優花のステータスを編集しました。
晩餐会があった翌日、ハジメ達は集められ座学と訓練が始まった。
まず、 最初に訓練を受ける為に訓練場に集まった生徒達に騎士団の人達から銀色のプレートが配られた。不思議そうに配られたプレートを見る生徒達に、王国騎士団長メルド・ロギンスが直々に説明を始めた。
「よし、全員に配り終わったな?このプレートは、ステータスプレートと呼ばれている。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示してくれるものだ。最も信頼のある身分証明書でもある。これがあれば迷子になっても平気だからな、失くすなよ?」
ハジメは受け渡されたステータスプレートに初めて見るモノに興味が湧き上にかざしだり、まじまじと観察しているとメルドが話を続ける。
「プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう。そこに、一緒に渡した針で指に傷を作って魔法陣に血を一滴垂らしてくれ。それで所持者が登録される。〝ステータスオープン〟と言えば表に自分のステータスが表示されるはずだ。ああ、原理とか聞くなよ?そんなもん知らないからな。神代のアーティファクトの類だ」
「アーティファクト?」
アーティファクトという聞き慣れない単語に反応した光輝が質問をする。
「アーティファクトって言うのはな、現代じゃ再現できない強力な力を持った魔法の道具のことだ。まだ神やその眷属達が地上にいた神代に創られたと言われている。そのステータスプレートもその一つでな、複製するアーティファクトと一緒に、昔からこの世界に普及しているものとしては唯一のアーティファクトだ。普通は、アーティファクトと言えば国宝になるもんなんだが、これは一般市民にも流通している。身分証に便利だからな」
メルドの説明を聞いてハジメはステータスプレートの重要さを理解すると早速、指先に針をチョンと刺し、プクと浮き上がった血を魔法陣に擦りつけた。すると、魔法陣が一瞬淡く輝いた。
すると、
===============================
南雲ハジメ 17歳 男 レベル:1
天職:錬成師
筋力:70
体力:90
耐性:70
敏捷:80
魔力:120
魔耐:120
技能:錬成・武芸百般・雷属性適性・雷属性耐性・脳内設計・■■■・言語理解
===============================
と、ハジメのステータスが表示された。
ハジメはステータスプレートを見て、魔法を使えることに内心、ガッツポーズをすると、技能欄の一つの技能が何故か黒塗りに潰されていた。
技能欄にある〝言語理解〟は見る限り様々な言語を理解するということで間違いないだろう。この世界に来た時もイシュタルやリリアーナとの会話に支障もなかったことで確証は得ていることから、この技能で補正されているのだろう。
しかし、そんな技能があっても読み取れない黒塗りの技能に、ハジメは困惑する。
「……なんだこれ。〝言語理解〟でも、読み取れないってどういうことだ?」
指で擦っても、息を吹き掛けても読むことは出来ない技能。少し薄気味悪く感じてしまう。
だが、今考えても意味は無いと思ったハジメは、黒塗り技能から視線を外し、メルド団長からステータスの説明を聞く。
「全員見れたか? では、説明するぞ? まず、最初に〝レベル〟があるだろう? それは各ステータスの上昇と共に上がる。
ハジメはメルド団長の説明を聞きながらステータスプレートやステータスを見て、自身のステータスが案外高いことに安心するが、ふとメルドの言葉の中に違和感を感じた。
それは、ハジメだけではなく何人かの生徒が首を傾げてる。そして、クラスを代表してか光輝が手を挙げてメルドに質問する。
「あの、メルドさん。先程のレベルの説明で一般的な上限がレベル100と言っていましたが、例外があるんですか?」
光輝の質問に対してメルドは「……そうだな。神の使徒であるお前達なら可能性はあるか」と腕を組み何か納得しながら呟いた直後、光輝の質問に答えた。
「ああ、俺が説明したのは一般的……いや正確には当たり前の説明だ。だが、この世界にはレベル100を越え、その上の領域に到達した者達が存在する。そいつらを〝到達者〟と俺達はそう呼んでいる」
メルドの言葉にクラスメイト達は息を呑み、ハジメも目を見開いてメルドの話に集中している。
「俺はレベル100だが、帝国や他の都市には〝到達者〟はいるし、王国ならイシュタル様が〝到達者〟の一人だ。確か……レベルは104だったな………ま、俺が言いたいのは神の使徒であるお前達なら到達者になれる可能性は俺よりも十分にあるだろうな」
そう締めるメルドの後、生徒達は興奮気味に声を上げる。それそうだろうこの世界にとって一握りであろう存在になれる可能性が十分にあると分かったのだから。
ハジメすらも少し顔がニヤけてしまいそうになっている。
そして、そんな生徒達の興奮が冷めない中、メルドのステータスについての説明を再開した。
「ま、レベルの話はさておき、このステータスは日々の鍛錬で当然上昇するし、魔法や魔法具で上昇させることもできる。また、魔力の高い者は自然と他のステータスも高くなる。詳しいことはわかっていないが、魔力が身体のスペックを無意識に補助しているのではないかと考えられている。それと、後でお前等用に装備を選んでもらうから楽しみにしておけ。なにせ救国の勇者御一行だからな。国の宝物庫大開放だぞ!」
メルド団長の言葉から推測して、魔物を倒しただけではステータスが一気に上昇するようなゲーム仕様みたいなことはないらしい。やはり、この部分は地道に腕を磨かなければならないらしい。
「次に〝天職〟ってのがあるだろう? それは言うなれば〝才能〟だ。末尾にある〝技能〟と連動していて、その天職の領分においては無類の才能を発揮する。天職持ちは少ない。戦闘系天職と非戦系天職に分類されるんだが、戦闘系は千人に一人、ものによっちゃあ万人に一人の割合だ。非戦系も少ないと言えば少ないが……百人に一人はいるな。十人に一人という珍しくないものも結構ある。生産職は持っている奴が多いな」
「じゃあ、〝錬成師〟の俺はハズレってことか……」
ハジメはそう独りごちに呟きながら、ステータスプレートを見る。自分の天職は〝錬成師〟。所謂、メルド団長が言っていた非戦闘職。技能欄には〝錬成〟、〝脳内設計〟という錬成師でありがちな技能があり、一応〝武芸百般〟という戦闘系の技能があるがそれだけだ。
そして、メルド団長の言葉からして、ステータスと技能も向上させるには相応の努力が必須であることだと。
だが、やはりハジメが気がかりなのはステータスに表示されている文字が見えない〝■■■〟なのだが……
「後は……各ステータスは見たままだ。大体レベル1の平均は10くらいだな。まぁ、お前達ならその数倍から数十倍は高いだろうがな!全く羨ましい限りだ!あ、ステータスプレートの内容は報告してくれ。訓練内容の参考にしなきゃならんからな」
ハジメはメルド団長の話を聞いて、生産職ではあったがステータスが平均より高いことを知るが、周りから不良と思われてるが生粋のオタクであるハジメは、
「(ま、ありがちな異世界補正だろうな)」
と、結論決めた。
すると、メルド団長の呼び掛けに、早速、光輝がステータスの報告をしに前へ出た。
そのステータスは……
============================
天之河光輝 17歳 男 レベル:1
天職:勇者
筋力:100
体力:100
耐性:100
敏捷:100
魔力:100
魔耐:100
技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・カリスマ・限界突破・言語理解
==============================
「ほお~、流石勇者様だな。レベル1で既に三桁か……技能も普通は二つ三つなんだがな……規格外な奴め!頼もしい限りだ!」
「いや~、あはは……」
メルド団長の称賛に照れたように頭を掻く光輝。ちなみにメルド団長のレベルは62らしい。ステータス平均は300前後、この世界でもトップレベルの強さだ。しかし、光輝はレベル1で既に三分の一に迫っている。成長率次第では、あっさり追い抜きそうぐらいだ。
周りのクラスメイト達も、光輝に歓声を送っている。
「……流石は勇者様ってか、チートだろ」
「………ハジメ」
ハジメは光輝のステータスのチートさに、そう吐き捨てていると、後ろの方から近くにいた浩介が話しかける。見るからに落ち込んでいると分かったハジメはキョトンと首を傾げながら声を掛ける。
「どうした、浩介?」
「まずは……俺のステータスを見てくれ。そしたら分かる」
ハジメは浩介の言葉に首を傾げつつ言われるままに、浩介のステータスプレートを見る。
そこには……
============================
遠藤浩介 17歳 男 レベル:1
天職:暗殺者
筋力:40
体力:60
耐性:50
敏捷:80
魔力:50
魔耐:50
技能:暗殺術[+深淵卿]・気配操作・影舞・言語理解
==============================
と表示されていた。
「おい、浩介スゲーじゃねぇか。最初から派生技能が出てるじゃねーか! えーと、なになに〝深淵──っスー」
最初は親友のステータス技能欄に派生技能があることに素直に称賛を送るハジメだったが、その派生技能の名前を見る内に吹き出そうになり頬を膨らます。
「……」
「クハっ……」
「おい、やっぱ笑ったな!!」
「す、すまん。流石に〝深淵卿〟は……ないだろ」
「なんでだーーー!」
しかし、耐えられず吹き出したハジメの横で浩介が嘆く。その〝深淵卿〟という技能は、浩介の黒歴史に関係している。
それは、自分の影の薄さで存在を認知されないことに落ち込む浩介を見兼ねたハジメ達が浩介を何とかして、目立たせて周りに浩介の存在を認知させようという遊び半分の理由で文化祭で演劇をしたのだ。その演劇で浩介に演じさせた役というのは〝深淵卿〟という闇の貴公子という影で主人公を手助けをする役だった。
そんなダークヒーロー系の役に浩介は、己が目立ちたい為か所々、厨二臭いオリジナルの台詞を言ったりと羞恥心を捨て、己の存在を印象付けようと奮闘していた。
そのおかげか劇は好評だったが、何故か浩介自体を覚えて貰えず、深淵卿だけが周りに周知されることになり浩介は泣いた。それが浩介の黒歴史の一つである。これだけは、その時の共犯者であるハジメ達も流石に笑えず同情した。
余談だが、あの劇の観客席には自分達の親達も集まって見ており、遠藤一家は恥ずかしさの余り顔を真っ赤にして両手で隠し、宮崎、菅原、園部一家は苦笑いをしていた。因みにハジメの父である愁は、何故か浩介の深淵卿を見て、昔の黒歴史を思い出したのか涙を流して「浩介君っ。君はよくやった!」と歓喜して拍手を送っていたらしく、母の菫はそんな愁を見て大笑いしていた。
そんな事情があって、自身でも苦い記憶である(九割両親のせい)ハジメはそんな技能が発現して落ち込んでいる浩介に励まそう声をかける。
「まあ、浩介。このことを知ってるのは、この中で俺と優花達ぐらいだろうしさ……」
「おう……でも、今さっき笑ったハジメ、お前は許せん!」
「ちょ、いきなり突っかかるなよ」
励ました後、突然、笑われたことを思い出し、ウガーと突進する浩介だったが、ハジメは軽くあしらう。
「ハジメ……」
そこへ、聞き慣れた声が聞こえたので振り返ると、少し穏やかではない表情をした優花と妙子達がいた。
ー数分前ー
ハジメやクラスメイト達がメルド団長の説明を聞きながら自分のステータスを確認してる時だった。優花も、同じように自分の血を垂らしてステータスを確認する。
「へ? なにこれ……」
そこに表示された自分のステータスを見て優花は呆ける。
============================
園部優花 17歳 女 レベル:1
天職:神天治癒師
筋力:20
体力:50
耐性:30
敏捷:40
魔力:300
魔耐:300
技能:回復魔法・付与魔法・全属性適性・全属性耐性・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・■■■・言語理解
==============================
魔力が300越えという自分のステータスの異常さに数秒フリーズし開いた口が閉じれない優花。そこへ、幼なじみである奈々と妙子の二人が駆け寄ってくる。
「ユウカっち〜。見て見て〜、私〝氷術師〟だったよ〜」
「私は〝操鞭師〟だった。優花は?」
「その、私の、これなんだけど……」
話しかける二人に優花は、少し気まずそうにしながら自分のステータスプレートを見せる。二人は、優花が見せたステータスプレートに目を覗かせ目を見開く。
「うわっ……」
「魔力すご……」
優花の驚異的なステータスを見た二人は、自分達より桁外れなステータスを持つ優花に驚愕する。
「ねぇ、これハジメに見せた方が良いよね?」
「私は賛成」
「うん。私も〜、それにハジメっち達のステータスも見ておきたいしねっ」
優花の提案に、二人は賛成した。そして、優花達は幼なじみであるハジメの元へ向かったのだった。
時間は戻って、ハジメと浩介は優花のステータスをマジマジと見ていた。逆に優花達も同じようにハジメと浩介のステータスプレートを見ている。
「………」
ハジメは、優花のステータスを見て思ったのは、光輝並にチートステータスだということ、自分と同じ解読出来ない技能があることを確認する。
「はぁっ?! なにこれなにこれ!」
同じ解読不能が技能があることに内心、嬉しく感じたハジメの隣で浩介は驚きのあまりハジメの肩を揺すりながら騒ぐ。一方、奈々達の方からもハジメと浩介のステータスに驚いていた。いや、笑っていた。
「ハジメっちは、凄いけど……浩ちん、〝深淵卿〟とか…プフっ……ウケる!」
「ゴメン、浩介これは耐え……ぶふっ」
奈々と妙子は浩介のステータスに綴られた〝深淵卿〟を見て、あの劇のことをを思い出したのだろう笑うのを我慢するも耐えれず吹き出していた。
「笑うなーーー!」
笑う二人にキレた浩介は叫びだすしまいになったので、ハジメは騒がしい三人を睨みつけ苦言を呈する。
「お前等、うるせぇ……」
「「「うっ……はい」」」
三人はハジメから伝わる圧に萎縮してると、メルド団長に呼ばれた浩介達は「んじゃ、俺等行ってくるよ」と言い残して、ステータスプレートを見せに行った。
二人っきりになると、優花はハジメに自分のステータスはどうかと聞く。
「ハジメどう?」
「まぁ、天職からして絶対レア職だろう。もしかしたら、王国で重宝されるかもな」
「だよね……」
ハジメは優花に思ったままのことをそのまま伝えると、優花はハジメの服の袖をギュッと掴む。ふと見ると、その手は微かに振るえている。
「優花?」
「ハジメ、私なんかされるかな……」
もしかしたら、教会に何かされるではないかと怯える優花にハジメは安心させようと優花の頭を優しく撫でる。
「……ん」
優花から嬉しそうな声が漏れる。少し安心したようで嬉しそうに頬を緩ませる。
それを見て安堵したハジメは口を開く。
「安心しろ。何があっても俺が優花を守る」
「うんっ」
その言葉を聞いて、優花は嬉しそうに返事をして頷いた。後ろから「派生技能持ちとはやるな!」とメルド団長から褒められる浩介の声がしたが、今はどうでもいい。
そんな桃色空間を作る二人に、いつの間にか戻ってきていた浩介達が何度も呼び掛けてもイチャイチャを止めない二人に呆れだす。
「あれで、まだ付き合ってないんだよな……」
「うん、すごいよね〜」
「どちらも意気地無しなだけでしょ」
なにか後ろから酷いことを言われたと思うが、今は無視しようとハジメは決めた。
すると、メルド団長がハジメと優花を呼んだ。どうやら、自分達二人が最後だったらしい。
ハジメと優花は、メルド団長の元に向かうと、まず最初に優花のステータスを見る。すると表情が一変し、テータスを二度見すると、驚きのあまりか声を荒らげた。
「なっ……なにぃっ?! 魔力と魔耐が300だとぉ?! それに天職があっ、あの〝神天治癒師〟?!」
「え?」
メルド団長の驚愕に満ちた声に優花もビクッと体を震わし、メルド団長の驚き具合を見てやはり、優花の天職は相当レアなのだろう。
「この天職は〝勇者〟や〝聖女〟と同等ぐらいの希少でな!普通の治癒師などといった支援系天職の頂点に君臨してると言えるほどの天職なんだ。百年に一人が発現すると言われるほどの珍しい天職なのだが……」
「は、はぁ……」
熱烈に説明するメルドに優花の顔が引き攣る。それを見たメルドはハッとした顔になり申し訳なさそうにする。
「あぁ、すまない。まさか、こんな希少な天職を持つ者に生きている間に出会うとは思ってなくてな光栄だな。……後、この技能はよく読めんな。すまない」
「そ、そうですか……」
優花の番が終わり、最後にハジメの番が回って来た。
「じゃあ、お前で最後だな、ではステータスプレートを見せてくれ」
「はいよ」
メルド団長の言葉にハジメは返事をしながら、ステータスプレートを渡す。すると、メルド団長の表情が「うん?」と笑顔のまま固まり、ついで「見間違いか?」というようにプレートをコツコツ叩いたり、光にかざしたりする。そして、ハジメをスゴイ形相で見る。
「まさか〝錬成師〟で、これ程のステータスとは……魔力と魔耐は勇者以上の数値……それに錬成師では有り得んほどの多くの技能に〝武芸百般〟。そして前の少女と同じ見えない技能……凄まじいな」
ハジメのステータスと技能に驚きを隠せないでいるメルドにハジメが首を傾げながら声をかける。
「あの、どうしたんすか?」
「いや、お前もある意味、規格外で驚いている」
「はぁ……」
「いや、しかし錬成師か……錬成師というのは、まぁ、言ってみれば鍛治職のことだ。鍛冶するときに便利なのだが……」
歯切れ悪くハジメの天職を説明するメルド団長。
その様子にハジメを目の敵にしている男子達が食いつかないはずがない。鍛治職ということは明らかに非戦系天職だ。クラスメイト達全員が戦闘系天職を持ち、これから戦いが待っている状況では役立たずの可能性が大きい。
そして、案の定チャンスと言わんばかりにクラスメイトの中から檜山大介が、ニヤニヤとしながら声を張り上げる。
「おいおい、南雲。もしかしてお前、非戦系か? 鍛治職でどうやって戦うんだよ?メルドさん、その錬成師って珍しいんっすか?」
「……いや、鍛治職の十人に一人は持っている。国お抱えの職人は全員持っているな」
非戦闘職であるからバカにする奴が出るだろうとハジメは予想していたが本当に馬鹿にする為か一人の男子生徒が近づいて来てることに少し驚いた。そして、その男子生徒を見る。
「ん?(誰だっけアイツ)」
ハジメは、近付く男子生徒は最初は誰だか覚えていなかったが、檜山っていう名前の男子生徒だと思い出す。
檜山との初の面識は高校に入学してちょっと経ったぐらいの頃、自分が少し離れてる間に、優花達のことを強引に仲間達と一緒に絡んでいるのを目撃し、軽く占めたのだ。それっきり檜山達はハジメを目の敵にするも喧嘩では勝てないため睨みつけるぐらいしか出来ず、ハジメ本人もすっかり存在を忘れていた。
そんな事で檜山のことを思い出してる内に傍まで歩き寄っていた檜山が気持ち悪い表情をしながら話しかける。
「おいおい、南雲~。お前、そんなんで戦えるわけ?」
メルド団長の表情から内容を察しているだろうに、わざわざ執拗しつように聞く檜山。顔からして分かるが、余程、ハジメが自分よりも弱い天職であることを知り嬉しいのだろう。
本当に嫌な性格だ。取り巻きであろう三人もはやし立てている。強い者には媚び、弱い者には強く出る典型的な小物の行動だ。
優花達や雫達などは不快げに眉をひそめている。特に優花なんて普段じゃ見せない顔をしており、隣にいる浩介と奈々から「ヒエっ……」と声が漏れる。
そんな状況にも関わらずどこ吹く風の態度なハジメは、何気なく檜山の言葉に返答する。
「さぁなーー、でも、非戦闘職にしかケンカを売れない可哀想な奴なんかよりかは上手く戦えると思うぞー? 」
『ブフッ』
ハジメの悪意も何もない回答にクラスメイトは吹き出す。檜山も檜山で舐められてることに気付き顔を真っ赤にして怒りを顕にする。
「あぁん? じゃあ試してやるよ!」
舐められたことにキレた檜山がハジメに殴りかかる。
「おいおい、単純過ぎだろ」
が、動きにキレがない檜山の拳はハジメに届くは訳はなく、軽くあしらわれ、拳が空を切った檜山の体勢がヨロける。その隙がにハジメの素早い蹴りが檜山のみぞおちに見事にクリーンヒットする。
「そらよっ」
「うっ、がはっ!」
蹴りと言っても、軽い蹴りのつもりであったが、予想以上に檜山は少し吹き飛ばされながら蹲った。すると、クラスメイトはいきなりの乱闘に騒ぎ出し始め、突然の騒ぎに騎士団も慌てだす。
しかし、そんな外野のことなど無視してハジメは檜山を見下ろしながら言葉を投げる。
「禄に殴れない癖に、ケンカなんか売るなよ雑魚が」
「……っ」
その落胆も込めれれた言葉に檜山は、非常に悔しいのか顔を醜いほど歪ませる。そんな時、騒ぐクラスメイト達を押し退けて、此方に近付いてくる二人の人物を視認したハジメは深い溜息を吐く。
「南雲っ!お前は何をしてるんだ!」
「コラーー! ケンカはいけませんよ!」
此方へ近付いてきたのは案の定、ご都合主義愛好家の光輝と教師である畑山愛子がやって怒った表情で来ていた。光輝はともかく愛子の方は教師としてだろう。
すると、ハジメの前までやってきた光輝は声を張り上げる。
「南雲っ!檜山に謝るんだ!」
「は? おいおいそりゃあ可笑しい。先に殴りかかってきたのアイツの方からだ。俺は正当防衛に過ぎない」
「だが、お前は檜山に蹴りをいれたんだ!謝れ!」
またもやご都合アクセル全開の光輝がガヤガヤと言ってくるのをハジメは軽く受け流すが、段々と言い合う内に、光輝に対するストレスが溜まり続けハジメの怒りが限界に近くなる。
「ちっ、ギャアギャアうるせぇんだよ。キラキラご都合野郎が……」
「っ……なんだと!」
その一言にキレたのか、光輝は前に進み出ようとしたのと同時に愛子がハジメと光輝の間に入り両手を広げ制止の声を掛ける。
「ケンカはダメですよ二人共! 後、南雲君もそんな喧嘩腰の態度を取っちゃ駄目です!天乃河君も南雲君のせいだけにしてはいけません!蹴った事はいけませんが、最初に南雲君にちょっかいを掛けた檜山君にも責任があります!」
「そ、そうですが……」
愛子の正論に何も言えなくなるが、まだ食い下がろうとしている光輝だが、愛子は今度、騒いでいた生徒達にも声を上げる。
「皆さんも、人の天職を馬鹿にしてはいけません! 戦闘職も非戦闘職もそれぞれの役割があるのですよ! それを馬鹿にするとは言語道断です!」
愛子の怒りにハジメの天職を馬鹿にしていた者達が押し黙る。そして、少し騒ぎが収まると愛子はハジメの方へ体を向ける。
「だから、南雲君も心してください。私も貴方と同じ非戦闘職なのですから」
そう励ますかのように言う愛子はステータスプレートを見せて来た。
=============================
畑山愛子 25歳 女 レベル:1
天職:作農師
筋力:5
体力:10
耐性:10
敏捷:5
魔力:100
魔耐:10
技能:土壌管理・土壌回復・範囲耕作・成長促進・品種改良・植物系鑑定・肥料生成・混在育成・自動収穫・発酵操作・範囲温度調整・農場結界・豊穣天雨・言語理解
===============================
「………」
「どうですか!」
ステータスプレートの内容を見たハジメは愛子が自分の重要さに気付いてない様子を見て頭を痛める。
「マジ、先生って天然なのか、馬鹿なのか?」
「先生に馬鹿とはなんですか!馬鹿とは!」
キレる愛子に、「へいへい」と適当に返しながらハジメは愛子の天職の重要さを説明する。
「……はぁ〜。先生アンタはこの天職の重要さを知った方が良い。作農師なんて、食料を簡単にばんばん供給できて食料問題とかクソ解決出来るじゃねぇか……」
「えっ!」
愛子はハジメの説明に驚きの声を上げた。メルド団長達も天職に作農師が現れたことに「作農師だとぉ?! 今すぐ上に伝えろ!」となどと騒いでいる。愛子もホントに理解していなかったらしくハジメは再度、溜息を吐く。次いでにケンカもする気が失せてしまったのか、ガシガシと頭を掻くと同時に訓練場の出口に向かって歩き出していく。
「はぁ、ケンカする気も失せた。今日の集まりの主な目的はステータスの確認だろ? なら、俺は行くぞ」
「おい待て南雲! 話がまだっ……」
気怠そうに訓練場の外へ歩き始めるハジメに光輝は止めようと手を伸ばすが、ハジメが其の手を拒むようにはたく。
「待たねぇよ。てめぇといると苛立ちが収まらん」
「っ、おい南───「ちょっと待って、ハジメ!」」
光輝が何か言っているが無視を決め込んで出口へと再び歩き始めようとした時、光輝の声を遮って自分を呼ぶ優花が追ってきていることに気付いて振り返る。
「おい、優花。大丈夫か俺に着いて来て」
ハジメは、既にイシュタルに対して発言したりしてるので、教会や王国から悪い意味で目を付けられることは覚悟していたのでいいが、自分とは違う優花のことを心配する。しかし、当の本人はハジメの心配を分かってる上で首を横に振った。
「うん、私は大丈夫。それに奈々達以外、皆、ハジメのことバカにしてくるし、ムカつく。……ハジメのこと何も知らない癖に」
ハジメを馬鹿にされてることに怒り心頭な優花を見て、当のハジメは嬉しさのあまりか自然と笑みを浮かばす。
「そっか……ありがとな、優花」
「うんっ」
素直に感謝を述べるハジメに、優花は笑みを浮かばせる。ハジメはそんな彼女の笑顔がなによりも眩しく、美しく見えた。
「そうえば、浩介達は?」
「訓練の内容聞いたら戻るって、そうえばハジメは訓練とかどうするの?」
ハジメの疑問にそう答えると、今度は優花から訓練はどうするのかとハジメに聞く。
「あぁ、そうだな。戦闘系の訓練だとアイツ等とは一緒になるし、いたくねぇし、戦闘系は自主練で済ませとく。後、天職関係の訓練はアテがあるから大丈夫だ」
「アテ?」
優花はハジメの言葉に首を傾げる。それもそうだろう自分達はこの世界に来て二日程ぐらいしか経っていないから当然の反応だ。
優花が考える中、ニィッと笑うハジメは自信満々に応えた。
「あぁ、凄く頼りになる奴だ」
ハジメと優花はそんな話をしながら訓練場を後にするのであった……。
ー訓練場ー
ハジメと優花が居なくなったりして、少し訓練場がざわめいたが、予定通りメルド団長が訓練の内容を説明をしていた。そんな中、誰かがボソッと呟いた。
「………っち、何あの女…」
この呟きはそこにいたクラスの皆、そして幼なじみの親友の女子生徒にも聞こえない独り言であった……。
ハジメの技能
・脳内設計…頭の中に正確な設計図を思い浮かべることができ、自分が今まで見た物、触った物などは設計図は容易に出来る。(例えば、ハジメはゲームなどで銃などを見てるのでその銃の設計図を正確に頭の中で思い浮かべることが出来る技能です。)
・武芸百般……文字通り多岐にわたる技術を得れることを可能にする技能であるが、逆に言えば一つの武を極めることが難しい技能。
例に剣術の技能を得ても、〝抜刀速度上昇〟などのその技能の派生は得ることはできない代わりに〝剣術Ⅱ〟という表示になる。
<編集しました。