ある帝都の一角の食事処で冷たい空気が流れていた。冷気の発生地点であるテーブルに座っているのは、当然ながらハジメ達である。
ハジメとユエが情報収集に戻ってきてから、優花とティオ以外の女性陣のハジメに向ける視線が冷たいのだ。
特にシアと何故か雫の瞳はハイライトが消えたような無機質さがあり、正直、ハジメをして恐怖を感じながら「何故、八重樫もあんな目をするのか」と疑問に感じていた。
「随分とお楽しみだったみたいですね?」
「へぇ……南雲君ってそういう人だったんだ。それに、ユエさんとイチャコラした後は今度は優花とですか〜。良いご身分ですね〜」
二人の抑場のない声音に、遂に耐えれなくなったのか隣のテーブルの客がそそくさと出て行ってしまった。龍太郎と光輝がさりげなく一緒に出て行こうとしたが、鈴が「逃がさないよ!」と簡易の結界を神速レベルで発動したため、二人は「イエス、スズ」と呟いてしまうほど鈴の気迫に圧倒されながら大人しく席に腰を落とした。
アレスはこの光景を静観して表では表情を変えずにいるが、内心笑いを堪えるのに必死になっており、笑いを堪えてるためか微妙に体が小刻みに揺れていた。
ティオは「仕方ないご主人様じゃのぅ」と困ったように笑みを浮かべながら、こんな冷たい空気に男二人などが逃げ出したくなる気持ちが分かかり光輝達に可哀想な子供を見るような眼差しで見ていた。
尚、こうなった原因は、戻って来たユエがやけにツヤツヤしていて、ハジメが微妙にやつれた様子で、そのまま優花に膝枕してもらっているからだった。
膝枕をしてる優花はハジメがやつれてる原因がなんなのか知ってるが、面白いからという理由で黙っており、「ふふ」と笑みを零しながら自分の膝に頭を乗せるハジメを髪を撫でていた。
しかし、冷たい視線を送る二人はハジメがやつれてる理由を知らず勘違いしてている。
つまり、『情報収集に出かけておきながら、二人っきりをいいことに何してやがんだ! それに、帰ってきた途端に別の女に膝枕して貰って良いご身分だな!』と怒気を撒き散らしているのである。
「……何を勘違いしているんだ。ユエがツヤツヤしてんのは俺の血を吸ったからだぞ?」
「「へ?」」
シア達の勘違いを察したハジメは優花の膝枕で癒されながら呆れた様子で事実を伝える。それを聞いたシアと雫が揃って間抜けな顔になった。
「まさか、本当にユエを抱いたと思ってんのか? 俺は盛りついた犬か?随分な評価じゃないか? えぇ? それに、優花を差し置いてそんな事を俺もユエもすると思うか?」
「あは、あははははは、まさかぁ〜。私は分かっていましたよ。そうだろうなぁ〜って。ね、ねぇ、雫さん」
「え、えぇ、そうよね。南雲君には優花がいるしね……ってもしかして、優花はわかってたの?」
「勿論よ。再生魔法は魔力消費が激しいからね。最初からそう思ってたわ」
ハジメのジト目付きの嫌味に二人は明後日の方向へ目を泳がせながら弁明するシアと雫。
そして、ハジメは事実を分かって起きながら黙っていた優花に不満げな眼差しを向けながら質問を投げる。
「なぁ、優花……事実がわかってたのに、何故、勘違い共に説明しなかった?」
「……面白そうだったから?」
「そんな理由でかよっ!……でも、可愛いから許すっ」
質問の回答をテヘッとした表情で舌をチロッと出す優花を見たハジメは可愛すぎるが故に許してしまった。流石はバカップルだ。
因みに、優花以外にティオもアレスも分かっていたが優花と同じで面白いことになりそうだからという理由で黙っていたのである。
「はぁ、まぁいい。欲しい情報は手に入れた。今晩、カム達がいる可能性の高い場所に侵入する。警備は厳重そうだが、まぁ問題無いだろう。潜入するのは俺とユエとシア、アレスの四人だけだ。万が一に備えて、気配遮断や転移が使える方が良いし。優花達は帝都の外にいるパル達のところにいてくれ。直接転移するから」
「それは、分かったけど……そもそも、その情報は正しいの? ネディルっていう人が嘘を言っている可能性は……」
雫はもっともな懸念を口にするがハジメが頭を振って否定した。
「そりぁないだろ。自分の股間が目の前ですり潰された挙句、痛みで気を失う前に再生させて、また潰されて……というのを何度も繰り返したからな。男に耐えられるもんじゃねぇ。……洗いざらい吐かせれた後、股間を押さえながら、ホロホロと涙を流すネディルを見て 、流石の俺でも同情しちまった」
お前がやったんだろ!と光輝達は盛大にツッコミを入れたかったが、目の前でわざとらしく沈痛そうな表情を見せているハジメには、何を言っても流されるだけであろと溜息を吐くだけに止まった。
優花は女として駄目なことを手伝わされたユエに心配するが、ユエは「大丈ブイ」と、手でVサインをしている姿とユエの意図を察し、微笑みながらユエの頭を撫でる。
同時に、男の股間を何度もすり潰しておいて特になんとも思っていなそうなユエを見て、光輝と龍太郎は戦慄しながらユエにだけは逆らわないでおこうと固く誓うのだった。若干、テーブルの下で内股になりながら。
「ハジメ殿、少し宜しいですか?」
「ん、どうしたアレス?」
ネディルの話をした後、静観していたアレスが唐突に話し掛けてきて、ハジメはどうしたんだと思いながら首を傾げる。
「いえ、ハジメ殿。今晩、少し調べ事をしたいので単独行動させて貰えませんか?」
「なっ、それは駄目に決まっ──「ん、良いぞ?」──南雲?!」
アレスの申し出を簡単に許可するハジメに光輝は自分は勝手な行動は許されてないのにアレスは良いのかと内心、苛立ちが増していく。
「どうして、俺は駄目でアレスさんは良いんだ?!」
「は? 簡単なことだろ?アレスはお前よりも強いし、帝国の事も俺達より理解している。それに、単独行動の理由には俺も察しがついるているからな」
ハジメに嫌味も含めた質問を平然と返され、光輝はぐうの音も出ず黙ってしまう。それを見たハジメは溜息を一つ吐きながらアレスを見やる。
「しかし、アレス。一人でも大丈夫か?」
「はい、大丈夫ですよ。では、集合場所で落ち合いましょう。シア殿もお父様の無事を願ってます」
「はいっ、ありがとうございます!」
アレスはハジメに心配無いと言ってからシアに一声掛けた後に空間魔法を使って、転移していった。
「……なぁ、南雲。今更だと思うが、シアさんの家族が帝城に捕まっているんなら、普通に返しってくれって頼めばいいんじゃないか?今ならリリィもいる筈だし、俺は勇者だし……話せばなんとかなると思うんだが……」
黙っていた光輝が本当に今更なことを言う。確かに、光輝の言通り、勇者である光輝の言葉であればそうそう無下にはできないし、頼めばリリアーナも口添えをしてくれるだろう。ハジメ自身が力を示して強引な交渉をすることも可能だ。
だが……
「対価に何が払うんだ?」
「え?」
「はぁ……(分かってないのかよ……)」
ハジメは光輝の理解の無さに溜息を吐いてしまうが仕方なく説明していく。
「考えてみろよ。カム達は不法侵入の上に、帝国兵を殺したんだぞ?しかも、兎人族でありながら帝国兵とまともにやり合えるという異質な存在だ。加えて〝神の使徒〟って立場でも、もう無理は通せねぇ。皇帝の野郎はリリィから真実を聞いてるだろうからな。この状況で、まさか頼んだからって無償で引き渡して貰えると思ってたのか?」
「それは……」
「対価を要求するに決まってるさ。それも思いっきり足下を見た、ドでかい対価をな。帝国にだって面子がある。ただで済ますことなんてないだろう。それに、リリィの交渉にも影響が出るかも知れんだろ。ちと、頭で考えれば分かることだろ?」
ハジメの説明の通り、考えてみればそうなる可能性は確かにあると、口を噤んでしまう光輝。
勿論、ハジメはリリィの交渉の影響を気にしており、もし対価を要求されたら、喜んで弾丸とミサイルを万単位で相手の頭に
つまり、最初から物理で話をする可能性が高いなら、リリィには申し訳ないが、顔を突き合わせるよりさっさと奪い返した方が断然面倒ではないと判断している。
「対価はともかく、リリィに迷惑を掛けたくない」
「だろ? それが、分かったんなら集合場所で大人しくしていろ」
「……でも」
光輝としては、せっかく着いてきたのだから自分も何かしたいのだろう。先程の亜人奴隷のこともあったせいで、じっとしていられないようで何かを考え込み始めている。
それを見たハジメはひじょ〜に嫌な予感がし、チラリと雫を見る。雫もハジメに視線を向けると小さく頭を降振った。どうやら、やはり暴走の兆候が出ているらしい。
(まさか、俺達が帝城に侵入した際に〝余計なお世話〟をするんじゃないよな……)
ハジメは作戦に支障が出ると考え先手を打つことにした。
「なぁ、天之河。一つお前に頼みがあるんだが……」
「ッ?! なん……だって? 南雲が俺に頼み? 有り得ない」
ハジメからの突然の頼みという言葉に光輝は愕然とした表情で硬直する。それは、隣にいる龍太郎や鈴と同じだった。まるで〝UMA〟と街中でバッタリと遭遇してしまったような顔だ。
それくらいハジメからの〝頼み〟というものは、今までの言動からして有り得なかったのだろう。
しかし、その反応もハジメは予想はしていたので、少しだけイラッとするものの、表情には出さずに続ける。
「しかし、これはただの〝頼み〟だ。嫌なら、引き受けなくてもいい。それを決めるのは天之河自身だしな」
「ま、待てっ、待ってくれ! まず、何をして欲しいのか教えてくれっ」
さも悪いことを言ったようなハジメに、寧ろ光輝の方が食いついた。
よしっ、食いついた!とハジメは此処にいる全員にバレないようにコッソリと悪い笑みを浮かべるも、すぐに表情を直して光輝に説明する。
「いやな、帝城に侵入するといっても警備はとても厳重だ。だから少しでも成功率を上げるために陽動役をやって欲しいんだよ。……例えば、さっきの亜人を助けるという建前でひと暴れして帝国兵共を引き付ける……とかな。しかし、これは単なる〝頼み〟だしな。忘れてくれ」
勿論、警備は厳重だと思われるがハジメ達が侵入できない訳が無い。陽動役も、あれば全く役に立たないわけではないだろうが、特に必要でもない。単に光輝という男をを上手く誘導するには、これぐらいの理由が必要と判断したまでだった。
そう光輝が「俺達も手伝うぞ!」とか言って帝城に潜入してこない為の楔を打ち付けるため………
「陽動……やる。やるぞ! 南雲! 陽動は任せてくれ!」
「お、おう……それは助かる。ありがとな天之河」
(しかし、ここまで引っかかってくるとは思ってもなかったが上々だな)
「「………」」
しかし、察しの良い雫さんとハジメのことなら色々と分かる優花さんにはお見通しらしく、雫はジト目で優花はしょうがない人を見るような目をハジメに向けていた。
雫に関しては、幼なじみが軽く誘導されたことか、それとも、必然的に自分も巻き込まれたことに対してか。
ハジメは二人の視線に気付きながらも、気付かない振りをして、〝宝物庫〟を光らせる。
「よし、そうとなれば、協力の対価を渡さないとな。正義感溢れる素敵な勇者チームには、これを贈呈しておこう」
そう言ってハジメは〝宝物庫〟から鉱石をいくつか取り出すとパパッと錬成して四つの仮面を作り出す。
その仮面はホントに鉱石で作らているのかと思うぐらいの出来で、それぞれライオン、ゴリラ、猿、狐に分かれており、お祭りの屋台で見るような動物型のフェイスタイプだった。その仮面は細かな意匠が施され、視界や呼吸を遮らないように工夫もなされている。まさに無駄に洗練された業である。
「……南雲……これは?」
「見ての通り、動物の仮面だ」
「……………なぜ?」
「なぜってお前、〝神の使徒〟であって代表格の勇者が脈絡もなく帝都で暴れると不味いだろ?正体は隠さないと。そして、正体を隠すといえば仮面だ。それに動物の仮面なら亜人達を守る象徴的なモンになれるだろ。安心しろ。ちゃんと区別をしてるから」
「え? いや、いきなりそんな力説を言われても……まぁ、確かに正体を隠していた方がいいというのは分かる。リリィの迷惑にもなるだろうし……でも、これは……」
光輝が頬を引き攣らせながら目の前の無駄に精巧な動物マスクを見る。
「………心配するな勇者(笑)。お前には、ちゃんとしたリーダーで正義感の溢れる動物の〝ライオン〟をくれてやる」
「……なぁ、今、勇者の後に何か付けなかったか?」
「坂上、お前は〝ゴリラ〟だ。ホントは〝クマ〟でも良かったがパワフルで脳筋のお前ならゴリラだと判断した。我ながら良い英断だと思う」
「お、おう。バカにされたような気がするが、くれるんなら貰っとくぜ」
「そして、谷口。お前は………」
「ま、まさか……南雲くん。嘘だよね」
「猿だ。元気ハツラツでお調子者の〝猿〟だ。」
「………ねぇ、南雲くんって、もしかして鈴のこと嫌いなの?」
「そして最後、八重樫は……」
「待ちなさい、南雲君。もう一つしか残っていないのだけど……まさかよね?」
「八重樫、もちろん、残っている〝キツネ〟それがお前の仮面だ」
「嫌よっ!何でキツネなのかしら卑屈って理由かしら?何、それともずる賢いと私に対して思っているから? それに、南雲君。絶対にあなた、確実にふざけてるでしょ!」
雫の抗議に、ハジメはやれやれと肩を竦める。まるで聞き分けのない子供に対するような態度に雫の頬がピクピクと引き攣る。
「いいか? 正体を確実に!だ。その仮面はちゃんと留め金が付いていて、ちょっとやそっとで外れない上に、衝撃緩和もしてくれる。更に重さを感じさせないほど軽く、並の剣撃じゃ傷一つ付かない耐久性も併せ持ってるんだ」
「あ、あの一瞬でそこまでのモノを……なんて無駄に高い技術力……」
「そして、八重樫。何故キツネした理由はな、お前はクールビューティで、キツネと言えば騙すとかズル賢いイメージだが、逆に言えば頭の回転が早く機転が効く性格とも言える。合ってるだろお前に。それに八重樫、お前可愛いモノが好きだろ?」
「な?! 何を言ってるの!……私はべ、別に可愛いモノなんて……」
「え? だってお前。王都にいた際にネコと戯れ……「それ以上ぉ、言うなぁぁ!!」……うぉっ、危ねっ?!」
ハジメの言葉にビクリ、と反応した雫は言葉が動揺で口が良く回らなくなる。だが、ハジメの追撃は終わらず、まさか自分の恥ずかしい所を見られたのを知り、更にその話しをするハジメに黒刀を持って斬りかかって強制的に中断させた。
「おい、八重樫……危ねぇじゃねえか」
「……っ、南雲君が悪いのよ!」
余りの恥ずかしさで顔を赤くする雫は黒刀をハジメに構えながらキッと睨む。が、勇者な幼なじみ達からも不意の追撃が入る。
「……そういえば、昔から動物が好きだったよな。特にウサギやネコとか………小さくて可愛い感じの」
「?!」
「ああ、シズシズの携帯の待ち受けもウサちゃんだったよねぇ〜」
「?!」
「ゲーセンも寄ったりすると、必ずUFOキャッチャーやるよな。しかも、やたらうめぇし」
「?!」
「なるほど。それで雫さん、私のウサ耳をいつもチラ見してたんですね?」
「!!!」
「あら、雫にそんな可愛い趣味持ってたんだぁ〜」
「……ッ!!」
「………八重樫。さぁ、受け取れ。〝キツネ〟は……お前のモノだ」
いつになく優しげな眼差しで〝キツネ〟の仮面をそっと差し出すハジメ。
何故か、ハジメ以外の全員も、妙に優しい眼差しで贈呈式を見守っている。
いつの間にか、〝仮面を受け取らない〟という選択肢がなくなっていることに誰も気付かない。
「………なんなのよ、この空気……。言っておくけど、私、ホントに可愛い動物に目がないってことはないからね?仕方なく受け取っておくけど、喜んでないから勘違いしないでよ? あと、小動物が嫌いな人なんてそうはいないでしょ? だから、私が特別、そういうのが好きなわけじゃいから……だから、その優しげな眼差しを向けるのをやめてちょうだい!」
耳までも赤くしながら、雫は律儀に仮面を受け取った。羞恥心から必死に否定するものの、シアと優花がコッソリ、
「雫さんなら少しくらいウサ耳を触ってもいいですよ?ほら、今、絶賛にウサ耳を触る優花さんみたいに」
「ほら、雫もどう?シアのウサ耳モフモフよ」
と言うと、デレっと相好が崩してしまったので、雫の頑張りの意地は虚しい努力で終わった。
因みに、ハジメがここまで動物の仮面を推したのは、単なるお巫山戯半分と八つ当たり半分である。
帝都に動物仮面組が現れてひと暴れすれば、亜人族が付けた〝樹海の英雄〟みたいに同レベルの二つ名が雫達に付けられないかと目論んでいた。
実は、パル達やアルテナとの会話の際に、コッソリ後ろで雫達が失笑していたのをハジメは気付いていたらしい。
もっとも、正体が隠されているので直接呼びかけられるわけではなく、人知れず耳にして悶えるのが関の山だが……
光輝達のコントロールするついでに、セコい仕返しを目論んでいるハジメの意図を察して、ユエとシアのウサ耳を雫と共にモフモフしてる優花が若干呆れたような眼差しを向けていた……。
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ある帝都の路地裏に白ローブを着た男が地面に手をつけるなどをして何かを調べたりしていた。
「この魔力の流れ……やはり」
そう白ローブと言えば、そう我らのアレスである。
アレスは、ハジメとユエがネディルの所へ向かってる際に街中から行方不明者が多く出る場所を割り出し、ハジメに無理言って、単独行動を許して貰ってその場所の路地裏へと転移してから、色々な場所へと赴きその場に残留する魔力を調べ続けていた。
「やはり、コロシアムにあった魔力と他の大型の魔物が出没した場所の魔力が違う。それに、此処で感じる魔力はコロシアムと似ている……それに」
アレスはコロシアムとこの路地裏で感じていた魔力には覚えがあった。
それは………
「樹海に侵略していた〝狂化〟帝国兵とも似ている」
(ならば、ここ最近の行方不明と樹海の襲撃の際に指揮をしたバイアスには確実に繋がりがある……)
アレスは帝都にくる前にハジメと共に樹海で埋葬されてる〝狂化〟帝国兵の死体を調べていた。
「すると、バイアスは黒ですね。しかし、あのバイアスがここまでの事をするのか……」
アレスは昔、バイアスと会っている。彼と出会った時に感じた第一印象は嫉妬の視線を向けられていたのを思い出す。その瞳からは自分に対する、力の差、同年代での自分との評価の違い、それがバイアスにとって許せなかったのだろう。そんな目をアレスは向けられていた。そして、その件からは会った際はいつも睨んでくるバイアスは少し苦手としていた。
しかし、アレスはそれなりにもバイアスのことは知っている。だからこそ、アレスは疑問に感じていた。
「……だが、バイアスに、ここまでの力は無かった筈だ」
(情報収集の旅をしてる際にも、帝国の情報は耳にしていた。しかし、バイアスが此処までの力を持っていたとことは聞いてない……だとすると、ここ最近に何かがあった?……まさかっ!)
アレスはある考えに辿り着いた。目を見開き自然と零れるように呟く。
「まさか……バイアスは、既に神の傀儡に…『ほぉ、其処までの考えに至ったか面白い。流石は〝使徒殺し〟』……ッ?!」
その考えに辿り着いた瞬間、アレスでも体の芯から振るえる程の寒気を感じ、すぐさま〝宝物庫〟から聖槍ロンギヌスを取り出す。
嫌な汗を流しながらも、気を保とうと真剣な表情で聖槍を構える。
「……誰だ!」
『そんなに、殺気を出すな……しかし、今はバレては面白くないのぅ。貴様には儂の余興を邪魔されたくないからの、少しの間、大人しくして貰おうか』
「……っ、何を……」
相手の魔力を辿っていき、アレスは空を見上げる。そして、正体を見て固まってしまう。
そして、感じ取る。己の本能が告げている。体が……頭が既に答えを出している。
あれは、、、
目の前にいる存在は………〝神〟だと。
「……まさか、使徒ではなく神自らこの件の黒幕でしたか……ならっ、貴様を今っ、ここで屠るまで!」
アレスは空間魔法を駆使して空へとゲートを開き、神の目前へと最短で転移する。そして、初っ端から聖槍の力を最大限で発揮させる。
「聖槍──抜錨!」
アレスの言葉と共に〝ロンギヌス〟に魔力が集約していき太陽の如き光が大きな光の槍と成す。
「〝ロンギヌス・ゼッ……『おっと、此処でそんな魔力の塊を撃たれては帝都が騒ぎになってしまうだろ?』…なっ!」
神はアレスが自分に聖槍を突きつけるより先に、アレスに接近していた。
そして……
『〝魔喰竜〟』
「っ?! 魔力がっ」
魔法と思わしきその一言で神の傍に黒い中規模ぐらいの〝竜〟が眼前に現れ〝ロンギヌス〟の魔力を喰らった。その瞬間、〝ロンギヌス〟から魔力が失いアレスから驚愕の声が漏れる。?!
「っ……貴様はまさかっ!」
(そうか、神の一柱は………クソっ此処はハジメ殿に、
アレスは敵対する神の姿を見て、その正体に目を見開くも、すぐに撤退するべきだと脳内が告げている。即座に逃げようと空間魔法を使うしたが、
『……逃がさんと言っとろう。〝獄竜門縛〟』
再び、聞いたこともない魔法が発動すると共に、巨大な竜の頭部が現れると、アレスを飲み込んでしまう。アレスは飲み込まれても空間魔法を使うが遮断されてしまう。
「クっソ……」
アレスは悪態をつくも意味もなく、そして目の前が真っ暗になっていった。
『かの〝使徒殺し〟は儂の竜達を殺し切れるかどうか楽しみだな……ガハハっ!』
神はそう言いながらアレスが飲み込まれたのだろう。立方体の箱を路地裏へと投げ捨て、飛び去っていった。
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ずっと真っ暗なままだと思っていたがすぐに視界が明るくなるのが分かり、アレスは閉じた目を開く。
「此処は………」
目を覚ましたアレスはすぐに辺りを見回して察した。
「空間系魔法の遮断……いえ、条件付きの結界での隔離ですか。……そして、見る限り此処へ出るには、この竜達を全て倒せということですかね……」
アレスが振り向くと目の前には、数は千は優に越えているだろう。多種多彩な竜達がおり、竜達は全てアレスを一点と見つめていた。その目から感じるのはアレスは捕食対象でしか見られてないと分かる。
「……ハジメ殿、皆さん……少し待っててください。必ず戻りますから……」
アレスはそう言い終えると、ロンギヌスを片手で構えながら、自分を睥睨する竜の群れへと突貫する。
「うおおおぉぉぉぉお!」
そう早くハジメ達との合流を果たすために、この情報を早く伝えるために………。
作品名を変えた方が良い?
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そのままで
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変えた方が良い