ありふれた職業で世界最強if優花   作:白San

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九十五話 創獣神オルステッド

 

ガハルドは何故、自分がこんな風に倒れ伏しているのか原因は何かと察する。

 

「っ、毒かっ」

 

パーティー会場に、ガハルドの苦悶の伴う声が響いた。誰もが、不敗の象徴たる皇帝陛下の敗北に呆然とする中、ハウリア族の一人が倒れ伏すガハルドにスっと近寄る。そして、視力と聴力を回復させる薬をガハルドに施した。

 

『ふん。魔物用の麻痺毒を散布してここまで()つとはな』

 

「クソがっ、最初からそれが狙いだったか……」

 

衣服に仕込まれた魔法陣やアーティファクトも全て取り除かれ死に体となったガハルドは視力と聴力か回復されたところで推測を肯定されて悪態を吐く。

 

そんなガハルドに、突如、頭上から光が降り注いだ。ハウリア族の装備の一つでフラッシュライトモドキだ。それが、フラッシュライトのようにガハルドを照らす。

 

あらわになった光景を見て、会場の端で激しく動揺する声が一つ。

 

「どどどどどど、どういうことですか?! ここここ、これは?! ハハハハ、ハジメさん!」

 

「いいから、落ち着けよリリィ。今、クライマックスなんだから」

 

襲撃の際、リリアーナは皇太子バイアスの傍らにいたのだが、邪魔にならないようにとリリアーナの被害を避けるために、既に会場の隅で避難していたハジメ達の下へ、ユエが空間魔法を使って回収していた。

 

いきなりゲートに引き摺り込まれたかと思ったら真っ暗となり、騒乱となり、皇帝陛下がぶっ倒れているのである。王女といえど動揺せずにいられない。そして、光輝達が違う意味で動揺していた。光輝は幾人もの帝国貴族達が死んだことに顔を顰めているし、鈴や雫、龍太郎も、青ざめた表情で黙り込んでいた。

 

これが、亜人の境遇を改善する最大のチャンスであり、文字通りハウリア達の運命を左右する一戦であることを理解しているためじっとしているが、やはり目の前で繰り広げられる惨劇をあっさり割り切ることはできないだろう。

 

もっとも、たとえ割り切れなくとも静観する以外に道はない。もし感情に任せて、「これ以上はやり過ぎだ!」等と言いながらカム達の邪魔をしようとものなら……

 

「………」

 

きっちりと光輝を視界に意識を収めているハジメを見れば、結果は言わずもがなだ。それに、変に光輝が介入したりすると、カム達の後に行うハジメの要件に支障が出る可能性あるからだ。

 

『さて、ガハルド・D・ペルシャーよ。今、生かされている理由が分かるな?』

 

「ふん、要求があるんだろ?言ってみろ、聞いてやる」

 

『……減点だ。ガハルド。立場を弁えてもらおうか』

 

姿は見えず、パーティー会場全体に木霊するように響き渡るカムの声は、ガハルドの横柄な態度に、僅かな間の後、無機質な声音で忠告した。そして、その忠告を、ガハルドは部下の命という形で叩き込まれることになった。

 

突如、ガハルドから少し離れた場所にスポットライトが当たる。そこには、ガハルドと同じく手足の腱を切られ、詠唱封じのために口元を裂かれた男の姿があった。その男にスポットライトの外から腕だけ伸びてきて、髪を掴んで膝立ちさせたかと思うと、次の瞬間には、男の首が嘘のようにあっさりと斬り飛ばされた。

 

「てめぇ!」

 

『減点』

 

思わず怒声を上げるガハルド。生き残りが悲鳴を上げ、息を呑む。しかし、返されたのは機械じみた淡々とした声のみ。再び別の場所にスポットライトが降り注ぎ、同じように男の首が刈り取られた。

 

「ベスタぁ! このっ、調子にのっ──」

 

『減点』

 

側近だったのだろうか。ガハルドは男の名を叫び、カムに悪態を吐く。それに対する返答は、やはり淡々とした声音と、首刈りという罰だけだった。

 

「………」

 

ギリギリと歯ぎしりしながらも押し黙り、ガハルドは、それだけで人を殺せそうな眼光で前方の闇を睨む。

 

そんなガハルドにカムは淡々と話しかけた。

 

『そうだ、地を舐めている意味を理解しろ。判断は素早く、言葉は慎重に選べ。今、この会場で生き残っている命は、お前の言動一つにかかっている』

 

その言葉と同時に、いつの間にかスポットライトの外から伸びてきた手が素早くガハルドのネックレスをかけた。細めの鎖と先端に紅い宝石がついたものだ。

 

『それは、〝誓約の首輪〟。ガハルド、貴様が口にした誓約を、命を以て遵守させるアーティファクトだ。一度発動すれば貴様だけでなく貴様に連なる魂を持つ者は生涯身に付けていなければ死ぬ。誓いを違えても、当然、死ぬ』

 

そして、皇帝一族の人間は既に確保しており、ある一人以外は同じアーティファクトが掛けられていると伝えるカム。ガハルドは苦虫を噛み潰したような表情になる。

 

───アーティファクト〝誓約の首輪〟

魂魄魔法により、口にした誓約を魂レベルで遵守させる効果を持つ。具体的には、発動状態で口にした誓約が直接魂魄に刻まれ、誓約を反故にしたり、〝誓約の首輪〟を外したりすれば魂魄自体が強制霧散させられる。

 

また、〝連なる魂を持つ者〟──ガハルドの一族に対しても効果をあり、同じく〝誓約の首輪〟を付けなければ死ぬことになる。要するに皇帝一族に末代まで誓約を守らせるというアーティファクト。(婚姻に対しては別途誓約の首輪が必要になる)

 

「誓約……だと?」

 

『誓約の内容は四つだ。一つ、現亜人奴隷の解放。二つ、樹海への不可侵・不干渉の確約。三つ、亜人族の奴隷化・迫害の禁止。四つ、その法定化と法の遵守。理解したか?できたなら〝ヘルシャーを代表してここに誓う〟と言え。それで発動する』

 

「呑まなければ?」

 

『今日を以て皇室は終わり、帝国が体勢を整えるまで将校の首が飛び続け、その後においても泥沼の暗殺劇が延々と繰り返される。我等ハウリア族が全滅するまで、帝国の夜に安全の二文字はなくなる。帝国の将校達は、帰宅したとき妻子の首に出迎えられることになるだろう』

 

「帝国を舐めるなよ。俺達が死んでも、そう簡単に瓦解などするものか。確実に万軍を率いて樹海へ侵攻し、今度こそフェアベルゲンを滅ぼすだろう。分かっている筈だ。帝国が本気になれば、それが可能だと。今までフェアベルゲンを落とさなかったのは……………」

 

『畑を潰しては収穫ができなくなるから、か?』

 

「分かってるじゃねぇか。今ならまだ間に合う。たとえ〝奴〟の力を借りたのだとしても、この短期間で帝城を落とした手際、そしてさっきの戦闘……やはり貴様等を失うのは惜しい。今なら、俺直属の一部隊として優遇してやるぞ?」

 

『論外。貴様等が今まで亜人にしてきた所業を思えば信じるに値しない。それこそ〝誓約〟をしてもらわねばな』

 

「だったら戦争だな。俺は絶対に誓約などしない」

 

口元を歪めるガハルドに、カムはどこまでも機械的に接する。

 

『そうか……減点だ。──〝デルタ1、こちらアルファ1。やれ〟』

 

突然、ガハルドにとって意味の分からないことを言い出したカム。訝しそうな表情になるガハルドだったが、次の瞬間、腹の底に響くような大爆発の轟音が響き渡り、顔色を変える。

 

「っ、なんだ今のは!」

 

『なに、大したことではない。奴隷の監視用兵舎を爆破しただけだ』

 

「爆破だと? まさか……」

 

『ふむ、中には何人か眠らされたいたか。………少なくとも、数百人単位の兵士が死んだ。ガハルド、お前のせいでな』

 

「貴様のやったことだろうが!」

 

『いいや、お前が殺したのだ、ガハルド。お前の決断が兵士の命を奪ったのだ。そして、〝デルタ1、こちらアルファ1、やれ〟』

 

その言葉にガハルドは咄嗟に制止の声をかける。

 

「おい!ハウリアっ」

 

しかし、返答は二度目の轟音。帝城ではない。帝都の何処かで大爆発が起きた。感情を押し殺した声音でガハルドが尋ねる。

 

「……どこを爆破した?」

 

『治療院だ』

 

「なっ、てめぇ!」

 

『そこは安心しろ。爆破したのは軍の治療院だ。死んだのは兵士と軍医だけ。もっとも、一般人の治療院、宿、娼館、住宅街、魔人族襲撃で家を失った者達の仮説住宅区にも仕掛けてはあるが、リクエストはあるか?』

 

「一般人に手を出してんじゃねぇぞ! 堕ちるとこまで堕ちたかハウリア!」

 

『……貴様は、貴様等は!亜人というだけで女子供をも迫害しただろっ。それで、立場が変わっただけでその言い様か!……〝デルタ、やれ〟』

 

「まてっ!」

 

亜人族を帝国全体で迫害をしておいて、今更関係のない一般人ないだろう?と若干キレ気味の声を出すカム。そして、容赦なく命令を下す。三度起きた爆音に、ガハルドは今度こそ、帝国の民が建物ごと爆破されたと思い込んで歯ぎしりをした。

 

しかし実のところ、爆破されたのは帝城に続く跳ね橋だったりする。帝都で爆破事件が起きれば帝城に報告に来るのは必然なので、唯一の入場ルートを破壊しておいたのである。更に言えば、カムの言葉はバッタリで、軍と関係のない場所に爆弾を仕掛けたりしていない。それは、帝国人とは同じならないという一つの矜恃であり、敬愛するボスであるハジメとの約束(決まり)であるからだ。

 

目的のためだとは言え、関係のない人を殺すなど外道と変わりない。だから、嘘でも、ハッタリでも、詐術でも使って相手を打倒する。それが今のハウリアなのである。

 

『貴様が誓約しないというのなら、仕方あるまい。帝都を吹き飛ばし、貴様等への手向けとしてやろう。数千、あるいは数万人規模の民が死出の旅に付き合うのだ。悪くない最期だろう?』

 

ガハルドは容赦のない要求に、即断できず沈黙している。その頭の中は目まぐるしく状況の打開方法を探っているのだろうが、妙案は一向に出てこない。苦みしばった表情と流れる冷や汗が、追い詰められていることを如実に物語っていた。

 

そして、そんな状態でもカムは全く容赦しない。返答が遅い、と命令を下す。

 

『〝デルタ1、こちらアルファ1 や───〟』

 

「まてっ」

 

ガハルドが慌てて制止の声をかける。そして、苛立ちと悔しさを発散するように頭を数度地面に打ちつけると、吹っ切ったように顔を上げた。

 

「かぁーーっ、ちくしょうが! わーったよっ! 俺の負けだ! 要求を呑む! だから、これ以上、無差別に爆破すんのを止めろ!」

 

『それは重畳。では誓約の言葉を』

 

要求が通ったというのに、やはり淡々と返すカム。ガハルドは苦い表情のまま、しかし、ふっと肩の力を抜くと、会場にいる生き残り達に向かって語りかけた。

 

「お前等、すまんな。今回ばかりはしてやられた。帝国は強さこそが至上。こいつら兎人族は、それを〝帝城を落とす〟ことで示した。民の命も握られている。故に──」

 

生き残り達が、王の言葉を聞いて悔しそうに震えている中、一人の男が怒声を上げる。

 

「おい、親父ぃ! 何言ってんだっ。奴隷達が居なくなったら楽しみが減るじゃねぇか!」

 

その声の人物はガハルドの息子の皇太子バイアスだった。バイアスは憎たらしい視線をガハルドに送りながら言葉を続ける。しかし、ガハルドは平然としながら返答する。

 

「おい、聞いてん──」

 

「……黙れ、バイアス。てめぇも、次の皇帝になるんなら奴隷のことなんかより民のことを考えろ。民あってこその国だ。民がいなければ成り立たない。それを忘れんじゃねぇ」

 

「なっ」

 

ガハルドがそう語りながらバイアスを睨む。バイアスは言い返せなくなったのか歯ぎしりして押し黙る。そして、ガハルドは悔しそうにするバイアスや彼等を目に焼き付けるように見て声を張り上げた。

 

「──ヘルシャーを代表してここに誓う! 全ての亜人奴隷を解放する! ハルッイナ樹海には一切干渉しない! 今、この時より亜人に対する奴隷化と迫害を禁止する! これを破った者には帝国が厳罰に処す! その旨を帝国の新たな法として制定する!」

 

誓約が成されたと同時に首輪に施された宝石が輝きを放つ。そして、ガハルドは最後に、皇帝として宣言をした。

 

「この決断に文句ある奴は、俺の所に来い! 俺に勝てば帝国をくれてやる! 後は好きにしろ!」

 

───亜人族を今まで通りに奴隷にしたければヘルシャーの血を絶やせ!受けて立つ!

 

それは、そういう宣言だった。本当に実力至上主義を体現した男である。

 

『ふむ、正しく発動したようだな』

 

その言葉と共に、会場の一角にスポットライトが降り注いだ。そこにはバイアス以外の皇帝一族が並んでいた。全員が既に〝誓約の首輪〟が身につけられている。

 

『ヘルシャーの血を絶やしたくなければ、誓約は違えないことだ』

 

「分かっている」

 

『明日には誓約の内容を公表し、少なくとも帝都にいる奴隷は明日に全て解放しろ』

 

「明日中だと? 一体、帝都にどれだけの奴隷がいると思って……」

 

『やれ』

 

「クソったれ! やりゃあいいんだろ、やりゃあ!」

 

『解放した奴隷は樹海へと向かわせる。ガハルド。貴様はフェアベルゲンまで同行しろ。そして、長老衆の眼前にて誓約を復唱しろ』

 

「一人でか? 普通に殺されるんじゃねぇのか?」

 

『安心しろ。長老達もそこまで馬鹿ではない。それに我々が無事に送り返す。貴様が死んだら色々と面倒だからな』

 

「はぁ、分かったよ。お前等が脱獄したときから、嫌な予感はしてたんだ。それが、ここまでいいようにやられるとはな、笑っちまう。───なぁ、一つ聞いていいか?」

 

『なんだ?』

 

「何故、バイアスの奴は俺の家族達の所に並べられてないんだ?」

 

その疑問は当然だろう。バイアスはガハルドの息子であって皇太子、しかし、彼には首輪も一族の所にも並べられてないのだ。ガハルドはそう言いながらカムに問う。

 

『それは、貴様の息子は、ある疑惑(・・・・)がある。そのため隔離した。そして、この件からは、ある御方の仕事だ』

 

「ある御方ね……で、その息子の疑惑なんなのかね。なぁ、南雲ハジメ」

 

カムの答えに察したガハルドは盛大な溜息を吐くと、カムが言ったある御方……ハジメの方を睨む。その言葉にハジメは会場の隅からバイアスの方へ歩き出した。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

ハジメは歩きながら会場を全てを照らすようにアーティファクトを発動する。ガハルドや貴族達の怒りと憎しみが含まれた圧のある視線が来るも平然とスルーしている。

 

そして………

 

「……よう。お互い、ちゃんと話すのは初めてだな?」

 

「あ?」

 

バイアスの元へと着くと、ハジメは〝宝物庫〟からボーラーを取り出し、バイアスを拘束する。すると、バイアスは怒りに満ちた声色で声を上げる。

 

「てめぇ! 何──「うるせぇよ」……グフッ?!」

 

しかし、バイアスの怒声に何一つ臆する筈がないハジメは、腹部を踏みつけることで黙らせる。そして、服に忍ばせておいたドンナーを取り出すと銃口をバイアスへと向ける。

 

「何、俺が聞きたいことはただ一つ。バイアス、てめぇ神共(クソ野郎共)の眷属……いや協力者だろ?」

 

「!?」

 

ハジメの言葉にバイアスは急激に顔を青ざめる。ハジメはその表情の変わり様を見て、当たりだと確信する。

 

「知ってるなら、さっさと神共の情報を吐きやがれ」

 

「……し、知らん!」

 

「……へぇ、しらばっくれんだな」

 

「っ!? き、貴様!不敬だぞ!俺は皇太子で次の皇帝だ! そんな俺をこんな目に合わせてどうなる──「堕落獣転(フォールンビースト)計画」……は?」

 

「いやぁ、お前が、相当馬鹿で助かったよ。こんな重要な計画書やアーティファクトの説明書も全部鍵付きの引き出しに入れてるからな」

 

「────」

 

ハジメの言葉と共に〝宝物庫〟から取り出した書類を見て、バイアスは顔色は青から真っ白へとド肝を抜かれたような表情になる。性格が悪いハジメはニコニコ笑顔だ。そして、ハジメの肩には金属の蜘蛛が乗っている。

 

───多目的蜘蛛型ゴーレム〝アラクネ〟

あのリリアーナを助けた金属の蜘蛛は、クロスビットと同じ原理で複数同時に遠隔操作ができる。備えた機能は、錬成、鋼糸の操作と設置、魔眼石や〝水晶ディスプレイ〟への映像転写、各脚に付いた注射針による麻痺、睡眠、小型スタンガンによる電気ショック等々、多岐に渡る。

 

ハジメが帝城に入ってからというもの、どこかぼぅっとして優花達に膝枕をして貰っていたのは、無数のアラクネを帝城内のあらゆるところに侵入させ、片っ端からトラップの無効化、帝城の操作に意識の大半を向けていたからなのだ。そして、トラップの無効化を終えたアラクネ達は疑惑のあるバイアスの部屋へと赴くと明らかに何か入ってそうな引き出しを見つけ、鍵穴を錬成で壊すと、案の定、神達との繋がりの証拠がバンバンと出てきたのである。

 

その後、作業を終えたアラクネ達は、そのまま帝城に潜んで監視カメラの役割を担い、ハウリア達の司令部(帝都の外にある)に映像を送り、改良版念話石で通信することで最大効率の制圧戦、神の思惑を阻止をするのを可能にしたのである。

 

 

そして、ハジメの言葉に反応した人物が声を掛ける。

 

「おい、南雲ハジメ。堕落獣転(フォールンビースト)とはどういう計画だ?」

 

それは、勿論ガハルドである。ガハルド自身、息子が神の手先になっていたことに驚いたが、ハジメの言葉に納得がいく節が幾つかあった。故に、ハジメの言葉を真実と仮定してバイアスと神が行おうとした計画を知りたいのだ。

 

そして、ハジメ自身、ガハルドの言葉に少し驚いていた。

 

「……へぇ、ガハルド。お前は俺の言葉は信用しないと思ったが、これは驚きだ」

 

「ふん。てめぇがハウリア達に手を貸したことには苛立っているが、それとこれは今は関係ねぇ。それに、俺もバイアスの最近の行動には、気になる節が幾つかあった。だから、お前の言葉を信用した。それだけだ」

 

「クハッ……そうかよ。なら、コレを見てくれ」

 

ガハルドの言葉を聞いて納得したハジメは、ハウリアから回収してもらったアーティファクトを取り出す。それは体長1.5メートル程の獣の形をしたチェスの駒のような物だった。

 

「……それは、アーティファクトか?」

 

「あぁ、もう壊してはあるが、報告によると、このチェスの駒みたいなアーティファクトが帝国の四方を囲むように置かれていたらしい。駄獣兵(ダスト・ビースト)に守らせながらな?」

 

「っ!?」

 

駄獣兵(ダスト・ビースト)?」

 

ハジメの言葉にバイアスは声にならない声を漏らし、ガハルドは言葉の意味が分からず首を傾げながらその名を口にする。

 

駄獣兵(ダスト・ビースト)。この書類によると、人間に獣の能力を付与させたが、器である人間自体がその能力を耐えきれずに理性を無くしてただの無知性の獣になるってことだ。それに、コイツ等全員、帝国兵だったらしい」

 

「なっ!」

 

ガハルド、いや、この話を聞いていた貴族達、光輝達までもがハジメから出た言葉に絶句する。

 

「そして、このアーティファクトも〝堕落獣結界(フォールンビースト・ワールド)〟と結界魔法の応用した魔法結界らしくてな。確か、書類によると、このアーティファクトを四方で囲み、発動装置……あぁ、これか」

 

「なっ、おい返せ!」

 

ハジメはアーティファクトの説明しながら、魔眼石でバイアスを調べる。すると案の定、服のポケットから魔力反応したので確認をすると、一瞬でバイアスから奪い取った。そして、バキッと音を立てなながら握り潰す。

 

それを見たバイアスは更に絶望した表情になる。しかし、ハジメはスルーして、握り潰した手を両手を合わせながらパッパッと払うと説明を続ける。

 

「んで、俺が壊した発動装置を押して魔力を流したら、アーティファクトが発動して帝国全土に結界が展開される。そして……その結界内にいる者は全て理性の無くなったただの獣(・・・・)だ。簡単に言えば帝国の一つの国の終末だな」

 

『…………』

 

話を聞いたガハルド達は帝国の貴族達は沈黙だった。なんせ、自分達の皇太子は帝国を、自分の祖国を理由は知らないが終わらせようしたのだから。

 

「それに、俺は〝構造把握〟でこのアーティファクトを調べたんだが……驚いた。これの原材料は〝大量の人間の血〟だった。それも数十人以上のな」

 

『!』

 

「血……南雲ハジメ。まさか!」

 

ハジメの言葉に会場内がどよめく。そして、ガハルドはその言葉を聞いてか真相に辿り着き、目をガン開きしながらハジメの方を見る。ハジメもガハルドの視線と真相に辿り着いていることに気が付き首を縦に振り肯定した。

 

「あぁ、そうだ。ガハルド、コイツだよ。コイツが帝国民達を誘拐していた犯人だ。誘拐した人間をアーティファクトの材料として提供してたんだろう。ホントに外道の所業だよ」

 

ハジメはそう吐き捨ててバイアスを睨みつける。それはガハルドも、この場にいる帝国の者達全員もが同じようにバイアスを睨んでいる。しかし、バイアスから返ってきたのは沈黙だ。そんなバイアスにハジメは更に問い詰める。

 

「なぁ、バイアス。もうお前の負けだ。さっさとお前と組んでいる神の情報を吐けよ」

 

「………おい、バイアス、てめぇ。随分とやっていたんだなぁ。兵や民達の命をなんだと思っていやがる!?」

 

ガハルドも怒り心頭でハウリア達に拘束をされながらも、バイアスに飛びかかりそうな勢いで怒鳴り付ける。しかし、バイアスは黙ったままだ。

 

「…………が」

 

「?」

 

「クソがァァァァ!」

 

バイアスは何かを呟いたと思ったら、怒りが爆発してか声を張り上げながら悪態を吐く。

 

「クソっ、クソっ、クソがぁっ。後、少しで俺はてめぇ等なんかより上位の存在になれたんだ! あの方の眷属になれたのにっ。 てめぇ等のせいで台無しだ!」

 

バイアスは叫ぶ。今までやってきたことが台無しにされたから、あの方という者の期待に答えられなかったから。

 

「てめぇのせいで………よく──ガァッ?!」

 

「うるせぇよ」

 

叫ぶバイアスは片足で背中を強く踏みつけて黙らせる。そして、ドンナーの銃口を向ける。

 

「計画を台無しにされてキレてんのはいいが………そろそろ、吐いてもらおうか。お前の協──「いや、その必要はない」──!」

 

ハジメはバイアスを踏み付けながら問い詰めようとしたその時だった、会場の入り口から声が聞こえた。それは、一気に意識が持っていかれるような物凄い重圧と共に。ハジメ達はともかく、会場にいる貴族者達はその重圧に大量の冷や汗を流したり、気を失うものもいる。

 

ハジメは咄嗟に銃口をバイアスから切り替え、入り口の方へと向け〝威圧〟を発動しながら問い掛ける

 

「誰だ?」

 

「貴様と話すのは初めてだったな。〝イレギュラー〟」

 

ハジメは男の〝イレギュラー〟という言葉に反応し、目を細めながら会場の入り口にいる人物に問い掛ける。

 

「……てめぇ、神か?」

 

「あぁ、そうだとも」

 

ハジメの言葉を肯定し、入り口から現れたのは伸びた黒髪を団子状に纏め、黒い着物を着た長身の男が現れた。そして、ハジメと優花達は一目でわかる。あの男は神共の一人だと。それもアルヴより強い(・・)存在だと。

 

そして、ハジメは男に既視感を覚えてしまった。その服装、その圧に覚えがあるからだ。そう自分にとって大切な恋人達の一人と同じような………

 

ハジメがそう思っていると男の口が開く。

 

「ここで、自己紹介をしておこうか……聞けっ、下賎な人間族共、亜人族共、イレギュラー達よ!儂は五柱の神の一柱であり、主から獣の創成を担う者を承った。我が名は〝創獣神オルステッド〟である!」

 

そう叫んで名を語る男──オルステッドはハジメ達を嘲笑うかのように見下した表情で口元を大きく歪めているのであった……。

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