていたのは、イオだけでなく、寧ろ一番驚いているのは傍らにいるシアだった。その大きな可愛いらしい瞳をまん丸に見開き、ウサ耳をピンッ!と、立ててハジメを凝視していた。
「ハ、ハジメさん? 大迷宮に行くんじゃ?」
「予定を変更する。カムのことが心配なんだろ?」
「っ……それは……その……でも……」
ハジメに図星を突かれて口篭るシア。
シアはハジメの目的が神殺しと大迷宮の攻略であり、カム達の事情に関係ない以上、わざわざ面倒事を持っていそうな帝都に入ってまでカム達の行方を捜して欲しいと言えなかったんだろう。まして、カム達は連れ去られた訳もなく、自分達で向かったのだ。何かあっても自己責任であるし、アレスの情報や王都侵攻の際に神達も動き出そうとしてるこの時期なら尚更だ。
シア自身も、ハジメに付いて行くと決めたのだ。ならば、父親達は父親達の道を、シアはシアの道を進めべきだと思っているんだろう。このウサ耳娘は。
しかし、心優しいシアのことだ。家族の行方が分からないと知れば、心配する気持ちは自然と湧き上がるものだ。そう簡単に割り切れる筈がない。シアなど特にだ。
本人は隠しているつもりでも、憂いはしっかりと顔とウサ耳に出ていた。他の者達は気が付かなくとも、ハジメとユエ、優花やティオ、魂魄魔法に長けているアレスにはシアの心情など筒抜けだったのだ。
「はぁ……(このウサ耳娘が)」
ハジメは溜息をすると同時に余計に手間を取らせていると思って口篭る愛しいウサ耳娘の傍に寄り添って、優しい手つきでほっぺをふにふにと摘んだ、
「ふぇ?」
ハジメの突然の行動にかシアはどっかの可愛い天使様みたいに声を出してポカンと口を開けて間抜け顔を晒す。
そんなシアの表情を見て、ハジメは可笑しそうに笑みを浮かべそうになるが、真っ直ぐ視線をシアの目と合わせて言い聞かせるように言葉を紡いだ。
「そんなウサ耳をしおれさせて、無理して笑って……なんて顔をしてんだ?カム達が心配なら、『心配』って言えば良いだろう?」
「で、でも……」
「〝でも〟じゃねぇよ。何、今更遠慮をしてるんだ?何時もみてぇに思ったことを思った通り言えば良い。それがシア・ハウリアだろ?それに、俺は愛する人をそんな顔をさせたくない」
「ハジメさん……」
ぶっきらぼうであるがハジメはシアのことを想っての言葉だ。場所が何処であろうが関係ない。愛する人の悲しい顔なんて見たくない。
それを理解したのかシアは自分の頬に添えられたハジメの手を自分のそれを重ねる。瞳は嬉しさと愛しさなのか分からないが潤み始めていた。
「シア。俺は愛する人達の憂いが、悲しみが晴れるのならば……俺は、俺の〝全力〟を使うことを躊躇わない。それが俺の信念だからだ」
「ハジメさん、私……」
「ほら、言ってみろ。俺の愛しのウサ耳娘。」
ハジメはそう言いながら真っ直ぐに笑みを浮かべながらシアを見つめる。シアは頬に伝わる優しく暖かい感触に気持ちよさそにうに目を細め、湧き上がる気持ちのままに思いをそのまま口にしたように言葉にした。
「……私、父様が心配ですぅ。……一日でも良いから、無事な姿を見たいですぅ」
「クハッ……全く、最初からそう言えばいいんだ。俺はシアのこともちゃんと愛してんだがな」
「し、知ってますよっ! 私もそれぐらい! ハジメさんがちゃんと優花さん達と同じくらい愛してくれてることなんてっ! だって夜……「おっとぉ…シア。これ以上はストップだ」……あっ」
拗ねたように頬を膨らませているが、その瞳は何時も通りにキラキラと星のように輝いており、頬を薔薇色に染まっていて、ハジメでも分かるくらいその表情は愛しい男を見る女の顔であった。
贈った言葉に、幸せで堪らないという気持ちが全身から溢れ出ており、幸せの余りかウサ耳娘は余計なことを言いそうだったのでストップさせる。
「ふふ……良かったわね。シア」
と、優花はシアに近寄りながら頭を撫でる。その姿は正にザ・正妻を体現してるような感じがした。
「………ん。元気になって良かった」
と、ユエは微笑ましげにシアを見守る。完全にお姉さん思考だった。
「フフ、全くシアは可愛いらしいのぉ〜」
と、昨夜に自分に抱きつきながら涙を流していた竜姫さんことティオは扇子で口元を仰ぎながら笑みを浮かべていた。
「まぁ……あんな事を言われれば嬉しいでしょうね」
「な、南雲くん……ストレートだよ。鈴はビックリだよ」
「シアさん……羨ましい、妬ましい」
順に雫、鈴、そして何故かアルテナである。
そこで、ようやく周囲に大勢いることを認識したシアが真っ赤になって両手で顔を隠してしまった。
「クハッ……おいおい、そんな恥ずかしかったのかよ」
「ゔぅ〜」
ハジメは恥ずかしくて顔を隠してるシアが更に可愛く見えて胸元に抱き寄せる。すると、羞恥以上に嬉しさが抑えきれなくなったのか、ウサ耳がわっさわっさ、ウサしっぽがパタパタと動きまくり気持ちをこれでもかと代弁しているのを見て不意に笑みを零してしまう。
そして、ハジメは恥ずかしがっているシアを抱き寄せながらアレスに視線を向けながら特定でアレスにだけ〝念話〟で謝罪を入れる。
〝アレス、すまねぇ。樹海の迷宮攻略の前なのに〟
〝ハハ、構いませんよ。私は……それに、私としても、帝国には気になる事があるので……〟
ハジメはアレスが気になることは何なのか察し、周りにバレないために表情を変えずに声色を低くして話す。
〝〝狂化〟帝国兵のことか?〟
〝えぇ……〟
〝なら、帝国に行く前にイオに聞いた限りその帝国兵の死体がフェアベルゲンの外に埋められてるらしいから調べてみるか?〟
〝えぇ、そうしましょう。では後程〟
〝あぁ……〟
ハジメはアレスとの〝念話〟を終わらせ、胸元にいるシアの頭を撫でてから、傍に寄ってきた優花にユエ、ティオに視線を向けながら小さな声量で独り言のように呟く。
「……何があったとしても絶対に俺が守る」
例え、どんな敵が待ち構えていても、絶対に守れるなら、この胸元にいる、傍に寄り添っている〝大切〟な人達を守れるなら………
───俺はあの
ハジメはそう誓うのだった………。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
一方、ハジメにジッと視線を注いでいた光輝は、ポツリと呟いた。
「………何で、南雲なんだよ……何でだよ」
何処か感情を抑え込んだような、或いは苛立った様子で呟く光輝。親友の様子に、龍太郎はどうしたもんかと頭を掻いた。
その時、ちょうどいいタイミングでイオが戻って来た。どうやらハウリア族の準備が整ったようだ。滅茶苦茶、迅速な対応である。
そして、アレスとの個人的な調査をした後、ハジメ達は、アルフレリックとアルテナ達の見送りを受けながら樹海を抜け、ハウリア族と共に帝都に向けて再びフェルニルを飛ばしたのだった………。
編集しました。八月二日
作品名を変えた方が良い?
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そのままで
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変えた方が良い