ありふれた職業で世界最強if優花   作:白San

127 / 188
少し最後の部分を編集しました。


九十九話 黒竜姫VS白祖竜

 

『ティオ』

 

───聞こえる。

 

『ティオ』

 

───あの声が聞こえる度に、あの光景を鮮明に思い出す。

 

『ティオ』

 

───その度に涙を流してしまう。もう泣かないと決めたのに……誓ったのに。心が、妾の本心が求めてしまう。願ってしまう。

 

───あの頃に戻りたいと。

 

『ティオ』

 

次に見えるのは二つの人影。一人は白に近い翠の長い髪に自分と同じ黄金の瞳を持つ女性。もう一人は自分と同じ黒髪に威厳ある佇まいの男性。その姿はティオにとって忘れられない。

 

忘れる筈がない。

 

───自分の両親の姿を。

 

───愛していた。大好きだった。敬愛していた。父上(ハルガ)の声が、母上(オルナ)の声が、その姿が声と共に目に入ってしまうと無意識に走り出してしまう。遠くに行ってしまいそうな二人を焦燥に駆られたように追い掛けてしまう。

 

「父上! 母上!」

 

だが………

 

「あ───」

 

ティオが近付くと、その手を触れると、その瞬間、二人は幻のように、霞のように煙のように消えてしまう。そして、毎度のように理解させられる。

 

───二人はもう居ないのだと。

 

「母上……」

 

───優しく強き美しい竜人であった母は、もう居ない。妾を抱き締めてくれたあの手の温もりは感じることは出来ないと……。

 

「父上……」

 

───民を愛し、国を愛し、母上と妾を愛してくれた強き黒竜である父の姿を……あの愛情に溢れた笑顔を見ることがもう出来ないのだと……。

 

そして、声が聞こえる。聞いたことのあるようで、ないような声がティオに語りかけてくる。

 

〝そんな二人を殺したのは誰だ?〟と。

 

───っ!

 

その瞬間、ティオの心が大きく揺れる。心臓の鼓動が早くなっていくのを感じる。しかし、声はまだ語りかけ続ける。

 

〝恨むのは人か亜人か?〟

 

───違う。人間達は操られていただけじゃ……。

 

〝じゃあ、誰を恨めばいい?〟

 

───父上と母上を殺した。民達の死体を辱めるように磔にしたあの白い竜………。

 

〝その竜は何処にいる?〟

 

───……目の前にいる。神の一柱じゃった。妾達の祖先である始まりの竜人じゃった……。

 

〝じゃあ、尚更だ。殺せ〟

 

───しかし、妾だけでは……

 

〝何故、弱気になる? 目の前にいるんだぞ? 国を、民を、父を、母を殺したあの白い竜がお前の目の前にいるのだぞ?〟

 

───…………

 

〝殺せ!お前に心の中にある復讐の炎を燃やせ!燃やすのだ! そして、その手であの竜を殺すのだ!〟

 

───妾の手で……

 

〝そうだ! お前はなんの為になんの目的の為に生きてきた?強くなった?〟

 

───国を……父上と母上の仇を取るため……

 

〝そうじゃ! お前はその為に生きてきたんだ! 全ては復讐の為!憎きあの竜を殺すため!〟

 

───そうじゃ……妾はっ、彼奴……創獣神オルステッドが憎い!

 

〝そうじゃ。それでこそ妾! ティオ・クラルス! その恩讐の炎で! その牙を以って目の前にいる者を殺すのじゃ!〟

 

───妾は……彼奴を殺す!

 

その瞬間、ティオから溢れ出た負の感情によって黒く黒く深くなった暗い色の魔力がティオを覆い尽くすように纏わりついていく。それは、闇がティオの心を喰らうかのように……。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

〝グルゥゥゥゥゥゥア!!〟

 

帝都の上空。黒と白の竜が激しくぶつかり合っていた。

 

咆哮と共に黒竜(ティオ)の爪が白竜(オルステッド)へと振りかざす。

 

『温い!』

 

しかし、オルステッドは襲いくるティオの爪を巨体でありながらも軽々しく避けていく。

 

〝グルゥッ?!〟

 

そして、避けると同時に尻尾を鞭のように振り回してティオの腹部にダメージを与える。ティオは余りにも不意な反撃に避け切れずに苦悶の声を上げながら遠くに吹き飛ばされる。

 

『決着は早そうじゃな──死ね』

 

オルステッドは追撃するようにブレスを、吹き飛ばされているティオへと放つ。襲いくる白の息吹にティオは吹き飛ばされながらも身を捻りながら体勢を立て直す。

 

〝舐めるなぁぁ!!〟

 

叫びと共にティオは負けじと黒のブレスを放つ。轟音が鳴り響きながら帝都の空に黒の閃光と白の閃光が両者の間で激突し、激しい衝撃波を生じさせる。

 

しかし、最初は拮抗していた両者のブレスであったが……

 

『若いのぅ。いや、その年にしてこれ程のブレスは褒めるべきか。じゃがなっ』

 

ティオのブレスの威力に感心したオルステッドはその才を認めると共にブレスの勢いをかける。すると、次第にオルステッドのブレスがティオのブレスを押し始めていく。

 

『所詮、小娘のブレス。儂にとって温いわ!!』

 

〝っ!〟

 

そして、オルステッドのブレス完全にティオのブレスごと押し込んでいき、ティオの元にブレスが直撃した共に、衝撃で発生して大きな爆発が起こる。

 

『所詮こんな者───ッ!』

 

〝死ねぇぇぇぇ!!〟

 

落胆するオルステッドの虚を突くかのように上から現れたティオから怒号と共にブレスが放たれた。

 

上空から放たれたブレスは、不意を突かれたオルステッドへ直撃して黒いを爆発を巻き起こす。その光景を見下ろしていたティオは口を開く。

 

〝妾のブレスが貴様より劣っていることは知っておる〟

 

そう、ティオは自分のブレスに押し負けることを見越して、押し負けた際に爆発を隠れ蓑にして上へと移動していたのだ。しかし、不意に放たれた黒の閃光をもろに喰らったオルステッドはというと……

 

〝! ぐうっ!?〟

 

ティオの眼では捉えることの出来ない速さでティオの横腹を軽く抉るということで己が健在であることを証明した。

 

『久しぶりじゃなぁ……。ここまでのダメージを喰らうのは……少しお主を舐めすぎていたな』

 

焼けるような痛みに耐えながらティオは見上げると多少のダメージで口元が血で滲んでいるものの白く輝く竜の姿がそこにあった。しかし、違うとすればその胸には何者かに引っ掻かれたと思われる傷痕が見えた。

 

『流石はクラルスの一族の者か……隠蔽魔法で隠していた外皮が破壊されてしまったわい』

 

〝ぐぅっ…………その傷痕はなんじゃ?〟

 

『抉られて頭が冷えたのか。傷痕?ああ、この傷痕か……そうじゃな貴様には聞く権利はあるか』

 

〝………権利じゃと?〟

 

頭に血が昇ってオルステッドを殺すことにしか頭が無かったティオであったが、オルステッドに横腹を抉られたことにより理性を取り戻し、少しだが話せるぐらいには頭を冷やすことが出来たのだ。

 

『そうだ。貴様はこの傷をつけた初代クラルスの王 ガルダ・クラルスの一族の者じゃからな』

 

〝!……初代クラルス?!〟

 

オルステッドのから出た言葉にティオは驚愕する。しかし、オルステッドは気にせずに語る。

 

『奴は、そもそも誇り高き我が子である竜人の癖に他種族と共存で献身などという愚かなことをする。そして終いに奴は更に儂ら神に歯向かうなどという愚行。正に失敗作。だから、儂自ら鉄槌を下した』

 

〝鉄槌じゃ、と?〟

 

『ああ、奴の献身してきた国を儂が創り出した竜で暴れさせ、奴が信頼してきた者達に奴の最愛の妻を殺させた』

 

〝!……ッ、下衆がぁ!〟

 

ティオは憤った。オルステッドの語ったことは全て母のオルナが話してくれた〝聖句の起源の話〟と内容がほぼ同じだからであり、そして、それは真実を捻じ曲げられた話であると理解したからであった。

 

〝貴様は、そんな理由で竜人族を!初代様を貶めたというのか!〟

 

『左様。しかし、奴は絶望しなかった。妻を殺した他種族の者達を、国を壊さずに儂等に歯向かってきたのだ。だから儂が本来の姿(・・・・)で相手をした』

 

オルステッドは胸の傷痕を怒りに満ちた目で睨み、でギュッと肉をもぎ取ろうとしてるかのように強く鷲掴みながら語る。

 

『奴は所持していた五つの神代魔法で抗った。そして、この儂の魂魄に及ぶほどの傷をつけた!これがこの傷だ。再生を使っても治らないほど魂魄に深く刻まれていてな、これ程の屈辱は初めてじゃった!』

 

〝……それで、殺したのか初代様をっ〟

 

『左様よ。傍にいた奴の息子達には使徒達の魅了(チャーム)を使って操り人形にしたのだがな……まさか、聖句によって奴の意思は受け継がれていたとはな。そのせいで、儂の面倒事が増えてしまった』

 

〝っ!……それで、妾の故郷を!竜人国を滅ぼしたのか!〟

 

『その通り。貴様達は、また人の為、自由を得るとかで儂等を殺そうという無謀な計画していたからな。それで滅ぼした』

 

〝ッ……貴様ァァァ!!〟

 

オルステッドの話を聞いたティオは理性を取り戻し、冷えていた頭が嘘のように一変する。

 

───そんな理由で国を滅ぼし、父上を、母上を殺したというのか……許せない。許せない。許せない。許せない。許せないっ。

 

怒りが爆発して暴走状態のティオはオルステッドへと無策にも言えるほどの突貫する。

 

『怒りで、まだ状況が理解してないのかっ。小娘!』

 

オルステッドは自分に突貫してくるティオに再度、会場の際に放った最高熱量のブレスを放つ。

 

『〝熱息吹(ボロブレス)〟!』

 

膨大な熱量を有し全て破壊せんとする威力を持った白き極光のブレスがティオへと迫る。しかし、ティオはスピードを緩めずに更に加速をして向かいくるブレスへ突撃する。

 

『血迷ったかっ。小娘!』

 

ティオの予想外な行動にブレスを放ちながらオルステッドは少し驚きを見せる。そして、愚かな選択をしたティオにトドメを刺そうとブレスの威力を上げようとした時であった。

 

『狂っしまったのならしょうがないっ。此処で貴様の墓場としよう!』

 

〝舐めるなぁ!!──〝風炎鎧鱗(ふうえんがいりん)〟!〟

 

その瞬間、ティオのに炎と風が纏わりつき、竜鱗を更に強化させていく。そして、オルステッドのブレスを突っ込むと、風で身体を全て守っていきながらブレスの中を突っ切って行き、炎で更に加速していく。

 

───複合魔法〝風炎外鱗(ふうえんがいりん)

ティオが編み出した複合魔法。自分の適正属性である風と炎を利用して、竜鱗の硬度を底上げさせる魔法。

 

しかし、この魔法は自分の魔法をただ纏うだけであり、当然、ティオはブレスのまともに受けるが、耐性の技能、ティオの持つ〝痛覚変換〟、再生魔法を駆使して無理矢理、オルステッドのブレスを耐えているのだ。

 

そして、オルステッドのブレスを真っ正面から受けたティオは〝風炎外鱗〟によって膨大な熱と竜鱗が破壊されるレベルの威力のブレスに耐えきり突き抜けた。

 

『なっ?!』

 

〝ァァァァ!──〝壊刻(かいこく)〟!〟

 

『っ?!それっ───ギャァァァァ!!』

 

ティオがブレスを突き破ってきたことに驚くオルステッドに構わずティオは痛みに叫びながらも、オルステッドに急迫して胸の傷に掴み掛かるように触れると再生魔法〝壊刻〟をオルステッドに向けて発動する。その直後、傷が再び再生させられたオルステッドからは魂魄に直接受けた痛みに絶叫する。

 

───再生魔法〝壊刻(かいこく)

対象の過去の傷を再び発現させてしまう魔法。発動させるには半径三メートル以内で直接触れてないといけない。再現させられる傷は術者の魔力の量に比例される。

 

〝これで、終わりじゃぁぁ!!〟

 

ティオは痛みでオルステッドの動きが止まった瞬間に、自信の中で渾身のブレスを傷だらけのオルステッドへと放つ。黒い閃光がオルステッドを飲み込んんでいくと巨大な爆発を起こる。ティオは響き渡る爆破音と共にくる爆風を腕をクロスさせて耐え凌ぐとオルステッドの方を見る。

 

〝やったのか………っう?!〟

 

その刹那、おぞましい寒気がティオを襲う。

 

ティオに伸し掛るのは感じたことも無い程の殺気と重圧。同時に背筋に悪寒が走り冷や汗が溢れ出る。恐怖のせいか分からないが声が出ない。広げる翼が重く感じて今にも力を緩めたら墜落してしまうと錯覚してしまう。

 

『〝壊刻〟……再生魔法か。驚いたそこまで扱えるとは……ここまでのダメージは何千年振りだ。まさか替え(スペア)でもデウス(・・・)に傷付けられた傷まで発現されているとは思わなかった……褒めてやろうクラルスの小娘』

 

そこには傷だらけのオルステッドの姿があった。目に映るのは胸の傷に、体の至るところに切り傷、腹、腕には丸い穴が幾つも空いており、そこからドクドクと血が流れ出ている。誰も見れば分かってしまう。感じ取ってしまう。創獣神オルステッド。

 

彼の神は、あんな傷を受けても尚生き残り続けて最強の竜(・・・・)であると……

 

『〝天竜〟………ふぅ、流石に遊びはやめだ。クラルスの小娘、貴様の名は?』

 

オルステッドはティオに名をなんだと聞きながら小さな白い竜を創り出すと徐々に傷を回復させていく。ティオはオルステッドから放たれる重圧に耐え忍びながら重い口をゆっくり開く。

 

〝………ティオ・クラルス〟

 

『ティオ・クラルス……その名、覚えておこう。そして、誇れ。貴様はこの(スペア)での儂の本気を見れることを!──〝竜神化(りゅうじんか)〟』

 

その瞬間、オルステッドに白い魔力が纏わりついて球体を作っていく。そして、魔力の余波が放たれると同時に球体が割れ現れたのは………

 

「この姿になるのは、何百年振りだろうな」

 

そこには竜の姿はなく人の姿がそこにいた。嫌、人であるが何もかにも違っている。体中には白の竜鱗が覆い、両腕、両足が白く長い鋭い爪が、尻尾が生え、背中には白い翼が生えていた。

 

〝(疾いっ)?!〟

 

驚くのも束の間、ティオの眼からオルステッドの姿がフッと一瞬で消えるとゾッと悪寒が走り咄嗟に左を構えて防御をとる。その瞬間、左に衝撃と腕に痛みが走る。しかし、驚くべきはそこじゃない。

 

〝………ぐうっ!(動きがまるで見えんかったっ)〟

 

見えなかった。動き出す瞬間でさえもティオの目では捉え切れないほどの速さでオルステッドは攻撃をしたのだ。ティオは左腕を抑えながらオルステッドの次の攻撃を警戒する。

 

「ほぅ、この攻撃を防ぐか………しかし、儂の姿は捉えられないようだな」

 

〝!〟

 

ティオは声がする方へ目を向けると腕を組みながら此方を睥睨しているオルステッドの姿がそこにいた。

 

「ティオ・クラルス。貴様の力では儂には勝てん諦めろ」

 

〝黙れ! 妾はっ、貴様を殺す! あの時からずっと誓ってたんじゃ!〟

 

───そうだ。目の前の存在を、父上と母上を殺した彼奴は殺すと決めたんじゃ!

 

ティオの眼には、復讐の炎がまだ宿っている。魔力も黒く黒く染まっていく。目の前の存在をこの牙で、爪で、炎で殺し尽くすまでこの炎は消える訳にはいかない………

 

〝グルゥゥゥゥゥアア!!〟

 

再び、理性を捨て怒りに身を任せたティオがその牙を以ってオルステッドを噛みちぎらんと空を駆けるも、オルステッドはその変わり映えのないティオの攻撃手段に落胆し溜息を一つ。

 

「つまらん。期待した儂が馬鹿だった──〝硬竜〟」

 

オルステッドは迫りくるティオに硬度が特段に高い〝硬竜〟を創り出し盾のようにして顎門を防ぐ。そして、硬竜を手放すとティオの胸部へと強力な蹴りを入れる。

 

〝カハッ?!〟

 

胸骨が折れ、激痛と共に肺から空気が抜け呼吸が出来ないままティオは吹き飛ばされる。しかし、オルステッドの攻撃は終わらず片手を空へ掲げ魔力の渦を創る。

 

「あの吸血鬼の小娘の魔法を真似て見たんだがどうだろう?───〝十天竜〟」

 

オルステッドが魔力の渦から顕現したのは、異なる十の属性を持つ竜の軍勢。

 

「行け我が竜達よ。あの小娘を噛み殺せ」

 

オルステッドの命令に十の竜達はティオを噛み殺そうと猛スピードで迫る。

 

『グルァァァァ!!』

 

竜達はティオに目掛けて、炎のブレス、風のブレス、水のブレス、岩のブレス、氷のブレスなどの十の異なる属性のブレスを放っていく。

 

〝ぐううっ!!〟

 

ティオは吹き飛ばされながらも〝再生魔法〟で自己回復を行いながら迫りくるブレスを避け、ブレスで相殺して何とか耐えているもののジリ貧だ。再び放たれる十のブレスに、流石に全てを対応しきれないティオは、耐性のある炎のブレスだけを喰らうようにしたが、放たれているのは竜のブレス。喰らった時の燃え盛るような熱と傷を抉るような痛みに苦悶の声が上がる。

 

〝ぐうっ……偽の竜如きが舐めるなぁぁ!!〟

 

ティオは痛みに耐えながらも、迫りくる十の竜達に向けて巨大なブレスを放って数体を塵にさせ、そして顎門を以て喉を喰いちぎり絶命させ、鋭利な爪で胴を袈裟斬りに切り裂いていく。だが、残った竜達もティオを喰らおうと体の至るところに噛み付く。しかし、ティオの耐久はオルステッドを除いては竜人族の中では随一の耐久性を誇る硬さ。故に噛みちぎろうとしても硬い竜鱗によってそれは阻まれる。

 

〝グルゥゥア!〟

 

ティオは喰らったダメージを〝痛覚変換〟で自身の受けた痛みを全て魔力に変換させるとと自分に噛み付いてくる竜達をブレスで一掃する。その光景を見ていたオルステッドは……

 

「ふむ。耐久性が下がっている。改良が必要か……」

 

自分の創り出した竜の分析を行っており余裕の姿を見せている。そして、オルステッドは笑みを浮かべるとフラフラと飛ぶティオに話しかける。

 

「まあ、〝十天竜〟の改良は後にして、そろそろ限界だろう? ティオ・クラルス」

 

〝っ………妾は…まだ戦える!!〟

 

ティオは豪語するも、オルステッドの言う通り限界が近かった。横腹を抉られ、無茶な戦いを強いたツケが今になって返ってきてしまっているのだ。対してもオルステッドも相手を嬲る趣味はなくもう一度ティオに問い掛ける。

 

「貴様はよくやった。儂をここまで傷付けた。これは誇ってもいい。故に、楽に殺してやろうと言っているのだ」

 

〝断る!!〟

 

ティオの返事を聞いたオルステッドは溜息を吐いた。

 

「…………そうか。折角、提案してやったんだが……苦しみの死をご所望か。……了解した」

 

そう口にした瞬間、オルステッドの姿が再び消えたと思ったのも束の間、ティオの腹部に激痛が走る。

 

〝ぐっ?!〟

 

防御が間に合わず、そして何も出来ずまま、体中の至る所にダメージを受ける。反撃しようとも、姿を捉え切れず不可能。竜鱗は耐えきれずに剥がされ砕かれていく。腹部、肩を抉られ、至るところには切り刻まれ、左腕は完全に折れてしまっているだろう。〝再生魔法〟も間に合わず魔力も残り少なく、オルステッドの猛攻が再生よりも早く体を傷付けていく。

 

「………見苦しい」

 

〝!……ガッ!!〟

 

オルステッドの姿が見えた思えば、ティオに腹部に激痛と衝撃が走る。よく見ればいつの間にか蹴られていた。竜鱗がひび割れ口からは内蔵が潰れたせいか大量の血を吐き出していた。ティオは抵抗できないまま帝都へと急降下し、コロシアムの方へと落ち、そのまま地面と激突する。その轟音がコロシアムを中心に響き渡り、砂埃が舞い上がる。

 

やがて砂埃が晴れ、半壊したコロシアム内にいるのは人間の姿に戻ってしまったティオの姿だった。身に着けていたドレスはボロボロに破れ、横腹は抉られ、体の至るところは切り刻まれ傷口から大量の血が流れ出ており、碌に体を動かせない状態であった。

 

「っあ……妾は」

 

出血と魔力の底が尽きそうな為、意識が朦朧であるものの僅かに意識を保つティオは、重たい瞼を開けながら上にいるオルステッドの姿を睨みつける。

 

「渋とい。そろそろ見苦しいぞ、ティオ・クラルス。お主との戦いもう飽きた。これで終わらせよう」

 

オルステッドからの両手から白色の魔力が収束されていく。集約される魔力からは膨大な熱を感じ取り、それは〝竜化〟したオルステッドのブレスよりも数百倍の熱量だ。仰向けに倒れるティオは体がもう動けず逃げることは不可能であるため、その光景を見ることしか出来ない。例え、動けたとしても傷のせいで碌に動けず間に合わないだろう。

 

ティオはスッと目を閉じる。そして、思った自分はなんとも上手くいかない人生だったなと……

 

───国が滅びた亡国の王女。

 

───愛していた母と父が殺された哀れな竜人の少女。

 

───憎き宿敵に為す術なく敗れた情けない竜人。

 

「フフっ……」

 

ティオは自分の余りな人生の不幸さについ笑ってしまった。だが同時に、こんな自分を大切な仲間だと傍にいてくれた人達を思い出してし申し訳ないと思ってしまう。

 

『……ティオ』

 

───ユエ、すまぬな。お主との時間は楽しかった。

 

『ティオさんっ』

 

───シア。お主の元気な笑顔は妾も元気づけられた。

 

『ティオ』

 

───優花、妾達のことを認めて、それで仲間以上の家族のように接してくれて妾は嬉しかった。

 

大切な仲間である三人に申し訳なくてティオは口元を酷く歪めてしまう。そして、一番はあの人……彼に謝りたい。強くて、妾を一人の女として愛してくれた彼に……

 

『ティオ』

 

───操られていた妾を救ってくれた。

 

───復讐の為に利用しようと考えていたのに、それすらも受け入れてくれた。

 

───妾を大切だと言ってくれた。

 

───こんな妾を愛してくれた。

 

ティオは彼のことを想うとあの時、あの夜に彼が言ってくれた言葉を思い出してしまった。

 

『言ったろ? 俺は大切な人のためなら俺の全力を幾らでも使うのも惜しまないって……』

 

───嬉しかった。この人と出逢えたことが己の哀れな人生の中で一番の幸運だと思うほどだった。

 

「?」

 

不意に頬に何かが流れているのを感じたティオはすぐにそれは涙だと理解した。しかし、今はティオの流す涙を拭き取ってくれる者は居ない。だからだろうティオは求めるように自然と彼の名を呟いていた。

 

「ご主……ハ、ジメ」

 

「死ね───〝滅竜息吹(デリートブレス)〟」

 

オルステッドが〝熱息吹(ボロブレス)〟を優に超える威力と熱量を持った死の息吹をティオへと放つ。そのブレスは白い死神のようにティオの命を刈り取ろうと急迫する。ティオは自分の死を覚悟して受けようとした時だった。

 

突如に浮遊感を感じる。誰かに持ち上げられている気がした。そして、何故か心が落ち着くような温もりを感じ、一瞬、自分は死んだのかとティオは思ったのだが、体の傷がそれを否定し、自分は生きているんだと分からされた。

 

そう思った時だった。

 

「こんな涙を流しちまってよ……ティオ。前にも言ったぞ? お前に涙は似合わねぇって」

 

苦笑混じりに告げれた言葉。流れていた涙を優しく指で拭ってくれた。そして、ティオは確信した。こんなにも自分の心臓の鼓動を高鳴らせる声の正体は一人しかいない。

 

「ご、主人様?」

 

「ああ、お前の大事な恋人のバジメさんだ」

ティオがゆっくりと目を開けるとそこには、自分と同じようにボロボロであるものの優しい笑みを向けてくれるハジメ(愛しい人)の姿が目の前にいた。

 

「な、んで此処に来たんじゃっ」

 

───そうじゃ。ボロボロのご主人様がこんな所にいたらオルステッドに殺されでしまう。この人はこんな所で死なせていけない人なのじゃ。

 

ティオは何故、こんな死地に来たんだと声を荒あげ怒りを顕にする。しかし、ハジメはティオの頬を優しく触れると表情は変わり真剣な眼差しで告げる。

 

「……言ったじゃねぇか。俺は大切な人の為ならなんだってする。それが俺の信念であり覚悟だ。だから、俺はティオの為ならばなんだってする」

 

「っ?!」

 

その言葉を聞いてティオは幼い頃に母オルナと話していた内容が頭に過ぎる。

 

『ティオ。いつか……そんな貴女にも良い出逢いがあると思うわ』

 

『出逢い?』

 

『将来の旦那様ってことよ? ティオはどんな殿方が好きなの? 私、知りたいわ』

 

『父上みたいに強い殿方……』

 

『フフ。そう、あの人のような強い殿方ね……なら、ティオもそれに担うような女性へとならないとね』

 

『ティオ、これから何年後か分からない。でも、絶対に貴女が想いを寄せてしまう殿方が現れるわ。 私のハルガのような強い殿方をね……』

 

───母上、貴女の言う通りじゃったよ。本当にいたんじゃ……妾を、こんな妾を想ってくれる父上のように強い殿方が。

 

ティオはハジメに抱き着きながら大粒の涙を流す。そして確信するこの人は自分の運命の殿方だと。

 

「ご主……ハジメ、助けてっ」

 

「クハッ……ああ、任せろ」

 

其の言葉を聞いて笑みを零したハジメは、ティオの頼みを快く了承すると、涙を流す愛しのを強く抱きしめた。すると、安心したのかティオはフッと意識が失うように眠る。そんな彼女にハジメを笑みを向ける。

 

「安心しろ、ティオ。俺が終わらせる」

 

そう言うとハジメは、安全な場所へ眠るティオをそっと下ろすと、空を飛ぶ白の竜人──オルステッドを睨み付け。

 

「イレギュラー?!まさか………儂の〝獄竜門縛〟を破ってここまで来たと言うのかっ」

 

オルステッドは驚いていた。殺したと思ったティオが生きており、自分の目の前には結界に閉じ込めた筈であるハジメの姿があるからだ。

 

「ハッ、あんな結界、破ってやったよ。舐めんなよ俺を?」

 

「──っう?!」

 

その言葉の圧にオルステッドは息を呑む。そして、次の瞬間には物凄い重圧が伸し掛かりオルステッドは余りの覇気に少し体がよろめく。

 

「………それに、随分と俺の大切な恋人達を甚振ってくれたなぁ………楽に死ねると思うなよ?」

 

「やれるものならやってみよっ。小童如きがぁ!」

 

ハジメから伝わる怒りと殺意が混ざった圧にオルステッドも負けじと強大な圧を放つ。

 

二人の覇気が激しくぶつかり合う。そしてこの瞬間、創獣神と奈落の化け物の戦いの火蓋が切られたのであった……。

 

作品名を変えた方が良い?

  • そのままで
  • 変えた方が良い
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。