ありふれた職業で世界最強if優花   作:白San

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やっと投稿できました( ̄▽ ̄;)


百五話 母、そして家族

 

その日の夜。

 

未だ、ちらほらと町中の喧騒が聞こえてくる。どこかで帰還と新長老誕生を祝って宴会でもしているのかもしれない。そんな中、割り当てられた部屋で、ハジメ、優花、ユエ、ティオ、部屋に来ていたアレスの五人は思い思いにくつろいでいた。

 

そう、五人だ。一人、元気印のウサギがいない。

 

「シアの奴、遅せぇな」

 

「そうね……シア、どうしたんだろ?」

 

「……ん。家族に会ってくるって言ってたけど……」

 

「そうですね。家族の皆さんで戦況祝いでもしてるのでしょうか?」

 

「うぅむ。まぁ、シアに限って悪いことが起きておらんじゃろう。何かあっても、元凶の方が木っ端微塵じゃろうて」

 

違いないと、ハジメ達は頷き合う。

 

なお、ハジメは今ベッドの上で義手の整備をしており、その隣でユエを膝の上に乗せた優花は二人で嬉しそうにハジメの作業姿を見ている。ティオとアレスはソファーに座って帝国での疲れを癒すかのように寛いでいた。

 

そんな五人がそれぞれのことをしながら会話をしていると、不意に、部屋の窓が開いた。

 

「夜分遅く失礼します、ボス」

 

「お、新長老じゃねぇか?」

 

高さ十メートルある部屋の窓から、にゅるりと入ってきたのは新長老となったカムだった。ハジメは正体がカムと分かると、悪戯っぽく笑みを浮かばせて、新長老と言うと、カムは小っ恥ずかしいのか「アハハ~」と笑みを零して返していた。しかし、かんな時間に此処に来るのも何か用があると思ったハジメは用件を聞いた。

 

「ボス。お取込み中なのは重々承知なのはですが、今から少し、お付き合い願えませんか?」

 

「こんな時間にか?」

 

「はい。是非」

 

言葉少なに、しかし、強く願い出るカムにハジメは目を細める。緊急事態なのかとも一瞬思ったが、それにしてはカムの気配は穏やかだ。

 

何かとシア関連と察したハジメは、部屋にいる四人で視線を送ると、四人も同じような考えに至ったのか、ハジメの目が合うと頷き合う。

 

「んじゃ、行くかカム」

 

「御意」

 

ハジメは、義手の整備を一旦、やめる。そして、部屋を後にして、カムの導きに従い、ハジメは都を出て樹海の奥──ハウリア族の元の集落へと向かうのだった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

うねるように根の張り出した大きな木のもとに、ポツリと佇む少女の姿があった。何をするまでもなく、ただ目の前の木々をジッと見つめている。

 

とても静かで、とても穏やかな雰囲気であった。普段の天真爛漫でムードメイカーな雰囲気が嘘のように。

 

淡青白色の髪と、静謐と愛情に彫られた横顔は驚くほど神秘的で美しく、森に迷い込んだ者が目撃したとなれば、きっと誰であっても心奪われたに違いない。

 

そんな少女──シアのもとに、人影が歩み寄ってきた。この神秘的雰囲気を惜しんだのか、静かに、ゆっくりと歩いてくる。

 

「ハジメさん」

 

「おう」

 

特に驚いた様子もなく、シアはふにゃっと笑いながら人影の名を呼んだ。呼ばれたハジメは、そっと寄り添うように隣に並び立った。すると、シアがハジメの腕にギュッと抱きついて頭をハジメの肩に乗せた。二人はしばらくの間、寄り添い合いながら何も言わず、ただ目の前の大木を見つめて佇む。

 

やがて、ポツリと、シアが口を開いた。

 

「父様ですか?」

 

「ああ、ここに俺を連れてきたら、さっさと帰っちまったけどな」

 

「ふふふ、父様中々空気が読めますね」

 

そう、カムの用事は、シアの元へハジメを案内すること。そして、できればハジメとシアを二人っきりしたいというのが親心だった。優花達も察した様子だったし、シアなら問題ないので、今頃は、まったりと寛いでいるだろう。

 

「母親か?」

 

「はいです。母様が、この木の下で眠っています」

 

樹海では、死した者は木の根元に埋葬される。自然に還すためだ。役目を終えた体と魂は自然と一つになり、故郷たる樹海を潤し、そこで生きる者を潤して、再び新しい命が生まれてくる。亜人達は、その循環を尊ぶ。木々は墓石であり、故人の象徴でもあった。

 

「───英雄になりたかった」

 

「ん?」

 

シアの突然の言葉に、ハジメは首を傾げる。シアは木々を見つめたまま言葉を重ねた。

 

「───家族を守れる人になりたかった。逃げ隠れするだけじゃない。大切な人を奪おうとする全てに立ち向かって、全てを守れるような、そんな英雄になりたかった」

 

「………」

 

「母様の言葉です。燃えるような瞳と心を持った人でした」

 

最弱種且つ病弱。最も弱き体を持った、最も強き心の女性───モナ・ハウリア

 

それが、シアが敬愛する母の名だ。

 

「……だから、シアが生まれたんだな」

 

ハジメの納得したような言葉に、シアは弾かれたような視線を転じた。墓石を見つめるハジメの目には確かな敬意が宿っている。

 

 

───生まれてくる子は、強き子であれ

 

かつて、母が伝えてくれた願い。

 

体の強さは願った通りに。そして、心の強さも、シアは確かに受け継いだのだ。それを、恋人が認めくれた。自然と、照れ笑いが浮かんでしまう。

 

頬を上気させたシアは、墓石代わりの木々を仰ぎ見ながら、万感の想いを込めて亡き母へ言葉を紡いだ。

 

「母様。母様が教えてくれたことは本当でした。世界はとびっきり厳しいですけど、時々、とても優しいです。私、見つけましたよ。紹介しますね。この人が南雲ハジメさん──私の、大切な恋人です」

 

かつてモナは言った。シアと並び立つ人が必ず外の世界にいると。きっと素敵な出会いをするのだと。

 

〝未来視〟なんて能力もないのに、モナの予知は必中だった。今でも、敵わないなぁと、シアは思う。いつか、母のように気高く、そして強い女性になれるのだろうか。辿り着くには、中々骨が折れそうな未来だ。

 

だが、それでも、一つ、近づけたこともある。

 

「私は、父様は、ハウリア族は──英雄になりました。そして、父様は新たな長老の一人になりました」

 

生きていたら、モナは、一体どんな顔をするのだろう。あの燃える瞳を更に輝かせるのだろうか。それとも、無茶をしてっと困ったように笑うのだろうか。

 

在りし日の母の姿を思い浮かべ、シアは笑みを浮かべた。

 

そして、

 

「感謝します」

 

「え? ハジメさん?」

 

突然の言葉に、シアはハジメを見た。ハジメの視線はモナの木々に向いていて、その言葉をシアではなくモナに向けたものであることが分かる。

 

「奈落から這い出て、世界を、神を敵に回す覚悟で始めた二人旅。ユエという女性と共に、大切なものを守る為に二人だけで、全ての障害を乗り越え、この世界を支配するゴミったれな神共を討伐するつもりでしたが、旅する内に、やっぱり二人だけでは難しいと感じてしまいました。けれど───」

 

ハジメはシアを見る。そして、微笑むと、再びモナの木々に向き直って言葉を続けた。

 

「シアがいたから、俺は前へと突き進めています。色々な人達救えることが出来ています。俺のこんな旅に彩りを与えてくれたのは間違いなく、貴女の娘だ」

 

「ハジメさん……」

 

言葉に詰まるシア。ハジメは小さく笑みを浮かべながら、改めて、大切なウサ耳少女の母親に向けて感謝の言葉を贈った。

 

「この世に、シアを生んでくれて感謝します。安心して下さいシアは俺が幸せにします、絶対に」

 

シアは天を仰いだ。そうしなければ、溢れ出るものが抑えられそうになかった。白の濃霧でさえ、今は二人を優しく包み込んでいるかのようだ。

 

心地よさすら感じる沈黙を、再びシアの言葉を終わらせた。

 

「あの、ハジメさん」

 

「ん?」

 

「ありがとうございました。いろいろ、言葉にしきれないくらい……本当に、ありがとうございました」

 

─── 一族の救済、旅の道連れ、望みに応え国を相手取る。

 

───背中合わせ、命を預け合い、共に死線を潜り、自分を愛してくれた。それだけの信頼と愛を寄せてくれた。

 

───そして、母の墓前で、こうして同じ時を過ごしてくれている。

 

シアの深い感謝の言葉に、ハジメは微笑みながらシアを抱き寄せた。お互いの距離が縮まり、心臓の鼓動が聞こえてくる。

 

「気にするな。俺が伝えたいことを口にしだけだ」

 

「でも、嬉しいんです。ハジメさんが、そう言ってくれるだけで」

 

ハジメの言動に、シアがクスクスと笑う。しかし、直ぐに難しそうな表情になって、ハジメに視線を向けた。

 

「私、何をすればハジメさんに返せますか?」

 

「礼なら、傍にいてくれるだけで結構だ」

 

「そんなの、私が納得しません。ハジメさんは、私が何をすれば嬉しいと感じてくれますか?……ハジメさんが望むなら、こ、───だって……」

 

シアはウサ耳をピコピコと動かしながら、ハジメにピタリと密着して、胸もハジメに密着させた。直ぐ隣からハジメを見つめる彼女の瞳は熱を孕んで潤んでおり、吐息は火傷しそうなほど熱い。言外にシアが何を言っているのか大事な部分は聞こえなかったが口の動きで何が言いたいか理解したハジメだが、それには応えず、代わりに苦笑いを浮かべて返した。

 

「いやぁ、シア。流石に踏み込み過ぎだ」

 

「んもぅ……まぁ、流石に大事な時ですもんね。それに、優花さんやユエさん達に叱られそうですし……」

 

「分かってるなら言うな」

 

困ったような表情で溜息を吐きながらハジメは、シアの頭を軽く小突く。シアから「アイタ」と言って小突かれたところを摩る。でも、その表情は嬉しそうだ。

 

「でも……いつかは、してくれるんですよね?」

 

「いつか、な」

 

シアは嬉しそうに笑みを見せる。しかし、シアのウサ耳は正直者らしく、ペタリと力を失ったように垂れてるしまった。それにつられてやはり不満はあるそうだ。

 

「でも、やっぱり、何かお礼をしたいんです。ハジメさん達と出会ってから、私はずっと貰ってばかりです。ハジメさんもユエさん達も笑ってくれればいいって言いますけれど、そんなの皆さんといるのが幸せな私からすれば自然なことで、全然お礼なんかじゃないです」

 

「さっきも言ったろ? 俺も、お前に貰っている。十分すぎるものをな」

 

「むぅ、釈然としません。そういうのじゃなくて、もっときちんと目に見える形で、ハジメさんにも、ユエさんにも、お礼がしたいんですよぉ。……いろいろと考えてみたんですけど中々思いつかなくて」

 

「やさぐれるなよ」

 

ハジメはいじけるシアに困った表情になる。改めて恩返しがしたいと言われても、本当に、もう十分なのだ。泣きべそ掻きながら必死に付いてきて、ハジメの力になりたいと頑張ってきた。感謝してるのはハジメの方なのだ。

 

だが、シアとしては、それではどうにも気持ちが収まらないらしい。

 

「むぅ……邪魔な神さん達が居なければ、ハジメさんに色々と出来たのに………はぁ、仕方ありませんね。では、これからもハジメさんの恋人の一人として頑張っていくことにします」

 

「クハッ、そうかい」

 

ハジメの抱き着く力を強めるシア。ハジメは少し笑みを零した。と、その時、再び天を仰いだシアは、上空の霧に輝きを見た。それは、偶然にも局所的に霧が薄くなることで月の光が差し込み、それが空気中の水分に反乱射して起こる現象だった。

 

「ハジメさん、ハジメさん。ちょっと付いてきてくれませんか?」

 

「ん? いいぞ」

 

ハジメから離れて、ウサ耳をミョンミョンさせながら、シアは楽しそうに木々を駆け上がり始めた。ハジメも、幹の洞や枝を足場にひょいひょいと追従する。

 

辿り着いたのは、モナの木々の頂上付近。普通、頂上付近となれば細い枝ばかりとなるのだが、そこには幾本もの枝が複雑に絡み合ってできた、実に座り心地のよさそうな場所があった。

 

「ここに、母様を埋葬したのは、ここが母様のお気に入りの場所だったからなんです」

 

「なるほどな、隠れスポットみたいな場所か」

 

二人でもゆったりと座れる頂上の大きな枝に、並んで座るハジメとシア。

 

「ほら見てください、ハジメさん。中々の光景が見られますよ!」

 

「……お? おぉ。これはまた……幻想的だな」

 

霧が流れ、限りなく薄くなる。見えてくるのは、広がる雲海。ちょうど、ハジメ達の高さで濃霧が広がり、それより上は晴れた状態なのだ。そして、その霧の海に月の光が降り注ぎ、きらきらと幻想的に輝いている。まさに、宝石をちりばめた真白の海というべき光景。

 

「ものすごっく稀な現象なんですけどね。母様のとっておきです。このタイミングで見られるなんて、ついてますねぇ」

 

「お前の母親も粋な計らいをするな」

 

母親が、頑張った娘にご褒美をくれたに違いない。そう言うハジメに、シアのウサ耳はわっさわっさと身悶えるように動いた。

 

二人で、キラキラと輝く霧の海を眺める。

 

ふと、ハジメはシアを見た。月の光を反射したのは、シアの髪も同じらしい。淡青白色の髪が、風になびく度にキラキラと輝く。その横姿を眺めながら、ハジメは、ふと、彼女との出会いを思い出した。

 

ユエと二人で、無事に外へと帰還して、魔物から必死に逃げていたひ弱なウサ耳少女。

 

なんで助けようとしたのかは、今でもよく分からない。助けたとしても、面倒事が押し寄せるだけだ。しかし、助けてしまった。

 

彼女の死ぬ瞬間を見たくなかった。

 

否、

 

自分の性格で、つい助けてしまった。

 

否、

 

ただ、本能が、己の何かが、そう自分(ハジメ)に、助けるという衝動を駆り立てたのだった。

 

そして、案の定、少女を助けたら、今度は一族を助けて下さいだ。頭が痛くなった。が、なんとか一族の危機を回避させて、ハジメは一族のボスとなり、少女は旅の仲間になった。

 

一緒に戦い、笑い、この異世界旅を共に過ごしてきた。

 

気が付けば、シアの存在は大きくなっていた。無意識の内にシアに対して独占欲を持ってしまっていた。

 

最愛と再会した際には、ユエ達に対しての想いも誤魔化せなく、晴れて大切な恋人となっていた。

 

オルステッドと相対した際は、無惨なシアの姿で、怒りが抑えられなくなった。弱い自分に嫌悪した。だが、その怒りを嫌悪を糧に何かが己の中に潜む化け物が咆哮した。

 

そして、聞こえた。

 

────もう、失いたくないと……。

 

そこからは、ハジメは無意識と意識と狭間を行き来しながら、血反吐を吐いて戦って、勝ち抜いた。

 

そんなことを思い出しながら、大切な存在な眼前の少女を愛おしそうに見つめるハジメ。

 

「え、え〜と、ハジメさん? なんでしよう? そんなにジッと見つめられると、流石に恥ずかしいのですが……」

 

気が付けば、シアが頬を真っ赤に染めながら恥じらうようにモジモジとしていた。ウサ耳も「うぅ〜、どうして見てるの〜」というようにペタリと倒れながら、時折、ふにゃふにゃと動いてはハジメの方を向く。

 

そんなシアにハジメは目元を和らげると、そっと手を伸ばした。そして、その恥じらうウサ耳を優しく撫でる。

 

「ハ、ハジメさん?」

 

「………なぁ、シア。一つ、頼みがあるんだが」

 

「頼み、ですか? もちろんいいですよ! なんでも言ってくださいです」

 

ハジメのやっと頼みを言ってくれて、嬉しそうにニコニコしながら快諾した。

 

「いや、何、少し横になりたくってな。良かったら膝枕でも頼めないか?」

 

「そんなの頼まなくても恋人ですし、普通に使ってください。さぁ、どうぞどうぞ」

 

「ありがとよ」

 

シアは、ハジメの頼みに拍子抜けしたような表情もするものの、膝枕するのは嬉しいらしく、直ぐに満面の笑みを浮かべて自分の太ももをペシペシと叩いた。ハジメは、笑みを零しながら礼を言い、そのまま遠慮なく横になる。

 

シアはミニスカートなので、直接、太ももの感触が伝わる。温かくふにふにとした感触が、柔らかくハジメの頭部を支える。仄かに、優花やユエ、ティオとは似て非なる甘い香りが鼻腔をくすぐった。

 

「ふふ、改めてこうしてると、新鮮な感じがしますね。私、少しドキドキドしてます」

 

「そうだな、俺も妙に新鮮さを感じてるよ」

 

シアの膝枕は、初めてではない。しかし、今この時は、ハジメもシアも妙に新鮮さを感じており、頬が熱くほんのりと赤い。そんな二人の視線が重なる。

 

「シア、愛してる」

 

「私も、ハジメさんが大好きです」

 

シアの手が優しくハジメの髪を撫でる。心地よい感触に、ハジメは目を細めた。そして、お返しと言わんばかりに、目の前に垂れ下がっているシアの髪を手に取り、指で弄んだ。

 

シアの頭上に月が見える。

 

天真爛漫な元気っ子のくせに、どうしてこうも淡い月が似合うかのか。

 

月の輝きが強まるにつれ、同じように輝きを増すシアの髪と笑顔。

 

一体、誰が見惚れずにいれるだろう。

 

見つめ合い、穏やかに、月と霧が作り出す神秘の中で寄り添う二人。

 

今のハジメとシアを見た者がいたのなら、きっと砂糖を吐き出すに違いない。それくらい二の醸し出す雰囲気は甘かった。

 

この場を邪魔する者は現れない。現れても近付くことは出来ないだろう。そうすら思わせるほど二人は見つめ合っている。そんな甘やかな時間は優しく流れる。樹海が再び、濃霧に包まれるまで、ハジメとシアは二人っきりの時間を楽しむのだった……。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

【魔国ガーランド】

 

城内、自分の執務室で黙々と報告書を纏めていた将軍フリード・バグアーは、少し焦り見せていた。

 

「……」

 

それは、ガーランドに神の使徒達が現れた次の日のことだった。フリードは再びアルヴに呼び出され玉座の間にいた。しかし、今回は五神の一柱 聖母神エクストラや使徒の姿はなく、数人の衛兵とアルヴのみだ。

 

フリードは、その場で跪いて、用件を聞いた。そして、アルヴの口がゆっくりりと開いた。

 

『フリードよ。これは神託ではなく、王命だ。数日の間、お前の行動の制限を命じる』

 

『?!』

 

フリードは驚愕のあまり顔をバット上げた。アルヴから言われたのは、行動の制限。所謂、謹慎だ。動ける範囲は、城内と外れにある訓練場のみだけという、それは、今の状況的のフリードにとって酷な命令だった。

 

『王よ。流石に、その命は納得できません!』

 

流石に、その命令にフリードは、異議を申し立てたが無意味だった。アルヴはフリードに、こう告げたのだ。

 

『エクストラ様のご命令だ、受け入れよ』

 

それを聞いたフリードは、ゾッと体全体に悪寒が走った。もしかして、自分が奴等()の敵とバレてるのかもしれない。しかし、だが何故、ずくに自分を殺さない?とフリードは思う。

 

そして、ただの勘であるが、まだ奴等には、バレてないのかもしれないと、だとしたら、無理に反抗は止めて従ってようとフリードは判断し、謹慎を受けたのだった。

 

 

そして、今に至る。

 

フリードが謹慎の命を受けて、二日が経つ。謹慎は残り数日、だが、この間に自分が何も出来ないことに怒りを感じていた。

 

そんなフリードが、事務作業を終わりに近い時だった。執務室の扉がノックされた。入室の許可を与えると同時に、執務室の扉が開く。

 

「フリード様、失礼します」

 

「アイザックか」

 

挨拶をして、入ってきた魔人族の男を見て、フリードは彼の名を呟いた。彼は、フリード直属の部下の一人であるアイザック・サガだった。彼もフリードから世界の真実を知り、その上でフリードを信じ従っている直属部隊の一人だ。

 

「スマンな、アイザック。不甲斐ない私のせいで、お前達も謹慎を受けてしまって……」

 

「いえ、仕方のないことです。それに、奴等も気付いてないようですし」

 

「あぁ、そこは心の底から安心した。流石に冷や汗が止まらなかった、寿命が何年ぐらいか縮んでしまった気がするな」

 

フリードの謝罪に、アイザックは首を振る。アイザックは知ってるからだ。謹慎で一番、悔しいのはフリードであることを。そして、フリードの軽い冗談で少し場の雰囲気が変わる。

 

「しかし、どうした。こんな時間に?」

 

暗部(・・)から連絡を受けました」

 

「!」

 

連絡と聞いて、フリードは表情を変え、勢いよく席から立ち上がった。机に両手をついて、少し前のめりになる。フリードの謹慎は、直属部隊のアイザックを含めた彼等も同じような命を受けることになっており、今は自室にいるだろうカトレアも謹慎を受けている。そう表の部隊(・・・・)は……

 

「……内容は?」

 

「はい。見張りのガロックからは、使徒達はまだ動きはないことです。守護を任されているバランとガランからも村の侵入もないと連絡がありました」

 

「そうか」

 

フリードはアイザックからの連絡を受けて、安堵した表情になる。そして、気が抜けたように席についた。アイザックも少し笑みをこぼす。フリードも、見張りは危険だが、ガロックならば安心だ。村の守護も、あの二人であれば、並大抵の者なら敵にもならないだろうと頷く。

 

アイザックは、次の報告の内容が微笑ましいことに、少しフフっと笑みをこぼしながら報告をした。

 

「それに、ガランからは、フリード様が無事なのかと泣きべそをかいているらしいですよ」

 

「ふっ、そうか……じゃあ、今度会いに行ったら、任務を頑張ったガランには褒めてやらんとな」

 

「そしたら、バランの方も嫉妬して、フリード様に甘えてしまいそうですけどね」

 

アイザックの言葉に、フリードも「そうだな」と笑みを浮かべた。大事な家族とも呼べる部下が無事を聞けてか、少しばかり張り詰めていた部屋の雰囲気が少しばかり和んだ。

 

「そうか、連絡感謝するアイザック。後、バランとガランには引き続き村の守護を、ガロックには迂闊に前にでしゃばり過ぎるなと伝えてくれ」

 

「了解しました。では」

 

フリードの言伝を頼まれたアイザックは、頷くと「失礼しました」と言って、部屋から出ていくのだった。アイザックが部屋から出てフリードは天井を見上げて、呟いた。

 

「……私も私なりに抗わせて貰うからな」

 

それは、自分達に敵達に向けての言葉。そして、そう呟いたフリードの表情は、口角を上げ、不敵な笑みを浮かべており、その目は鋭くギラついているのであった……。





シアの服装は、コミック版の六巻以降の服が私としては、一番好みですね( *¯ ꒳¯*)

七章の後にステータス紹介したほうがいい?

  • したほうがいい
  • しなくていい
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