ありふれた職業で世界最強if優花   作:白San

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九十一話 貴方は私の……

 

光輝達と別れた後、リリアーナもパーティーの準備の続きをするために部屋に戻っていた。ヘリーナを筆頭に、帝国側の侍女達を交えてドレスの選別などに精を出す。

 

「まぁ、素敵ですわ、リリアーナ様!」

 

「本当に……まるで、花の妖精のようです」

 

「きっと、殿下もお喜びにやりますわ!」

 

帝国側の侍女達がこぞって称賛の言葉を並べた。それは、決してお世辞だけではない、純粋な称賛であることは、彼女達のうっとりした表情が証明している。

 

十四歳という、少女と女の狭間にある絶妙な魅力が、淡い桃色のドレスと相まって最大限に引き立てられていた。まさに花の精と表現すべき可憐さだ。

 

「ふっ、当然でしょう」

 

「ヘリーナ、どうして貴女が胸を張っているのですか」

 

何故かドヤ顔のヘリーナに小さく笑ってから、リリアーナ自身も自分のドレス姿に納得したようで一つ頷くと、帝国側の侍女が嬉しそうに声を上げた。

 

「やはり、リリアーナ様はお美しいですわっ。流石、アレス様の血縁関係ですね!」

 

「えっ……あーー。はい」

 

「ちょっ!貴女それはっ」

 

「え? あっ! も、申し訳ありませんっ」

 

「リリアーナ様、私からも申し訳ございません。この子、アレス様信者で、アレス様に関係することは妙に反応するんです。王国では名前すら禁句ですのに……」

 

「アハハ、大丈夫ですよ。気にしないでください」

 

リリアーナは、謝る帝国側の侍女達を宥めながら、アレスの人気さが劣ってないことに苦笑いだった。

 

「(でも、この婚約を兄様はどう思うのかしら……)」

 

「(シスコン(アレス)のことですし、こんな婚約パーティーなんなぶち壊しそうですね。確実に……ま、私もそれに乗っかりますけど)」

 

リリアーナはアレスはこの政略結婚はどう反応するのか口にはしてないが、考えていた。そして、侍女達とリリアーナの会話を聞いていたヘリーナはアレスはこんなパーティーには猛烈に反対するだろうなぁ。リリアーナの髪を整えながら考えていた。

 

「でも、綺麗……」

 

リリアーナは改めて、自分のドレスを見て思った。

 

いくらこれが政略結婚であり、皇太子が父親に似た極度の女好きで、自分を見る目が恐ろしく、王国に来た下級騎士を〝稽古〟と称して悪戯に嬲るなど、自分が兄と呼ぶアレスのことを毛嫌いしており、自分の強さをひけらかす嫌な人間であってとしても、夫になることに変わりない。ガハルドの話だと、性格は軟化したと聞いてはいるが、リリアーナは全く信用していない。

 

でも、パートナーとして恥をかかせるわけにはいかないし、自分の婚約パーティーである以上、リリアーナも最大限に着飾ろうと思っていた。

 

光輝に指摘された〝好きな人と結婚したくないのか〟という言葉がやけに頭にチラつくのを振り切るるように。それでも、チラリチラリと〝憧れ〟が、そして、彼の『俺はいつまでも、リリィの味方さ』という言葉が脳裏に過ぎるのは、どれだけ表面上には出さずとも、この結婚に対する消しきれない不安のせいか。

 

「そんな、御伽噺なこと──」

 

そして、不安が相まってか、脳裏に幼い頃、ヘリーナが話してくれた自分の好きな物語が過ぎった。それは、絶対絶命の姫を、颯爽と現れて救う英雄のお伽噺。偶然の出会いに惹かれあって、身分違いでありながらも多くの障害を乗り越えて結ばれるというラブストーリー。

 

───馬鹿馬鹿しい。有り得ない(ミライ)だ。

 

そんな御伽噺を頭を振って頭から追い出す。

 

リリアーナは〝王国の才女〟と呼ばれる程の聡明であるが故に、幼い頃から自分に課せられた使命とも言うべき在り方を受け入れていた。だから、心の底では嫌悪感を抱く相手であっても、立派な妻となろうという気持ちは本当であり、今夜のパーティーも立派に皇太子妃として務め上げようと決意していた。

 

「(王女なのに、私は王女なのに……なんでっ)」

 

なのに、こんな御伽噺で気持ちを左右されるなど、王女としてあってはならない。叱咤するように、自分を言い聞かせていくと、その時、突然、部屋の外が騒がしくなった。かと思った次の瞬間には、ノックもなしに扉が開け放たれ、大柄な男が遠慮の欠片もなくズカズカと部屋の中に入ってきた。リリアーナに付いてきた近衛騎士達が焦った表情で制止するが、その男は意に介した様子もない。

 

「ほぅ、今夜のドレスか……まぁまぁだな」

 

「……バイアス様。いきなり淑女の部屋に押し入るというのは感心致しませんわ。貴方様のそういうところは変わったとガハルド陛下から聞いてましたが……」

 

「あん? あ、あー……そうだな。スマナイな俺としてもお前と婚約が嬉しくてな。でもな、未来の皇帝──夫になる男に、何を口答えしてんだ?」

 

注意をして、やっぱりガハルドの話は信用ならないと思っているリリアーナに、最初は穏やかな口調だったが、段々と粗野かつ横暴な言葉で返した者こそ、この国の皇太子バイアス・D・ヘルシャーだった。外見は父親であるガハルドに似ている。年齢は二十五歳。

 

王族同士の付き合いで一年程前にも顔を合わせているが、アレスが追放されてからは、相も変わらず、度の過ぎた横暴振りだ。改善されてると思っていた、他者を見下した態度も、嗜虐的な雰囲気も、リリアーナをまるで玩具を見るような目で見てくるところも、まるで変わっていなかった。

 

昔は、アレスがリリアーナを守っていたからであろう。昔はこんな事はなかったが、追放されてからは上から下までを舐めるように見てくるようになった目に、リリアーナは悪寒を感じてぶるりと震えた。

 

「おい、お前ら全員出ていけ」

 

バイアスは、突然、口を少し手で覆ってからニチャアと口元を歪めると、侍女や近衛騎士達にそう命令した。帝国側の侍女達は慌てて部屋を出ていったが、当然、近衛騎士達は渋る。ヘリーナなどはリリアーナを守るように前に立ち、露骨に不審と憤りを瞳に浮かべている。

 

それを見てバイアスの目が剣呑に細められたことに気が付いたリリアーナは、何をするか分からないと慌ててヘリーナ達を下がらせた。

 

「何かありましたら、必ず大声をお上げ下さい」

 

去り際にヘリーナが小さい声で耳打ちする。リリアーナも小さく頷く。最後まで心配そうにしながら全員が部屋を出て扉が閉まる。そして、扉が閉まる直前にヘリーナは祈るように自分の両手を握りしめ「アレス……リリアーナ様を助けて」と小さく呟きながら願った。

 

「ふん。飼い犬の躾ぐらい、しっかりやっておけ」

 

「………飼い犬ではありません。大切な臣下ですわ」

 

「本当に相変わらず反抗的だな?ククッ、あの野郎が居なくなった時も、まだ十にも届かないガキの分際の癖に、いっちょ前に俺を睨んだだけのことはある。いつか俺のものにして、あの野郎に見せつけてやろうと思っていたんだ。そして、俺は言うんだアレスの野郎に〝俺が上だ〟ってなぁ!」

 

そういうと、バイアスは顔を強ばらせつつも真っ直ぐに自分を見るリリアーナに心底楽しげで嫌らしい笑みを向けた。すると、リリアーナも睨み返しながら煽るように笑みを浮かべ口を開いた。

 

「そんな幼稚な思考回路だから、貴方はずっと兄様に勝てないんです」

 

「あ?」

 

「もう一度言いましょうか? 兄様の実力は貴方なんかより遙かに上です。だけど、兄様はずっと努力を惜しまなかった。幼い私は何でそんなに努力をしているか分かりませんでした。……でも、今なら分かります。兄様の努力は全て私達をっ、この世界を守るための努力だって。そして、そんな兄様を妬んだり、努力もせずに姑息な手しか使えない貴方なんかに、兄様は……アレス兄様は絶対に負けないっ! 勝つことなんて一生ありえません!」

 

静かな怒りから、フツフツと不満と怒りが込み上げてきたのかリリアーナを最終的に声を上げてバイアスを否定した。すると、無表情だったバイアスがいきなり彼女の胸を鷲掴みにした。

 

「っ?! いやぁ! 痛っ!」

 

「……随分と言ってくれるじゃねぇか? ああ?! 久しぶりだぜ、こんなにボロクソ言われたのはなぁっ。………しかし、まあ度胸も育っているが此処もそこそこ育っているじゃねぇか。まだ、足りねぇが、それなりに美味そうだ」

 

「は、離しっ」

 

乱暴にされてリリアーナの表情が苦痛に歪む。その表情を見て、ますます興奮したように笑うバイアスは、そのままリリアーナを床に押し倒した。リリアーナが悲鳴を上げるが、外の騎士達は何故か反応しない。

 

「いくらでも泣き叫んで良いぞ? この部屋は特殊な仕掛けがしてあるから、外には一切、音が漏れない。まぁ、仮に飼い犬共が入ってきても、皇太子で次期皇帝である俺に何ができるわけもないからな。なんなら、お前の処女を散らすところを奴等に見てもらうか? くはははっ」

 

「やっぱり……貴方っていう人はっ」

 

リリアーナが、これからされることに顔を青ざめさせながら気丈にバイアスを睨む。

 

「その透き通った眼だ。その美しい金の髪だ。アレスの野郎に似て、美しいお前を滅茶苦茶にしたい。そして、その反抗的な眼を、苦痛に、絶望に、快楽に染め上げてやりたいのさっ」

 

長年へのアレスへの妬み、羨望、恨みによってかバイアスは、〝醜い〟と表現すべき表情を浮かべて語る。

 

「俺はな、自分に楯突く奴をっ、自分より出来る奴を嬲って屈服させるのが何より好きなんだ。必死に足掻いていた奴等が、結局何もできなかったと頭を垂れて跪く姿を見ること以上に気持ち良いことなどない。この快感が俺のアレスに対する怒りを妬みを忘れさせてくれる。そして、一度でも味わえば、もう病みつきになっちまう。リリアーナ。初めて会ったとき、あのアレスが何よりも大切にしていた時から、品定めする俺を気丈に睨み返してきた時から、いつか滅茶苦茶にしてやりたいと思っていたんだ」

 

「っ……」

 

「なぁ、リリアーナ。今夜、俺は最強の力を手に入る。この世界を支配できる力が俺の手元に来るんだぜ。そしたら、俺はアレスなんて雑魚しか見えなくなるだろうな……クックック」

 

「それは、どういっ……痛ッ!」

 

バイアスの言葉の意味が分からず、リリアーナが話しかけようとするが、再び、胸を鷲掴んだ。

 

「それにリリアーナ。俺はもう一つ楽しみにしてることがあるんだ。それはな結婚どころか、婚約パーティーの前に純潔を散らしたお前は、どんな顔でパーティーに出るんだ? あぁ、楽しみで仕方がねぇ!」

 

たとえ、嫌悪感さえ抱く相手だとしても、妻として支え諌めていけば、いつかきっと立派な皇帝になってくれる、いや、自分がそうしてみせると決意してたリリアーナの心に早くも亀裂が入る。

 

リリアーナは悟ったのだ。目の前の、今も零れ落ちそうな涙を必死に堪える自分を見て嗤っている男は、ある意味、正しく、〝帝国皇太子〟なのだと。アレスに対して、強い嫉妬は抱いているが、それ以外は欲しいものは奪う。弱者は強者に従え! その理念の申し子なのだ。

 

バイアスの恥をかかすまいと選んだドレスが彼の手により引きちぎられる。シミ一つない玉の肌が晒され、リリアーナは羞恥で顔を真っ赤にした。

 

唇を奪うつもりなのか、バイアスの顔がゆっくり近づいてくる。まるで、リリアーナの恐怖心でも煽るかのように目は見開かれたままだ。片手で顎を掴まれ、顔を逸らすこともできないリリアーナは、恐怖と羞恥で遂に流れ落ちた涙にすら気づかずに、ふと思った。

 

望んだ通りの結婚なんて有り得ないと覚悟していたけれど、こんなのはあんまりだと。

 

───本当は、好きな人に身も心も捧げて幸せになりたかったと。

 

それは、王女という鎧で覆った心から僅かに漏れ出たただの女の子の気待ち。

 

そうして、雫から聞いた話を思い出す。

 

ピンチの時に颯爽と現れて、襲い来る理不尽を更なる理不尽で押し潰し、危険な沼から救い上げて貰ったという、まるでお伽噺のような物語。

 

もし願ったなら、自分にも救いも訪れるのだろうか。そして、何故か思い出すあの人との……彼との会話が──今なら分かってしまう。

 

あれは、自分の〝初恋〟だと───。

 

そして、思い浮かべてしまう。彼が自分をこんな窮地から颯爽と助けてくれる姿を───。

 

リリアーナは、王女としての自分が「何を馬鹿な」と嗤う声が聞こえながら、それでも止められず心の中で叫んだ。

 

───ハジメさん、助けてっ

 

その時だった。

 

リリアーナは、迫るバイアスの肩の上に、天井から落ちてきた小さな蜘蛛らしきものがピトッ!と着地するのを目撃した。「えっ?」と目を見開いたリリアーナの眼前で、蜘蛛は脚の一本を振りかぶると、そのままバイアスの首にプスッ!と突き刺した。

 

「いつっ! なんだ? 今、くびにぃ……」

 

突然生じた痛み。バイアスは首を押さえながら、もう僅かでリリアーナの唇に接触するというところで身を引いた。その時には、既に天井に吊るした糸を辿ってスルスルと退避している蜘蛛。リリアーナが、呆然とその光景を見ていると、

 

「なんら、世界が、まわぁってぇ───」

 

バイアスは呂律が回らない様子になり、直後、そのままガクッと意識を失ってリリアーナの上に倒れ込んでしまった。

 

「えっ? えっ?」

 

混乱するリリアーナの前に、再度、蜘蛛が糸を伝ってバイアスの上に降りてくる。バイアスは現在、リリアーナの上に覆いかぶさっている状況なので、彼の肩口に乗る蜘蛛がちょうどリリアーナの眼前に来ている。

 

そこまで間近で凝視して、リリアーナは初めてその蜘蛛の異様さに気が付いた。

 

「……金属の……蜘蛛」

 

そう、バイアスの上に乗っているの蜘蛛は金属でできていたのだ。目を丸くしているリリアーナの前で金属の蜘蛛は「止めだぁ」とでもいうかのように、先程とは違う脚の針を、再度、プスッ!とバイアスの首に突き刺した。

 

意識を失っているにもかかわらずビクンッ!と震えるバイアス。呼吸はしているので、本当の意味で止めを刺したわけではないようだ。

 

リリアーナはハッと我を取り戻すとズリズリと体を動かしてバイアスの下から這い出てた。そして、女の子座りをしたままジッと眼前の蜘蛛を見つめた。

 

金属の蜘蛛は、少しの間、リリアーナに水晶のような光沢のある目を向けると、そのまま糸を巻き上げてスルスルと天井へと上がっていく。

 

「あ、待って、待って下さい! もしかして、貴方は……」

 

リリアーナが慌てて制止の声をかけるが、金属の蜘蛛はお構いなしに上がっていき、八本の脚で天井にしがみつくと、そのままカサカサと外壁の方へ移動していった。

 

そして、僅かに紅い光を放つと、いつの間にか空いていた外に通じる穴を塞ぎながら部屋から出ていってしまった。

 

破れたドレスの前に寄せて肌を隠しながら座り込むリリアーナは、ようやく事態を把握して、心臓の鼓動が早くなるのを感じる、息が荒くなるのを感じる、顔が赤くなっているのが分かる。そして、頭の中に鮮明と彼の姿と自分に言ってくれた言葉が浮かんでくる。

 

───俺はいつまでも、リリィの味方さ

 

思わず微笑みを浮かべた。

 

「ありがとう……王子様(ハジメさん)

 

ポツリと零れた感謝の言葉。リリアーナがバイアスの婚約者である以上、今、助けられたところで、それはその場凌ぎでしかないことは分かっている。だが、それでも、今この時、初恋の人が救いを求める自分の心の叫びに応えてくれたことが、どうしようもなく嬉しかった。

 

「ハジメさん」

 

彼の名を呟きながら、胸元で破れた服を押さえてギュッと握られたリリアーナの両手は、或いは、他の何かを握りしているようだった……。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

ガハルドとの謁見を終えた後、部屋へ案内されたハジメ達。ハジメは部屋のソファーに腰を下ろすと、すぐに瞑目して動かなくなった。時折、水分補給する以外は一切しゃべることもなく微動だにしないハジメに、優花達もまた誰にも話しかけない。

 

ハジメが本格的に集中していることが分かっているからだ。どれくらいそうしていたのか。日が傾き、太陽が燃えるような色に変わり始めた頃。

 

ハジメの目がスっと開いた。

 

それに気が付いた優花が、ちょこんとユエを膝に乗せ隣に座りながら尋ねる。

 

「どうだったの? ハジメ」

 

「ん〜上々だな。途中、ちょっとした面倒事があったが、まぁ、予定の七割が完了したし、それに、見つけたしな(・・・・・・)

 

長く集中していたせいか、少し疲れの滲んだ声音が返ってくる。すかさず、優花がハジメの頭を自分の上に座るユエの太腿に乗せてから魔法で癒しにかかる。

 

「やっぱり、トラップが多かった?」

 

「そうだな。流石は帝城といったところか。だが、全てを解除する必要はない」

 

「ふむ、今夜がパーティーというのは幸いじゃの。人が集まればその分、いろいろと動きやすいじゃろう。しかし、ご主人様。何を見つけたんじゃ?」

 

「帝国の皇太子のバイアスがクソ神供が繋がっている証拠が見つかった。今、カム達の中の別働隊にあるアーティファクトの破壊及び回収を行って貰ってる」

 

「!……ホントなのハジメ」

 

「ああ、少しバイアスの奴の部屋を調べたら案の定クロだった。てか、コイツ相当の馬鹿だ」

 

ハジメがそう答えると雫が反応して焦るように声を上げた。

 

「馬鹿って……南雲君。後、バイアスってリリィの婚約者じゃないっ!! どうするのっ!」

 

「どうするのもなにも、カム達に頑張って貰ってパーティーをぶち壊してもらうだけだ」

 

「ぶち壊すって………」

 

「……でも、上手くいくでしょうか。アレスさんもまだ、帰ってきてませんし、父様達の方だって……」

 

ハジメを労るように肩を揉みつつも、シアが不安そうな表情になる。何せ、これから自分の家族の未来が決まる一世一代の大勝負が始まるのに、そこに神々の干渉があるのかもしれないのだ。緊張しない方がおかしいだろう。

 

そんなシアのウサ耳をハジメがモフり、ユエが頬をムニリ、ティオが髪をナデナデして、優花がシアを軽く抱きしめる。

 

微笑む仲間に、シアは込み上げるものを感じる。しかし、涙は流さない。たとえ、それが嬉し涙でも、まだ流すのは早いからだ。代わりに、いつものようにニッコリと輝く笑みを浮かべた。自分は一人ではない。家族もいる。恵まれすぎなくらいだと、その思いを隠さず顕にした笑顔。

 

────それが、ハジメ達が好むシアの魅力だ。

 

そんなシアの魅力に光輝や龍太郎は言わずもがな、雫や鈴すら見惚れている。いつもの笑顔の確認したハジメは、ニヤリと不敵な笑みを浮かべて告げた。

 

「膳立ては上々。パーティーの準備の時間だ。主役には頑張って貰って、俺達はクソ神狩を開始しようか」

 

その言葉に、ユエ達は不敵に笑って、光輝達は緊張感を漂わせて、力強く頷いた……。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

ハジメ達がパーティーの準備を始まめた頃の同時刻。コロシアム近くの裏路地はもうすぐ夜が近づいてか、暗闇が増していた。そんな中、ビキッ、パキッと何かがヒビ割れていく音が聞こえ始めていく。

 

そして………

 

バキイィィィィィン!!とガラスが壊れた音と同時に、空間がひび割れた同時に人が飛び出した。其の人物は白を基調とした神官服を着たアレスだった。

 

「ハァハァッ………やっと抜け出しました」

 

荒く息を吐くアレスは呼吸を落ち着かせると状況の確認に入る。

 

「此処はコロシアム辺りですかね。それに人気もなさそうな場所で安心です。」

 

結界を破ったのは良いが、アレスは自分の服を見る。服はボロボロに破れ、肩からは大量の血痕がついており、体の至るところには擦り傷、挫傷、火傷など負っている。しかし、アレスは難なく〝再生魔法〟を発動して自身の傷を癒していくのだが、回復速度が非常に遅い。

 

「…………流石に魔力を消費を過ぎましたか」

 

アレスは立ち上がろうとするも、魔力を酷使の代償と連戦の疲労のせいかフラフラとヨロけてしまって上手く立ち上がれず、路地裏の壁にのたれかかった。

 

「ハジメ殿達の居場所は………えっ」

 

アレスは壁にのたれながら、ハジメ達の居場所を確認すると、その居場所に間抜けな声が出てしまった。

 

「なんで、帝城?」

 

ハジメ達が何故、そんな場所にいるのか?とアレスは訳が分からず困惑するのであった……。

 

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