感謝です(*^^*)
帝都の上に広がる夜空を紅いスパークが迸り、悽絶の破壊力を持った弾丸が一直線に目標へと迫る。紅い凶悪な閃光が迫る中、オルステッドは片手を突き出し、形を変容させる。
「〝硬竜〟」
オルステッドはティオの爪やハジメのドンナーシュラークの弾丸をも防いだ硬い竜鱗を持つ竜を創り出し、ハジメの放ったシュラーゲンの弾丸を受け止めようとするが……
「──っ!」
シュラーゲンの電磁加速された弾丸の破壊力の前には竜鱗が耐えきれず硬竜の竜鱗がグシャリと破壊され、オルステッドは咄嗟に硬竜を手放し、その場から離れる。
「まさか、〝硬竜〟がたったの一撃で使い物にならなくなるとは………」
「余所見していいのか?」
「!」
しかし、既に先回りしていたハジメの姿があり、右肩に〝オルカン〟を担いでいた。そして、オルステッドが回避をとる前にハジメは装填された十二のミサイル弾を全弾発射する。
「──〝岩竜〟!」
放たれたミサイル弾がオルステッドへ炸裂するも、オルステッドもすぐざま岩の竜を創り出して盾にするも、二発のミサイル弾に岩竜の竜鱗が容易く破壊され、残りの十のミサイル弾がオルステッドに直行する。
「舐めるなぁ!」
オルステッドは迫まりくる残りのミサイル弾をブレスで一掃。ミサイル弾がブレスで暴発し爆煙が舞う。
「〝轟雷〟」
しかし、ハジメはその爆煙を利用して、魔眼石からオルステッドのいる場所を特定して強力な雷撃を放つ。一直線に向かう紅の雷が爆煙の中を突き抜ける中、向こうが全く動かないことに違和感を感じ目を細めるハジメ。
そして、爆煙が晴れると、そこには魔力で形成された人形。それを見たハジメの目が見開く。
「
巧妙に作られた囮に下唇を噛むハジメ。その時、背中から微かな殺意と悪寒が奔り、後ろへ振り返る。
「ふん!」
「っう!」
そこには尾が刃と化していた竜を剣にして振るうオルステッドの姿。ハジメは咄嗟に体全体を捻じって手に持ち替えていたシュラーゲンを盾にするもその強靭な竜の剣により真っ二つにされてしまい、内蔵されているエネルギーが暴発を起こす。
既にシュラーゲンを投げ捨て爆発から回避したハジメは、一気にオルステッドの距離を離す。オルステッドはと言うと手に持っていた剣の竜を自分の体内に戻すと笑う。
「まさか、気付かれるとはな……侮れんな」
「クハッ……! てめぇも凝った
軽口を叩き合いながら、睨み合う二人。次に早く動いたのはオルステッドだった。地上へ二人の戦いを見るティオの目すら捉えることの出来ない速さでハジメへと急迫する。
「ぐっ!」
ハジメは〝瞬光〟を発動し出来る限りで姿を捉えつつ腕を交差させて、オルステッドの攻撃を受け止める。しかし、その威力は半端なくハジメはそのまま後方へと吹き飛ばされる。
「ほぅ、この速さでも捉えられるとはな───〝
オルステッドは掌から蒼い炎の竜を生み出すと、吹き飛ばせれているハジメへと仕掛ける。
「〝紅狼〟!」
ハジメは吹き飛ばされながらも〝紅狼〟を発動。迫りくる蒼炎竜の顎門を紅いスパークを纏い、雷のような速さで軽々しく回避すると、ホルスターからドンナーを取り出して核を狙って竜を消滅させる。
「お返しだ」
ハジメは〝宝物庫〟から〝クロスビット〟を六機を展開。そして、オルステッドへと出撃させて計百を超えるほどのゼロ距離炸裂スラッグ弾を撃ち込ませた。
ズドォォォォォォン!
直後、帝都の夜天に巨大な光華が満開に咲き乱れる。絶大な威力の衝撃波が離れた位置にいるハジメからも伝わり、スラッグ弾の破片がハジメの頬を掠めた。
「これは……流石に響いたぞ。イレギュラー」
「……化け物が」
しかし、対するオルステッドはゼロ距離で百発を超えるスラッグ弾を受けたというのに、着物が破れるぐらいの擦り傷程度で平然としている様子にハジメは苦笑する。
「これならばどうだ!──〝十天竜〟」
そう言ってオルステッドは、十の異なる属性から竜を創り出し放つ。ハジメは〝宝物庫〟から〝メツェライ〟を取り出し、魔物と使徒も圧倒した破壊の権化を以て此方へと迫る竜達に対抗する。
「沈めてやるよ」
ドゥルルルルルルル!!
笑みを浮かべた直後、独特の回転音と射撃音を響かせ、破壊の始まり合図が鳴り響き、六の砲門から電磁加速された無数の弾丸の雨が竜達に向かって容赦無く降り注いいでいく。竜達の竜鱗が一瞬で破壊し、次々と肉塊にしていき絶命させる。
「……ガトリングだ、と」
オルステッドはハジメの用いた兵器を見て驚いたかんじに呟く。その表情は、警戒心を顕にしている。
「………」
オルステッドは思い出す。
自分の体に無数の傷を負わせた
「ッ!」
瞬間、オルステッドは頭を横に振って自分の拳を握りしめて口元を歪ませた。やがて、竜達を殺し終わると同時に破壊の音も止み、帝都の空に静寂が訪れるとオルステッドは口を開く。
「〝十天竜〟を数秒、か……」
「お、なんだ? 大人しく俺に殺されるをご所望か?」
「ハッ、違うわ。ただ……」
「……ただ?」
「貴様を早急に殺さないといけないと判断したまで」
空気が変わる。一瞬でこの場が重く感じてしまうハジメは息を呑み、集中力が乱れ隙が生じてしまう。そんな隙をオルステッドは見逃す筈がなかった。
「───ガッ?!」
ハジメの腹部に衝撃が奔る。〝金剛〟の発動も間に合わずオルステッドの拳がハジメの腹部に直撃する。ハジメの口からは血が流れ出ている。が、喰らうだけにはいかない。
「むっ」
「グッ、………捕まえた──〝雷──ッ?!」
ハジメはオルステッドが離れる寸前に離れないように腕を鷲掴み、魔法を放とうとするも、〝部分竜化〟したおるステッドの尻尾がハジメへと襲い魔法を放つのを阻害する。
「まだ、儂のターンだ」
「──っ」
オルステッドはハジメの拘束から離れると、フッと音もなく姿を消す。その瞬間にハジメの体中の至るところから激痛が走り、ハジメから苦悶の声が上がる。
「ガッ!」
反撃をしようとも、相手の姿を捉えなければなんも意味もない。全体に雷を放とうとも考えたが、今の魔力量的にそんな無駄な消費はしたくない。しかし、ハジメはオルステッドの高速攻撃を止めれる方法を持っているが、使うべきか悩んでいた。
「グッ……(クソッ。コイツの攻撃の原理が分かるまでは
ハジメは〝瞬光〟を最大限に発動して脳の処理能力加速などで視覚を研ぎ澄ませる。代わりに頭痛が激しくタイムリミットも短いのだが、ハジメは此方に攻撃を仕掛けるオルステッドの姿を捉えた。
「(見えた)!」
ハジメはオルステッドを捉え、そして確信する。オルステッドの高速移動攻撃の原理を………
「クハッ……そういうことか」
不敵な笑みを浮かべたハジメは新たに手に入れた
「………」
オルステッドはハジメの不敵な笑みを見て訝しむが、自分の動きなど読める者は同格の存在しかいない筈がないと自負している。
「(次の手で確実に殺すか……)」
オルステッドはそう思い、ハジメのすぐ傍までと高速移動すると、ずっと痛めつけるために打撃しかしなかったが今回は違う。腕をピンと真っ直ぐにして、剣のようにするとハジメの腹部へと爪を突き刺した。
ピキッ
「グッ……ん?」
突き刺した腕に痛みがしてオルステッドは困惑する。ハジメの腹部へと突き刺したのなら聞こえるのは肉の抉られる生々しい音の筈なのだ。しかし、聞こえたのは何かが割れる音。それに腕の痛み。オルステッドは自分の突き刺した腕を見る。
「なっ?!」
オルステッドは驚愕の余り声が漏れ出た。オルステッドの視線の先には、突き刺したはずのハジメの腹部は服の部分が破けただけで、貫通などしてなく出血すらしてない無傷。逆にオルステッドの方は中指が折れており、爪には亀裂が入っていた。
驚愕の余り硬直していたオルステッド。しかし、それが不覚だった。ガッと腕を掴まれ声を掛けられる。
「……よぉ」
「!───ガっ?!」
オルステッドは距離を取ろうと動くが腕が義手によって完全に掴まれており、脱出は不可能。尻尾でまた、攻撃しようとした時だった。ハジメの右ストレートが腹部に決まり、腹に覆っていた竜鱗すらも破壊されながら吹き飛ばされる。
「グゥ……イレギュラー。貴様はどうや───」
オルステッドは腹を片手で抑えどうやって自分の攻撃を防いだのかと口にしながらハジメの姿を見る。そして、その姿に唖然とし、言葉を失っていた。そして、今度は恐怖と焦りが合わさったような表情をする。
「き、貴様…その姿は……なんだ! なんだんだその姿はぁぁ!!」
「おいおい、神なんだろ? こんな姿でそんな驚くなよ」
声を荒あげるオルステッドに対し不敵に笑うハジメの姿は腕や顔の口元まで彼の
「これは、〝金剛〟の特殊派生技能〝竜鱗化〟。竜人族の固有魔法〝竜化〟が変質化したものだ」
───特殊派生技能〝
ハジメの持つ〝金剛〟が特殊な条件によって派生された技能であり、竜人族のように竜の姿にはなれないが、体全体に竜鱗を覆うことができる。
そして、竜鱗の硬さは消費する魔力量によって変化する。
それを聞いたオルステッドは信じられないといった顔をするが、ある推測が脳内に浮かぶ。
「特殊派生……竜鱗……まさかっ。イレギュラー貴様!」
「おっ、気付いたか?」
「まさか、我が結界に囚われた時、儂の竜達を喰らったな?」
「正解」
オルステッドの言葉に、ニヤッと笑みを向けながら答えるハジメ。そうオルステッドの言うようにハジメは結界内にいる時に竜達を喰らいながら戦っていたのである。
しかし、ハジメはオルクスの奈落の魔物を喰らっても地上の魔物を喰らってもこれ以上の強化はされないとされていたのだが、オルステッドの創り出した竜達はどれもオルクスの奈落の魔物達と同等のレベルであり、
「……んな訳でサンキューな、オルステッド。てめぇのおかげでまた俺は強くなれた 」
笑みを浮かべて説感謝を伝えるハジメにオルステッドは最初は放心したかのよう沈黙だったが、体がプルプルと震え出す。
「…………そうか。儂が貴様を強くさせてしまったか……そうか、そう、か……ハハッ、ガハハハハハッ! アッハハハハハ!!」
オルステッドは声高らかに笑い声を上げる。
「ハハハッ。じゃあ反撃をしたのも、儂の高速移動の原理も理解したからであろう?」
「あぁ、アレ空間魔法の応用だろ? 俺がてめぇを目で捉えた時、てめぇは速い動きをしてるんじゃなくその場で消えて俺の前に再び現れた。そして、このことが可能なのは〝空間魔法〟のゲートだけだ」
ハジメの言葉にオルステッドはウンウンと頷き、ハジメはそのまま言葉を続ける。
「だから、てめぇはゲートを即展開しながら攻撃をしていたんだろ?魔力感知もしてみたら、攻撃にくる際に異様に魔力の乱れを感じた。それを感じ取ればてめぇの移動先はなんとなく分かるってことだ」
「正解だ。よく分かったなイレギュラー。褒めてやろう」
オルステッドは拍手をして、ハジメの推測を肯定した。そして、段々と声音を落としていき、圧を感じさせる。
「だが、それだけだ。それに此の一戦でよく理解した。南雲ハジメ、貴様はこの
そう告げるとオルステッドに白い魔力の奔流が溢れ、直後、オルステッドの魔力の急激な上昇を感じ取ったハジメは目を細めた。
「イレギュラーよ。堂々と死合おうぞ」
「ハッ……殺れるもんなら殺ってみろ?」
白色の魔力の奔流を放ちながら、そう言葉を投げかけるオルステッドに、ハジメも笑って返しながら自身も〝限界突破〟を発動する。
ハジメから紅い魔力がハジメを覆っていく。そして、紅の魔力が背中に紅い竜の翼を生やす。
───特殊派生技能〝
ハジメの待つ〝纏雷〟から特殊な条件によって派生された技能であり、魔力によって翼を生成する。翼の色は本人の魔力の色によって変化する。
ハジメから生えた紅の翼を見てオルステッドは口を開く。
「………それも、儂の竜を喰らって得た力か?」
「ご名答。これで俺もちゃんとした飛行能力を手に入れたってわけだ」
ハジメの言葉にオルステッドは嘲笑うかのように返答する。
「ハッ、翼を得て半日も経ってない小僧が、創獣神である儂に追い付けるとでも?」
「追い付くさ。奈落の化け物を舐めんな」
「……小童が」
「……クソ駄竜が」
オルステッドは更に両腕を巨大化させる。ハジメはホルスターからドンナーシュラークを取り出し、ガンスピンをして腕を交差しながら構える。互いが顔を見合わせた瞬間、紅と白が同時に物凄い速さで閃光かのように動き出した。
夜天の空を二条の閃光が空を駆け抜けぶつかり合う。離れてぶつかる。離れてぶつかる。という動きを何度も繰り返している二色の閃光。
二つの閃光の正体であるハジメとオルステッドは凄まじい速さでぶつかり合うと、ハジメは〝竜鱗化〟と〝集中強化〟を纏わせた足でオルステッドへ蹴りを入れ、オルステッドはその強固なる腕を交差させてハジメの蹴りを受け止める。そして、オルステッドは即席に創り上げた竜の群れを襲わせるも、ハジメが神速のような速さで放った十二の紅い閃光の弾丸の雨が竜達の頭などを吹き飛ばす。
互いに至近距離で、ハジメの武器や魔法を、オルステッドの竜達や強靭な爪を躱し、逸らし、弾きながら呼吸をするのを忘れるほど攻撃を繰り返し、その攻撃で生まれる衝撃波によって二人は互いに傷を負う。
「おぉおおおおおおおお!!」
「うぉおおおおおおおお!!」
いつの間にか、ハジメとオルステッドの二人は戦いに集中してか雄叫びを上げていた。
たったの一ミリ体を傾けなかったら、一秒遅く動いていたら次の瞬間にはハジメの敗北が確定する。互いの己の本能と経験だけを頼りに見事な攻防を繰り広げていた。
オルステッドが腕を大きく肥大かし、そのまま振りかざすもハジメはドンナーシュラークの二丁に〝金剛〟と〝集中強化〟を掛け二丁の銃を交差させて、オルステッドの攻撃を防ぐが、その途轍もない重さが加わった重撃に右腕の骨が軋むのを感じハジメは苦い顔をする。
「グッ──〝紅雷玉〟!!」
すぐさま、距離を取るべきだと判断したハジメはオルステッドに蹴りを入れると、そのまま紅いスパークで形成された十の紅の宝玉を撃ち込んでいく。そして宝玉達は目標へと接近した瞬間、周りに紅いスパークの爆発が起こる。
「……チッ、どんだけ硬いんだよ」
爆風が止み、ハジメはオルステッドの方向へ目を向けると、オルステッドは翼で自分を繭のように包み込んで爆発を防いでいた。そして、爆発が終わったのをわかったのか翼を広げ、オルステッドの姿が現る。多少のダメージを受けているのが分かるがどれも致命傷には至っておらず、その頑丈さにハジメは舌打ちする。
「……流石だイレギュラー。貴様のその強さは人の部類として狂っている。……いや、もう人ではないかもな。しかし、もう限界だろう?」
「……何が言いてぇ?」
称賛を送るオルステッドにハジメは殺気を飛ばしながら睨みつけるも、オルステッドはそんな殺気を気にすることなく話を続ける。
「つまり
「ハッ、俺に怖気付いただけだろ? クソ駄竜」
「口はよう回るようだが……体はどうだろうだろうな?」
「何を────ッ?!」
突然の痛みと衝撃にハジメは驚愕の余り言葉を詰まらせる。そして、目の前には離れていた筈のオルステッドが目の前におり、突き出された拳はハジメの腹部を捉えていた。
「反応速度が鈍ってきているぞ?」
「──カハッ(空間魔法は使ってなかったはず)?!」
空間魔法を使った痕跡がなく、どうやって距離を詰めたのか分からず驚愕するハジメに対し、オルステッドはハジメの心を読んだかのように意味ありげな笑みを浮かべて答えた。
「空間魔法を使ってなくて驚いたのだろう? アレは、この
「なっ───ガァッ!?」
告げられた真実にハジメに動揺が現れ、反撃しようとも銃が震えで射線がブレる。その隙に、レールガンの速度より速く動くオルステッドは、ハジメを上空から大地へと叩き落とした。
何も出来なかったハジメは、そのまま落下していき、数秒後、大地がひび割れる轟音が響き渡った。
その光景を上から見下ろすオルステッドは見詰めながら溜息を一つ。
「はぁ……やはり人は人であったな」
それは、落胆の言葉であった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ガハッ………」
地上へ急降下するハジメは流石の〝竜鱗化〟でも、上空から地面に激突する衝撃波耐えきれず激痛と共に大量の血を吐くハジメ。
そして、頭をぶつけた為か意識が朦朧となる中、誰かが己の名を呼ぶ声がした。
その人物は名を呼びながら倒れるハジメの肩を揺さぶる。
「──メ!!」
───誰だ?
「──ジメ!!」
───この安心する声。そして、この温もりは……
「ハジメ!!」
「ティ、オ」
確かに名を呼ぶ声が聞こえたハジメは、痛みに耐えつつ重い目を開けて視界に捉えたのは大切な
ティオが涙を流す姿にハジメは重い右腕を動かし、そっと涙を流すティオの涙を拭い取って、優しく笑みを浮かべる。
「泣くなティオ。俺、は大丈……グゥッ」
「ハジメ!そんな怪我で無闇に動くでない!」
ティオの言う通り、今のハジメは〝限界突破〟も切れ、副作用である倦怠感もあり、魔力も体も結界内の多くの竜達とオルステッドとの戦闘でボロボロであった。
「だ、が……オルステッドが此処に……」
「駄目じゃ。そんな体で更に無理したらハジメが死んでしまう。だから妾が時間を稼ぐ。だからハジメはその隙に逃げるのじゃ」
「なっ、ティ、オ。おま、何を───」
言いかけるハジメの口をティオは自分の口で塞いだ。互いの唇が、二秒、三秒と重なり合い、そして離れる。
「ティオ」
ハジメは見る。ティオの慈愛に満ちた笑みを見て何をしようとしてるのかを………。
「おい、ティ───っ」
呼び止めようとするハジメ。しかし、その前に上から此方に向かう圧に言葉を詰まらせてしまう。
「ほぉ、小娘。生きておったか」
その声の主はオルステッド。ハジメを支えるティオの姿を見て言葉を漏らすのであった。
「しかし、何故、貴様が此処に? 生きておれば逃げればいいものを………邪魔だ。儂が用があるのはイレギュラーだけだ」
「………」
「なっ、ティオッ」
その言葉に、ティオは無言で立ち上がるとハジメの言葉を無視してオルステッドから守るようにハジメの前に立った。その光景にオルステッドは目を細める。
「なんの冗談だ小娘?」
「冗談もなにもお主の相手は妾じゃ」
ティオは笑みを浮かながら告げると、オルステッドは溜息を一つする。
「何を言うかと思えば……
「フッ、ハジメが神々の脅威だからってそんなに殺したいとは………お主の主のラーゼンは相当の怖がりらしいようじゃの?」
そんな煽りの言葉に、オルステッドから今まで以上の重圧が伸し掛る。ティオはその重圧に体が震えるもその足は一歩たりとも微動だにしない。すると、ティオへ殺意を込められた声音で口を開く。
「そうか。そうか……小娘。貴様はそんなに死にたいのだな? 良いだろう。貴様を先に殺してやる」
オルステッドはそう言いながら、標的をティオへと変える。自分の偉大なる主を馬鹿にされ、その目は怒りに満ちていた。
ハジメは体を無理に動かして片膝を突く状態になるとティオに話し掛ける。
「ティオ! 止めろっ。俺は、お前の命を犠牲にして、生きたくねぇ!!」
「………ハジメ。お主には妾以外にも、シア、ユエ、そして優花がおる。三人が妾の分まで愛して支えてくれる」
「……止めろ」
───そんなことは聞きたくない。
「まぁ……もう少し、ハジメと優花達と一緒に居たかったがのぅ」
「なら、俺も一緒にっ………」
───そんな顔をしないでくれ。
「駄目じゃ。ハジメも妾も、もう満身創痍。それに奴は、こんな妾達で倒せる相手ではない。なら、妾は神共に対抗できるハジメをこの身を犠牲にして生かすまでじゃ」
「……だから、俺はそんなのを望んでねぇ!」
───止めろ止めろ止めろ!
「妾は、ハジメに会えて幸せじゃよ」
その言葉にハジメは言葉を失う。そして、魔力を収束させていたオルステッドが口を開く。
「もう、最後の会話は終わりか?ならイレギュラーと共に死ね───〝
オルステッドがそう告げながら白き滅びの息吹を放つ。膨大な熱が辺り一帯を滅しながらティオとハジメに迫る。そんなブレスを物怖じとせずティオは前に立ち、愛おしく透き通る声でハジメの名を呼ぶ。
「ハジメ」
ハジメはその声に反応して顔を上げる。そこには、優しく微笑んだティオの姿だった。
そして………
「こんな妾を愛してくれてありがとう」
そう告げて微笑むティオの姿にハジメは悔しそうに顔を歪めながらも片手を伸ばす。
───止めろ。
───止めてくれ。
───そんな顔をしないでくれっ。
───俺は大切な人の為に力をっ。優花を、ユエを、シアを……そしてティオを守る為に俺はっ……
その時だった。あの声がハジメの頭に再び響きだす。
『俺の力を使え。大切な者を──神──殺す為に』
───てめぇの力を使えば、アルヴの時のようにアイツに勝てるのか?
『あぁ───絶対─だ』
───なら、その言葉を信じる。てめぇの力は禁忌とか関係ねぇ……。
〝ご主人様〟
ハジメはティオの姿を、彼女の笑顔を思い浮かべる。
───俺はティオを守れるなら……禁忌でもなんでも使ってやるさ! だからっ
『許可する──お前は──俺が選んだ──だから、神など──せ』
───俺は勝つ!!
その瞬間、 オルステッドのブレスが相殺された。激しく乱れるほどの強大な紅色の魔力によって……
「えっ───」
「は?」
その様子を見たティオは声を漏らし、オルステッドは信じられない光景を見て、開いてる口が塞がらない。
瞬間、ティオの耳元に彼の声が聞こえた。
「ティオ。見ていてくれ」
それは、自身を落ち着かせるような優しい声色で、ティオはその方向へと振り向くがハジメの姿はなかった。
そして、同じタイミングにオルステッドの腹部に衝撃がくる。
「ガハッ?!」
強烈な一撃で空高くに殴り飛ばされたオルステッド。そして、その後を紅い閃光が追い掛けていた。その様子を見ていたティオは、彼の名を呟いた。
「ハジメ」
紅の閃光を見たティオ。今、頭の中は自分を想ってくれる嬉しさとちょっとした怒りがある。
だが、今のティオはそんなことはどうでも良くなり、唯、願うだけ………
「勝って」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
吹き飛ばされたオルステッドは殴られた腹部を抑えながら此方に向かう男に怒りを感じながら話す。
「イレギュラー。まさか儂のブレスを相殺するぐらいのそ力が残っていたのは驚きだ。だが、それで儂に勝てると思うか?」
「………うるせぇよオルステッド。てめぇは俺に負けるそれだけだ」
「何を────」
ハジメの言葉にキレたオルステッドはハジメの方を見て、その姿に言葉を失い、呼吸が荒くなる。ハジメはオルステッドの表情を見て話し掛けた。
「なんだ?悪夢を見たような顔をして?」
「……か」
「あ?」
「やはり、イレギュラーの中に存在していたのか! デウス!!」
オルステッドは叫ぶ。ハジメの姿を見て、今のハジメの姿は義手が変形し悪魔の腕のような禍々しいフォルムへと変化し、義手からハジメの肉体を侵食するかのようにハジメの耳元ぐらいまで機械が纏わりついていた。
ハジメはオルステッドの叫びを気にせず、銃剣の形となったドンナーD.MとシュラークD.Mを構える。
「デウスがなにがなんとか知らねぇが俺はてめぇを殺す。それだけだ」
「黙れぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
オルステッドは加速してハジメへと急迫する。しかし、ハジメはオルステッドの動きを読んだかのように飛んで宙りしながら回避すると、上から背中へと十二の紅い牙がオルステッドを襲う。
「ガッ?!」
オルステッドは背中を抑えながらハジメを見る。ハジメは煽るかのように片手を出しすと指先をクイックイッと曲げる。
───相手してやるよ?
言葉を失ったオルステッドの額に青筋がくっきりと浮かび上がった。
「……ここまで儂を愚弄するとはな……イレギュラー。絶対に貴様は殺す!」
「クハッ……なら、やってみろよ?」
オルステッドの言葉に軽々と返すハジメ。刹那、閃光がぶつかり合う。再び、帝都の夜天を二つの閃光が駆け抜けぶつかり合う。それも、前よりも獰猛で激しく。
「デウスゥゥゥァ!!」
オルステッドが叫びながら更に巨大化させた剛腕でハジメへと振りかざす。しかし、ハジメは平然と義手で軽く受け止める。
そして、片方の手に持っていた銃剣ドンナーDMに〝竜鱗化〟と〝集中強化〟、紅いスパークを纏わせ、空を切り裂くように振り下ろし斬撃を放つ。
「ガアァっ?!」
オルステッドの竜鱗を難なく切り裂かれ胸から斜めに血が吹き出る。竜の鱗を切り裂くほどの斬撃。オルステッドの怒りのボルテージが更に上がる。
「ッ!………舐めるなぁぁぁぁぁ!!」
オルステッドは十を軽く超える竜達を創り出すと、一斉にハジメに向かってブレスを放つ。ハジメは迫りくるブレスを避ける気配はなく〝宝物庫〟から〝メツェライ〟を取り出す。オルステッドはその様子に声を上げる。それに対するハジメはメツェライを構えると口を開いた。
「血迷ったかぁ! デウス!!」
「〝
その言葉と共に、メツェライが変化を始める。前回の王国で見せた禍々しいフォルムと違い六つの砲門は一つの砲門へとなっていた。
───対殲滅用兵器メツェライ・ブラスターD.M
ハジメが引き金を引くと、六つの砲門が回転して紅いスパークが一つの砲門へと蓄積されていく。
そして、
「──ファイア」
その瞬間、巨大な一筋の閃光が空を駆け迫りくるブレスの群れをいとも容易く飲み込み、そのままオルステッドの方へと駆けていく。
「クゥゥっ!」
オルステッドは竜達を犠牲にして、なんとか巨大な閃光に呑まれずに回避する。ハジメの方はたったの一発で耐えきれなくなったのか砲門が溶けてしまって使い物にならなくなっていた。ハジメはメツェライを〝宝物庫〟に戻すとドンナーD.MとシュラークD.Mを持ち直す。
睨み合う両者。
そしてお互いに一瞬で距離を詰めると再び接近戦が始まった。ハジメは二丁の銃剣に〝風爪〟、〝轟雷〟を纏ってオルステッドに斬り掛かる。オルステッドも二つの刃を片腕に魔力を集中させ耐久性を高めるも、相手の武器は銃剣。片腕を封じられた状態で紅い閃光が撃ち込まれるも、体全体を捻るようにして回避する。
バジメはその隙にドンナーD.MとシュラークD.Mに〝衝撃変換〟をかけオルステッドを吹き飛ばすと、今度は足に〝轟雷〟と〝風爪〟を纏わせると、虚空を蹴り上げ、雷と風の刃をオルステッドへと飛ばす。オルステッドは即席に創り出した竜を盾にして刃を防ぐ。
お互いに致命打を与えきれず、拮抗する状態。斬り掛かるも防がれ、ブレスを放っても避けられる。魔法を放っても相殺される。そんな攻防を永遠に続きそうな勢いで行っていた。しかし、お互いに切り傷や抉られた箇所から血を滴らせていた。
「はぁ、はぁ」
「ふぅ、ふぅ」
呼吸だけでも、息が荒れキツく感じてしまう。
「クハッ……」
「ガハハッ……」
しかし、笑ってしまう。自然と笑みを零してしまう。楽しいのだ。この戦いを……殺し合いを、命の削り合いをお互い楽しんでしまっているのだ。
「イレギュラー。そろそろ終わりにしよう」
「同感だ。俺もそう思っていた」
笑みを浮かべ合う二人は、最後に自分の全力をぶつける。オルステッドは残りの魔力を全て収束させていく。ハジメは〝宝物庫〟から漆黒の大槍〝神喰らい〟を取り出す。そして、義手の方で持つと槍の形が凶悪なフォルムへと変化していく。
「白に染まり朽ちよ──」
「〝
静寂となった空に響く二つの声。刹那………
「〝
「──起動〟!!」
オルステッドは白き滅びの終末の咆哮を放ち、ハジメは紅いスパークが放つ漆黒の大槍を雷霆の如き轟音を鳴らしながら解き放った。その反動により元々、限界がきていた義手がバキンッと軋む音が鳴った後に義手の二の腕部分から崩れ落ちた。
ゴォォォォォォォォォ!!
白の終末が、紅いスパークを放つ漆黒の大槍が帝都の空を切り裂くような轟音を鳴らしながらぶつかり合う。終末が槍を溶かさんと言わんばかりに膨大な熱を放つ。大槍も貫かんとするが、押され気味になっていた。しかし……
「貫けぇぇ!!」
その言葉が、ハジメが無意識に……いや、何かしらの力が働いて強制的に〝神喰雷槍〟に付与されていた魔法が発動する。
───擬似概念魔法
【
「なぁ?!」
オルステッドが声を上げる。ハジメが放った大槍が言葉の通りに、己が放った白の終末の咆哮を真っ二つに切り裂くように貫いていっているのだ。其れは決してスピードが下がらず、まるで魂が吹き込まれたのか意思すら感じさせる大槍に、オルステッドは原因を察して口元を歪める。
「そうか擬似的な概念魔法の作成……貴様が中にいるなら当然かデウス───」
独りでに呟くオルステッド。そして、続きの言葉を言う前に、いや言わせない為か白き終末を破った大槍がオルステッドを襲う。その瞬間、オルステッドは確信する。
────自分の敗北を……。
大槍が〝神喰雷槍〟が名の通りに神を喰らった。オルステッドの左の上半身を吹き飛ばしたのだった。
「っと…………ふぅ」
その光景を見詰めていたハジメは体からフッと力が一気に抜けフラつく体を気合で踏みとどませ大きく息を吐いた。すると、半身を失い完全な致命傷を受けたオルステッドがハジメに近付いてきた。
「っ!」
「そう構えるな。もう儂の魔力も残っておらんし、この傷ではもう戦えん」
オルステッドが近付いたことに壊れかけのドンナーを構えるハジメだが、オルステッドが戦う意思がないことがわかると武器を下ろした。
「……なんの用だ?」
「なに、ただ儂は貴様を認めに来ただけだ。イレギュラー南雲ハジメ貴様の名は覚えておこう。今回は貴様の勝ちだ。だが、覚えておけ……次は儂が勝つ」
「クハッ……やってみろ? 次も俺が勝つ」
オルステッドの言葉にハジメは目をギラつかせ不敵な笑みをしながら返答した。
「クッ、クハッ……ガハハッ!! そうか楽しみ貴様との再戦を楽しみに待っておるぞ。南雲ハジメ!!───」
オルステッドは笑ってそう告げると、瞳に光が無くなる。それはまるで、使徒のようで、目が虚ろ、人形のように動かなくなるとグラりと体を傾け帝都へと落ちていくのだった。
ハジメはオルステッドが落ちる姿を眺めるていると自分にも限界を迎えたようだった。
「っやべ、体が………」
体が動かず、魔力も底に尽きてしまったハジメはフッと空から崩れ落ちる。このまま地面に激突すれば死ぬだろう。しかし、体が動かない。なんとか死なないように対策を考えている時だった。
「ハジメッ!」
声がする方へと目を向けると部分竜化で竜の翼を広げたティオがハジメの名を呼びながら両手を伸ばしていた。ハジメも骨が折れている右腕を踏ん張りながら伸ばし愛しの竜の名を呼ぶ。
「ティオ!」
二人の手が合わさったと同時にティオがハジメを抱き締めると、そのままティオのおかげで無事に地面へと着地する。
「ティオ助かっ──「馬鹿!」──グオォッ」
お礼を言おうとしたハジメにティオの罵倒混じりは強く抱き締められた。そのせいで折れた骨に響き痛みに悶える。
「何故?一人で戦ったのじゃっ馬鹿!ハジメは馬鹿じゃ!大馬鹿者じゃ!」
「……ティオ」
ハジメに抱きつくティオは胸元に顔を埋めながら涙を流す。
「……でも、嬉しかった。妾の為にあんなに命を削り合いをしてまでも妾を守ってくれた姿に見蕩れてしもうた。……だから───」
───自分を守る為に戦う彼の姿。彼が放つ紅い魔力がとても魅力的で心が高鳴り目が離せなかった。そして、実感させられた。自分が如何に彼に惚れ込んでいることを。
ティオは顔を上げ、両手の位置を首の後ろに移す。そして、顔を赤くさせながら彼の唇に自分の唇を合わす。そして、唇を離すと笑みを向けた。
「ハジメ、ありがとう。愛してるのじゃ」
「ああ、俺もティオを愛してる」
ハジメも笑みを浮かべてそう言うと、二人はそのまま見つめ合って抱き締め合う。そして、フッと糸が切れたように地面に倒れ、意識を失ったように眠りについた。だが、二人共も離れないと言わんばかりに抱き締め合っているのであった……。
アーティファクト説明
ドンナーD.M&シュラークD.M
ハジメの愛用のドンナーとシュラークが何かの力によって形が変形し銃剣となった。
近接戦闘での有用性が上がり、レールガンの威力も更に上がった。
イメージとしてはFGOのエミヤ・オルタの干将莫耶。
後二話ぐらいで六章は終わりです(*^^*)
作品名を変えた方が良い?
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そのままで
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変えた方が良い