ありふれた職業で世界最強if優花   作:白San

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九十六話 触発

 

ハジメ達の前に現れた神──創獣神オルステッド。

 

「儂は五柱の神の一柱であり、獣の創成を担う者。〝創獣神オルステッド〟である!」

 

一瞬にして会場を呑み込むんだオルステッドの言葉。ガハルド達は息を呑み、光輝達も冷や汗を流している。しかし、ハジメや優花達は至って冷静だった。

 

ハジメは、臆することなくオルステッドに銃口を向ける。

 

「……五柱の神、ね。アルヴのカスが言っていた〝五神〟ってやつか?」

 

「左様よ、イレギュラー。先の王国であったアルヴの件は世話になったのぅ」

 

「何、軽く捻ってやっただけだ。なぁ、神って奴等はあんな拍子抜けの奴等の集まりか?」

 

そう神達を煽るような言動をするハジメにオルステッドは暫しの沈黙の後、

 

「……ハハッ……ガハハハハッ!」

 

大声で笑い出した。周りが困惑する中、オルステッドは「いやー、スマンな」と平謝りする。

 

「痛いとこを突いてくれるよイレギュラー、南雲ハジメ。貴様は儂の思っていた通りの男だ。益々、気に入った!儂の姿を見ても臆せず、更に儂等を愚弄するとは肝が据わっておる!」

 

オルステッドはハジメの態度が気に入ったらしく、笑っていたらしい。調子が狂いそうになったハジメは気を取り直しオルステッドに声を掛ける。

 

「なぁ、てめぇに一つ聞きたいんだ。どうやって此処(・・)に入ってこれた?」

 

「はて? 儂は普通にエントランスから入っただけだが……」

 

「それが有り得ねぇんだよ。エントランスには、シアが、俺の恋人が守っていたはずだ」

 

そう。エントランスには帝国兵達の介入を防ぐためにハウリア達の中でも、最高戦力であり、ハジメの大切な恋人であるシアが守っていたはずだ。それなのに、オルステッドはエントランスから会場に入ったのだ。

 

ハジメは嫌な予感してならなかった。すると、オルステッドは思い出したかのように語り出した。

 

「シア? あー、確かにいたのぅ。異常な戦闘力の高い彼奴に似た兎人族の小娘が一人。彼奴は〝使徒殺し〟と同じくらい面倒だったな」

 

「………そうか、アレスが行方不明の件も犯人はやっぱりてめぇだな?」

 

「左様。奴と貴様の二人相手だと実に計画を進めるのに邪魔じゃった。だから、〝使徒殺し〟は儂の施した魔法結界に閉じ込めておる」

 

「魔法結界だと?」

 

〝魔法結界〟という単語にハジメは少し反応するが、次にオルステッドから発せられた言葉に考えが吹き飛ばされた。

 

「あぁ、そうじゃったな。この時代(・・)だと知らないのは当然か。まぁ、儂でも〝使徒殺し〟は死んでるのか、生きてるのか知らん。……まぁ、あの結界で生き残る者はそうはおらん。死んでる可能性が高いだろう」

 

『……ッ!?』

 

ハジメ達は目を大きく見開いた。アレスはこの世界でも屈指の実力者だ。有り得ないという思う反面、もしもの可能性でオルステッドの言う魔法結界に敗れたりしたら……と不安が募る。

 

その時、優花達の傍にいた黒のドレスを着た一人の少女が声を張り上げた。

 

「 嘘です! 有り得まん!兄様が、アレス兄様がそんな簡単に死ぬわけがありません!!」

 

リリアーナだ。彼女は、ハウリアの乱や神の出現という状況で戸惑っていたのだが、自分が小さい頃から慕い強く、優しい兄のような存在であるアレスが死んだということは、すぐに有り得ないという考えに至っており、真っ先に否定した。

 

「リリィ……そうだな。アレスはそんな簡単に死ぬ男じゃねぇ。それもお前達、クソ神共が意気揚々としてるのにアイツが黙ってるわけねぇ」

 

リリアーナの言葉に優花達も、その言葉を賛同し強く頷いた。ハジメもリリアーナの言葉に肯定し、オルステッドに不敵な笑みを浮かべながら口にする。

 

しかし、この時のハジメは、思いもしなかった。次にオルステッドに見せられた物に自分の理性を失いかけてしまうことを……

 

「ほう、面白い。まさか、そこまで啖呵を切るとはな。しかし、コレを見てもそう言えるかイレギュラー?」

 

「あ? 何を───」

 

言ってんだ?と言おうとしたハジメだったが、オルステッドがエントランスの奥から引っ張りだした物に言葉を失ってしまった。それは、優花、ユエ、ティオ、リリアーナ、光輝達、ガハルド達、そして、ハウリアまでもが言葉を失い、唖然としてしまった。

 

オルステッドが見せたのは、何かの竜のような蜥蜴の魔物によって磔にされたボロボロのシア(・・・・・・・)の姿だった。

 

彼女の着ていた華やかだったドレスは至る所が引き裂かれ、焼き焦げており、美しさという言葉が似合うシアの美しい体には全体に裂傷や火傷、切り傷、打撲痕、腕は折有り得ない方向へと折れ曲がっていた。そして、極めつけは横腹が抉らており、なんとも痛ましい姿だった。

 

「────」

 

『シアっ。貴様ァァァァァ!』

 

カムが叫ぶ。それは、今さっきまでのガハルドと要求の話をしてたときみたいな機械のような淡々とした声音ではなく、焦りと怒りが含めたような声音だ。

 

優花は両手で口を覆って嗚咽を漏らすリリアーナを抱き留め、光輝達は現実を受け止められない表情だ。

 

「………シア?!このっ──〝雷龍〟!」

 

一方、ユエは怒りに満ちた表情で会場のことなど無視してオルステッドに雷龍を放つ。雷の龍が敵を喰らわんと巨大な口を開きながらオルステッドに迫る。

 

しかし……

 

「龍とは、なんとも精密な魔力操作じゃな始祖返りの吸血鬼。しかし、温いな(・・・)───〝魔喰竜〟」

 

オルステッドがそう言って片手をかざすと、彼の足元の影から黒い竜の頭部が出現し、その口を開くとユエの雷龍を喰らった。

 

「なっ───」

 

「では、送り返そうか〝雷竜〟」

 

ユエは自分の〝雷龍〟が消された。いや、正確に喰われたのだろう。そのことに驚愕しているのも束の間、オルステッドが魔法を返すように魔法をユエへと放つ。

 

それも、雷の竜の形(・・・)を模した魔法で。

 

「っ?!」

 

ユエは咄嗟に重力魔法の〝禍天〟を展開させて、迫りくるオルステッドの〝雷竜〟を黒の球体で吸い込んで回避する。オルステッドはその光景を見て感心するように頷きながら話す。

 

「ふむ、重力魔法か。神代魔法をよく集めておる。流石の実力じゃなぁ。イレギュラーの仲間達は……しかし、温い、温すぎる。この兎人族の小娘もそうじゃった。いい線にはいっておったが、儂には届かん。もう少し儂をた────グオッ?!」

 

楽しませろ。と言う直前に、何かの衝撃でオルステッドが宙に吹き飛んだ。いや、殴り飛ばされたのである。そして、それが、できるのは………

 

「……ごちゃごちゃ、うるせぇんだよ。決めた、オルステッド。てめぇは俺が絶対に殺す」

 

当然、ハジメである。ハジメはオルステッドがユエの〝雷龍〟を送り返したと同時に、〝紅狼〟を発動していた。瞬発力が爆発的に上がった紅い雷を纏った体で、オルステッドの懐へと一瞬に移動したハジメは、雷で爪の形状へと変化して纏わせた左手を更に〝集中強化〟させオルステッドの頬を殴り飛ばしたのだ。

 

殴り飛ばされたオルステッドはそのまま、会場の壁にドガンッと音をたてながら激突する。

 

「………」

 

ハジメは言葉からは冷静さを感じさせるが、それは全くであり、内心怒り狂っていた。それは優花が、アルヴに殺されたとき程だ。そして、それは会場のいる者達にも伝わっており、ハジメから伝わる殺気と圧にガハルドや優花達以外は気を失うほどの重圧である。

 

オルステッドを殴り飛ばした後、ハジメはシアを磔にしてる竜を雷魔法〝雷閃〟で瞬殺すると、拘束が外れ前へ倒れる傷だらけのシアをそっと、優しく掬い上げるようにお姫様抱っこする。

 

「(微かだが息はある)……シア」

 

ハジメはシアの抱きかかえながら容態を確認する。重症だが、息があると分かるとすぐさまユエを呼ぶ。

 

「ユエ! ゲートを使ってシアを頼んだ!」

 

「……ん!」

 

ユエはハジメの応えるようにゲートを発動させ、抱き上げているシアを安静できる場所に運びだした。

 

「ぐっ……イレギュラーか! ガハハッ。油断もしてたが、全く貴様を捉えられないとは流───!」

 

「そのよく喋る口をズタズタにしてやろうか」

 

ハジメはシアがゲートでユエ達の元へと運ばれた後、すぐにオルステッドへと急迫すると、顔面に狙いを定め、〝紅雷〟と〝衝撃変換〟、〝豪脚〟を集中的にかけた右足で蹴りを入れて、オルステッドを喋らす暇なくしながら追撃を開始する。

 

「温いっ───〝棘竜(ニードル)〟」

 

反撃と言わんばかり、棘だらけの竜を出現させると無数の棘を迫るハジメへと飛ばす。しかし、ハジメは追いかけるスピードを緩めずに〝魔力放射〟と〝紅雷〟で全ての棘を弾き飛ばしていく。そして、〝宝物庫〟から何かを取り出すとオルステッドへと投げ飛ばす。

 

ハジメが投げた物はオルステッドへと近付いたその瞬間、キィィィンと音を立てて物凄い光が放射させた。

 

「っ!?」

 

オルステッドは突然の光に咄嗟に目を隠すもやられ視界が短い間、奪われる。そうハジメが投げたのは〝閃光弾〟であった。ハジメはその間に、〝宝物庫〟から取り出した〝神喰雷槍〟を取り出すとオルステッドへと投げつける。

 

「!───〝壁竜(へきりゅう)〟」

 

オルステッドは強烈な殺意か何かを感じとったのか地面から体長三メートルほどの竜を出現させ、漆黒の大槍を受け止めるが、巨大な竜はあっさりと砕け散る。しかし、その間にオルステッドは移動しており、視界も回復していた。

 

「目眩しは驚いた。それに、その漆黒の槍もな、〝壁竜〟がああもあっさり倒されるとは………ホントに貴様は面白い!──〝竜々舞(りゅうりゅうまい)〟!」

 

オルステッドは多数の竜を出現させる。現れた竜達は獰猛な目をギラつかせながら口を開くと、ハジメを喰らうかのように襲いかかっていく。

 

「〝轟雷閃〟」

 

しかし、ハジメは竜達など傍らの石を振り払うかのように、紅いスパークの一閃が竜達の首を一斉に両断していく。

 

「即席の竜達はやはり脆いか───っ!?」

 

オルステッドは竜達が簡単に一斉に両断されることに驚きながらも、そう言っていると突如、右頬から痛みがしたと同時に吹きた飛ばされる。

 

オルステッドは吹き飛ばしたのは、紅いスパークを足に纏わせて高速移動をしたハジメであり、高速移動した力を利用してオルステッドの顔面に蹴りを入れたのであった。蹴りを入れたハジメはそのまま、ホルスターからドンナーシュラークを抜き出すと、

 

ドパァァァン! ドパァァァン!

 

ハジメはドンナーシュラークを最大威力で連射していく。発砲音は二発、しかし、ハジメの早撃ちによって、放たれたのは十二発の紅いスパークの弾丸がオルステッドへと炸裂する。

 

「──ふんっ、洒落臭い!───〝硬竜(こうりゅう)〟!」

 

オルステッドもハジメに全力で蹴り飛ばされた勢いで吹き飛ばされながらも、どこからかユエのときとは別の竜の頭部を出現させる。そして、盾にするかのように自分の前へと突き出し、十二の紅の弾丸を防い切る。オルステッドは弾丸を防ぐ。

 

「そんなものかっ。イレギュ─「遅せぇよ」──ガッ?!」

 

しかし、ハジメの追撃は終わってなかった。既に発砲させていた四つの紅の閃光がオルステッドの両肩と太腿を射抜いて動きを止め、出現させていた〝硬竜〟は〝紅雷〟を足に纏わせ一撃で破壊し、オルステッドの真上へと高速移動したハジメは、左の義手に〝衝撃変換〟と〝豪腕〟を発動させ、オルステッドを床へ叩きつけるように殴りつけたのだ。

 

「───チェックメイトだ」

 

手を緩めないハジメは冷酷な眼差しでそう告げると、〝宝物庫〟から〝オルカン〟、四機の〝クロスビット〟を取り出すとオルステッドを叩きつけた場所へと狙いを定めてロケット弾と炸裂スラッグ弾を全弾発射する。

 

次の瞬間、

 

バシュゥゥゥウウウウ!

 

会場内に凄まじい目が痛むほどの閃光と、爆風と轟音が響き渡った。ハジメはオルカンを担ぎながら着地する。そして、爆風によって煙が舞うオルステッドのいる場所をハジメは無言のままジッと見詰めながら確信する。

 

この追撃ラッシュッをしても尚、オルステッドは、

 

───まだ、致命傷すら負ってないと。

 

「………」

 

ハジメが無言で見詰める中、瓦礫の音や何かを振り払い、立ち上がる音がハジメの耳に聞こえ、影が見え出す。

 

「これは、流石に少し効いたぞ。イレギュラー」

 

「………やっぱり、てめぇ竜人族(・・・)か」

 

爆煙が晴れていくにつれ、オルステッドの姿がはっきりと見えていく。そして、現れたオルステッドの姿にハジメは懸念していたことが確信へと変わる。

 

「左様。これは貴様も知っているであろう〝部分竜化〟。これを使うのは何百年振りだろうか」

 

そう言いながら現れたオルステッドの姿は竜人族の固有魔法である〝竜化〟の派生技能〝部分竜化〟を発動している状態の姿姿であった……。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

ハジメの頼みにすぐさま応えるかのようにゲートを使って、ハジメの元にいるシアを自分の元へと移動させたユエは、シアの姿を見る。いつも元気を振りまく笑顔はなく、傷だらけの眠っている彼女の姿をユエは悔しそうに口元を歪めながら「シア」と名前を口にしながらギュッと抱きしめる。

 

「優花っ、シアの治療をお願い! 私はハジメが戦いやすいように此処にいる人達を守る!」

 

「わかった! シアの治療は任せなさいっ」

 

「ん!」

 

隣にいる優花にシアを任せて、自分はハジメの邪魔をさせない為に怪我を負っている帝国貴族達を避難させに向かっていく。

 

「っ! 嘘。ここまでの重症……でもっ」

 

治療を任された優花は傷だらけのシアを見て、容態の深刻さに絶句して、大切な仲間の悲惨な姿に涙を流しそうになるのだが……

 

「シア、大丈夫だから……私が絶対に治すから!──〝絶象〟──〝回復速度上昇〟、〝回復力上昇〟付与!」

 

優花はシアの頬をスっと優しく撫でると、一刻もはやく治療するためすぐに再生魔法〝絶象〟と回復増加の付与魔法を発動する。そして、優花は隣にいるティオへと視線を転じる。それは、ティオは何故かオルステッドが現れた時から一言も喋っていないからであった。

 

いつもなら、既に適確な対応をとってハジメ達が戦い易いように立ち回るティオなのだが、今は全く動く気配が感じられない。優花はそのことが不安で、隣にいるティオに視線を移すと不意に声が漏れでた。

 

「───ティオ?」

 

優花が見たティオは感情が読み取れず能面かのように無表情。呆然とただ一点とオルステッドを見つめている。そんな姿を見て、優花は少なからず恐怖とはまた違う何かを感じてしまって、治療の手が止まりそうになる。

 

その時だった。

 

バシュゥゥゥウウウウ!

 

ハジメが放ったであろう。オルカンなどの爆撃音などが会場内に響き渡り、爆煙が広がる。優花は咄嗟にシアが爆風で飛ばされないようにギュッと抱きしめる。

 

「──っう」

 

自分達は会場の隅にいるというのに、その爆風は何もかも吹き飛ばすような勢いであり、リリアーナも雫と鈴がかり三人でギリギリというところで爆風を耐え凌いで、光輝と龍太郎は腕を交差させ、足に集中的に力をいれることで耐え凌いだのだった。そして、煙はまだ舞うも、爆風が収まると、光輝達は安堵の息を漏らして、お互いの確認をしあった。

 

「なんて、威力なの……って、リリィ大丈夫?」

 

「は、はい。支えてくれてありがとうございます雫、鈴」

 

「へへん。大丈夫だよ。このぐらい」

 

「スゲェな……あの威力。流石、南雲だぜ。なっ、光輝」

 

「あ、あぁ………」

 

雫、リリアーナ、鈴は三人で無事だったことを確認しあって安堵し、龍太郎はハジメの実力の凄さを称賛し、光輝はまた自分とハジメとの差を痛感していた。そんな事をしていると、近くから優花の声が聞こえた。

 

「雫!そっちは皆、無事!?」

 

「優花っ。ええ、こっちはリリィも皆無事よ!」

 

「よかった。コッチもシアもユエもティオも無事だわ。後、皆こっちに来て、ユエが障壁を張ってるからっ」

 

そう、優花はシアを抱きしめて守ろうするもケガに影響がでるかもしれないと障壁を張ろうとしたが駆けつけたユエが代わりに障壁を張って、爆風を防いだのだ。

 

雫達は優花の言葉に従い、優花達の近くへと移動すると、そこにはシアの治療に専念している優花と優花達を守るかのように前にいるユエ、そして、何故か呆然と立ち尽くしているティオの姿だった。そして、爆煙が段々と晴れていき、目に映った光景に光輝達、そしては驚愕した。

 

そこには………

 

「これは、流石に少し効いたぞ。イレギュラー」

 

ハジメの怒涛の攻撃を喰らっても尚、擦り傷程度しか負っておらず、何ともなさそうに話すオルステッドの姿だった。そして、優花とユエはそんなことよりオルステッドのある部分に注目して驚愕していた。

 

「左様。これは〝部分竜化〟。これを使うのは何百年振りだろうか」

 

それは、自分達の大切な仲間(ティオ)と同じ竜人族の固有魔法の〝竜化〟の派生技能〝部分竜化〟で白い竜鱗を纏った腕をしているオルステッドの姿だった。そんなオルステッドに驚愕して動きを止める優花達とは逆にオルステッドへと駆け出す者が一人いた。

 

「お主は、やはりお主はぁ!」

 

「ちょっ、ティオ!」

 

それは、今まで一つも動きを見せなかったティオであった。優花が制止の言葉を投げかけても聞こてないのか、止まらずオルステッドへと駆け出す彼女はなんとも絶対に殺してやると言わんばかりの憤怒と憎悪で輝く金の瞳が鋭い眼光を放ち、自分が着ているのはドレスなのも忘れたかのように全力で走っている姿でいつもの聡明で自分達の大切な仲間のティオとは、確実に纏う雰囲気が違っていた。

 

そして、ティオは走りながら、〝竜化〟していく。帝国の者達は、ティオの正体を知らない為、走るティオの体が突然と黒い竜鱗を纏いながら翼を生やし、肥大化していくことにに驚愕する。しかし、ティオは気にしない。大切な恋人でさえも見向きもせずに彼女の見詰めるのはただ一点、あの忌々しい白い竜鱗をもつオルステッドのみ。

 

ティオの魔力がいつも黒くて鮮やかな魔力の奔流がまるで、強大な負の感情が溢れ出るかのように黒く黒く深くなっていく暗い色になっていき、膨れ上がっていく。

 

───やっと見つけた………そう見つけたんだ。

 

ティオは自分の記憶の脳裏に深く焼き付けられた光景を思い出す。大好きだった(故郷)を滅ぼした。優しかった自分を愛してくれていた民達を無惨に磔にしながら殺した。大切だった、大好きだった、心から尊敬し愛していた母と父を殺した。

 

───あの白い竜(憎き怪物)を見つけたのだ!

 

ティオから溢れ出てくるドス黒くなってしまった魔力が段々とティオの全身を包み込んでいくと漆黒の鱗で全身を覆い、濁った金の眼をもった黒竜が現れる。

 

〝死ねぇぇぇぇぇぇ!!〟

 

憎しみや負の感情が爆発したような叫びをしながら、怨恨と恩讐に満ちた黒竜が白き竜鱗を纏う創獣神へと牙を剥いたのだった………。

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