今年最後の投稿は、次の話の予定ですが、もしかしたら、今回の投稿かもしれん……( ̄▽ ̄;)
快楽の試練。
その名の通り恐ろしい試練だった。
動かずとも酷く発汗するほどの大変な試練だった。
誰も彼も、全身、濡れそぼるほどべったりとしている。さぞかし、汗でベトついて気持ちが悪いことだろう。
そう、汗で。汗と言ったら汗だ。異論は認めない。と、真っ赤な顔のまましゃがみ込んで、キッとハジメを睨む雫の無言の主張。
何度言っても藪蛇になりそうなので、ハジメは視線を合わさないまま立ち上がった。そっと引き離された優花達も、雫ほどではないが恥ずかしそうに座り込む。
そんな気まずい状況に置かれたハジメに、救いの声が聞こえた。
「ただいま戻りました」
「!」
そう、大樹の方へ確認しに向かっていたアレスが戻ってきたのだ。ハジメの表情は一気に明るくなる。しかし、アレスはというとハジメの表情を見て、首を傾げながら優花達の方に視線を向けてしまい、全てを察した。
「………すみません。ちゃんと状況確認してなかった私が悪いです」
すぐにハジメに教えて貰った土下座を行うアレス。そんなアレスに、女性陣は少し戸惑いながらも「大丈夫」と声をかけるが、この中で一応、年長者の一人であり、神官の身であるアレスは女性達のあられもない姿を見てしまったことに申し訳なさを感じているらしい。
そんなアレスに少し同情したハジメは肩に手を置いて話しかけた。
「まあ、アレス。優花達も大丈夫って言ってるし」
「ですが……」
「大丈夫だって、それにアレス、お前も着替えておけよ。汗で服が濡れてるだろ?」
「あ、そうですね……このままでは、体も冷えてしまいますし」
「後、坂上の替えの服はアレスのを頼めるか?俺のサイズだと坂上の奴、キツそうと思うし」
「そうですね。私の持つゆったりとしたタイプの服なら彼も着れると思いますし、了解しました」
そうアレスに話しをつけたハジメは、適当な町で買った予備の服を〝宝物庫〟から取り出して放り投げつつ、錬成で四方を囲う壁を作り出した。簡易の更衣室だ。
同時に、ボーラも回収する。途端、崩れ落ちる光輝達。鈴は、咄嗟に雫が受け止めたが、光輝と龍太郎はゴチンッと痛そうな音を立てて地面に倒れた。勇者とその相棒だから、きっと問題はない。
「谷口の服は……サイズ的にユエしかないな」
「……ん、今着てるのと似たようなものがあるから、それを出してあげる」
自分の〝宝物庫〟から、ユエが鈴用の服を取り出している間、雫は視線をシアから優花へ滑らせた。
「ねぇ、優花。貴女の服を…………ごめんなさい。大丈夫よ」
が、優花のある部分を見て雫は諦めた。しかし、その雫の視線の先を見逃さず理由を理解した優花の目からハイライトが消える。
「……ねぇ、雫。さっき私の何処を見たの?」
「ピッ……い、いや、あのねっ。優花……その」
「聞こえないなぁ〜」
今、顕現可能な聖杭を全てを飛ばしながらニコニコと満面の笑みを浮かべて近寄る優花に、雫は快楽試練の時と同じくらいの大量の汗を流す。それも、冷や汗だ。
「ごめんなさいっ」
「……ま、冗談だけどさ」
謝る雫に、優花は怒ってないと言いながら周りに飛ぶ聖杭を解除する。そして、ゆっくり雫の耳元まで近付くと雫にしか聞こえない声音で囁いた。
「………今度は、ホントに怒るからね」
「ピッ」
雫は、今初めて知るのだった。優花を怒らせてはいけない本当の理由を……。
「でも、そうなると私は誰の……」
優花との茶番が終わり、本格的に雫は誰の服を貸して貰うか悩んでるいると、善意のシアが前に進み出る。
「ではでは、雫さんの着替えは私が───」
「勘弁してください」
雫さん。まさかの土下座。シアが「何故です?!」とウサ耳をみょんみょんさせる。
「まあ……そりゃそうだな。俺とアレスは慣れたが、シア。お前の露出過多な服……服(?)、服(笑)しか持ってねぇじゃねぇか」
「私の衣服に何か文句でも!? っていうか、服(笑)ってなんですか?!」
近接戦闘者なのに、女の子の大事な部分しか覆ってない衣服のことである。
「ごめんなさい、シア。貴女の服を着てしまうと私、何かが壊れそうなのよ……」
「非道いです!ああ、もうっ、これならどうですかっ。優花さん達に買った方が良いって言われた服ですけど!」
悲壮な表情で話す雫の言葉に、少しキレ気味のシアが〝宝物庫〟から露出控えめの動きやすいパンツルック系の衣服を取り出した。
「私は大丈夫です。って言ったのに、優花さん達がもしもの為に買っときなさい。って詰められて買ったものですが、やはり私には合わな──「それを貰うわ、シア!」──へ?」
取り出した衣服を持ちながら少し不機嫌そうに話すシア。しかし、その服を見た雫は目の色を変え、シアの持つ衣服を物凄い速さで受け取った。
「ありがとう優花! 」
「え、あの服は、ただ、シアの防寒のた───ムグッ」
余程、いつもシアが着る衣服が嫌だったらしい。優花に飛びついて軽くキャラがぶれるほど、雫が喜びをあらわにしている。若干、優花が引いている。
そんな中、自分の衣服を軽く否定されたシアが、抗議するかのようにウサ耳をわっさわっささせながら、「解せないです……」と呟いていたが、誰も気に留めなかった。
その後、拗ねたシアはハジメに甘えることで機嫌を取り戻すのだった。
あわや、へそ出し足出し二の腕出し、加えて胸元大胆解放な剣士爆誕の危機を回避した雫は、光輝達を叩き起こすと、状況説明をパパッと済ませ簡易更衣室へと促した。
ユエが、魔法で作り出した温水をシャワーのように降らせてくれる。身を洗うと同時に、疲弊した心まで洗われるようだった。
優花達が心身を整えている間、周囲の警戒とアラクネの回収を行うハジメ。周囲一帯も、天井も、そして巨樹までのルートも、かなり錬成したので、空間転移でもしてこない限り、乳白色スライムの奇襲を受けることはないだろう。新魔法〝
もちろん、だからといって警戒を解くことはないが。
「ハジメ殿、見張りご苦労さまです」
考え事をしていたハジメの背後から声がした。振り向くと、そこには体を洗い終えて替えの服に着替えたアレスがいた。支度が早く済んだらしい。
「おう、アレス。早かったな」
「ええ、グリューエンの単独攻略の時と違って、安心して攻略出来ますからね」
「……そうだったな。お前って、三つの大迷宮を単独攻略した
ハジメは、思い出す。目の前の男は、ハジメ達と違って単独で三つの大迷宮を踏破した猛者であること。改めて思うとアレスのぶっ壊れな強さを。
若干、苦笑いになるハジメに対してアレスも笑みをこぼす。
「ハハッ、それを言うなら化け物の私より強いハジメ殿は、それより上の存在ですね」
「クハッ……そうか?」
アレスの言葉に笑いながら首を傾げるハジメだが、ハジメもハジメで
「ま、そんなことは置いといて、休みてぇから少しの間でいいから見張りを変わって貰えるか?」
「ええ、お任せください」
少し休みたかったハジメは、アレスに承諾を貰うとアラクネを回収し終え、少し皆とは離れた場所へ向かう。しかし、歩いていく内に倦怠感と少し前から感じていた頭痛が強まり体がフラッとよろめく。
「──っ」
何とか踏ん張ろうとするも体に力が入らず、そのまま地面に倒れそうになったが、ハジメは地面に倒れることはなかった。誰かに優しく体を支えられたからだ。
「ハジメよ、大丈夫かの?」
「ティオか……」
「無理に気張るでない。ほれ座るのじゃ」
ハジメは、ティオの言う通り支えられながら座り込む。同時にティオもハジメに寄り添いながら座る。
「……支度、早かったな」
「妾は、試練に乗り越えるのは早かったからの。余り疲れておらんのじゃ」
ティオの答えにハジメは納得する。唯一、ティオは最初から快楽の試練に耐えていたのだ。精神的に疲れているだろうが、身体的には平気なのだろう。
納得するハジメに、ティオは少し心配そうな表情でハジメの義手に重ねるように手を置く。
「妾のことなんかより、ハジメ。何かあったかの」
「……気付いてたのか?」
「うむ。妾もじゃが、優花もユエもシア。アレスも気付いておると思うぞ?」
ティオの言葉を聞いて上手く表情を隠せていたと思っていたハジメは「マジか」と口元を手で覆う。
「……心配されないように表情に出さないよう努力してたんだがな」
「フフッ、愛しの旦那様の異変に気付かない妾達ではあるまいよ」
「クハッ……そうかい」
ティオの言葉に、ハジメは笑みをこぼしながらティオに握られている義手で彼女手を優しく握り返す。そして、余裕が出来たのか、又はティオにならいいかと思ったハジメは話しだした。
「……スライム共を駆逐するために魔法を放った時だった。何かに干渉されるような感覚があった。それからか、変な違和感を感じてるんだ。まるで、俺の体が俺のではないような感覚でな………」
そう言いながら話すハジメは、いつもなら絶対に感じさせない弱さが滲み出ていた。そんなハジメは、自分の右手をティオに見せる。ティオは従うように視線を右手に移すと、ハジメの右手は震えていた。
「見ろよ、こんなに震えるのはいつぶりだろうな。………俺は、恐いんだ。俺が、俺で無くなりそうで……それで、もしかしたら、体を乗っ取られて……俺はっ」
「ハジメ」
「ティ──んむ?!」
恐怖で少し冷静さを失い始めているハジメにティオは、自分の胸元にハジメの顔を抱き寄せ、落ち着かせるように彼の背中に手を回しながら優しく触れる。
「大丈夫じゃ。ハジメはハジメじゃよ」
「……ティオ」
「もし、ハジメがハジメでなくなろうとも妾達が絶対にハジメを元に戻させる。救ってみせる。だって、妾だってハジメに救われたのだから」
ティオは抱き寄せたハジメの頭を優しく撫でながら微笑む。その姿はまさに美しい妙齢の美女。
「だから、安心するのじゃ。優花も、ユエも、シアも、そして妾も、ずっとハジメの味方じゃよ」
「………」
「ハジメ。お主が、強者でいたいのは理由は分かる。妾達などの大切な人を守るためじゃろ?でも、そんなことを続けていたら、いつかハジメが壊れてしまう。だから、妾達だけでもいい。お主の弱さを見せてほしい。それに、弱さを見たって妾達は幻滅しない。むしろ嬉しいのじゃよ? だって妾達は、お主のずっと傍で支えていたいんじゃからな。弱さを見せるということは、その相手を心から信頼してることだしの」
「……」
「だから、いいのじゃ。ハジメ、今は」
「………クハッ。ありがとよ、ティオ」
「うむっ」
ティオの言葉に、心が少し軽くなった気がしたハジメは、笑みをこぼした。ハジメは、ティオに抱き締められながら本当に彼女は、自分に勿体ないぐらいの〝いい女〟だと改めて思う。
そして、やはり大切な恋人に抱き締められて心が救われる。彼女の笑みが元気をくれる。同時に、彼女に甘えたくなったハジメは、
「すまん、ティオ。もう少しだけ、このままでいさせてくれ」
「ふふ、構わんよ」
甘えたくなったハジメに、ティオは嬉しそうに頷いた。そして、ハジメは、ティオの温かさと柔らかさのせいか、フッと眠りに着いた。余程、相当な物を溜め込んでいたのだろう。そんなハジメを見てティオは少し呆れた表情になる。
「ホントに自分で溜め込み過ぎじゃ、妾の旦那様は」
呆れながらも嬉しそうに笑うティオは、眠るハジメを起こさないようにそっと自分の体を動かし、ハジメの頭を自分の膝の上に乗せる。そして、誰もが見ても見惚れるであろう嬉しそうな表情でハジメの前髪をそっと撫でるのであった。
それからしばらくして、先に上がっていたティオとアレス以外の面々もさっぱりとした様子で簡易更衣室から出てきた。そこで、 柔らかい表情で眠るハジメを膝枕しているティオを見て、羨ましいのか「自分達もする!」といった表情で駆け寄るユエとシア。それに続きながら「やっぱり、一人で溜め込んでたのね……バカハジメ」と溜息をしながら小言を言う優花。何故、自分に相談しなかったことに少しムカついたのか、ムスッとした表情でハジメとティオの場所へ歩み寄ると、ティオの膝枕で眠るハジメの両頬をムニィッとつまむ。
その後、優花達に少し説教されたハジメも復活し、全員の準備が終わる。ハジメは何か吹っ切れて軽い表情だ。しかし、そんなハジメとは逆に、案の定というべきか、光輝と鈴、そして今回は龍太郎も物凄く落ち込みようだった。まるで、背中に耐え難い
媚薬効果で正気を失っていても自分がしたことの記憶は残るらしい。快楽地獄の果ての人間関係、そして、仲間内の絆を試す──それが、今回の試練だろうというのがティオの推測だったが、その推測の正しさを証明するように光輝達はギクシャクしていた。
光輝も龍太郎も、雫や鈴と顔を合わせることなく微妙な距離を取っているし、鈴も、いつもの笑顔もなく、耳まで赤く染めたまま俯いて雫の陰に隠れる。
雫の方も、どうにかフォローしようとひているのだが、事態が事態だけに有効打を打てないようだった。
仲間内で、性的な意味で襲い合いそうになったのだから、その気まずさ、 罪悪感が半端ないのは仕方ないことだろう。特に、鈴は女の子だ。仲間とそういう関係になったということだけでなく、痴態を晒してしまったという点でも、精神には特大なダメージが入っているはずだ。
「鈴、忘れましょう?あればっかりは仕方ないもの。一線は越えなかったのだし、忘れてしまうに限るわ。誰だって、思い出したくない思い出の一つや二つあるものだし、ね?」
「………シズシズ」
「ほら!私なんて、彼の行きつけのお店に突撃した挙句、彼を探すの手伝わされて、席に座らず、十分ほど店内をうろちょろしたのよ?周囲の客が、あの時、私をどんな目で見てたのか……思い出しだけで鬱になるわ……」
ちなみに、突撃の首謀者は香織だ。店内で席に座らずうろちょろと歩き回る美少女二人……。結果、二人は出禁を食らった。悲しい事件である。
ハジメ達が雫に同情するような眼差しを送る。雫は「そんな目で見ないで……」と呟きながら、顔を覆ってしまっている。
「シズシズ。………その、ドンマイ」
「やめて、鈴。そんな励まし方されると更に鬱になりそうだから」
「……ふ、くふふ。出禁を食らうシズシズ……ぷくく」
「鈴、笑うのは流石に酷いわ……」
そう言いながらも、鈴が笑ってくれたことに、雫はどこかホッとしたような表情になった。
どんな慰めも効きそうになかったので、仕方なく記憶の奥深くに封印していた黒歴史を取り出し、自虐ネタで〝恥ずかしさの共感〟を狙ってみたのだが……
強烈なオウンゴールの決めた甲斐があったようで、鈴の精神は少し持ち直したようだ。流石フォローの達人。時には身を切ることも
そんな雫と鈴の様子を見て、俯いていた光輝が顔を上げた。
「……南雲、その……面倒をかけた。止めてくれて感謝するよ」
「ああ、そうだった。助かったぜ、南雲。マジでありがとよ」
光輝に続いて、ずっと気まずそうに顔を背けていた龍太郎がハジメに礼を言った。
「別に礼をされることでもねぇよ。ただ、同級生のヤッてるところなんて目にしたくなかっただけだ。それよりも落ち込んでないで、次の試練に向けて気合い入れとけ」
そう、素っ気ない態度で返事をするハジメ。本当に本人にとってはどうでもいいことらしい。光輝と龍太郎は顔を見合わせると、思わず苦笑いを浮かべる。
どうでもいいといった感じに言われたが、実際、大切な仲間の女の子達を傷つけずに済んだので、多少は気まずさも晴れた。
「でも、南雲君。大丈夫なの? 貴方、少し疲れてそうだったじゃない?」
「……大丈夫だ八重樫。少し魔力を使い過ぎてダルかっただけで、心配はいらねぇよ。それに、俺の心配より次の試練に向けて集中しとけ」
「え、ええ……分かったわ」
内心、雫にも気付かれそうになったことに少し焦るハジメだったが、なんとか誤魔化すことができ表情に出さないものの、ホッとした。
その後、ハジメ達は乳白色スライムに襲われることもなく順調に進み、遂に巨樹のもとへ辿り着いた。今回も同じく、巨樹の幹に洞が出来上がる。中に入ると、案の定、洞は塞がって密室となり、前と同じく足元で転移陣が輝いて、ハジメ達の視界を強烈な閃光で真っ白に染めた。
「ん? 転移、したよな?」
「見て、ハジメ。あっちに出口があるわ」
ハジメ達が転移した場所は、巨樹の洞とそっくりな洞の中だった。一瞬、転移してないかと錯覚したハジメだったが、優花の指さす方向を見れば、なるほど、確かに転移したのだと頷く。
ハジメが周囲を見渡せば、誰も欠けずに転移してきた様子。横目で、アレスに視線を向けると、アレスは首を横に振った。偽者はいないらしい。つまり今回はそのまま進めということだろう。
ハジメ達は一つ頷き合うと、光が差し込む出口に向かって行った。洞の出口から外に出たハジメ達は、そのあまりの光景に、一瞬言葉を失ぅことになった。最初にぽつりとこぼすように所感を口にしたのはハジメだ。
「これは……まるで、フェアベルゲンみたいだな」
優花達も「確かに」と頷く。
洞の先は、そのまま通路となっていた。だが、まずその通路が普通でなかった。ハジメ達を導くように伸びる頑丈そうな通路は、なんと洞から続く巨大な枝そのものだったのだ。幅は五メートルはあるだろう。
ハジメ達が背後を振り返れば、そこには外周の大きさを目測できないほど巨大な木の幹が存在していた。つまり、ハジメ達がいる場所は、巨大な木の、これまた巨大な枝の、その根元というわけだ。そして、伸びゆく枝の通路は、同じように巨大な木のあちこちから突き出している他の枝通路と空中で絡み合い、複雑な空中回廊を作り出していた。
ハジメは、〝フェアベルゲンのよう〟と称したが、それでは表現的に不足だろう。規模、複雑さ、そして壮大さでは比較にならない。ともすれば、目の錯覚すら起こしそうな、トリックアートじみた巨大空中回廊だ。
「地下空間……であることは間違いなさそうですね」
頭上を見上げれば、そこには石壁でできたような天井が見える。馬鹿でかい地下空間の中心に、巨大な木が天と地を結ぶようにそびえているようだ。
ただ、異常なのは、巨大な木の先が見えないこと。果たして、世界にそう何本もそうあるものなのか……
「……大樹?」
ユエが推測を口にした。シアが同意するように頷く。
「そういうことになりますね。ここは大樹の真下の空間ってことですか」
「でもそれだと、地上に見えていた大樹って……」
優花が、スケールの大きさに圧倒されたような震える声音で呟く。すると、顎を手で摩りながら思案していたティオが口を開く。
「ふむ、これが大樹ウーア・アルトで間違いあるまい。そして、地下の幹から
「ほ、本当の大きさはどれくらいになるんだ?」
光輝の引き攣ったような声色での疑問に、答えられる者はいなかった。皆が皆、改めて大樹の凄まじいまでの巨大さに度肝を抜かれて頭上を仰いだ。
その時だった。
巨大な大樹の幹が淡く光を始めた。突然のことに、驚くハジメ達。しかし、これが次の試練の予兆かもしれないと戦闘準備に入る。
しかし、それは違った。
「っ?!」
「ハジメ?!」
ハジメの声にならない声が聞こえ、全員がハジメの方へ視線を向けると、先に視線を向けていた優花が驚愕に満ちた声を上げた。それは、ハジメの足元だけに紅色の転移陣が展開されており、ハジメは魔法陣の効果なのか身動きが取れなくなっていた。
「「「ハジメ(さん)?!」」」
「ハジメ殿!」
「「「「南雲(君)?!」」」」
全員も、驚きのあまり声を上げる。そして、優花達は、どうにかしようとハジメの元へと駆け付けようとするが、
「……そういうことかよ」
ハジメは、何かを察しような表情になると、顔を上げ優花達に視線を向けると、口を開く。
「そっちは、頼んだ」
短い一言。しかし、ハジメの表情は不敵に笑っていた。
次の瞬間、その言葉を最後にハジメは何処かへと転移されていく。
「ハジメェェェェエ!!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
光が収まり、ゆっくりと目を開けたハジメは、自分が転移された場所を瞬時に確認し警戒を怠らずホルスターに手を掛ける。
「………ここは」
そして、〝気配感知〟などを発動させながら周りを見渡すと其処はハジメの全く覚えのない場所だった。理想世界での試練と同じように薄暗く、〝夜目〟がなければどうしようもできない場所だ。そして、一番極めつけなのは……
「本当に、此処は大樹の中なのか?」
そう、この場所は今までのいた場所とは余りにも雰囲気が違っていた。今までは、密林や樹海など、壁や天井なども木で出来ているところが多く見れた。しかし、今、ハジメがいる場所は壁も天井も石レンガでなどで囲われたような場所なのだ。当然の疑問である。
すると、
「お待ちしておりました」
「?!」
背後から、聞いたことのない女性の声が聞こえたハジメは、瞬時に距離を取りがら、ホルスターからドンナーを抜き出した。
「っ! 誰だ?!」
自身の〝気配感知〟と〝魔力感知〟を発動させて尚、後ろに回り込んだ相手にハジメは警戒心を顕にしながら目を細めて、咄嗟にドンナーを向ける。同時に、視線の先の人物を見る。そして、驚いた。その人物は全て木で作られた森人族だったのだ。
「森人族のゴーレム、か?」
「いいえ、違いますわ」
ハジメの言葉に、森人族の女性は首を横に振りながら否定する。そして、ハジメに一礼して微笑むと、話し始める。
「申し遅れましたわ。わたくしの名はリューティリス・ハルツィナ。ここ、ハルツィナ大迷宮の主であり、この場所の守護者。お待ちしておりましたわ、機神の力を持つ資格者様」
そう言って、微笑む森人族の女性。
ハジメは驚愕する。自分の目の前に現れた人物。
それは、解放者の一人であり、ハルツィナ樹海の初代女王リューティリス・ハルツィナ。その人であった……。
七章の後にステータス紹介したほうがいい?
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したほうがいい
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しなくていい