ありふれた職業で世界最強if優花   作:白San

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優花達の続きです( *¯ ꒳¯*)


百十八話 それぞれの戦い

 

時間は少し戻る。

 

優花とユエが飛び出した直後、シア達に再び黒の津波が襲いかかった。

 

咄嗟に、鈴が結界を張り直そうとするが、

 

「………」

 

一瞬の躊躇い。押し寄せる〝小型〟の波が、今の鈴には愛らしくて仕方がない。言ってみれば、子猫の群れが「あそんで〜」と駆け寄ってくるような感覚なのだ。

 

結界を張って拒絶するなんて………

 

むしろ、気持ち的にはウェルカム。さぁ、鈴の胸に飛び込んでおいで!

 

「ちょっと、鈴?!」

 

雫が怒声を上げる。ただでさえ気に食わない奴が、己の仕事を果たさないのだ。雫的に、そのチョロリと結われたおさげごと、ぶった切ってやろうかと思うほど腹立たしい。

 

「吹き荒べ 頂きの赤き風───〝嵐炎風塵(らんえんふうじん)〟」

 

間一髪。広場ごと黒の津波に呑まれる前に、火炎の竜巻が結界の役割を果たす。その間に、前線を張り〝半人型〟と戦っていたアレスが戻り、守備に入った。

 

「助太刀します───〝聖絶〟」

 

再び、障壁が張られたことで黒の津波の侵入を妨げ、どんなに大群で押し寄せようともアレスの張る障壁はビクともしない。そして、広場を丸ごと包むほどの巨大な炎の竜巻により、如何に黒の竜巻といえど、それは所詮、生き物たる〝小型〟の集合体。螺旋を描く火炎の旋風に巻かれては消し炭へと変わっていく。

 

「しっかりせんか、お前達。なんのためにここに来たのじゃ。戦うべき相手に身を差し出すためかの?」

 

新しい声音が、鈴だけでなく、特に行動を起こしていなかった光輝達の耳朶(じだ)を叩いた。紛れもない叱責の言葉に、光輝達がビクリッと震わせる。

 

見れば、ティオがアレスの隣に立って両手を前に突き出しながら、鋭い目を向けている。隣にいるアレスは、「優しい御方ですね」とフッと笑みをこぼしている。

 

「ご、ごめんなさい」

 

思わず謝罪の言葉を口にする鈴。

 

「謝罪はよい。今は役目を果たすのじゃ。お主の天職は〝結界師〟──守る者じゃろう? 」

 

「っ、は、はいっ」

 

感情的に、今の鈴はティオに対して悪感情を持っているのだが、その言葉の重みに、気が付けば素直に頷いていた。

 

何故だろう。酷い悪感情が湧き上がっているのに、今のティオには誰もが無視できずにいる。

 

「なんで、ティオさん。魔法が効いてないんですか?!」

 

シアが驚愕の声を上げる。何故、感情が反転してないのかと、驚愕な眼差しをティオへ向ける。

 

「ティオさんもだけど、アレスさんも?!」

 

雫もティオのことも驚いたが、平然と障壁を張ったりしているアレスにも驚愕の眼差しを向けている。

 

「これぐらい大丈夫ですよ。ティオ殿も」

 

「うむ。………それに、もう直ぐ魔法が解けるじゃろ。ほれ、シア達も前を見るのじゃ!」

 

二人の言葉に、納得し難い表情をしながらもシアと雫は視線を前に向けた。

 

直後、アレスの障壁の外に張っていた火炎の竜巻が虚空へ溶け込むようにして消える。再び黒い津波が押し寄せるかと身構えたシアだったが、意外にもそうはならなかった。

 

「? ああ、あの二人の方へ行ったわけですか」

 

シアの視線が、離れた場所で黒の津波や〝人型〟と戦う優花とユエの姿を捉えた。どうやら、無尽蔵に近い〝小型〟といえど、あの二人に対抗するには戦力を二分している余裕はないらしい。あるいは、〝人型〟の意識が、それだけ優花とユエに集中しているのか。

 

〝小型〟相手には相性が悪いシア的に助かる展開ではある。もっとも、それがにくっき優花とユエの二人によるものだと……そして、そんな彼女達より憎い彼を想うと(はらわた)が煮えくり返る思いだったが。とはいえ、敵がいないわけではない。むしろ、より強力な敵が待ち構えていた。

 

広場を包囲するのは、〝人型〟を二回りほど小さくした〝半人型〟の群れ。

 

数は優に二百……否、現在進行形で増殖している。

 

優花とユエの姿も、それら〝半人型〟の隙間も埋まるほど、包囲は刻一刻と密になっていく。

 

「おいおい、こりゃあもう、やりにくいとか言ってる場合じゃねぇぞ。やらなきゃやられる」

 

龍太郎が冷や汗を流しながら言う。どうやら、愛らしさ故に抱いていた戦うことへの躊躇いを振り切ったようだ。拳を構え、ようやく戦闘態勢を取る。

 

「なっ、戦う気か?!」

 

光輝がハッとしたように龍太郎を見た。正気を疑うような目だ。この期に及んで躊躇いがあるらしい光輝に、雫が苛立ちげに語気を荒あげる。

 

「光輝、やるのよ。聞いたでしょう?感情が反転しているって。今、抱いている感情は、本当の感情じゃないのよ。やらなきゃ死ぬわ」

 

「だ、だけど……そうだっ、南雲がいる!殺さなくても、防御に徹していれば、南雲が俺達の所へ駆けつけてくれるはずだ!」

 

それが許せなくて、この大迷宮へ来たのではなかったのか。雫の視線が光輝へ突き刺さった。光輝がたじろぐ。だが、雫という腹立たしい相手(・・・・・・・)より、ハジメという最高に信頼できる相手(・・・・・・・・・・)に任せるのが最適解のはずだ。と、光輝は迷いをあらわにする───

 

タイムリミット。考える時間が尽きた。

 

〝半人型〟が一斉に飛び出し迫ってくる。

 

開幕の一発は、シアだった。

 

「シャォラァアアアアアアッ」

 

心に湧き上がる悪感情を吐き出すような、凄絶な気合いの雄叫び。同時に、虚空に出現する巨大な赤い球体──剣玉。直後に響くは、大気すら(おのの)くような衝撃と轟音。

 

直径二メートルの巨大な金属球が、ドリュッケンに叩き出されて砲弾と化す。進路上にいた〝半人型〟は出端を挫かれる形で潰され、砕けながら吹き飛んだ。

 

包囲網に、ばっかりと大穴が出来上がる。

 

「放置とか許しませんよ! おチビとチビ胸!」

 

どうやら、シアの怒りの矛先はユエと優花にあったらしい。憎い相手が、自分には目もくれず戦場へ飛び出していったことが屈辱だったのか………

 

シアの足元が砕け散った。踏み込んでクレーターを作りつつ、剣玉の砲撃で空いた大穴へ飛び込む。そのまま、優花とユエのもとへ行く気だったのだが、そうはさせじと〝半人型〟が四方八方から殺到した。

 

「ええぃっ、この構ってちゃん達め!ですぅ!」

 

ちょっぴり頬を染めながら、殺到する〝半人型〟達に止められたことにウサ耳を荒ぶらせるシア。正面からソニックブームを引き連れて迫った〝半人型〟を、これまた正面からドリュッケンでぶっ叩く。そうすれば、冗談のように吹っ飛ぶ〝半人型〟。その様は、まるではピンボールそのもの。

 

〝半人型〟も鋼鉄じみた強度の肉体を待ってるせいか。シアのドリュッケンが振るわれる度に、ゴインッゴインッゴインッと、どこかコミカルさを感じさせる衝撃音が響き、その度に、四方八方へ〝半人型〟が飛んでいく。

 

ただの一体も、シアには触れることすら叶わない。

 

腐食のオーラを纏おうとも、ドリュッケンが一度振るわれるだけで発生する衝撃波が全て蹴散らす。

 

全方位同時攻撃をしようとも、鎖で繋がった剣玉が、シアの回転に合わせて周囲一帯を薙ぎ払う。

 

まさに暴風。シアを中心に、戦鎚と剣玉の織り成すハリケーンが〝半人型〟の(ことごと)くを粉砕する。

 

「ぬぐぅうううっ。殲滅力に欠ける自分が恨めしいですね」

 

とはいえ、シアはあくまで近接戦闘特化タイプ。数の暴力を前に、負けることはなくとも足止めくらいはされてしまう。遠目に、優花とユエが、喧嘩しながらも共闘(?)っぽいことを、一言すると仲睦まじい感じでしているのをチラ見しながら、シアはぷくっと頬を膨らませる。

 

そしてまた、背後と側面から襲いかかった〝半人型〟を、今度は回し蹴りの一撃のみでまとめて粉砕。〝半人型〟二体が、体をくの字に折り曲げながら、周囲を巻き込んで新たなピンボールとなって飛んでいく。

 

そんな、広場の少し先の空中で無双するシアを見て、雫が妬ましそうに呟いた。

 

「すごい……」

 

シアの強さは知っていたが、実を言うと、これほどの多対戦の中で、シアが戦っている姿を間近で見るのは初めてだったのだ。自分も彼女達みたいに飛び出そうと思っていたのに、思わず足を止めてしまうくらい、それは鮮烈で圧倒的な姿だった。

 

もちろん、その間も襲ってきている〝半人型〟を、黒刀で受け止めると衝撃を殺すと同時に、腕などを正確に切り落とすなどをしているので、雫自身も弱いわけじゃないのだが……

 

「(本当に私は……)」

 

という思いが、湧き上がってしまう。

 

「その感情、溜め込みすぎてるようじゃな……」

 

「え?」

 

ブレスを散弾のように拡散させて連射しながら、光輝達の援護をしているティオが、チラリと雫へ視線を寄越しながら呟いた。

 

完全に内心を見透かされて、雫の中の悪感情が膨れ上がる。だが、ティオはお構いなしに続けた。

 

「その感情は、誰でも抱く。妾も抱くこともある。だが、それを卑下にせず糧にするんじゃ。そうして妾達は強くなっていくのじゃ」

 

思わずティオに視線が吸い寄せられて、一瞬の隙を晒してしまった雫。振り返った雫の頭上から〝半人型〟が迫るが、ティオが見もせず片手間に放った風刃があっさり両断してしまう。

 

恐ろしいほど鋭い。今のティオのように。

 

「胸を張って良いのじゃよ、雫。そこまでの剣術も、その努力も、今この場に役立っていることも、お主は誇って良い」

 

「……うるさい。ティオさんに言われなくたって分かってるもん」

 

何故だろう。腹立たしいのに、やたらと照れくさい。つい子供じみた文句を言ってしまうほどに。そして、少しだけ感じる。胸の奥に温かいものを。

 

八つ当たり気味に、黒刀を勢いよく振るって、迫りくる〝半人型〟を薙ぎ払って軌道上にいた〝半人型〟達に致命傷を与えていく。

 

やはり見透かしているのか。そんな雫に小さく笑いながら、ティオは「それに」と続けた。

 

「シアは、特別な子じゃ。誰かと比べられるものではない」

 

確かに、シアは特別だ。亜人族で唯一、魔力を有し、あんなにも強い。雫がそう思っていると、ティオは首を振った。

 

「そうではないよ。あの子の能力を言うておるのではない。心のことを言うておる」

 

「心?」

 

「そう、心。元より、シアは兎人族。その心は平穏を愛し、争いを苦手とする」

 

けれど、それでは望みを叶えられないから。

 

「怯えながら一歩を踏み出し、泣きべそを掻きながら戦い、愛した者と、友の傍に立ち続けた。どうやら、世界は光輝に勇者を与えたようじゃが……」

 

ティオの視線が、シアへと流れる。

 

「妾からすれば、光輝には、その称号には不相応。真に〝勇ある者〟とは。〝勇者〟とは───シア・ハウリアのことであろうよ」

 

ティオにとって、愛しの錬成師の彼を愛している。だが、敬愛はしていない。彼の生き様は勇ある者とは言い難いのだ。彼の原動力は己の命を課していること。その戦う姿は胸がときめくも、敬うべきではない。

 

仲間である神官の青年は、勇者の称号を背負えただろう器であったのだろう。しかし、更なる願望を叶えるため彼は、その成りうる器を切り捨てた。

 

他の二人も違う。だからこそ、仲間の中で最も敬愛の念を抱いたのは、シアであった。

 

それに気が付いた雫は当然驚いたが、しかし、それより驚くことがある。というより、疑問である。

 

「……ねぇ、ティオさん。感情、反転しているの、よね?」

 

自分に対する言動、先程から精彩を欠く光輝や、実力不足で危機に陥りかける龍太郎達を完璧に援護し続けている姿、そしてシアに対する隠すこともない敬愛の念。

 

どう見ても、悪感情を抱いているように見えない。だとすれば、ティオは元々、自分達を嫌っていたことになるが……

 

「ふんっ。お主等のことは気に食わん。今も、憎々しい感情は湧き上がっておる。……じゃがなぁ、それがどうしたというのじゃ?」

 

「え?」

 

ティオの視線が、再び雫へ向いた。その瞳に宿る〝深さ〟に、〝重み〟に、雫は思わず息を呑んだ。ふっと笑ったティオは、またも隙を晒した雫の背後にブレスを放ちつつ、事なげに言った。

 

「感情の好悪など……そんなものに左右されるようでは、生きておれんよ」

 

記憶と、魂の(しるべ)が、ティオに正しい判断を与えている。一度抱いた想いを、容易に忘れて感情に流されるようでは、彼女の長きを生きる心はとっくの昔に壊れている。だから、今憎くても、好意を抱いていた時の記憶さえあれば、ティオ・クラルスは決して流されない。その心は、正も負も、愛も憎しみも、全て呑み込み背負うのだ。

 

それに、ティオは続けた。

 

「成すべきことの前では、妾自身の感情など些事に過ぎん。お主のことも気に食わんが、記憶が妾に言っておる。ここにいる者は、妾が守るべき者達であること。それに、今はとても殺したいほど憎いが、記憶では抱きしめたいほど愛おしい旦那様に会いたいからのぅ」

 

使命・義理・義務。どのように称するかはさておき、ティオは己の役目を(たが)えない。

 

だから、

 

「雫。お主のことも、妾が守ろうぞ。天職〝守護者〟を持つ、黒竜ティオ・クラルスの名に懸けて」

 

身に纏うのは王の如き覇気。他者に与えるは大樹の如き安らぎ。瞳に宿るは鋼鉄の意志。炎と風に黒髪を靡かせて、誇りと共に宣言するその姿は、思わず見惚れるほど美しい。

 

「け、けけ結構です!私、自分で戦えますから!」

 

またも、子供じみた言葉を返してしまう雫。頬が微妙に赤くなっている。同性の子達からも黄色い声援を浴び、クールビューティと周りから言われてるポニテ剣士少女は、竜人族の黒竜姫相手には子供っぽく返事をしてしまう。

 

自分の視線の映るティオは、格好良くて美しい、誇り高き理想の〝お姉様〟だった。そして、自分をいつも〝お姉様〟と呼ぶ彼女達は、自分がティオに対する抱いた想いを自分に抱いていると理解した。

 

そんな、雫は、やたらと気恥ずかしくなってしまって、シアと同じように飛び出そうとする。シアの無双に圧倒されて足を止めていただけだ。

 

だが、飛び出そうとする寸前、

 

「わっ!?」

 

「!!」

 

聞き慣れた声音の悲鳴が耳を突いた。

 

半ば無意識にそちらへ視線を向けると、そこには尻餅をついた鈴の姿が。どうやら、足元に付着していた〝半人型〟の体液で足を滑らせ転倒したようだ。が、近くには光輝と龍太郎がおり、すぐに立て直す鈴。

 

だが、危険なのは鈴だけじゃない……

 

「雫!!」

 

「へ?」

 

ティオの怒声にも近い声に、雫は視線を戻す。そこには、視界を黒で覆うほどに迫っていた〝半人型〟の姿が。

 

「っ!?」

 

それは、致命的な隙。

 

〝半人型〟が、腐食の黒煙を纏った腕を、既に振りかぶっている。ティオは、もうブレスを放っており問題はない。が、恐怖が雫の脳内を覆い尽くし体が動かない。そうなると、ブレスの余波が雫に直撃してしまう。

 

そのことを連想してしまったのか雫はギュッと目を瞑って、覚悟したが、待っても、痛みはない。何がどうなってるか分からずゆっくりと目を開ける。そこには、金色の軽鎧(ライトアーマー)を身に纏ったアレスの姿がそこにあった。

 

「無事ですかね、雫殿」

 

「え、あ、はい……」

 

「それなら、良かったです。では──」

 

アレスは、雫の無事を確認すると光の速さで移動しながらシアと同じように無双劇を繰り広げていた。

 

そんな一瞬の出来事に呆然と立ち尽くす雫。ティオは、雫を横目で無事と分かると、雫を助けたアレスへ視線を向けた。

 

「そうえば、おったな。妾と同じように感情の反転に順応している者が」

 

そう呟いきながらティオは思う。アレスという人間の尋常ではない順応力を……

 

それは、快楽試練から、この反転の試練の時も思っていたこと。何故、この人物は、自分と同じように早く順応してることを。

 

その強さの要因は、自分と同じような壮絶な過去を経験をしたからなのか?

 

もしくは、そういう精神干渉系の魔法に耐えることが出来る技能を持ち合わせているのか?

 

どちらなのか分からない。もしかしたら、両方かもしれないし、両方でもないかもしれない。だが、一つ言えるならば、アレス・バーンは人間という枠組を逸脱していることだろう……。

 

 

雫を助けたアレスは、優花とユエとは逆。後方で〝人型〟と〝半人型〟の相手をしていた。

 

腐食を纏った腕の攻撃を籠手で防ぎ、蹴り飛ばす。高速移動しようとも、〝ロンギヌス・オリジン〟の状態のアレスならすぐに追い付ける。

 

そんな、アレスだったが戦闘を繰り広げる中、自分の感情が戻ったことに気付く。

 

「……適応(・・)しましたか」

 

迫りくる〝半人型〟を籠手から魔力で形成させた光剣で、細切れにして、アレスはぽつりと呟いた。その瞳は、深く濁っており、人がするような目ではない。

 

今のアレスは、一足先に感情の反転の魔法が解けた──いや、適応(・・)したのだ。故に、アレスにはもう感情の反転は効かない。

 

王国には、アレス・バーンに状態異常と精神操作系の魔法は効かない。という言葉がある。

 

それは、王国にいた宮廷魔術師達が畏敬と畏怖を込めて口にした言葉だ。しかし、全く効かないわけじゃない。最初は効くのだ。どの魔法も……しかし、数分後には効かなくなっている。毒も、熱も、精神操作も、石化も、全て最初だけ効いただけで、それ以降は無意味。

 

故に、最強と喚ばれた。

 

アレス・バーンという人類最強と呼ばれている一端であった。

 

「さっさと、終わらせますか………」

 

そんなアレスは、片手間のように〝半人型〟達を片付けながら呟くと、突然と強襲してきた〝人型〟の攻撃を避けるとゲートを使って、天井へ移動する。そして、右手に魔力を集中させ、巨大な光の大槍を形成させていく。

 

光の大槍は、膨大な魔力と存在感に、下いる〝人型〟が危険を察して止めに入ろうとするが、既に遅い。アレスは、大槍を右手を大きく振りかざした。

 

これは、原点(オリジン)からこそ成せる技。

 

「───神の裁き(ジャッジメント)

 

光が収束し、白と黄金が交じる輝きを放つ大槍をアレスは目標の場所へと投げ落とした。これは、神の罰。対象の軌跡も、記録も、塵すらも残さない消滅の極光。投げ落とされた大槍は〝人型〟を中心に円形の光の柱を作り上げていく。

 

「ギィイイイイイ!?」

 

耳に不快感を与えるような〝人型〟の悲鳴が聞こえる。が、次第に小さくなって聞こえなくなった。そして、光の柱がなくなると、そこには戦闘の痕跡も跡形も無くなっていた。

 

「………」

 

その光景を上から無言で見下ろしていたアレス。何の感情も抱いていないその目は、段々と薄れていき、普段のアレスの瞳に戻っていく。同時に、オリジン状態を解除して身に纏う軽鎧が槍へと戻りアレスの右手に収まる。

 

「ふぅ………よし、行きますかっ」

 

一息吐くと、何事もなかったように、いつも通りの姿を振る舞うアレスは、戦線に降り立ち、再び、戦闘に戻るのであった。

 

 

アレスの神の裁き(ジャッジメント)を見た雫は、その凄まじさと魔力の余波に肌がビリビリと痺れる。

 

「………すごい」

 

雫は、それしか言えなかった。だが、劣等感も芽生える同じ人なのに差が開きすぎて嫌になってしまう。むしろ、全てを彼等を任せた方がいいと思ってしまう。

 

でも、それを雫の思いを否定するかのように記憶がフラッシュバックした。

 

──己の死を覚悟した時のこと。

 

──王宮で友と親友に裏切られたこと。

 

いつも守っているつもりで、肝心な時に何もできず、ただ守られている。

 

自分は何のためにここに来た?

 

親友を止めるためだろう?

 

なら、どうすれば良い?

 

簡単だ。精一杯、戦って、本気でぶつかり合って、〝親友〟止めれば良い!!

 

心に鋭い痛みが走る。同時に心の枷のようなものが壊れた気がした。

 

自然、手に力が入る。

 

あの、ストーカー癖のある親友を止めるんだ。あの優しい香織に戻すんだ。と、想うと段々、黒刀に力が入ってくる。魔力が全身へと漲っていく。

 

「そうだ。私は───」

 

抜刀一閃。

 

先程までより格段に鋭さを増した抜刀術が、一撃で〝半人型〟を縦に両断した。

 

「強くなって、あの子を止めるんだ」

 

力強い声で雫は言う。そして、黒刀を構え直して更に迫る〝半人型〟を一気に叩き切っていく。

 

「ティオさん! 援護お願いします!」

 

「うむっ、心得た!」

 

ティオが口角を上げ、即応した。雫を見る目に、「それでいい」と褒めるような気持ちが込められている。

 

光輝、龍太郎、鈴を、三角形の二頂点の位置で囲む。

 

相変わらず、光輝は敵への情から精彩を欠いている。龍太郎も悪感情のせいで苛立ちが募っているようで十全に力を発揮できていない。鈴もまた、そんないつもと異なる動きの二人に、進路限定用の結界を上手く合わせれずにいる。

 

だが、雫とティオが大部分をカバーしてしまえば、あと対応すべきは正面と頭上のみ。

 

だが、その二つも……

 

「うりゃああああああっ!!」

 

「──〝天翔閃・極〟!」

 

気合い一発。淡青白色の波紋を広げるシアが、光輝達へ降下強襲していた〝半人型〟をまとめて吹き飛ばし、正面から迫る〝半人型〟をアレスは、極大の光の斬撃によって塵にさせた。雫が、ぱぁっと顔を輝かせて二人を見る。

 

「シア! アレスさん!」

 

「上は引き受けます!」

 

「正面は私が相手をしましょう」

 

引き返して、雫達と共に戦うことを選んだらしいシアと、ある程度片付けたのか助太刀に入ったアレス。アレスは分かるが、シアは何故か、という疑問は、ほんのり赤くなったほっぺと、チラリとティオに向けられる眼差し、そして、よく聞こえるウサ耳から察して知るべしだろう。

 

ここに超攻撃的拠点が完成した。

 

同時に、〝半人型〟が〝神の使徒〟の模倣した魔物といえど、そのスペックは〝人型〟の劣化版。数の暴力が強みであるが……

 

それでも、今の彼、彼女達を前にすれば、〝半人型〟さえ、もはや試練にはなり得ないのであった……。

 





次回は、ハジメメインです=͟͞ ( ˙꒳˙)
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