今年最後の投稿です( ̄∇ ̄*)ゞ
不敵に笑って、消える愛しの人。
助けようと必死に伸ばした手……しかし、それは、消えゆく彼には届かなかった……。
ハジメが何処かへ強制的に転移され、優花は消えるハジメへ必死に伸ばした手が力を失ったかのように下がって手に着き、そのまま優花は地に伏した。
「……ハジメ」
力の無く呟かれた声。生気が感じられない瞳。愛しの人を助けれなかった無力感。最初の試練の時は、ハジメに擬態した怒りが勝って再会するまでは平気でいられた。しかし、今回のはオルクスの時のように目の前でいなくなったハジメを見て、
そんな優花の姿に、誰もがかける言葉が見つからず顔を俯かせた。ユエとシアが優花の傍へと急いで歩み寄ろうとした時だった。
「優っ───!」
声をかけようとしたシア。しかし、何処からか音を捉え、ウサ耳がピクピクと動き出した。何の音かと、ウサ耳をピコピコと動かしながら、音源を辿っていく。
ガサガサ、ザワザワと微かに聞こえてくるそれは、何故かやたらと生理的嫌悪を覚えるもので、どうやら、ずっと下の方から響いており、段々、此方へと向かってきているのか、音が大きくなっている。
シアはウサ耳障りなその音に顔をしかめながら全員に伝えた。
「皆さんっ、下から何かが来ます!!」
シアの唐突な叫びに、全員がビクッと体を震わすが、すぐに戦闘態勢に入る。しかし、優花だけは、
もし、此方に向かう敵が強大な場合、優花が戦えないとなると非常にマズイ。全員の脳裏に危機感が募る。
「優花さん!敵です!」
「……優花、立って!」
「優花殿!」
シア、ユエ、アレスが優花を必死に呼ぶ。
「優花、立ちなさい!」
「ユウカちゃん!」
「おいっ、園部!」
「園部さん!」
続いて、雫、鈴、龍太郎、光輝も優花の名を呼ぶも、聞こえてないのか、もしくは、体が動かないのか優花は地に伏したままだ。すると、ずっとダンマリだったティオが足早と優花へ近寄ると声をかけた。
「優花」
「何、ティ──」
声をかけられ、ゆっくりながらも振り向いた優花。直後、パァン!と乾いた音が地下空間に響いた。ティオが優花の頬を叩いたのだ。
「っ、何するのよ!」
突然、頬を叩かれ、痛みと怒りで眉をしかめながら優花は、ティオをキッと睨む。しかし、ティオの方は普段なら優花に向けるはずのない落胆の眼差しを向けながら見下ろしている。そして、眼差しを優花に向けたまま口を開いた。
「優花よ。お主は、ハジメが居なくなってしまったら何も出来ない女なのかの?」
「何を言って───」
「言葉通りじゃよ。愛しの人が目の前から消えてしまったら何も出来ない、とな」
優花は黙る。ティオの言葉の意味を察したからだ。そして、消えいりそうな声音でボソッと呟いた。
「………ティオは、大丈夫なの?」
「何を言っておる?妾もハジメが無事なのかと、今でも、すぐに探しに行きたいくらい凄く心配じゃ。それは、ユエも、シアも同じじゃ。でも、ハジメは、言った。『頼む』とな。では、妾達がやるべき事はただ一つ。此処を切り抜けてハジメと再会するまで生き残ることが大切と妾は思う」
「……っ」
優花は思い出す。ハジメが、転移される前に自分達に向けた言葉を……
『そっちは、頼んだ』
不敵に笑いながら言った彼の言葉。
それは、自分がいなくても大丈夫だという絶対的な信頼を置いている自分達に向けての言葉。
その言葉に対して、今の自分はどうだ?ハジメの
「(それは、嫌っ)」
ハジメを一人にさせない。
それが、あの時から自分が決意したことだ。
しかし、それ以前に、大好きな彼を信頼してないなんて言語道断だ。優花の瞳に、生気が宿る。トラウマで力が入らなかった足は、今はしっかりと力が入る。
そして、今度はしっかりと立ち上がった優花は、目の前にいるティオに近付くと両頬をつまんだ。ティオもやり返す。すると、二人の間で「プッ」と笑みをこぼしている。
「ありがとね。ティオ」
「ふふ、大切な仲間の為なら当然のことじゃよ」
ニッと笑い合うと二人は、戦闘態勢に入る。優花は、
優花は、自分より年下であり、まだ未熟な子供だ。
なら、先に生まれた者として、
大切な
厳しくとも、彼女のために支えようと。ティオは決めたのだった。
「ごめん、皆!迷惑を掛けたわ」
トラウマから立ち直った優花は、すぐにユエ達に謝罪しながら隣に立つ。
「……ん、平気」
「優花さん、よかったです!」
「優花、よかった!」
ユエ、シア、雫から復帰に笑みをこぼし声をかける。鈴、龍太郎、光輝も優花の復帰でホッと一安心する。だが、安心の束の間、アレスからの声が響いた。
「皆さん!優花殿の復帰は良かったですが、私の耳でも聞こえるぐらいに近付いてます!気を引き締めなさい!」
アレスの一喝に、優花達も気付く。自分達に聞こえる。ガサガサと、生理的に受け付けない音が聞こえてくる。優花達も顔を青くさせる。
だが、乗り越えるんだ。
優花は口を開く。
「ハジメ、待ってて!私は絶対に乗り越えるから!」
そんな言葉を言っても、今、此処にいないハジメには、聞こえないだろう。しかし、試練を乗り越えるための糧として、優花は呟くのだった。
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「資格者?」
その同じ頃。転移されたハジメは、目の前の木のゴーレムみたいな人物?で、解放者の一人であるリューティリス・ハルツィナと対面し、リューティリスが話す内容に、沢山の疑問が浮かび上がってしまい困惑している。
そして、その中でもリューティリスがハジメを「資格者」と呼ぶことに首を傾げていた。すると、ハジメの言葉に、リューティリスは、難なく答えた。
「ええ、そうですわ。貴方は機神の力を持つ者。唯一、この試練を受けることが出来る者。つまり、資格者です。でも、本当に、わたくしも、
「伝承?」
「ええ、『機神、現れる世。その世、激戦の時代となりうる。天と地による大戦来たれし、だが、これで縛りは終焉となる。天は堕ち、この世に自由という名の変革をもたらす』と、今の樹海の住人達には、知られていない。いえ、忘れられたかもしれませんわ。だって、この伝承は、わたくしが幼い時から、御伽噺感覚で伝えられていた伝承ですから」
そう言って、フフッと笑みをこぼすリューティリス。しかし、ハジメはまだ沢山の疑問があるが、まず一番聞きたいことを口にした。
「アンタは、本当に、解放者の神代魔法の扱う者の一人、リューティリス・ハルツィナなのか?」
その言葉に、リューティリスは無言で微笑んだまま首を縦に振った。
「ええ。わたくしは、正真正銘、本物のリューティリス・ハルツィナでありますわ」
「じゃあ、あれか?ミレディと同じような感じで、魂魄魔法で魂魄をその木製のゴーレムに移動させたのか?」
「そうですわ。でも、ミレディたんと違って、わたくしの魂魄は、この大樹に移動させていますの」
「は?」
魂魄を移動させ、生きていることに納得したハジメだったが、その移動先の巨大さに動揺を隠せず、間抜けな声が漏れた。
「は?ちょ……なんて?」
聞き間違いだろう。そんな物理的にスケールが大き過ぎることじゃないだろう。しかし、現実は違った。
「だから、わたくしの魂魄は、この大樹ウーア・アルトと同化していて、この姿は、大樹の力でわたくしの本来の姿を模倣した姿にしてるだけですわ」
「マジか……」
リューティリスの答えに驚きを隠せないハジメ。しかし、納得はいく。理想世界で聞いたあの声は、リューティリスの声だろう。それであるなら、リューティリスは、大迷宮へはひひの主としても難しいだろう。しかし、この大迷宮の大元である大樹と同化していれば可能であると思えるからだ。
それに、彼女がリューティリス・ハルツィナ本人なら、この大迷宮の試練を作った人物。つまり、あの性格の悪い試練を組み込んだ張本人。ハジメは引き攣った笑みを浮かべながら額に青筋が浮かぶ。
「そうか、そうか……。てめぇが、あんな性格の悪い試練を……」
「っ……その目、ん……んんっ。コホンっ、申し訳ありません。貴方様の思うところがあるかもしれません。しかし、わたくしは、乗り越えて欲しいのです。たとえ、どんな佳境でも、仲間との絆は繋がっていて欲しい。それが、この大迷宮の在り方。わたくしが認めた者です」
そう言って、ハジメの言葉を返すリューティリス。何故か、頬を赤らめながら、ビクンッと体を震わせたのは、分からないが……。
「そうか。まあ、俺も試練についてはいい。だが、一つ聞きたい優花達は大丈夫なのか?」
「はい。貴方様のお仲間様達は、最終試練へと突入しましたわ。乗り越えれるか分かりませんが……」
リューティリスの言葉に、ハジメは、「そうか」と短く返した。だが、ある事にハジメは気付く。
「おい、俺はどうなる?」
「そこは、安心してくださいませ。今から行う試練が貴方様の最終試練とします。神代魔法も獲得できますわ」
「それは、ありがたい。で、俺の……資格者の試練というのは?見渡す限り、それらしいものがないが……」
辺りを見渡すハジメ。本当にこんな場所で試練を行うかと疑問らしい。
「ふふ、大丈夫ですわ」
リューティリスは、微笑みながらパチンッと指を鳴らした。いや、木のゴーレムでも指を鳴らしたことに驚きだが、今は、放っておこうとハジメは思う。すると、リューティリスの傍に石の柱が地面から出現した。
そして、リューティリスは、石の柱に手をかざすと、口を開いた。
「大樹ウーア・アルトの守護者として命じます。機神の間よ、試練の場と化しなさい」
その言葉と同時に、薄暗かった場所が明るくなり、ハジメとリューティリスのいた場所の全貌が明らかになった。
「………闘技場、か?」
そこは、ハジメが言うように闘技場のような場所だった。広さも〝竜化〟したティオが四体が入るほどの大きさだ。しかし、観客席のような場所はなく、ただ、石壁の上に設置されていた。
そして、気が付くとハジメの目の前からリューティリスが姿を消していた。それに、気付いたハジメは、急いで辺りを見渡す。
「おい、何処に行った! リューティリス・ハルツィナ!」
「わたくしは、此処にいますわ」
ハジメの声に答えるリューティリス。しかし、何処を見渡すも姿が見えない。しかし、「わたくしはここです」と言われ、声がする方向に視線を向けると、玉座から一本の木の幹が生え、そこからメキメキと音を立てながらリューティリスが現れた。
「ふふ、驚きましたか?」
「ああ、驚いたよ」
リューティリスに笑みをこぼすハジメ。大樹に魂魄を移動させているから、大樹の中ならどこでも行き来可能らしい。
「それで、俺の試練はなんだ?」
「こちらですわ」
そう言ってリューティリスは、玉座の近くに刻まれていた魔法陣に触れると、一気に光り輝いた。すると、ゴゴゴッと何かが動く音が聞こえると共に玉座の下の石壁がフッと消えた。消えた石壁の奥は薄暗くよく見えないが、直後、明かりが灯った。
そして、明かりが灯されて奥の光景が顕になった。
「……これは」
ハジメは、石壁の奥に隠されていたものに唖然とした。自分の目を疑う。そこから、感じる重圧に肌にビリビリと痺れている。
「驚くことも無理もありませんわ。わたくしも、初めてコレを見たときは有り得ないと思いましたわ……」
「そりゃそうだ。だって、こいつぁ……」
そこにあったのは、見たことない鉱石に、アザンチウム鉱石を使って修復しているような関節機構に装甲、四つの足に銃器を武装された両腕、背中に多くの武器を武装し、胸部には見たこともない鉱石が埋め込まれているゴーレム。そして、この世界では到底、作れることが不可能な技術。
「銃器に、多くのこの世界にない武装……」
「その腕の装甲のアーティファクトは、ジュウキと言うのですね。オーちゃんさんにも分からなかったアーティファクトなのに……」
リューティリスの言葉に、ハジメは、苦笑いしながら答えた。
「そりゃそうだ。この銃は、俺達の世界にあって、この世界にはない武器だ。たとえ、あのオスカー・オルクスでも分からないだろうな」
「別の世界、ですか………ホントに世界は広いですわ」
「それは、同意だな。で、コイツはなんだ?」
ハジメは、ゴーレムを指差しながらリューティリスを問う。
「このゴーレムは、遙か昔に動いていたと伝えられています。わたくしが女王に、ウーア・アルトの守護者となった際に初めて見たときは、腕や足などの部分が破損していて動いていませんでした。……でも、圧倒されてしまいました。動きもしない。壊れている。あの状態でも、わたくしは負けてしまうと感じてしまいましたわ」
リューティリスは、ハジメの隣へと移動すると、視線をゴーレムに向いて、話を続ける。
「わたくしは、ゴーレムが戦力になると思い、修復しようと思いました。しかし、生産系の天職でもありませんでしたし、無駄に終わってしまいましたわ。そんな時に、教会と連邦軍が神代魔法を持つわたくしの確保の為に樹海へと攻めてきました」
「連邦軍……帝国みたいなもんか」
「ええ、貴方様の記憶で見せて貰った帝国と同じようなものですわ。連邦軍は、教会という強力なバックがいたため、わたくし達の戦況は悪いままでした。でも、そんな状況の時に駆けつけて下さいました」
「……ミレディか?」
「はい。ミレディたん達、解放者の皆様のおかげで、わたくし達は勝利し、解放者の一員となりました。そして、沢山の仲間ができ、大切な友達ができて、幸せな日々でした」
「………」
木のゴーレムであるのに、リューティリスの話す姿は、ハジメでも微笑んでしまうほど、嬉しそうな表情だった。
「教会との決戦も勝利し、わたくしやミレディたん達神代魔法を持つ七人が神域へと向かい、あのエヒトを倒せました。………ですが、エヒトが封印していた四柱の神には、為す術なく敗北してしまいましたわ……」
今でも、鮮明に覚えている。
数多の
血を啜り、血を操る鮮血の女神。
神の使徒を遥かに超えた力を持つ戦乙女の女神。
そして、化け物としか言い表せない破壊の神。
そんな四柱相手に解放者七人は敗北した……。
地上も、自分達が居ない合間に、竜人族の裏切り、使徒達の覚醒などの度重なる不幸によって、戦況がガラリと変わり一転した。解放者は天も、地上でも敗北したのだ。
リューティリスの表情も一変し、暗く沈んだ表情だ。
「そして、敗北したわたくし達は、反逆者として呼ばれ、神代魔法を持つわたくし達七人は未来の為に大迷宮を創りました。その時に、わたくしが頼んで七人である程度修復したのは……」
「このゴーレムって、わけか………」
「ええ、そうですわ」
ハジメの言葉に、リューティリスは肯定するとゴーレムを真っ直ぐと見つめながら言葉を続ける。
「神代魔法を持つわたくしを含めた七人が、協力して修復したゴーレム。ある意味、わたくし達の集大成。オーちゃんさんで言う最高傑作……名を
「
そう言って、ゴーレム改めて機神兵を見つめるリューティリス。ハジメも機神兵の名を呟きながら機神兵を見る。因みにオスカーがスパイダー百式という名を提案したが、全員が却下したのは当然であった。
機神兵を見つめるハジメは、ハッと試練のことを思い出すと、隣にいるリューティリスに話しかける。
「そういや、試練内容は?あの機神兵を倒せか?」
「いえ、違いますわ。機神兵は強力ですわ。もしかしたら、貴方様より強いかもしれません。だって、この機神兵は、魂魄を移動させる前のわたくしや仲間達と協力して戦ってもギリギリ勝てたぐらいですから……」
「なっ………」
ハジメは、リューティリスの言葉に言葉を失う。それは、リューティリスが言っていることは、ミレディやオスカーなどの七人の神代魔法遣いと戦えるほどの力を機神兵は持っていることになる。
因みに、ハジメが大戦の時に連れていけなかったのか?と聞くと、機神兵は大樹の外には出られないようになっているらしい。
「んじゃ、試練内容は?」
ハジメの質問にリューティリスは、機神兵の胸部に指を差した。
「胸部に取り付けられた黒の鉱石を奪ったら試練はクリアとしますわ。まあ、倒せるなら倒してもいいですが……」
リューティリスの言葉に、ハジメは頷くと「クハッ……」不敵に笑みを浮かべた。
「オーケー、了解した。じゃ、初めてくれ」
ハジメの言葉に、リューティリスは無言でコクリと頷くと玉座へと移動し、魔法陣に手をかざして、機神兵の命令する。
「動きなさい、機神兵」
その言葉を引き金に、ゴゴゴッと音共に、機械が作動するような音が闘技場内に響き渡る。機神兵の瞳が息を吹き返したように紅い光を灯ると同時に動き出した。
「では、機神の試練──始めですわ!!」
そして、リューティリスの開始の合図の言葉の直後、ハジメのドンナーから放たれる紅い閃光と、機神兵が片腕の銃器から放たれた巨大な極光がぶつかり合うのだった……。