何か、予定していた話数よりも長くなりそうです深淵卿編( ̄∇ ̄*)
『──、────』
誰かが呼んでいる。そんな気がした青年。遠藤浩介は寝ていたのか閉じた目を開けた。
『は?』
『おい、浩介。何、ぼーっとしてんだ?』
其処には、帝国に行っていたはずのハジメの姿があり、自分の向かい側の席で自分の反応に対して心配と疑問に感じているような表情をしている。
『いや、え? は?』
よく見れば、ハジメの服装は黒のコートではなく半袖でジーパンという姿で、自分もよく見れば自分の天職である〝暗殺者〟に合ったような黒ずくめ姿だったのだが、今は異世界召喚される前に着ていた私服姿だった。
『そうよ浩介?どうしたのよ?』
『まさか、此処に来る途中に変なの食った?』
『浩ちん、拾い食いしたの〜』
混乱する浩介だったが、よく見ればハジメの隣には、自分を心配そうに声を掛ける優花の姿があり、自分の両隣には妙子と奈々の姿があって、いつもの仲良し幼なじみ五人組が揃っていた。しかし、浩介は此処で新たなことに驚くも声に出さないようにして目を見開いた。
気が付いたのだ。目の前に映るハジメは、
そして……
『(なんで俺は〝ウィステリア〟に居るんだ?)』
そう、自分は妙子と奈々と共に神代魔法を手に入れる為にライセン大迷宮の攻略の最中であるのだ。しかし、目に映る光景は、幼なじみの優花の実家兼レストランである〝ウィステリア〟の店内なのだ。自分もハジメ達と同じように何度もお手伝いしたし、遊びに来るので間違える筈がない。
しかし、そんな情報だけでは何も意味を成さない為、浩介は眠る前のことを思い出すために頭をフル稼働させる。
『(確か……俺達三人共、疲労困憊で主にストレスが原因だが……そして、トラップが無いか念入りに調べた部屋で休息を取っていたはずだ)』
浩介は思い出す。そして三人共、〝宝物庫〟に入れておいた食料を摂ってから幼なじみ二人を早めに休ませ、自分は何が起こるか分からないため、寝ずの番をしていたのを。そして、その時に頭を響かせたかのように聞こえたのだ。
《君はいつまで強がるんだい?》
声が……
《君は何の為に演じる? 何を得たいんだ?》
心が、頭が、同時に疼く。自分の核心を打ちあて、冷めるような声音で響く声が脳内に直接刺激する。
《強く演じて何がある?待っているのは自分にとって相応しくない試練の壁だというのに……》
やめろ。と言おうとしても口が思う様に動かない。声が出ない。
そして、自分の目の前が真っ暗になっていった。
『(そうだ。俺はあの声に……)』
『浩介?』
『(でも、あの声は? 俺に何かを伝えるため?)』
『浩介?』
『(でも、俺……あの声が誰だか分かんねぇし、それに俺、あの声に人格否定みたいな言葉を言われるがまま言われて逃げられた気分で、なんな悲しくなっちゃう。夢だと思うけど……)』
『『浩介(浩ちん)!!』』
『?!───あ、あっ! ゴメン考えごとしてたわ』
これは、夢か何かの類いだと浩介は考えていると両隣から呼ばれ、ビクッとするが、自分が何度も名前を呼んでも反応しなかったことを知ると、すぐに二人に両手を合わせて謝罪する。顔を上げると四人共、心配そうに浩介を見ている。
『浩介。お前、もしかして夏バテか?』
『(夏バテ?)いや、違うって。昨日、徹夜でゲームしてたから眠かっただけだって』
『そうか、体調悪くなったら言えよ?』
『ああ、分かってるって』
心配そうに言うハジメに浩介は本当に自分は良い親友を持ったと思いながら適当な理由をつけて笑って返すと、話題を変えるかのように奈々が四人に話を持ち掛ける。
『ねぇ!今回の夏休みは何処に行くことにする?!』
『そうだなー、考えてねぇわ』
『そうねー』
『暑いし、ハジメの家でダラダラする?』
『おい、俺の家でかよ』
『いいじゃない? ハジメの家にしか沢山のパーティーゲームとか人数分のゲームコントローラーがないし』
『賛成ぃー』
『おい、俺の許可を取れ。許可を』
奈々の夏休み何処行くか?の発言から、段々とハジメの家でダラダラしようという話になっていく。本人の確認を無視しながらだが……
しかし、奈々は『えぇー』という顔をする。
『ねぇ〜、折角の夏休みだよ? お出かけしようよぉ? 宿題も終わったんだし〜』
『それ、大体は私とハジメのおかげだけど?』
『うぐっ』
『だな。奈々は俺達のノートを写してくらいだしな』
『うっ』
『そうね。後、こんな暑い日が続いてるのに遠出は控えたいしね』
『はうっ』
『後、思い出したんだが、そろそろ父さん達がまた皆でバーベキューで海に行くって企画してるんだとよ?』
『そいえば、愁さんとお父さんがそんな話をしてたわ』
『アハハ〜、愁さんも凄いよね』
『ああ、俺もある意味で尊敬はしてるよ』
『じゃ、夏休みのお出かけはそれにして、ハジメの家にレッツゴォー〜』
『おー』
『だから、俺の許可を取れよ』
『うぅ〜』
三人の一言一言にダメージを喰らった奈々は、最後には、話題を変えられ、自分の提案が完全に潰えると情けない声を出しながら浩介にギュッと抱き着いた。
『うわ〜ん、浩ちぃん〜!!三人が私を苛めるよぉ!』
『(夏休みなんだな……)』
『浩ちん!』
『ん、あー……ま、今日はハジメの家で良くね?』
四人の話から今は高一の時の夏休みだと理解した浩介は奈々への返事を適当に返すと奈々は裏切ったなぁ!みたいな目で浩介を見る。
『えー、浩ちんもタエ達側〜?!』
『だって暑くね?』
『はぁ?! 浩ちん、弱男めっ』
『なぁ、喧嘩売ってる?』
そっからはギャーギャーと浩介と奈々が言い合いが始まりると向かい側からハジメが頬杖つきながらジト目で見ながら口を開く。
『おい、浩介もだが俺の許可を取れよ……』
『え、もう菫さんに連絡してOK貰ったよ?』
『は?』
ハジメがそう言った直後、いつの間にかスマホを出してハジメの母である菫に連絡を取っていた優花に、ハジメはポカンとした表情で優花のスマホをまじまじと見る。
『はぁぁぁ?!』
『じゃっ、ハジメの家にゴー!!』
『ゴーじゃねぇよ!』
『ハジメっち、ドンマイ!』
『よし、家に着いたら全ゲームで奈々を狙う』
『えぇぇぇぇぇ?!』
ハジメから宣告されたことに奈々の絶望の叫びが店内に響く中、笑いが起こり浩介もつられるように笑う。
『(ああ、懐かしいな)』
ふと、懐かしいこの光景を、五人でどんなに楽しい日々を過ごしたか。
だからこそ………
『……帰らないとな』
誰も聞こえない声音で呟く。また、五人で──いや、今度は五人以上かもしれないが、どうでも良い……、
また、この光景のように平和な日常を送れるなら。
『浩介?』
『どうしたのよ?』
『浩ちん、早くぅ!』
ふと、呼ばれて浩介は顔を上げると優花、妙子、奈々が既に〝ウィステリア〟の扉の所へと移動しており、ずっと座ってい自分を呼んでいることを理解する。すると、右肩に重さが加わる。重さといっても手を置かれたぐらいで、その方向に顔を向けると
『行こうぜ。親友』
そう言って、扉へと向かう彼の背中を浩介は見詰めていた。
────こんな
『(だから、俺にあんな技能があるんだろうな)』
だからこそ納得してしまうのだろう自分に刻まれた技能───〝深淵卿〟
これは、ある意味黒歴史とも言える劇で自分が演じた闇の貴公子。この役で恥ずかしく死んでもいいほどの羞恥心を味わったが、それに反して強くなったと感じた。自分を
────自分を強くなれたと実感させてくれる。
────強者としての姿を体現できる。
────大事な親友達の隣に並び立てれる。
〝深淵卿〟とは、遠藤浩介という弱者を強者に変えてくれる魅力的な
異世界で、親友を支えるため、幼なじみ達を守るために求めたのだろう。欲したのだろう。
〝成りたい自分へと成れる力〟が、
『(だから、俺はずっと縋っていくのだろう)』
だが、それで良いんだ。浩介は思いを胸に秘め、顔を上げてこの夢であろう思われるこの空間の出口であろう扉へと向かう。
『待てって、俺も───』
その時だった……。
《それでも、演じるか。嘘吐きと呼ばれても?》
『っ?!……手?』
あの声が聞こえ、そして目に映った物に浩介は言葉を失った。目の前には手が、四人の誰でもない手が浩介の顔を覆うほどの大きな黒い手が現れたのだ。
浩介は心臓をギュッと掴まれたような感覚に陥るもすぐに身構えると、あの声が空間全体に響くと同時に、空間も色褪せ灰色の世界になっていく。
《お前みたいな弱者が、強き者を演じて何になる?》
『そ、それはっ、彼奴等の隣に並び立つため……』
《失笑。格上の存在に為す術なく負けた貴様が?》
『っ!』
その言葉と共に出現したのは、浩介が為す術なく敗北した神の使徒とアルヴだった。浩介は驚きの余り上手く声を発せなくなる。
《虚栄を張って、無理に格上と戦い無様に負けるとは下らん。実に下らん》
『っ、だ、黙れっ』
《口だけで、実力は凡人にちょっと足した程度、心は更に弱い。そんなお前を見て貴様の大切な友はなんと思うだろうな》
『は?………ど、ういう事、だ?』
《見れば分かる》
『だから──』
核心を突かれる言葉の数々に、心が痛みが強まり蹲ってしまう浩介に、見せられたのは光景は、実に死に近しいほどの感覚に陥るほどの光景が目に入る。
それは、
『『『『…………』』』』
大事な幼なじみ達が、自分を人ではないかの存在を見るような黒く無機物のような目で浩介を見ているのだ。浩介は声を掛けようとするもすぐに言葉を失う。
『み、───』
『嘘吐き』
───違う園部。俺はっ………
『嘘吐き、最っ低……』
───菅原、頼む。俺をそんな目で見ないでくれ
『浩ちん、終わってるよアンタ』
───宮崎、やめてくれ……やめてくれよっ
大切な幼なじみ達から次々と言われる、嘘吐き、自分の在り方の否定を言われ浩介は、これが夢のような物であっても精神的苦痛で立ち上がろうとする気力が無くなってしまう。そうしてると、自分の方へと向かう足音が聞こえる。顔を上げれば、そこに
『お前、みたいな
『─────』
そう吐き捨てるような言葉に、浩介は、ただ蹲ることしか出来なかった。あの四人は幻のような物であるのは頭で理解している。しかし、幻であったとしても自分にとって大切な幼なじみ達の姿形、声で存在否定されるのは苦痛に変わりないのだ。
『うっ──ゔぐっあ、っ』
嗚咽が灰色の空間に響く。その時だった。後ろから気配を感じた。しかし、今の自分にはどうでもよ無視していると声が掛かった。
《ここまで、言われて貴様は、まだ虚飾という
そんな言葉に、浩介はバっと振り返るも、空間が壊れるのが早く後ろの存在の姿が見えない。
『っ、待っ──!!』
《楽しみにしてるぞ深淵卿》
『おいっ────』
逃がさまいと手を突き出そうも、世界が暗転して、浩介の視界も同じように暗転するのだった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「───っは?!」
悪夢から解放されたように浩介は、目を開ける。
「はぁっ、はぁっ……戻ってこれたんだな」
息が荒くなっているが、すぐに呼吸を整えると、周りを見渡す。そこには、あの夢を見る前に見たライセン大迷宮のとある部屋の中だと分かり浩介はホッとする。そして、両腕が何かに掴まれて動けずその原因を見ると、そこには浩介を中心に右側に妙子、左側に奈々が座り込んで肩にもたれ掛かっている。部屋には、静寂が満ちているが、耳を澄ませばほんの僅かにスゥースゥーと呼吸音が聞こえる。二人の寝息であり、浩介の両腕を抱いたまま、その肩を枕替わりに睡眠を取っていたのだ。
「………嘘吐き、か」
それもそうだな。と、浩介は苦笑しながら同意してしまう。夢なのに鮮明に思い出すあの光景と言葉の数々に、浩介はライセンのトラップよりも精神的に参っていた。そして、同時に自分は大迷宮なんて攻略できるのかと思い始めていると、右側からモゾモゾと動いているのを感じる。
「ぅん……浩介?」
妙子だ。目を擦りながら妙子は、まだ眠いだろうか半開きの目で浩介を見る。浩介は自分のせいで妙子が起きたのかと思い謝罪する。
「っと、菅原悪い俺のせいで起きちまったか?」
「う、ぅん……ただ」
「ただ?───っ?!」
妙子の言葉に、浩介は首を傾げるが、次の瞬間、妙子にギュッと抱き締められた。浩介は驚きの余り声を失い顔を赤くする。よく見ると、妙子の方もほんのりと顔が赤く見える。
「ただ、浩介が悲しそうに見えたから……」
「……っ」
妙子の言葉に、浩介は驚きまじまじと妙子を見つめる。しかし、妙子は浩介にニコッと笑顔を見せ続ける。
「でも、大丈夫だから……浩介には此処に居ないけど、優花やハジメ……そして、奈々と私が傍にいるから」
「!……菅、原」
その言葉に、浩介は段々と心が軽くなっていく。
「私達は、ずっ、と一緒……だから……安心して……スゥースゥー」
「………」
言いたいことを言い終わると、ギュッと浩介に抱きついたまま妙子は息をするように眠りについた。浩介は、その様子をただ無言で見る。
「そうか……ずっと一緒、か」
そう呟くと浩介は、ずしりとした心の重みが無くなっていき、救われたように感じる。
────私達は、ずっと一緒だから安心してね
「………ありがとな」
浩介の呟いた言葉は眠る二人に聞こえずとも、静寂に満ちるこの部屋で響き渡るのだった………。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「少しは自信を取り戻したか………」
薄暗い部屋の中、一人の声が響く。
「だが、これでも遠藤浩介。君は、深淵卿として戦えるかな?」
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遠藤 浩介 17歳 男 レベル:85
天職:暗殺者
筋力:650
体力:820
耐性:530
敏捷:1350
魔力:960
魔耐:800
技能:暗殺術[+深■agm@][+短剣術][+隠蔽][+追跡][+投擲術][+暗器術][+伝振][+遁術]・気配操作[+気配遮断][+幻踏][+夢幻Ⅲ][+顕幻][+滅心]・影舞・影潜り[+影移動]・■■■■・言語理解
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「……楽しみだ。君の選択はどう取るのかを」
冷笑が含まれた言葉を言うと共に声は、薄暗い闇へと消えていくのだった……。