この話は、私が好きな作品を参考にしました(*^^*)
ハジメ達一行が帝国へと向かい、浩介達三人組はライセン迷宮を攻略に向かった頃、ハイリヒ王国は魔人族の襲撃の際に破壊された王都の復興をしていきながら、再度の襲撃に備えて防衛にも力を入れていた。
防衛に関しては、王国騎士団、残された神殿騎士達、近衛騎士団達を纏め上げて行っており、それを指揮をしているのはメルド団長である。
そして、愛子も含めた居残り組も元々勇者パーティーと共に迷宮攻略をしていた永山パーティーと三人組となった小悪党組といった戦闘向きな者達は王都の防衛に回り、愛子を中心にした者達は、王都の復興の手伝いなどに徹していた。
そんなある日、居残り組はメルドに呼ばれ城内の大人数が出入りできる部屋に来ていた。しかし、部屋に来たにもメルドの姿はなく、愛子の指示で席に座って、メルド来るまで待っていようということになった。
その数分後、部屋の扉からノック音が響き「入るぞ」と聞いたことある声が聞こえると同時に扉が開き、入ってきたのは自分達を呼んだメルドと新副団長となったクゼリー・レイルだった。
メルドは席に座ると、クゼリーは彼の後ろに控えるように立つ。ししす全員が集まったのを確認すると、部屋全体に聞こえる声音で話し出した。
「遅れてすまない愛子殿とお前達。それと急な呼び出しをしてしまってすまないな」
「いえ、大丈夫です! それに、私達よりもメルドさんの方がお忙しいですし」
「それに、先生もですが俺も呼ばれるほどってことは余程、重要なことなんでしょう?」
苦笑いして申し訳なさそうな口調で話すメルドに、愛子はそんなことないと声を掛け、生徒達も同意するように頷く。その中、清水は忙しいメルドが時間を割いてまでも自分達を呼ぶのには重要なことだと思い用件を求める。
清水がそう思ったのは理由があり、ハジメ達は言わずがな、光輝達勇者一行組、異世界組でもハジメと優花を抜いて勇者組と張り合える実力を持つ浩介が居ない今、異世界組の実力者は清水である。永山達も十分に実力があるが、防衛に至っては従魔を扱える清水が一枚上手なのである。そんな、重要な役割を担っている清水も呼ぶということはそれなりに重要な案件であると考えられるからだ。
清水の言葉に、この場にいる清水以外の居残り組と愛子は息を飲んで視線をメルドに向ける。その表情からは緊張と恐怖が見える。
「ああ、清水の言う通り。だが、安心してくれ。今から話すことは魔人族関連でもないし、神関連でもない」
清水の言葉に素直に答えるメルド。話す内容も魔人族や神関連のものではないらしく居残り組は安堵の溜息を漏らした。それは、ハジメ達と違って自分達、居残り組は魔人族はともかく、もしも神関連とならば自分達は対抗しようがないからだ。
「じゃあ、どういう用件で───」
「も、もしかして南雲君達とアレスさんに何かあったんですか?!」
清水が何かを言う前に遮って、愛子が自分の生徒達に何かあったのかと切羽詰まった声を上げる。そして、何故かアレスのことも物凄く心配しているのは彼女のために無視しておこう。
メルドも愛子の剣呑な眼差しとアレスへの想いに察してしまい苦笑いしてしまう。
「愛子殿、安心してくれ。帝国へ向かった近衛達からもそんな連絡も来ていない。それに、彼処には南雲とアレスがいるんだ」
「そ、そうですよね……すみません」
「いや、愛子殿の気持ちは分かる。大事な教え子のことを心配するのは当然ですしな」
心配する愛子に、そう伝えるメルド。そして、辺りを見渡して一度頷くと本題へと切り出した。
「よし、遅くなったがお前達に耳にして欲しいことがあってな、クゼリー」
「はっ」
後ろに控えていたクゼリーがメルドの呼び掛けに応じて彼の隣に並ぶように立つ。
「メルド団長に任され、僭越ながら、このクゼリーが報告します」
固い口調で挨拶をするクゼリー。隣に座るメルドは両手でやれやれともう少し崩して良いのにと思っていながらも、クゼリーは気にした様子もなく手に持っていた報告書を読み上げていく。
「今回、報告するのは最近になって各地に目撃証言がある黒の獣です」
「黒の獣? 聞いたことないな」
知らない名称に首を傾げて困惑する居残り組。清水もその黒い獣に心当たりがなく同じように首を傾げる。
「はい。私達もこの情報を聞いたのは、数ヶ月前くらいに冒険者達の噂程度で聞いていたのみです」
「数ヶ月前……じゃあ、その黒い獣の噂が出回り始めたのは最近ってことですか?」
「はい。最初に目撃されたと情報があったのはホルアドで、町にいた冒険者数名が夜中に目撃したと……」
クゼリーの報告にあった町ホルアド。其処にはオルクス大迷宮があり、そこで自分達が初めて異世界らしいことをした迷宮であり、同時に死という恐怖を味わった迷宮。
そんな迷宮がある町の名を再び聞いて、光輝達と攻略していた永山パーティーや檜山が居なくなった小悪党組三人、清水と愛子以外の居残り組は再びその名を聞いて、あの時の記憶がフラッシュバックしたのかギュッと手や服などを握ったりして息を呑んで、そのまま俯いてしまう。
「クゼリーさん。大丈夫です続けて下さい」
場の雰囲気を感じてか一旦、報告を中断するクゼリーに、永山パーティーのメンバーである野村が報告を続けてくれと、クラスを代表して言うと、クゼリーも「では……」と報告を再開する。
「それで、黒の獣を目撃した冒険者は、すぐにギルドへと向かって報告して、何人かの冒険者達と職員と共に現場に戻りましたが、黒の獣も足跡すらも見つからなかったと報告されています」
「なら、どっかの誰かの悪戯で生み出した幻だったんじゃね?」
クゼリーの報告を聞いて、そう投げやりな感じで言うのは小悪党組の一人の近藤。机に足を乗せながらクゼリーの報告を聞くという態度の悪さに愛子や清水、永山なども注意をするが全く聞く耳を持たない。しかし、メルドの厳つい一睨みに怯えてすぐに机から足を降ろす。
そして、クゼリーは近藤の意見にも頷き肯定しながら報告を続ける。
「はい私達も、最初にこの報告を聞いて近藤様と同じ意見となりましたが、状況が変わったのです」
「変わった?」
「はい。また最近になって、黒の獣の目撃情報が上がったのです」
「……何処で?」
「目撃されたのは、七日前」
「七日前。……ってことは、王都侵攻のすぐ後のことですね」
「そうなります。あの時は、王都の復興のことや色々あったので、我々がこの報告を聞いたのは南雲様達が帝国に向かった後でした」
クゼリーがそう言うと、メルドが同意するように首を縦にして動かす。
「そして、目撃された場所ですが、ホルアドではなくブルックの近辺でした。目撃したのはブルックの近くの近辺を調査していた冒険者と王国兵。彼等は、すぐに身を隠したらしく襲われなかったらしく、黒の獣が通り過ぎた道には大きな足跡を見つけたとの報告もありました以上です」
クゼリーは報告を終了する。そして、メルドの後ろへと下がると今度はメルドが机に手を起きながら話し出した。
「そういうことだお前達。クゼリーの報告にあった通り黒い獣は魔人族の魔物なのか神関連か未だに不明だ。ただ、一つ言えることは目撃証言だけで被害は全く無いということだ」
「被害は無いですか……そうえば、最後の目撃があったブルックは大丈夫なんですか?」
黒の獣の行動に少し違和感を感じる愛子。そして、黒の獣の最終目撃場所の近辺にあるブルックは大丈夫なのかと聞く。その眉をひそめていて心配そうな表情だ。
「ああ、俺もそのことが気になってな。昨夜、その時の調査していた騎士二名をまた向かわせたところだ。ギルドにも話を通しているし、騎士達にも連絡用のアーティファクトも持たしてるから、ブルックの状況が分かればすぐに連絡を貰えると思うぞ」
「そうですか、無事だと願いたいですね……」
「ああ、俺もそう願いたいものだ」
愛子の呟きに、同意しながらメルドは席に座りながら、ふっと天井を見上げるのだった。
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五日前、ブルックの町。
カラン、カラン
そんな音を立てて、冒険者ギルドブルック支部の扉が開いた。入ってきたのは、一つの影、百五十程の身長とシルエット的に少女だと分かる。ギルド内のカフェで怪我をしながらも楽しく談笑をしていた冒険者達は、少女が来たと気が付くと表情が更に良くなり、周りも「英雄様」や「女神」などと歓声を上げていた。その眼差しは全てが尊敬や好感が込められているものだった。
「………」
しかし少女は、そんな冒険者達の歓声を無視して、喋らないまま周りをチラッと見渡しただけで、そのままカウンターにいるキャサリンの元へ向かう。
「あら、お嬢ちゃん来たかい?」
カウンターにいたキャサリンは、少女が近付くのが分かると同時に笑みを浮かべながら声を掛けた。キャサリンも先程の冒険者達と同じような表情と眼差しを向けていた。
「………そろそろ、この町から出ようと思ってな。出る前に靴をくれたお礼を言いに来た」
「あら、そうなのかい?残念だねぇ 」
少女は、そう言ってキャサリンに貰ったと思われる赤黒い色のドレスに似合う黒色のブーツを見せる。キャサリンも少女が嬉しそうで何よりだが、この町から出ると聞くと少し残念そう苦笑いを浮かべる。
「ま、此処に寄ったのも人捜しの為と聞いたしね」
「うぬ」
「でも、お嬢ちゃんにはホントに感謝してるよ。なんだってこの町を救ってくれたしね」
そう言いながらキャサリンは思い出す。あの日の出来事を───
三日前の夜。
ブルックの町に、多くの魔物の大群が押し寄せた。
それは、王都侵攻の際に樹海に攻め込んでいた魔物の一部らしく、いきなりの押し寄せる魔物の大群にブルックの冒険者達は町を守ろうと必死に魔物達に挑むが、迫りくる魔物達は、並の冒険者達では一体だけでも対処するのが難しい魔物ばかりで、押される一方だった。
勢いが止まらない魔物達は、もうブルックの検閲門の傍まで押し寄せており、その光景に誰もが絶望する中、一人の少女が平然とブルックの門と魔物達の間を歩いてきた。
赤黒いドレスを身に纏った少女が現れた。腰まで伸びる艶やかな黒髪は、星一つもない漆黒の夜空のような神秘さを感じさせ、その瞳は紅玉を埋め込ませてると思われそうな美しく情熱さを感じさせる。そして、よく見ると靴を履いておらず裸足だ。
もしかして、何処かの貴族なのかと思った冒険者達は少女に逃げろと声を掛けようとするが、それよりも早く一体の魔物が少女へと飛びかかる。
「嬢ちゃん! 逃げ────」
誰もが、悲痛そうな表情になるが、結果は予想外なことになった。
「……邪魔」
少女はそう一言だけ呟くと、一撃の蹴りで、飛び掛かってきた魔物を肉塊にさせた。冒険者達が、その光景に唖然となる中、少女は、気にせず魔物達に視線を転じた。その目からは絶大な圧と怒りと呆れが伝わってくる。魔物も冒険者達もその圧に息を呑む。
「
面倒事が増えてしまったのかイライラしながら、少女はそう呟くと、同時に魔物達のほうへと歩き出した。
「そんな醜い姿を見せた罰だ。この
そして、少女による蹂躙劇が始まった。
「
「クギャッ」
同時に襲い掛かってきた複数の魔物達を、少女は、ただの回し蹴りで頭部を一撃で完全に砕いた。
「ギャッ」
細く、肌白い美しい手から出ると思えないほどの握力で魔物を首を掴み絞め殺した。
「……つまらん」
魔物達の実力に落胆しながら、絞め殺した魔物をゴミを捨てるかのようにポイッと投げ捨てる少女。その言葉に、怒りを覚えたのかように今度は、数十体の魔物達が一斉に少女へと襲いかかる。
「「「「「「グルゥァァァ!!」」」」」」
「………」
迫りくる魔物達に彼女は無言で、表情も変わらず、ただ落胆していた。
そして、
「……弱い」
地面を蹴って、跳ぶと魔物の頭を殴って、そのまま頭部ごとを吹き飛ばした。
空中で、体を前向きに動かしながら、その勢いから繰り出す踵落としで背骨を砕いて魔物を谷折りにして殺すと、落とした踵を軸にしてコマのように回りながら蹴りを繰り出して当たった瞬間、魔物達の足、頭、胴体を吹き飛ばした。
立ち止まっていた魔物達は移動しながら、ただの手刀で首と胴体を離ればなれにして殺していく。
グシャゴギャッ
魔物共を踏み潰し、骨を折り、肉を砕き、内蔵が飛ばす。そんな生々しい音を奏でながら、まるで舞踏のように舞うように戦う少女。そして、その繰り出す一撃の全てが必殺で、魔物達を蹂躙していた。
一撃、一撃と魔物達を絶命させていく少女。しかし、魔物達が動きが変わるのを見て目を細めた。
「……む」
魔物達は逃げ出したのだ。やっと本能で理解したのだ。あの少女──いや、
「そうか……やっと我との差に気付いたか
やれやれと言った様子で肩を竦めながら彼女は溜息を一つ吐く。
「だが、逃がすとは言ってないぞ?」
一瞬にして、逃げる魔物達の中心上と移動すると少女は不敵な笑みを浮かべた。
グシャッ
着地すると同時に魔物を踏み潰すと肉と骨が潰れる音がして魔物の血飛沫が少女の頬やドレスなど全体に付着する。しかし、少女は気にせず周りにいる魔物達を見る。
「──終わらしてあげる」
もうこの戦いを終わらすことを告げる彼女は、自分の持つ魔法を発動させる。
それは、自分の記憶に大きく刻まれている一人の男の真似をするように……
迷宮という名のシステムに従うだけだった自分に、ある感情を芽生えさせた男。初めて己に敗北を叩きつけ、死の恐怖よりもあのニンゲンのことしか考えることしか出来なかった。
奈落の魔物共に殺されるも、己の胸の奥が激しく動悸してしまい苦しくても、何故か嬉しいような感じたことのない不可解な感覚。
魔物にとって必要のない理性を獲得し、〝感情〟が芽生え迷宮のシステムまでも抗ったことで世界の未知の奇跡が巡りイレギュラーが生じてしまった。
その駒。いや、もう彼女は一人のイレギュラー。その胸に宿ったただ一つの想い。
───
戦って、あの時の高鳴りを再び感じたい。
戦って、彼の戦う姿を見たい。
戦って、彼の必死の声を聞きたい。
戦って、自分だけを見て欲しい。
そんな想いが、彼女に新たな魔法を発現させた。
そう、それは
『───〝
彼が使っていたあの魔法のように…………
「〝
その瞬間、紅黒い紅蓮の業火が少女の体に纏いだした。その炎は少女の付着した血までもが蒸発させ、周りの地面すらも焼き付くさんと燃え盛っていく。
そして、
「灰燼と化せ──〝
続けて言ったその一言で、彼女の中心から空高くまでも続く勢いの巨大な紅黒い炎柱が出現した。そして、周りの魔物達をも飲み込み骨すらも残すことなく燃やしていくのだった。
そして、ブルックの町は突然現れた少女によって救われたのだった。
「───ホントにあの時は助かったよ」
キャサリンは再度、少女に感謝を伝えると、すぐ近くの棚からある一つの小袋を取り出した。
「後、町を出るならこれを持っていきな」
そう言って、小袋を渡すキャサリンに、小袋を受け取った少女は、少し重みを感じ首を傾げる。
「……これの中は?」
「ちょっとしたお金だよ。それで、旅の足しにしとけばいいさ」
「感謝する」
少女の感謝に、キャサリンは笑って返した。
「いいってことさね。色々あると思うけど、死なないようにね」
「大丈夫、我は強い」
少女はそう言って、キャサリンの笑み共にギルドから出る。すると、町の人や冒険者達も少女が町を出ると聞いて、門へと向かう彼女に感謝などを伝え、彼女を送り出したのだった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ブルックを出た少女は西へと向かう。それが、彼の魔力の痕跡があるからだ。でも、それは普通、そんなことを出来る人間はいない。
そう、
彼女は特別だ。
だからだろう──彼を見つけたい。という強い彼女の想いが、ある技能へと発展したのだ。
───〝
愛する人の魔力の痕跡を認識することが出来る。
その技能で彼女は迷いもせずに己の次の目的地へと移動していけるのだ。
「………………………ァハ」
彼の痕跡を感じると彼女は立ち止まって、その美しい相貌に邪悪な笑みを浮かべる。
復活する前、迷宮の輪廻を巡っていた彼女はあの人が生きていることを識っている。数多の試練を乗り越え、尋常ならざる力を手にしたことを識っている。
あの時より更に強く、逞しく成長した彼の姿を思い出し、はう、と歓喜の吐息を漏らす。
あの時のことを思い出すと今でも心が揺れる。魂が激しく震え燃え盛る。まるで、心臓を鷲掴みにされ熱されたように痛みにぎゅっと胸を抑える。
苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。
それ以上にこの感覚が酷く恋しくて仕方ない。
────彼の姿を思い出すだけで胸が張り裂けそうになる。
────彼と言葉を交わせると思うだけで頬が熱くなる。
────あのニンゲンとまた殺し合えると考えるだけで下腹部が切なくなる。
早く再会を。速く再応を。疾く再戦を。
嬉しそうに笑みを浮かべた彼女は再び歩き出す。
全ては一人の彼に会いに行くために。
会って、話して……また彼とまた全力で殺し合うために。
「待っててハジメ。すぐ行くから」
恋い焦がれる少女のような表情で彼女は愛おしそうに彼──ハジメの名を呟くのだった……。
勝手ながらすみませんが、数週間ぐらい投稿をお休みさせて頂きますm(_ _)m
七章の後にステータス紹介したほうがいい?
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したほうがいい
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しなくていい