お気に入り登録者数が増えない……(´・ω・`)
蜂モドキとの戦闘を終えた一行は、ハジメ、ティオ、龍太郎の三人の捜索から、二時間ほど経つ。一行は樹海を進む中、この大迷宮には、蜂モドキに、ゴブリン、狼型の魔物といった多種多様な魔物達が棲息していると分かった。
若干、約三名ほどがイライラして不機嫌の中、一行は、何かを聞き、ウサ耳をピクッと動いた不機嫌中の一人であるシアの声が聞こえると同時に止まった。そして、何事かと視線をシアへと集中させる。
「正面に五十、右に六十、上に五十ですぅ!」
「了解です。では、優花殿とユエ殿は上を、シア殿は彼等三人の援護で右を、正面が私が対応します」
「「「はいっ」」」
シアは、ウサ耳でこちらに近付く魔物達の足音と羽音を聞き取ったのだ。シアは大体の魔物の数を伝えると、その頭数を聞いたアレスが全員に的確な指示を飛ばす。指示を聞いた全員は、それぞれの指示に従い魔物達との戦闘を開始した。
「行くぞっ、皆。俺が道を開く! 万翔羽ばたき 天へと至れ!──〝天翔閃〟!」
右では、前に出た光輝が道を切り開くために、天翔閃を放つ。迫ってきていた魔物達は、避ける暇なく放たれた光の斬撃に直撃してしまい数体が灰燼と帰して道を創り出す。
「〝天絶ぅ〟! シズシズ、お願い!」
「了解したわ!」
光輝が道を切り開いた間に、鈴はシールドを次々と展開させていく。そして、そのシールドを足場として利用して雫は〝無拍子〟も発動して、魔物達を翻弄しながら斬り伏せ屠っていく。
「ドっ、セイですぅ!!」
シアは、シアで光輝達が戦いやすいように〝天啓視〟で光輝達を奇襲しようとする魔物達を含めてドリュッケンを振り回して粉砕させていくの見える。が、シアはただ、治まらない怒りを、ただ魔物達にぶつけているだけのようだが……。
そんな四人の連携?で魔物達を一掃していく。
「私も、時間が惜しいですからね。さっさっと片付けましょうか」
正面から来る魔物達を、たったの一人で相手をするアレスは全くも焦りの表情なんてせずに、ロンギヌスを〝宝物庫〟から取り出した。
「──〝天翔閃・極〟」
ロンギヌスの刃の部分が光り輝くと、横薙ぎに大きく振るった。そして、横薙ぎに一直線に進む巨大な光の斬撃は正面の魔物達に直撃させ、たったの一撃で正面の魔物達を殲滅させた。
「ユエ、さっさっと終わらせるわよ」
「……ん」
上を任された優花とユエ。優花は、聖杭を
上から攻撃をしようとした哀れな魔物達は、無数の魔法の火の槍が合わさった乱れ撃ちによって、黒焦げになったり、凍ったり、頭部が吹き飛んだりして蹂躙されていった。しかし、魔法を放つ二人はシアと同じよくイライラしていた。
何故、三人はイライラとしているのは理由。それは、数分前に襲ってきた猿モドキの魔物が原因だった。
棍棒や、石のナイフなど一応武装をしていた猿モドキの群れは、その俊敏さと樹海という地の利を活かしたトリッキーな動きで、光輝や雫、鈴を翻弄した。とはいえ、やはり優花達の敵になるほどではなく、先程の蜂モドキの時と同じく、自分達に向かってくる分はさくっと片付けていた。
圧倒された猿モドキは、どうやらそれで危機感を覚えたらしい。彼等は新たな手を打った。彼等にとって不幸だったのは、中途半端に知恵が回ったことだろう。
猿モドキ達は、思いっきり選択を間違えた。
〝擬態〟───赤錆色のスライムと同じ、それが猿モドキの固有魔法だったのだが、彼等も大迷宮からハジメ達の情報を受け取っていたらしい。
そう、あろうことか、彼等は選んでしまったのだ。最も怒らせてはいけない優花、ユエ、シアの三人の精神を、最も掻き乱せる相手───ハジメである。
猿モドキは、奥の茂みから〝片腕を失い、石ナイフで刺されて複数の刺し傷がある、血だらけ姿のハジメ〟に擬態した仲間を引きずってきたのだ。
赤錆色スライムと同じく、見た目は本物と寸分も違わない。もちろん、優花達は赤錆色のスライムの擬態すら、感覚だけであっさり紛い物だと見抜いたくらいであるから、猿モドキ達が引きずってきたそれがハジメでないことも直ぐに理解していた。
だが、自分達の大好きな恋人のハジメである。
紛い物か本物か、そんなことは関係があるだろうか?否、ない!
プッツン寸前の三人の行動が早かった。シアが目の前のハジメモドキにドリュッケンを振りかざして、叩き潰して、一瞬で肉片にした。優花は聖剣へと形状変化した聖杭達が優花の感情を汲み取ったのか分からないが、一斉に猿モドキ達を細切れにしていく。
そして、ユエは猿モドキという存在自体を跡形もなくしてやろうと、自分が出した雷龍と蒼龍の双頭の龍によって猿モドキ達いた場所から前方約五百メートルが扇状に焼け野原にした。あちこちに人型の炭化した生き残りの猿モドキの残骸が転がっている。他にも、樹海の生きとし生ける魔物達が巻き添えを喰らってしまったのか一緒に灰燼と帰していた。
その後も、苛立ちが収まらず樹海をも破壊しようとする三人をアレスが止める。
「皆さん、少し落ち着きましょう。今は試練の真っ最中ですよ?」
「でも、アレスさんっ」
「……ハジメを侮辱した。許せない」
「ごめんなさい、アレスさん。私も頭にきてて、無理かもしれません」
アレスの言葉に、聞く耳を持たない三人。しかし、アレスの方も折れず、少し語気を強めながら再度説得する。
「もう一度、言います。今は、試練の真っ最中。感情的になってはいけません。それに今は、はぐれたハジメ殿達の捜索が最重要。樹海を破壊するなど、もし、ハジメ殿達に何かあったらどうするんですか?」
「うっ……それ言われちゃうとねー」
「……何も言い返せない」
「ですぅ……」
とはいえ、三人も大切な仲間のアレスの言葉と、アレスの言う通り樹海を破壊したら、ハジメやティオにもしものことがあったらと思うと何も言い返せず、次第に落ち着きを取り戻した。
少し冷静になった三人を見て、雫はホッと息を吐く。そして、アレスが本当に仲間にいてくれたことを物凄く感謝した。もし、アレスがこの場にいなければ自分が説得することになるからだ。そう思うと胃に穴が空きそうな思いであった。
「ありがとうございます、アレスさん。なんとか冷静になれました」
「いえ、私もあのやり方には多少イラッとしましたからね。仕方ないことですよ」
「……ん、今回のは特に最悪だった。タチの悪さは、此処が一番だと思う」
「そうでね、私もまだハジメさんをダシにされてイライラしてますから」
なんとか冷静を取り戻した三人。アレスもその気持ちはちゃんと理解している。やはり、ハジメの仲間として敵の悪辣な手段には嫌悪感を顕にしている。しかし、三人は、まだイライラは収まらないようなので、アレス、は三人に道中に相対した魔物に怒りをぶつけてみてはという提案をするのだった。
そして、現在に至る。
襲いかかってきた魔物達を全て倒し終えた一行。光輝と雫、そして鈴は、流石の連戦のせいか荒い息を吐いている。アレスの方は、己の魔力残量を確認しつつ、周囲の警戒をしている。優花、ユエ、シアの三人は、怒りを多少ぶつけられてストレス発散になったのか、少し表情が明るい。
「いやぁ、アレスさんの指示があって、難なく倒せましたね〜」
「いえ、シア殿が正確に魔物の位置と数を伝えてくれたからこそ出来たことですよ」
互いに褒め合うシアとアレス。しかし、本当にシアの察知とアレスの指示で上手くいったようなものだ。
「でも、ハジメとティオ見つからないね……」
「……ん、魔力も感じ取れない」
「あの、龍太郎のことも忘れないで欲しいのだけど……」
「龍太郎くん、無事かなぁ」
「そうだな。龍太郎の魔力も感じ取れてない」
そう。五人が会話するように、今まで樹海を進みながら、三人の魔力探していたのだが、全然、反応がしないのだ。そのせいで余計に居なくなった三人が心配になってしまう。
すると、アレスと元気印のシアが呼びかけた。
「今は、めげるところではありません。もしかしたら更に奥に行けば、手掛かりが見つかるかもしれません」
「そうですよ。ハジメさん達なら絶対大丈夫です!」
「ふふっ………そうね。坂上君は分からないけどハジメとティオなら大丈夫そうね」
「……ん、二人の言う通り」
二人の言葉に少し元気付けられた五人は、少し笑みを浮かばせる。そして、一行は再びハジメ達の捜索のために樹海の奥へと進んでいった。
それから、数分後。
順当に樹海を奥を進んでいた一行だが、不意に先頭を歩くアレスの足が止まる。止まるアレスに雫がキョトンと首を傾げながら声をかけた。
「アレスさん?」
「いえ……シア殿。何か聞こえませんか?」
「え?………!はい! 向こうから何かが聞こえすぅ!」
アレスに言われ、疑問に思いながらもウサ耳を澄ますシア。そして、何かが聞こえたのかウサ耳をピンッと跳ねている。そして、聞こえた方向に指を差した。
「あっちの方向ですぅ!」
「行きましょう!」
すると、指を差した方向に向かってアレスが走り出す。それに続いて、優花達も追従する。そんな中、優花がアレスに聞く。
「アレスさん、どうして何かあるとわかったんですか?」
優花の疑問に、他の者も気になったのか走りながらも視線をアレスに集中する。そして、アレスはその疑問の返答を淡々と返した。
「いえ、シア殿みたいに正確な場所は分かりませんでしたが、微かに濃い血の香りがしたので」
「………アレス、凄い」
「わー……やっぱり、アレスさんも人間を卒業してる〜」
アレスの返答を聞いたユエは、吸血鬼である自分よりも血の香りを捉えたことに驚き、鈴の方はアレスの人外さに苦笑いをこぼした。
そして、アレス達は、茂みの中を走り抜けると開けた場所に着いた。そして、血の香りの原因を目の当たりにした。
アレス達の目に映ったもの。それは……
「グルゥアァァァア!!」
「グギャ?!」
「クギャッ!!」
複数の同じ魔物達が、一体の魔物と戦っている光景だった。
複数の魔物は、ゴブリンに酷似した生き物だった。暗緑色の肌に醜く歪んだ顔、小柄な体格でボロボロな布を肩から巻き付けたり、軽装な鎧などを身に纏っており、それぞれ棍棒や石槍といった武器を持っていた。
対して、一体の魔物は狼に酷似した魔物だった。体長が軽く一メートルを超え、体毛は美しい白銀。その迫力に近付き難いが、それに対して、その瞳は周囲を引き付けるような紅の瞳を持っていた。
狼は、複数のゴブリン達に狙われる。所謂狩りだった。ゴブリンは一個体だと弱い。しかし、
対して、狼型の魔物は、鋭利な爪や獰猛さが伝わる牙を持って強そうに見える。が、数は一。数が多く知能があるゴブリンには不利だろう。
「あの狼の負けか……」
この光景を見ていた光輝は、狼の負けだろうとボソッと呟く。しかし、肩をツンツンされて振り返ると雫が、そこにいた。その顔は、何か怖い物を見たのか若干、青白く怯えている。雫は、光輝が振り返ると同時にある方向に、指を差した。
「どうしたん────は?」
光輝は、雫の表情に疑問を持つも、従うように指を差した方向に目を向け、言葉を失った。
そこには山があった。その山は、複数のゴブリン達の死体が積み重なって出来た山だった。見る限り、数は三十は軽く越えているだろう。ゴブリン達の死体は、どれも三本線の引っ掻き傷や喰われたような噛み傷がある。そして、他に魔物の死体がないことから、あのゴブリン達を殺したのは、紛れもなく、今も残りのゴブリン達と戦う白銀の狼だろう。
それを理解した光輝は、恐怖のあまり顔を青くし、濃い血の香りに顔を顰めて口元を覆った。他の者達も死体の山に気付いておりこの山が、アレスが言っていた濃い血の香りの発生源なのだろう。
狼は、優花達に気付いてないのか、自分に襲いかかるゴブリン達に集中していた。ゴブリン達は、色々な角度から狼を包囲すると石槍などで急所を狙う。しかし、狼はそれを予想したとも言えるほどの動きで避けると同時に、その俊敏を活かして二体のゴブリンの頭部を踏み潰した。
「グルゥア!!」
「ギャッ」
「ペギャッ」
叫ぶ暇もなく、嫌な音が鳴って頭を潰されて絶命するゴブリン。しかし、そこを狙って石槍で目を潰そうとする短剣を持ったゴブリンが奇襲する。が、狼は一瞬で方向転換しゴブリンとの間合いを詰めると、首筋を噛み千切って、後ろにいたゴブリンを尻尾で殴りつけた。
「ガアァァッ!」
「グギャャァ!!」
「グギャ?!」
それから、狼は、その鋭利な爪でゴブリンを引っ掻き三枚おろしにして、最後の一体を首を跳ね飛ばして戦いは終了した。狼は、爪に付いた血を振り払い、呼吸を整えるために荒く息を吐いてるだけで目立った外傷は特にない。
その圧巻の様子に、優花達は何も言えず、光輝、雫、鈴は、恐怖に息を飲む。すると何かを感じ取った狼は、グリンと首を回して優花達を視界に捉えた。
「「っ!」」
殺られる!と思った二人は、緊張した面持ちながらも直ぐに光輝達は武器を構える。しかし、狼の方はというと弾んだ声で「アオーン」と鳴きながら尻尾を高く上げ、小刻みにブンブンと尻尾を振っている。が、直後には、自分の声にハッとしたように恥ずかしそうに「クゥーン」と鳴きながら動きを止める。そして、その場に佇みジッと優花を見やった。顔の造形のせいで、まるで新たな敵を見つけて睨んでいるように見える。
実際に、光輝をそう見えたのだろう。
「何もさせない!」
今のところ、あまり戦果を挙げられてないことから、焦燥感と少しでも活躍したいという思いが募っていたのだろう。光輝の持つ聖剣が光を纏って戦闘態勢に入るというのに、狼は何故かと動かない。動揺も戦意もない。ただ優花達を見つめたまま、無防備を貫かれ相手として見られてないのに見える。
少し訝しむ光輝だったが、魔物に相手をされてないと思われると怒りが湧く。そして、間合いを詰めようとしたその時だった。
「
「!」
光輝の目の前に現れた四つの聖杭が、光輝の四方を囲み拘束した。優花の突然の行動に、一瞬呆然とした雫達だったが、直ぐに正気を戻ると怒声を上げた。
「ちょっと、優花! なんで光輝を拘束するの?! 光輝はただ魔物を倒そうとしただけじゃない!」
「そうだよ!っていうか、なんでユエお姉様達はだんまりなの?!」
雫と鈴が優花に非難の目を向ける。ユエとシア、アレスはホッと安心した表情だ。それを見た雫達は、更に困惑してしまう。その間に、優花は一心不乱と眼前の狼を見つめている。
その様子で、あまりの衝撃展開に吹き飛んでいた狼の存在を思い出し、雫と鈴は身構えた。と、拘束された光輝が声をかけた。それも流石の優花といえど怒気をあらわにしている。
「………園部さん、どういうつもりなんだ。 何故、拘束をするんだ?流石に正気を疑う。魔物を庇うなんて──」
「魔物じゃないわ」
呟かれた言葉は予想外。光輝は思わず言葉を失い、訝しむ表情となる。優花は、光輝の目を気にせず見る気もせず拘束だけを外した。そして、未だ何もしてこない狼に嬉しそうに抱き着いた。その行動に光輝達が驚愕して目を見開いた。ユエ達は「よかった、無事だった」と呟きながら、早く狼の元へ向かおうと駆け出している。
優花は、狼の頬と自分の頬を擦り合ったりと、嬉しさを隠し切れずその場でイチャイチャし合うと、ふと目元を和らげ、驚愕すべき言葉を口にした。
「会いたかったよ、ハジメ」
「ワフっ」
「「「………え?」」」
ポカンと口を開けて呆ける光輝達を尻目に、優花は、再度ギューっと狼に抱き締めながら「ハジメェ……」と嬉しそうに呟く。狼もまた、どこか嬉しそうに「ワフゥ〜」と鳴く。尻尾も今さっきよりも激しさが増している。
「ハジメ!」
「ハジメさぁぁぁん!!」
物凄い勢いで、こちらに来たユエとシアがそのまま突撃するように狼に抱き着いた。狼は少し苦しそうだが「バウっ」と鳴く。
「ハジメ殿、無事で何よりです」
遅れてやって来たアレスも、ホッとした表情を見せる。狼もアレスに視線を向け「バフっ」と返答するかのように鳴いた。そして、狼は何かを訴えるように「バウっ、バウっ、グルゥア」と鳴き始めた。だが、やはりまともに喋れないことに「クゥゥン」と鳴きながら顔を俯かせる。
しかし、そこはハジメの優花達。ハジメをこよなく愛する彼女達三人の前に不可能はない。
「ん? ん〜、念話?……あっ、念話石が欲しいのね!」
「!バウっ!」
優花は〝宝物庫〟からハジメから貰っていた念話石が取り付けられたネックレスを狼の首に掛けた。すると狼にネックレスがかかった瞬間───アーティファクト〝念話石〟が発動した。
『あーー、おい、優花? 聞こえるか?』
まるで竜化したティオが話す時のように、空間そのものにハジメの声が響く。ほんの僅かな間しか離れていなかったにもかかわらず、随分と懐かしく感じる声に、優花達三人の表情がゆるゆると緩みハジ狼に顔を埋める。
困惑していた光輝達も、ハジメの声が聞こえたことで、ようやく目の前の存在がハジメの変わり果てた姿だと実感したようだ。
「うん、聞こえるよ、ハジメ。姿が少しモフモフで可愛いすぎるけど」
「……ん、モフモフハジメ。略してモフハジ最高」
「この毛並み堪らないですぅ〜」
『クハっ……止めてくれ、くすぐってぇんだ。だけど、お前達なら気が付いてくれると思ってた』
「当然よ。ずっと傍にいたんだから」
「……当然、ハジメと魔物なんて、直ぐに見分けがつく」
「そうですよぉ〜。私達がハジメさんを間違えるわけないですぅ〜」
『クハっ……そうかい』
「私も、あんなに数の多いゴブリン達を圧倒する魔物になっても、出来る人なんてハジメ殿ぐらいだけですよ」
『そうかよ……ま、アレス、お前も無事で安心したよ』
そんな楽しく会話を続ける四人と一体。行方不明な人物が見つからずピリッとしていた空気も元に戻ったようだ。そして、優花はハジメに今までに何があったのかと聞いた。
ハジメは、自分のあったことを話し始めた。
『そうだな、大迷宮の入口で光ったあとな──』
ハジメ曰く、大迷宮に転移させられて目覚めた後、気が付けば狼の姿になっていたらしい。魔法であることは分かるが、何の魔法か分からず、幻覚の類のものでもないらしく肉体そのものが変化したとハジメは結論付けた。
自分の装備も失っており、魔法も使えないらしく戸惑ったが、試練の一つだろうと思いながら優花達を探しに向かったという。そして、この姿の白銀の体毛は目立ち、樹海では奇異な存在なのか、種類関係なく多くの魔物達が襲ってきたが、全て返り討ちにしたらしい。
そして、ゴブリン達の群れと戦い終わって優花達の存在に気付いたのだった。
『──それが、俺が転移後にあった出来事の全てだ』
ハジメが話し終えると、光輝達が若干、少し引いているが、そこは放っておこう。
『ん? てか、ティオと坂上は?』
「ティオも坂上君も、ハジメと同じようにはぐれちゃっているのよ」
ティオと龍太郎も自分と同じように別の地点に転移されたと聞いて『マジか』と呟く。
『じゃあ、俺みたいに魔物になってるかもな……』
「うん、ハジメがこの姿になってるんだから有り得るかもね」
「では、早くティオさんも見つけないとですね」
「……ん、ティオが心配」
「そうですね。それでハジメ殿。その魔物の体はどんな感じですか?」
『ああ、それはな────』
淡々とお互いの情報を確認し合う優花達。すると、事態に把握して怒りが鎮火した光輝が、なんとも言えない表情で問う。
「っていうか園部さん達。どうやって気付いたんだ。俺を止めたってことは、最初から分かっていたんだよな?」
「どうやってかー。それはね、単純に」
優花達三人は、狼姿のハジメ──ハジ狼を優しく見つめながら言った。
「姿形が変わっただけで、私達がハジメを見失うわけない。それだけのことよ」
「……ん」
「ですぅ」
「「「……そうですか」」」
三人が、砂糖を吐き捨てたような表情で投げやり気味な発言をした。ハジメは、少し小っ恥ずかしいのか両前足で顔を隠す仕草をしていた。因みに
「あ、ハジメ、試しに再生魔法かけてみる?」
『ん?ああ、頼む』
「いくよ?───〝絶象〟」
ハジ狼に向けて再生魔法の光が降り注いだ。言うまでもなく、再生魔法は神代の魔法でありその効果は絶大だ。本来なら、復元できないものなど、そうはないのだが……
『……やっぱりか』
ハジメの姿は戻らなかった。
再生魔法が発動していないわけがない。事実、白銀の魔力光がハジメに降り注ぎ、優花の魔力は削られている。それでもハジメの姿が戻る様子がない。
「神代魔法は駄目みたい……なら、天性魔法を───あれ?」
神代魔法が効かず、ならばと神代魔法と同等それ以上の魔法である天性魔法を発動しようとする。しかし、優花がどうやっても天性魔法が発動しない。
「どうして……」
何故か天性魔法が使えず肩を落とす優花。ユエ達も心配そうな表情だ。そんな中、普通なら元に戻れないことに落ち込むはずであるハジメと、腕を組みながらこめかみをトントンと叩くアレスは、今の現状について考え込んでいた。
ハジメは、落ち込む優花に寄り添い元気付けようとしているのか頬ずりする。そして、心配そうにハジメの傍にいるユエとシアにも大丈夫だと尻尾を用いて二人の頭を撫でる。
『安心しろ、三人共。これは試練の一環でしかない。元に戻る方法は必ずある』
確信に満ちた言葉。優花とユエ、シアはハジメのフサフサも相まって表現を和らげる。
『おそらくだが、再生魔法が効かなかったのは、その変質が同じ神代魔法によるものだからじゃないかと思う。他にも色々な方法が使われているだろうよ』
「私も、ハジメ殿と同意見です」
大迷宮の入口が再生魔法で開く以上、挑戦者が再生魔法を使えるのは当然のこと。ならば、逆説的に、再生魔法で即解決できるような試練を用意してるわけがない。
そう説明するハジメとアレスは、確かに説得力があり、全員が確かにと頷いた。
「でも、天性魔法は?」
『そうだなぁ……』
「私の考えだと、天性魔法はこの大樹には受け付けないのでは?」
「え?」
アレスの説明はこうだ。
優花の持つ天性魔法は、この世界には存在しない種族──天使族が持つ特別な魔法だ。能力が再生魔法の上位と行っても過言はなく多種の聖属性魔法を扱うことができる魔法である。
だが、この魔法は異界の魔法、つまり異物だ。
そんな異物が、この世界の創世記からあり、ある意味では象徴とも言える大樹の中では魔法そのものが分解、封印をされているのかもしれない。
そう自分の推測を述べるアレス。その推測にハジメ達はそれなら納得だ、と頷く。
「じゃあ、私はこの大迷宮にいる間は、理由はどうあれ天性魔法は使えないってことね……」
『だな、でも聖杭が使えるなら大丈夫だろう』
「そうだね。うん」
気を取り直した優花。そして、シアから「ハジメさんが無事でしたし、ティオさん達を探しに行きましょう!」と全員に声をかけた。各々もシアの言葉に頷く。
「ハジメさんも安心してください! 私が絶対に守りますので!」
「ん、今回は私達がハジメを守る」
『ああ、頼りにしてるよ』
「まぁ、ハジメ殿なら、その姿でも大丈夫だと思いますけどね」
『そうか? 無我夢中だったから分からねぇな』
「「「………」」」
光輝達は何も言わずに頷く。アレスの言いたいこと分かる。ハジメは、再会するまで魔法もハジメの武器であるドンナーや多くの兵器が使えず、更に魔物の姿で襲ってきた魔物達を返り討ちにしているのだ。
そんな会話をしながら探索を再開しようとした時だった。普段ならハジメに近付くことのない光輝がバツが悪そうな表情でハジメの元へ歩み寄ると口を開いた。
「南雲。その、さっきはすまなかった。お前だと気付かなくて……もしかしたら、殺してしまうところだった」
『ん? あー、あんま気にすんなって』
「え……」
『あれぐらいの動きなら避けれたからよ。変に責任を持つなって、今はティオと坂上を捜すことだけ考えようぜ』
「っ………そうか」
ハジメのさり気ない一撃が光輝にクリーンヒットする。そして、お前なんか魔物でも戦えると言われたような気がして乾いた笑い声を上げた。
『後は、ティオと坂上だな。二人とも俺と同じ状況だとすると、ちょっと急ぐか』
二人が自分と同じ状況の場合、同じ魔物である可能性が高く。ハジメのように戦える魔物だったり、襲われることがなくても、力が失っているわけであるから、危険な状況で変わりない。
狼の姿となったハジメの言葉でも、緩んだ空気が緊張を取り戻すと、ハジメ達は急ぎ探索を開始した。
しかし、十分後。
ハジメ達は、ゴブリンとなっていたティオと無事に再会したのだった………。
〜オマケ〜
ティオゴブリンとの再会
ティオと龍太郎の二人を捜索するハジメ達。そんな中、ある魔物の集団を見て、目を疑った。
「あの、あれってティオさんですかね……」
「確かに、あの魔物では、絶対に思える筈がない気品さを感じ取れるわ」
「……ハジメ、アレスはどう?」
『ああ。絶対に、あんな気品さを感じさせるゴブリンは、ティオだ。間違いねぇ』
「そう、ですね……。魂を見ても、あの魔物は、ティオ殿です」
目の前のある魔物の一体がティオで間違いないと頷く五人。光輝、雫、鈴は、目の前の光景に有り得ないと口をポカンと開けている。
「クギャ!ゲゲゲ!」
「グギャギャ!」
「ゴブゥ!ゴブブブブゥ!」
鳴き声から分かる通り、ハジメ達の視線の先にいたのはゴブリンの集団だった。その集団は、寄ってたかって一匹のティオと思われる気品さを感じさせるゴブリンに求婚しているかのように見える。しかし、求婚されてるゴブリンは、木の葉を扇子代わりにしてるのか口元を隠しながら、求婚するゴブリン達にプイッとそっぽを向けた。
そっぽを向けられて、相手にされないと分かり落胆して四つん這いで悲しむ哀れなゴブリン達。
「やっぱティオって、モテるわね」
「……ん、流石は竜人族のお姫様」
「でも、ティオさん。絶対に嫌がってますよ。アレ」
ゴブリンになってもティオの美しさが変わらないことに苦笑いする優花達。どんな姿であろうとも、竜人族の気品さを忘れないティオ、流石である。
そんなティオゴブリンに振られた哀れなゴブリン達は、なら力づくだとティオを襲おうとした時だった。
襲おうとしたゴブリン達は、一瞬で命を刈り取られた白銀の体毛を持つ狼によって………
『人の恋人に、気安く触れるな』
その正体は、当然ハジメである。ティオに求婚するところもイラッとするも我慢してたが、ティオを襲おうとしたのは、流石に我慢できなかったらしい。
「グギャ? グギャギャ!!」
ティオゴブリンも、向こうにいる優花達に気が付き、目の前の狼もハジメであることに気付いた。
「クギャギャ!!」
『ティオ!』
多分、「ハジメ!」と言ったのだろう。鳴きながらハジメに抱き着くティオゴブリン。ハジメもそれに応えるかのようにティオゴブリンに頬ずりするハジメ。
「「「「「「………」」」」」」
狼の魔物とゴブリンがイチャつく光景を眺める優花達。
それは、余りにもシュール過ぎるのであった……。
七章の後にステータス紹介したほうがいい?
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したほうがいい
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しなくていい