ありふれた職業で世界最強if優花   作:白San

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九十八話 原点にして頂点

 

繊月が浮かぶこの日の帝国の夜は静寂の二文字は無いに等しく、上空で激しくぶつかり合う白と黒の二つの影。その余波が、咆哮が下の帝都にも響き渡り、帝都の民達は「兵士達はどうした?」、「また、魔人族の襲撃なのか?!」などの叫びに近い言葉が行き交い。その表情は不安と恐怖などに満ちていた。

 

そして帝城からは、金属同士のぶつかり合う音、魔法の余波が伝わっており、上空に浮かぶ巨大な物体を見て帝国は混乱に満ちていた。

 

白と黒の竜達の戦闘によって帝都が混乱に満ち溢れる中、同時刻。帝城でも五体の使徒と優花、ユエ、アレスの戦いは羅列と化していた。

 

「〝双龍〟」

 

迫りくるおびただしい数の銀翼を、ユエは二対の龍を以って相殺すると、つかさず、他の魔法を繰り出して反撃に備える。

 

「〝氷槍・百連〟」

 

背後に巨大な魔法陣が完成させると、使徒達に百の数の氷の槍が炸裂する。使徒達は〝神速〟で氷の槍を回避をしていくが、氷の槍の軌道がおかしいことを訝しむ。

 

そう、その氷の槍は自分達を集めるように誘導してるかのように………

 

そして、一体の使徒はハッと視線をユエに転じると、ユエのニヤリと笑う姿を見て察してしまう。

 

これはユエが意図的な誘導であるとを。

 

「っ?! まさかっ」

 

「えぇ、そのまさかですよ」

 

突然、声がして振り向くと、いつの間にか使徒達に背後に回っていたアレスが魔法が発動する。

 

「〝震天〟!」

 

「「「「「ガッ?!」」」」」

 

至近距離での空間魔法〝震天〟。防御する暇もなく使徒達は内蔵までも震わす衝撃波を確実に喰らってしまい、大量の血を吐き出し、一時的に動きが止まってしまう。

 

「形状変化──聖槍。(ワンス)(トゥワイス)(サード)(フォース)(フィフス)行きなさい!」

 

そこへ、タイミングを待っていた優花が動きが止まった使徒達へと聖杭が形状変化した聖槍を射出する。神速レベルの速さで直進する聖槍達は使徒達の心臓を狙う。しかし、量産と言えど、相手は神の使徒。そんなに簡単には終わらない。

 

「くぅ!」

 

各々、双大剣を聖槍を軌道を逸らしたり、銀翼を大きく広げると自分を繭のように包み込んだりして、聖槍の直撃は免れる。

 

しかし、そんな大きな隙を見逃す筈がない三人は一気に叩き込む。

 

「〝天翔閃・極〟!」

 

「〝五天龍〟!」

 

「〝聖櫃(アーク)〟!」

 

極大の光の斬撃が、五つの異なる属性の天龍達が、そして、使徒達を逃がさないように包み込む。そして、瞬間、巨大な光の球体の形をしたドームが炸裂し、ドーム内から膨大な熱量が、五つの龍の顎門が、極大の光の斬撃が使徒達を襲う。

 

三つの強力な魔法が混ざり合い、轟音と共に巨大な爆発が起こった。爆音が帝城全体に響き渡り、物凄い爆風が優花達を襲いかかるが、優花はユエを抱き締めてから翼を広げると使徒の見真似で繭みたいに自分達を包み込んでから前に三つの聖杭を形状変化させた聖盾を前にだして爆風を防ぐ。アレスは、片手で顔を隠しながら爆風に耐える。会場にいる者達も鈴の〝聖絶〟や体を寄せあったり、腕を交差させたりして爆風に耐え凌いでいく。

 

「ふぅ、流石にこんなに魔力を使うのはキツイわ」

 

「……優花、あの魔法何?」

 

「あ〜、あの魔法はね──」

 

爆風が吹き終え、ユエは優花にあの光のドームを創り爆発させる魔法はなんだと聞くと優花は簡潔にその魔法の説明をする。

 

────天性魔法〝聖櫃(アーク)

相手を球体の形をした光のドームに包み込んで身動きを取れなくし、破裂させると同時に膨大な熱量のダメージを与える魔法。しかし、この魔法は魔力消費が高く光のドームを大きくするほど更に消費量が増える。

 

「……って感じかな」

 

「……強」

 

「流石は、天性魔法。凄いで魔法すね。回復も攻撃も防御もできる万能型の魔法なんて」

 

「うん。凄いけど全部魔力消費量が激しいからなぁ」

 

優花の説明にユエはその魔法の使い勝手に驚き、アレスは天性魔法の力を称賛するが、優花は魔力消費の激しさに悩んでいた。

 

「……あんなに凄い魔法なら魔力消費が激しいのは当たり前」

 

「そっかぁ。でも、使徒達は倒せませたよねアレスさん」

 

「………いえ。まだですね」

 

ユエに言われて、納得する優花はアレスに使徒を倒せたか聞くと、アレスは首を振って否定する。すると同時に爆発の発生地……使徒達の方から巨大な魔力反応が起こり、三人は上に視線を転じる。

 

「………流石は〝使徒殺し〟と叛逆者達ですか」

 

「イレギュラーも危険ですが、貴方達も相当危険です」

 

「我が母の危険因子」

 

「もう、貴方達の勝ち目はありません」

 

「諦めて死になさい」

 

そこに、ボロボロで、一体は片方の銀翼が失っていながらも、使徒達は顔色を一つも変わらず一気に魔力が莫大に跳ね上がる。同時にハジメの威圧に近い強力な圧を感じさせる彼女達から溢れ出る魔力にアレス達は目を細める。

 

「……アレス、もしかして」

 

「ええ、〝限界突破〟をしましたね……」

 

「確か、使徒の限界突破って……「優花殿が思うように彼女達の魔力は無限です」……だよね」

 

「……どうする? 私は限界突破はないけど」

 

「しかし、五体の限界突破を相手取るには私達もするしか他ありませんね」

 

「ですよ、ね!」

 

そんな軽い言葉を交わしながら、アレス達も覚悟を決める。

 

「「〝限界突破〟!」」

 

直後、アレスから橙の魔力の奔流が溢れ出し、優花からは白銀の魔力も同じように溢れ出している。

 

そして、一拍、

 

瞬時にゲートを使い一人の使徒の前に転移をして距離を詰めたアレスがロンギヌスが振るう。その攻撃を使徒が片方の大剣で防いだ際の大きな金属音が鳴り響き、戦いの第二ラウンドの火蓋をきられる。

 

全部(オール)っ。行きなさい!」

 

「〝轟嵐帝〟!」

 

優花の計八つの聖杭から形状変化した聖剣達が神速の速さで、ユエから放たれた極大の竜巻が使徒達へ襲いかかる。

 

「無駄です〝凍雨〟」

 

「〝劫火浪〟」

 

「〝嵐帝〟」

 

しかし、使徒達も臆することなく三つの最上級の魔法と銀翼を飛ばすことで、ユエの竜巻を分解し、優花の聖剣達の猛攻を相殺させる。

 

「聖杭は危険です。が、我が母やエアースト姉様に比べれば、まだ操作に慣れてはなさそうですね」

 

「吸血鬼の方も分解すれば無力でしょう」

 

「では、〝使徒殺し〟はあの二人に任せて、私達はあの危険因子達の相手をしましょう」

 

三体の使徒は話し合うとユエと優花へと銀翼を放ちながら双大剣を構えると二人へ突貫をしていく。

 

「っ……」

 

場面は変わり、ロンギヌスで振り下ろされた四本の大剣を受け止めると共に激しい金属音が鳴り響く。しかし、振り下ろされたのは限界突破された二人分の腕力が乗せられた威力。同じく限界突破をしてるアレスでも、流石に冷や汗を流し顔を歪めてしまう。

 

「……流石に、その状態では、二人相手は荷が重いようですね〝使徒殺し〟」

 

「オルステッド様の結界魔法を破ったことは称賛しましょう。しかし、その体では私達に勝てるなど到底不可能です」

 

二体の使徒はそう淡々とした声音で話しかけながらも攻撃は止まらず、更に大剣を振るう速度を上げていき、銀翼も量を増やしアレスへ飛ばしていく。それに対して、アレスは一切、集中を切らさずにロンギヌスで四の迫りくる大剣を受け止め、銀翼も空間魔法を駆使して直撃を僅かながら避けていく。

 

「終わりです」

 

「!」

 

しかし、ゲートの位置を予測されてたのか、狙ったかのように使徒が大剣を振り下ろされる。普通なら回避不可能であるのだが……

 

「舐めないで頂きたい!〝衝魂〟!」

 

「ッ!?」

 

「カハッ!?」

 

アレスは、咄嗟に〝衝魂〟を纏った拳を突き出して、二体の使徒に防御不回避の魂への直接ダメージを与えて使徒達の魂魄を乱す。そして、後ろへ飛び退くと二人から少し距離を開ける。

 

「〝綺羅〟!」

 

「くぅっ」

 

「っう!」

 

そして、追撃と言わんばかりに、空間さえも切り裂く光の斬撃をお見舞いする。しかし、使徒達も負けじと、銀翼と双大剣で盾にしたりして光の斬撃を耐え凌いでいく。

 

距離がある中、互いに睨み合う。正に攻防一戦。アレスは秘策はあるのだが今の魔力では保つどうか分からない。それに違和感を感じていた。目の前の使徒達は今までの使徒達とは何かが違うのだ。

 

「(何かが違う。目の前のそして優花殿達と相手してる使徒達も言葉だけで、殺すという気配を感じられない。それよりも時間稼ぎをしているかのよう……ん? 時間……)っ、まさか!」

 

アレスは睨み合いながら使徒達の行動の不可解な理由に疑念を抱き、そして、ある一つの思惑に気が付く。そして、バッと使徒達の方を見ると、フッとアレスの考えていることを肯定するかのように笑みを浮かべていた。

 

「流石、〝使徒殺し〟」

 

「よく、気付きましたね。私達はただの時間稼ぎ(・・・・)だと」

 

「くっ」

 

アレスは苦虫を噛み潰したように口元を歪める。そして、優花とユエ達の元へゲートを使って向かう。

 

「行くよっ。ユエ!」

 

「ん!」

 

「お二人共!」

 

「ふぇ?」

 

「……ん!?」

 

魔法を繰り出そうとしたユエと優花の元に突如、ゲートから現れたアレスに目を見開く二人。優花は間抜けな声を漏らし、ユエは驚いてしまう。

 

「ど、どうしたんですかアレスさん?」

 

「……ん、二体の使徒はどうしたの?」

 

「そんなことより、お二人共、私達は嵌められていたらしいですよ」

 

「「えっ」」

 

慌ただしい様子のアレスに首を傾げる二人だったが、次のアレスの言葉に二人は唖然とする。

 

「……どういうこと?」

 

「あの使徒達はただの時間稼ぎ。本当の目的は……」

 

「まさか、アルマゲドン?」

 

優花の言葉にアレスは頷くと、二人も口元を歪めて上空を見上げると、帝都の夜に浮かぶ巨体の生きる爆弾兵器。

 

「やっと気付きましたか」

 

「私達では貴方達を倒せません」

 

「なら、確実に消し去るには」

 

「アルマゲドンを使おうと考えたまでです」

 

「爆発まで以って残り十分ほど。終わりです」

 

淡々と告げる使徒達。しかし、三人は未然にも諦めている様子はなかった。

 

「なら、十分以内に壊せばいいのですね」

 

「何を──「〝界穿〟!」っ!」

 

アレスは、ゲートをコンマ一秒の速度で展開すると、一気にアルマゲドンへと距離を縮める。使徒達は急いでアレスの元へと向かうが、アレスの方が辿り着くのが早かった。

 

「〝天翔閃・極〟!」

 

アレスはロンギヌスを大きく振るって、巨大な光の斬撃をアルマゲドンへと繰り出す。

 

しかし……

 

「なっ?!」

 

何かの障壁に阻まれ、斬撃が弾かれてしまった。アレスの表情が驚愕に染まる。そこへ、アレスに追い付いた使徒達がアレスを囲むように銀翼を放つ。しかし、その前にいち早くユエが展開したゲートに入り込んむことで、銀翼の攻撃にアレスは免れた。

 

「……助かりましたユエ殿」

 

「……ん、大丈夫?」

 

「アレスさん。やっぱり疲れが……」

 

「いえ、まだ動けますよ。もう一度、今さっきみた──「無駄です」──なに?」

 

そこへ使徒達が呆れたように話す。

 

「今の貴様では、アルマゲドンを破壊できません」

 

「あれは要塞兵器です」

 

「今の貴様達の魔力量では到底、破壊は不可能」

 

「それに、〝限界突破〟も後、少しで時間です」

 

「「っ!」」

 

その言葉にアレスと優花は酷く口を歪める。その通りだった。二人はもうすぐ〝限界突破〟が切れる。そしたらもう勝ち目はなくなる。正に、絶体絶命の状態である。

 

「………やるしかありませんか」

 

「え?」

 

「……アレスまだ策があるの?」

 

ユエの言葉にアレスは頷く。

 

「ええ、しかしこれは今の疲状態の私では発動するのに少々時間が掛かってしまいます。ですので御二人に時間稼ぎをお願いしたい」

 

「……何分?」

 

「ざっと、五分程」

 

「……了解。優花は?」

 

「ええ、大丈夫よ。もう、私達はアレスさんに賭けるしかないからね」

 

「お二人共、ありがとうございます」

 

三人はそう頷き合うとアレスはロンギヌスを床に突き刺すと両目を閉じる。すると、ロンギヌスから巨大な魔法陣が浮かび上がる。

 

「無駄な足掻きを……」

 

「しかし、〝使徒殺し〟のすることです。止めた方が良いのでは?」

 

「……一理あります」

 

使徒達は銀翼を広げるとアレスを集中的に狙うように動き出し、千を超える銀翼を放ちながらアレスへと突貫する。

 

「〝雷龍〟!」

 

(セブンス)(エイス)。聖盾に形状変化!アレスさんを守りなさい!!」

 

しかし、ユエの雷龍と優花の二つの聖杭から形状変化された聖盾がアレスを銀翼から守っていく。

 

(サード)(フィフス)! 聖槌に形状変化!〝衝撃波(インパクト)〟!」

 

「くぅっ!」

 

そして、双大剣を持ちながら近付く二体の使徒を優花が聖槌で繰り出す衝撃波で吹き飛ばす。そこに、ユエが吹き飛ばされた二体と他の使徒達に狙いを定め、新たに創り出した二つの強力なオリジナル魔法の一つ発動する。

 

「闇に葬られろ〝月詠(ツクヨミ)〟」

 

瞬間、会場の上に巨大な暗黒の渦が現れる。そこから多くの禍々しい黒い手が這い出てくると、使徒達を渦の中へと引き込もうと襲い掛かる。使徒達は少し焦りを見せるも、おびただしい数の手から避けて、銀翼で分解して対処していく。

 

───複合魔法〝月詠(ツクヨミ)

重力魔法と魂魄魔法の複合魔法。対象の魂魄を指定すると巨大な闇の渦のブラックホールと禍々しい暗黒の手が現れ、指定された魂魄の者を狙う。そして、その手に捕まると最後、渦の中に引き摺り込まれて魂魄を抜かれるという凶悪の魔法(簡単に言えば魔力と魂魄の吸収魔法)。

 

この魔法を防いだり終わらせるのには、魔法の核の破壊、対象、上限値までの魔力を撃ち込むしか方法はない。

 

 

「くっ、この魔法はっ」

 

「神代魔法の複合魔法っ」

 

「これでは、私達が時間を稼がれていますっ」

 

「ならっ」

 

「えぇ!」

 

頷き合った二体の使徒が捨てみの覚悟で、渦の中へと突っ込んだ。すると、闇の渦が崩壊していくのを見て、ユエが驚愕しながらも悔しそうに下唇を噛む。

 

「……っ、身代わりになって〝月詠〟を魔法上限を満たしたっ」

 

そう。ユエの言う通りで使徒の二体は自分達が身代わりになることで魔力の上限値を超えさせて〝月詠〟を使えなくした。

 

「……うっ」

 

「ユエっ」

 

そして、ユエでもあんな強力な複合魔法を行使するには莫大な魔力を消費する。故に、魔力の酷使で少し体がふらつき倒れそうになるも、近くにいた優花が咄嗟にユエを支えにいくが、それが悪手だった。

 

「余所見など甘い!」

 

「しまっ──」

 

優花は自分の油断したせいで、使徒一体をアレスの元へと向かわせてしまい、咄嗟に聖槌を向かわせるが、〝限界突破〟した使徒の〝神速〟にどうしても追い付けない。当の狙われているアレスは動けないのかそこから一歩も動かない。

 

「待っ──「終わりです!」」

 

優花の叫びは虚しくアレスへと使徒の二つの大剣が振り下ろされ、アレスの命が狩られると誰もがそう思った時だった。

 

ドゴォォン!!

 

「ごはっ!?」

 

刹那、何かがぶつかった音と共に大剣を振り下ろそうとした使徒が口から血を吐き出しながら、空高く吹き飛ばされた光景だった。

 

「……ふぅ、何がどうなってるか分かりませんが、アレスさんを守れば良いんですよね?」

 

その声にユエと優花がすぐに反応してアレスの方へ振り返った。そして、二人の目に映ったのは、アレスの前に立って拳を構えるボロボロのドレスであるにも関わらず、その綺麗な淡白青色の髪にモフモフなウサ耳の少女(大切な仲間)がそこにいた。

 

「皆さん! 迷惑掛けてごめんないさいです! シア・ハウリア今、復活ですぅ!!」

 

シアはニコッと笑みを浮かべると高らかに声を上げた。

 

「「シア!」」

 

「優花さん! ユエさん!心配かけました!」

 

優花はユエを抱えながら、シアの元へ駆け寄るとギュッとシアも抱き締める。ユエも優花とシアに挟まれながらもシアに抱き着く。

 

「シア、よかった!」

 

「……ん、シア。無事に治ってよかった」

 

「アハハ〜、すみません。神相手にヘマしたですぅ。でも、この状況はどういうことですか?」

 

二人の言葉にシアは困ったように笑みを浮かべるとこの状況について説明を求めると、時間がないため優花が、この場にいないティオはオルステッドと戦っていることとハジメもティオの元へ向かっていること。自分達は上空に浮かぶアルマゲドンの破壊などのことを簡潔に説明する。

 

「ふむふむ、なるほど。つまり私達は秘策があるアレスさんを使徒達から守ればいいと」

 

「………ん」

 

「ええ、そうよ」

 

「了解ですぅ!」

 

シアはそう「やりますよ〜!」と意気揚々に答えてると、上空にいる三体の使徒が優花達を見下ろしながら告げる。

 

「たかが、手負いの獣が増えたとこで」

 

「アルマゲドンを止めることは不可能」

 

「諦めなさい」

 

そんな言葉は三人に通じることなく、三人の少女達はアレスを守るように前に立つ。

 

「「「お断り(ですぅ)!」」」

 

その言葉を聞いて、使徒達は加速して、アレスを殺そうと動く。優花達も武器(ドリュッケン)が壊れているのシアに優花は聖槌を渡す。優花とユエは残りの魔力ストックを躊躇いなく使って駆け出した。

 

アルマゲドン起動まで残り六分。アレスの奥の手解放まで残り一分程。

 

短くも使徒と優花達の最後の持久戦が始まった。

 

残り一分というのに、優花達にとって物凄い長い時間だと感じていた。

 

迫りくる銀翼を優花とユエの息のあった連携で、的確に撃ち落とし、アレスに近付こうとする使徒をシアが聖槌を振りかざして対処していく。そんな三人の息のあった連携に、反撃と言わんばかりに使徒達もユエと優花の魔法を分解して対処していく。

 

そんなことを何度も、何度も、何度も、何度も同じように攻防を繰り返していく優花達と使徒達。

 

「「「死になさいっ」」」

 

「「「させるかぁ(ですぅ)!」」」

 

正に、それは拮抗状態。しかし、それは突然と終わりを告げてしまう。

 

「……っあ」

 

それは、手負いのシアだった。傷口が開き、力なく倒れ込むシアを横目で確認した優花は悲鳴じみた声を上げる。

 

「シア!(やっぱり傷は治したけど残ってるダメージがっ)」

 

シアはオルステッドに受けていたダメージの残りのせいか片膝を突いてしまったのだ。そこへ一体の使徒がシアを抜いてアレスへと迫る。

 

そして、

 

「これで、終わりです!」

 

振り上げられた大剣がアレスへと振り下ろされていく。

 

「「アレス(さん)!」」

 

「うっ……アレスさ、ん」

 

優花とユエが声を上げて、シアは横腹を抑えながら弱々しくアレスの名を呼ぶ。誰もが、この後の結末に悔しそうに口元を歪めるな中、凛とした声が響く。

 

「すみません。遅くなりました」

 

その声と共に金属音が響く。使徒の振り落とした大剣が受け止められたのだ。それも彼のロンギヌスによって。その声に会場内にいる者、優花達は歓喜した。

 

「安心して下さい。後は、私にお任せを」

 

最強の神官──アレス・バーンの戦線復帰を。

 

 

アレスは自分を襲ってきた使徒をロンギヌスで吹き飛ばすと、優花達の元へと向かう。

 

「遅くなりました。シア殿もご無事で何より」

 

「えへへ〜。今は、もう体が全く動きませんけどね」

 

「アレスさん。間に合ったんですね!」

 

「……アレス、いける?」

 

アレスは三人に感謝を述べると、三人の無事を見て安心するとユエの言葉に力強く頷いた。

 

「ええ、安心してください。速攻で終わらせますよ」

 

アレスはそう言って堂々と歩き出す。そこへ三体の使徒が前に立ちはだかる。

 

「アレス・バーン」

 

「このまま行かせると思いましたか?」

 

「ここで、貴方を足止めします」

 

その言葉にアレスは笑って返した。

 

「ハハッ……なら、やってみなさい? 私のスピードに追い付けたら話です、が」

 

「何を……」

 

その言葉に使徒は寒気をしたが、アレスはそんなを気にせずにロンギヌスを天に掲げると声を上げた。

 

「〝原点(オリジン)・起動〟!」

 

その言葉と共に、ロンギヌスが光輝き魔力の塊に変化するとアレスに纏いだしていく。そして、輝き終わると、現れたのは黄金の軽鎧(ライトアーマー)を身にまとった姿のアレスがそこにいた。

 

「っ、なんですか。その姿は!」

 

人形のような生気を感じられない喋りとは違って感情を剥き出したように驚愕に満ちた声を上げる使徒にアレスは笑う。

 

「これは、原点であり頂点。名を〝ロンギヌス・オリジン〟。これがロンギヌスの本来の形であり力。私はあの魔法結界でロンギヌスの本当の能力を理解し、結界を打ち破りました」

 

アレスの言葉に息を呑み、この場にいる者が全てが沈黙する。それもそうだろう。今のアレスから感じられる魔力の膨大さに……

 

「長話はこれまで、邪魔です使徒共」

 

「なっ、待ちな──「遅いですよ〝光速(ミーティア)〟」──は?」

 

使徒の制止を声を遮るように、アレスは光の速さ並のスピードで使徒達を抜き去りアルマゲドンへと一直線に向かう。対して、使徒はアレスの姿をまともに視認できなかったことに呆気な声が漏れる。

 

「っ、させません!」

 

「通しません!」

 

だが、すぐに思考を切り替え焦りながらも使徒達が前に阻もうとするが、今のアレスにとっては全てがスローのように遅く、最早使徒達は障害ですらない!

 

「遅い!」

 

「くっ!」

 

「なっ?!」

 

アレスは空間魔法も駆使して、光の反射のように普通では有り得ない高速移動によって使徒達を抜き去っていくと一秒も経たずに、そのままアルマゲドンの元へと辿り着いた。

 

「……バイアス。今、終わらせて上げます」

 

アレスはそう悲しそうに呟いあ直後、アレスは覚悟を決め片手を夜空(ソラ)へ掲げる。

 

「っ、やらせますか!」

 

使徒達はアルマゲドンを破壊しようとするアレスを必死に追いかけるのだが……

 

「〝天網(スカイネット)〟」

 

使徒達を囲むように純白の天の網が出現し、アレスの元へ行くのを阻害する。使徒達はすぐにこの天の網に察しがつき、

 

「っ?!……これは天性魔法!」

 

キッと天性魔法の遣い手である優花を睨む。

 

「ふふっ。そんな簡単に行かせる訳ないでしょ?」

 

───天性魔法〝天網(スカイネット)

名前の通り、聖属性の網を展開する魔法であり、その耐久性は遣い手が注ぐ魔力によって変わる。

 

使徒達は網を破壊しようと銀翼や大剣で攻撃を加えるが、優花が不敵な笑みを浮かべて口を開いた。分解もされず傷一つもつかない。

 

「今、私の魔力を全部を耐久にまわしてるから、そんなじゃ壊れる訳ないわ!ユエ、最後はお願い!」

 

「ん!」

 

ユエは今、自分に残る魔力の全てを解き放つ。それは、アレスもアルマゲドンバイアスに終止符を撃つのと同じ刻であった。上空で、アレスは残った魔力を全て夜空に掲げた右腕の籠手に注ぎ込んでいき、声を張り上げる。 

 

「原点抜錨!──〝ロンギヌゥス・オーバーゼロォ〟!!」

 

右腕の籠手から繰り出されたのは、アルマゲドンの巨体を軽く凌駕する程の大きな聖なる槍。強大な光がアルマゲドンを飲み込む。

 

「Dpdjmtmat?!」

 

アルマゲドンは奇声じみた絶叫と共に塵となっていく。その様子をアレスは無言で見詰めていた。そして、謝罪をする。

 

「……バイアス。君をこの手の方法でしか救えなくて済まない。君は私のことを敵意していたが、私は君のことは友達だと思っていたよ」

 

アレスはそう言うと、瞠目して頭を俯かせる。

 

その時だった……

 

───済まなかった。ありがとう。

 

 

そう聞こえた気がしてアレスはバッと顔を上げる。

 

「……フッ、そうですか……バイアス。君のことは忘れないよ」

 

アレスはそう呟き、上空に目を向けながら笑みを浮かべていたのだった……。

 

そして、下の会場でもアルマゲドンが散り散りになっていく様を眺めていたガバルドがボソッと呟いた。

 

「親より、早く死んでじゃねぇよ。バカ息子」

 

少し唇を震わせながら上を見上げるガハルドの拳は血が流れるぐらい強く握り締められていたのであった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

アレスの下でも終わりは近付いていた。目を閉じ、集中力を高めていたユエの目が開き、黄金の瞳が姿を見せる。直後、背後に燃えるような赤色の魔法陣を構成させたユエは、両手を翳す。

 

「……天の焔で燃え尽きろ!〝天照(アマテラス)〟!」

 

ユエが繰り出した魔法は誰が見ても同じことを言うだろう。

 

それは、太陽。莫大な熱と光が、優花の天網で身動きが取れない使徒達へと襲い掛かった。

 

「「「────」」」

 

自身の死を理解したのか使徒達は受け入れるかのように無言で太陽の熱を喰らって魂魄まで溶かされていく。

 

───複合魔法〝天照アマテラス〟

炎系の魔法、光系の魔法を重力魔法で圧縮させることで創り出した魔法を貯蓄する球体に上限にまで詰め込んだのを発動者《ユエ》の好きな時に解放させ、太陽を想起させるような膨大な熱のダメージを与える魔法(簡単に言うと溜め込んだ魔法を発散させる魔法)。

 

使徒達を塵まで燃え尽きたのを確認したユエ。

 

「………流石に無理」

 

「ユエっ」

 

久しぶりの多くの最上級とオリジナル魔法の行使によりフラフラと床へとダイブしそうになったが、天使化クリスタを解除した優花がつかさずキャッチしてユエを抱きとめる。

 

「ふぅ……間一髪ぅ……」

 

「……んぅ、優花?」

 

「ユエ、お疲れ様」

 

「……ん、優花もお疲れ。どうだった?久しぶりの戦い」

 

「まぁ、何とか自分のスタイルを掴めたけど……〝限界突破〟や天性魔法を使い過ぎて……ってやば、足が、おぼつかな──」

 

優花も優花で久しぶりの戦闘や、無理していた為か魔力の底が尽きそうな状態であるため、ユエを抱えたまま倒れそうになったが後ろから誰かに支えられて、その心配はなくなる。

 

「お二人共、無理し過ぎですよ〜。まぁ私もですけど」

 

「「シア!」」

 

優花を支えた人物は、シアだった。しかし、シアもよく見ると今の優花とユエの二人を支えるだけでも限界らしく足がプルプルと震えていた。それを見た優花とユエの二人は顔を見合わすとプッと笑みをこぼす。

 

「なっ、お二人共! 笑わないで下さいよぉ〜。私だってすっごく疲れたんですから!!」

 

プンプンと怒るシアに対して、笑いを堪える二人。

なのだが、

 

「ゴ、ゴメン。小鹿みたいだったからつい。フフッ」

 

「……プルプル兎」

 

「ちょっ、ユエ。それは……アハハハハ!」

 

ユエの言葉に、耐えきれなく笑い声を上げる優花。ユエも釣られて笑う。

 

「なっ、ユエさぁぁん? 優花さぁぁん!」

 

頬を膨らますシアがユエの頬をミュニミュニといじくりまわす。ユエは「ちょっ、やめっ。謝るから」と言うが、シアは「うーりゃりゃりゃっ」と声を上げて手は止まらせずいるユエだが、笑い疲れた優花の制止でようやく止まった。そして、立っているのも疲れるだけということで三人は床へと寝っ転がった。

 

「流石に疲れたねー、今日は……」

 

「……ん、同意」

 

「ですぅ!」

 

三人は笑い合いながら夜空を見上げる。そして、大切な仲間と恋人の帰りを待っているのであった。その日、帝国の夜に横に一条と流れる巨大な閃光と、夜に輝く一つの太陽が現れたのだった………。




───ロンギヌス・オリジン

アレスがロンギヌスに真の所有者として認められて扱えるようになった力。軽鎧の姿で、全ステータスが上乗せされており、武器も魔力で構成することが可能。高速移動が可能。
大技は自分の魔力を左右に装備されている籠手に注ぎ込むこんで集約することで発動する巨大な聖槍〝ロンギヌス・オーバーゼロ〟。
姿はFGOのランサーのビーマの第三霊基をイメージしてください。

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